大規模な住宅団地の後ろに有る山で、
ハイキングコースからかなり離れたところで茸を獲っていた時のこと。
ふいに前方の薮が激しくざわめいたので、
獣かと護身用の棒を握りしめその場所を見据えると、
白い影が薮を掻きわけ現われた。
見ればなんと全裸の女。
腰を抜かさんばかりに驚いたが、
相手も小さくあっと声を出しただけで凍り付いている。
その様子を見てこれは怪異ではなく、生身の人間がそこに居るのだと判った。
両足にスニーカーだけ履いている、二十歳になるかならないかの少女だった。
私が腰を抜かした姿勢のまま動かずに話し掛けたのがよかったのか
少女はわずかに落ち着き、観念もしたようで少しだけ事情を語った。
極度に内気な性格から友達と共有することも出来ず、勿論解消させる相手も居ない、
自分のエッチでナルシスティックな衝動を、自らの裸体を屋外の空気に晒すこと、
誰も来ないはずの林の奥を全裸で歩き回ること、そんな自分自身に萌えることで
満足させようと度々このようにしてきたらしい、
と理解した。
私の方から先にその場を去ったが、なかば冗談で少し離れた位置から
来週また来るがカメラを持ってきたら写真を撮ってあげる。
こんなことを言った私が怖かった。
次の週、前回と同じポイントで茸を獲っていると、
その少女は本当に現われた、カメラを持って。
お互いある程度の間隔をおいて立ちすくむようにしている、
少女はおそらく学校指定であろうジャージの上下姿だった。
準備をする、と微かに喋るとカメラを地面に置き薮を掻きわけ姿を消した。
そのカメラを手に採り呆然としていると、
再び薮が大きくざわめき、変身したその少女が現われた。
まさに変身だった。
ファンタジーアニメやゲームによく出てくる女戦士の格好。
半裸というよりももっと露出の多い、紐のような胸当てとボトムに
身体を隠すには全く無意味な装飾品で構成された衣装を見に付けていた。
少女は隠れコスプレマニアだった。
しかし多用されるフリル、恥丘を完全に覆い隠すことも出来ない程浅いボトム。
更に両脚の間に有るべき布が無く、代わりにほんの小さな傘、
というか皿ネジを大きくした物の柄を差し込んでいた。
自分の感性のみでデザインしたのであろう、
男の私の萌のポイントを微妙に外す具合が怖かった。