夜に書き込むのはアレなので、日が差している今の時間帯に書き込みます。
私が高校三年のときの話です。
実名だけは省いて地名なども詳しく書くことにします。
北海道の空の玄関口、千歳市から南に車で1時間ほどの所に支笏湖という場所がありますが、
私の奇妙な体験はそこで起こりました。怖いというよりも奇妙という表現が正確でしょう。
当時、所属していた部活動のイベントとして支笏湖まで自転車で行ってキャンプをしようという
話が持ち上がり、何時間も自転車を漕ぎながら私達はキャンプ場に向かいました。テントなどの
重い機材のお陰で「面倒だな〜」と思いつつ、夏の日差しにめげながらも、何とか現地に到着。
そこまでは何も問題は無かったのですが、やはり夜になると肝試しをしようというような如何にも
ありがちな方向に話が転がっていきました。
支笏湖は地元では有名な心霊スポットの一つです。ポロピナイキャンプ場から出発した私達は
山道の獣道のようなところを進み、T字路まで辿り着きました。
私はといえば、密かに好きな女の子が怖がって他の誰でもなく私の腕にしがみ付いているのを
違う意味で内心ドキドキしながら歩いていました。何かがあるような独特の感覚も無く、肝試しは
怖がり始めた部員達の提案によって途中中止となったのですが…。
キャンプ地に、私と友人の女の子の二人が先頭になって戻ったのです。後ろの方には、部員が
賑やかに「怖かったね」などと冗談混じりに話しているのが聞こえました。
ところが、先程まで焚き火を焚いていた場所に、既に先客が居ました。
部員の一人で同年代の男子、Aが俯いた感じで石の上に座っていました。
私は『そんな筈はないよな』と反射的に考えました。何しろ、ついさっき彼を追い抜かして、先に
ここに私達二人が戻ってきた筈なのですから。
それも、いつもと違って暗く沈んだような雰囲気を醸し出していることに違和感も感じました。
「あれ、Aってさっきまで後ろに居たよね?」と私は隣の女の子に敢えて明るく聞いてみました。
「うん。おかしいね…?」と彼女も不思議そうな声で返答しました。「だよなぁ」と言いながら私は
後ろを振り向いて確認の為に大声を上げました。
「なぁ〜、そっちにA居るか〜?」「おう、俺はここに居るが何だ〜?」
それは紛れもなくAの声でした。ほんの数秒のやり取りだったと思います。
――じゃあ、ここに座ってる奴は一体誰なんだ?
薄気味悪さを感じて再び振り返ると、そこには誰も居ませんでした。
「あれ…、さっきまでいたよな?」「うん。居たよね」
おかしいなぁ、と戻ってきた部員に伝えたところ、その場はちょっとしたパニックになりました。
ここからは後日談なのですが。
この場所では、こういうことがよくあるそうです。つまり、誰かが「増えている」ということが。
中には会話を交わしたり、ありえない場所に迷い込ませようとする者もいるそうです。
実際、一度行ったことがある筈の場所に二度と辿り着けない、という体験も何度もありました。
(以前は確かに行けた筈なのに、道が途切れていたりなど)
北海道の支笏湖に足を運ぶ際は気をつけて下さい。
貴方の隣にいる人が本物であるとは限りませんので。