ドーンオブザデットを数日後レンタルする!購入しない!何故なら今、余裕がないから!!
テンプレの「ネタ例」ってどうなのかな?読んでる分には想像をかき立てられて「ネタ例」だけでも結構楽しめたけれど
実際に作る側の方からしたら、あって困ることはないんだろうか?
ところで上の方で作者さんたちが恐怖について話されてますが、その通りだと思いますね。
ハリウッド、欧州的ホラーは、身体の生理的なモノを利用してる恐怖感ですね。
音でビビらし、イキナリ出てきて身体を固まらせる。刹那的ですが、純粋にエンターテイメントとして楽しめます。
あれをもっと心理的に、人間の黒い影の面を掘り起こす形で突き詰めていったのが、日本的な怖さでしょうか。
観た後の後味なんかは、前者が「あー怖かった、面白かった!」なのに対し後者は人によっては嫌悪までしてしまいますからね。
もちろん、実際に起こったら…と考える事で、恐怖を再び楽しませてくれるのは前者も同じなのですが。
で、長々と書いちゃいましたが、ここで書かれているSSって、つまりはハリウッドホラーの日本化ですよね。
ハリウッドホラーを舞台に、日本人の感性が踊るわけです。(もちろん、過去日本人が書いたハリウッドホラーはありますが、最近はどうも)
つきましては作者の皆様、嫌悪するほどの恐怖と最悪の読後感を、エンターテイメント性を交えつつ、これからも書き続けていってください。
復活したよ!職人さん降臨キボン!
名無しのほうもこういうのが読みたいとか積極的にリクしたら?
書く方もテーマがあったほうがやりやすい場合もあるだろうしね。
732 :
学校、夜:04/11/06 18:32:28 ID:uVxb/Ba0
狭い廊下が暗幕でさらに狭く区切られている。
ところどころ電灯の届かない小区域が出来ていて、さながら騙し絵の迷宮に迷い込みでもしたかのようだ。
暗闇に目を凝らすと腐りかけた顔や割れた頭蓋骨が転がっているのがわかる。
反面を赤黒く腫らした顔にウィンクをして、ボクは暗幕をさらにめくった。そろそろ目的の場所のはずだ。
明るい。両脇に積み上げられたイスで通路は通りにくいが、足元がはっきりと見えるため問題はない。
両脇には布を巻きつけたイスが積み上げられている。通路の終わりにはドアがあり、『出口』とかかれている。
最後の暗幕をくぐりぬけようとした時、視界の片隅に何かが浮かんだような気がした。
――何もない。ただの布を巻きつけたイスだけだ。
気のせいかと安堵し、そのまま通路を進んで出口のドアへと向かう。
ちりん、と鈴の音。
足元を見ると糸が張ってあり、それにつけられた鈴がなったようだ。
足を上げ、再度下ろす。
ちりん、ちりん。
肩をすくめてドアへと歩こうとした時だった。
「――ッ!!」
あまりの恐怖に悲鳴すら出ない。
通路の片側から無数の腕が突き出していた。
白、赤、紫とまだらに蝕まれた腕、腕、腕腕、腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕
腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕
腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕!!
世界が揺れて傾くのを感じながら、ボクの意識は遠のいていった。
733 :
保健室、夜:04/11/06 18:33:25 ID:uVxb/Ba0
額に冷たく柔らかなものがふれる。その心地よさに目を覚ました。
ベージュの天井と周囲を囲む白布が、ここが保健室であることを教えてくれた。
「起きた?」
かすかに笑いを含んだ問いを、額の指の主が発する。
「うん」
ボクの答えの何がおかしかったのだろうか、彼女はさらに微笑を深くして額から指を離した。
「志保、今何時?」
ボクは時計というものを身に付けていない。だから時間を知りたい時には人に聞く。
「アンタが気絶してから15分。お目覚めの気分はいかが、すりーぴんぐびゅーてぃー?」
「気分快調。ご心配なく、Prince Phillip」
軽口を返して起き上がる。
ベッド脇に揃えられた上靴を履こうとして、軽いめまいで傍らに片手をついた。
「アンタ、本当に大丈夫なの?」
志保が起き上がろうとしたボクの肩に手をかけると、体重をかけてベッドの上に押し戻す。抵抗するのも面倒だったので、そのまま押し倒された。
「……王子様、むりやり襲おうなんて品が無くてよ」
「……お姫様、誘っておいて覚悟がたりないのでは」
瞬き三回分の時間、室内を天使が通り抜ける。
『っぷ。あはははは』
声をそろえて笑い出す。
ひとしきり笑った後で、寝そべったまま彼女はポツリとつぶやいた。
「ほんと、ごめんね。森山のやつがどうしても本番どおり腕で脅かすってきかなくて」
「いいよ。志保は反対してくれたんだろ。お前が謝ることじゃない」
申し訳なさそうな彼女に肩をすくめながら答える。
「でもさ、どうして腕が苦手なの。このまえ見たDVDでも、壁から腕が出てくるところだけ見ないようにしてたよね」
最近デジタルリマスター化された古いホラー映画をいっしょに見たときのことを言っているのだろう。
「話しても信じてもらえないような馬鹿な話だよ。それでも聞いてくれるのなら話すけど」
「腕」はきらいだ。隙間から這い出る腕。それは腐った屍人の腕を思い出させる。
かつてのクラスメートたちが一人残った裏切り者へと伸ばす腕を。
「腕」に襲われるようになったのは事故のあと、入院した病院で見かけたときからだ。
その年は台風の当たり年だった。年の後半に台風が上陸するたびに、記録が更新されていった。
授業の一環で山間をバスでの移動中、横合いの斜面から泥水が噴出しているのが気にはなっていた。
気にはなったが、わざわざ場の空気をしらけさせてまで言うほどでもないと思っていた。
今思うと土砂崩れの前兆だと言っておくべきだったのかもしれない。
『今になって思えば。あとから考えると。あの時こうしていれば』
無駄だ。それはもう終わってしまったことなんだ。後悔することで自己弁護をしてるだけだ。
崩れ落ちる斜面。流れ出る土石流。低くもろいガードレール。横合いからの土砂崩れをどうやって防げというのだ。
引率の教師や運転手に注意する?
一介の生徒の意見で予定されている行事を取りやめて引き返す――わけもなかった。
自然災害ではあるけれど、起こるべくして起こった必然と言うわけだ。
気に病むこともない。周りの友達に注意はした。聞くか聞かないかはそいつらの問題だ。ボクの手から離れている。
手付かずのまま放置された貧弱な国有林では、幾度と無く訪れる台風がもたらす豪雨に耐え切れなかった。
あっという間に斜面は崩れ落ち、流れ出た土津波がバスを道路から突き落とす。
転がるバスの中、どこかに頭をぶつけたのだろう。ボクは横倒しになったのを感じた直後に意識を失った。
どれだけの時間がたったのだろうか。
右腕の激痛に目を覚ました時、車内は沈黙と暗黒と甘ったるく錆びた匂いに包まれていた。
だれかが左肩にもたれかかっているようだけれど、問いかけたのに返事がない。
携帯を取り出し時間を確認しようと開く。液晶からのほのかな灯りが周囲を、ボクの右肩にもたれかかっているものを照らし出す。
茶色く細い毛先。根元はワックスでも塗ったかのように黒い光沢を帯びている。光沢の正体はすぐにわかった。
視線を外したいのにあまりの恐怖に固着してしまい車内の惨状全てが瞳に焼きつく。
割れた額。青黒く染まった顔。飛び出て白くにごった眼球。歪んで曲がりきった鼻。開いたままの口。唇に突き刺さった歯の破片。
友達だった女の子は完全にモノになっていた。その子だけじゃない。恐怖が首を無理やりに回転させる。
通路に折り重なった塊。座席のあちこちに見え隠れする手足。体は前を向いているのに、顔を後部座席へと向けた教師。
「ひ、ひっ」
恐怖に失禁しながら、寄りかかっているモノを突き飛ばす。拍子で揺れた光が、膝の上の何か小さなものを照らし出した。
茶色と濁った赤色の混じったものの正体はもたれかかっていた彼女の舌だった。ボクはそれを理解すると同時に再度気絶した。
次に目を覚ましたのは病室のベッドの上だった。
動かない右腕に視線をやるとギブスで固められていた。
体のあちこちにも固定されたような感触があり、顔には何か貼られていた。
見渡したところ個室のようだった。
窓から差し込む灯りはかすかに赤みを帯びており、時計も夕暮れ時に指しかかろうとしている。
何が起きたのかわからなかったが、とりあえず左腕のそばにスイッチがあったので押してみた。
すぐにと言うわけでもないが、さほど待たされずに看護士が部屋にきた。
あとは忙しく面倒で取り立てて語るほどでもないことが続いた。
医者と看護士は笑顔を見せ、母親は泣いて喜んでいた。
事故のことを聞いたが、皆一様に曖昧な笑みを浮かべて『それは明日になってから』とはぐらかすばかりだった。
右上腕、右肋骨、右足首の骨折。顔もひどくぶつけていたらしい。それが医者の説明だった。
とりあえず一通り自分のことができるのは助かった。トイレの世話をしてもらったら立ち直れそうにない。
渋る母親を「僕は大丈夫だから。母さんも疲れているんだから休まないと。また明日来てよ」と家に返したのもその為だ。
居たら風呂からトイレからすべて寝たままやらされるだろう。
『一人でトイレにいけるの? 何かあったら看護婦さんに言うのよ。看護婦さん、この子のことよろしくお願いします』
あきれるほど繰り返して、面会時間をたっぷり超過したところで母親はようやく帰っていった。
テレビも新聞もパソコンも、もちろん携帯もない状態では起きているのも馬鹿らしく、その日はすぐ寝ることにした。
だが今まで寝入っていたのにすぐに寝付けるはずもない。
消灯時間を二時間ほど過ぎて、尿意を感じたボクはトイレに車椅子で向かった。リノリウムに緑の光が反射する。
ナースセンター前を通る時は、気づかれないようにこっそりと身をかがめて突破した。
トイレは廊下よりも床が低く入口の段差で苦労したが、無事な左腕の力を振り絞ってなんとかこなすことが出来た。
用を足す前になんとなくうす寒いものを感じて個室の鍵を確かめる。どの扉も鍵はかかっていない。
用を終えてトイレから出ようとしたところ、今度は登りで先ほどのように勢いをつければ何とかなるようなものではなかった。
何度か試したがどうにも乗り越えられず、個室内のブザーで看護士を呼んで助けてもらおうとバックしようとした時だった。
予想以上の勢いで車イスが後方に滑った。
恐怖に駆られて回転しようとする車輪を握り締めるが、片手では止めきれない。
右腕に力をこめるが、骨折の痛みでろくな力が出ない。
事故で弱った体で無駄な足掻きを続けるが、徐々に個室へと引きずりこまれていく。
個室にはだれも居ないはずだ。さっき自分の目で確かめた。
それなのにだれかが自分を引きずり込もうとしている。
もちろん心当たりなんてない。
物音一つ立てずに、何時繰るとも知れない相手を待ち続ける「だれか」になんて心当たりがあるはずがない。
となればあとは変質者ぐらいしかいないだろう。しかもこの腕力からすれば当然女性ではない。
必死の抵抗の中、おぞましい想像が身の毛を逆立たせる。
どれだけ無駄にあがいたのだろうか。車イスの後ろ半分は既に個室へと引きずられている。
何者とも知れない相手に狭隘な空間へと閉じ込められる。
それだけはなんとしても避けなくてはならない。
ボクは左腕で後退を食い止めながら残る右腕で個室の壁をつかみ、それを支えにして車イスから身を前方へと投げ出した。
トイレの床を這いずり、何とか逃げ出そうとする。恐怖が痛みを忘れさせ、身をもがかせる。
だが脱出劇はそこで終幕を告げられてしまった。
折れた右足首を何者かが握り締め、再度個室へと引きずり込もうとする。
抵抗は無駄だった。トイレの床に段差は無く、どこにも指を引っ掛ける場所なんてない。
一気に個室へと滑っていく。
こうなれば無事な足で蹴り飛ばしてやろう。そう決心して身をよじり個室へと顔を向けた。
足首を掴む腕。車イスを引きずり込んでいる腕、腕、腕……。それだけだ。他には何もない。だれもいない。
そこには暗闇から伸ばされた赤黒く汚れた腕しかなかった。
「と、言うわけで腕は苦手なんだ」
予想に外れて真剣な顔で話を聞いてくれた彼女にそういって思い出話を締めくくった。
別段笑い飛ばされてもかまわなかった。こんな話を信じられるはずもない。
「どうやって、その、そいつらから逃げ出したの」
少し間をおいてから、彼女は言葉を選ぶかのように慎重にゆっくりと問い返す。
「物音に気がついた見回りの看護士さんが、引きずり込まれそうになっているボクを見つけてくれてね。『だれかいるの?』って声をかけられた瞬間に腕は消えて、それで助かった」
「麻酔とかで幻覚を見たってことはないの」
「その一回だけなら、そう思えたんだけどね。それからもいろいろな場所で腕が出てくるようになっちゃった。それに捉まれた足首にはしっかりと手の形に青痣が出来ていたよ。車イスにも何人もの手の跡が残っていたしね」
肩をすくめて苦い笑みを浮かべる。
志保はなんと言っていいのかわからないのだろう、怪訝そうでそれでいて曖昧な表情をむけて困った風だ。
ボクがこんな冗談を言う人間ではないと言うことと、実際に腕を見て気絶までしていることが話に信憑性を持たせている。
でも現実には有り得ない話であることも事実だ。
「さ、教室に戻ろう。大丈夫だって。隙間からしかあいつらは手を出してこない。それに襲われるのは一人になったときだけだし」
彼女の手を握り精一杯の笑みで元気付ける。
暗い雰囲気も握り締めた手から伝わるぬくもりの前では無力だ。
保健室を出て扉を閉める瞬間、先ほどまで寝ていたベッドに目を向ける。
予想通り無数の手がベッドの下から突き出ていた。
ボクは腕に向かって舌を出して、保健室のドアをぴしゃりと閉めてやった。
尻切れトンボ。
続きは明々後日ぐらいだと思う。
お、おぉぉぉ〜〜
一気に読んでしまいました。
怖くてのめりこめる文章を読むと部屋がパンパン鳴るんですが、あなたの作品でもでした。
次回も楽しみにしとります!
「ZOMBIE 〜ONE OF THE DEAD〜」(15)
反射的に引っ込めた鼻の先から、歯がガチンッと閉まる音が聞こえた。
「ひゃあああっ・・・!!」
わたしは間一髪で、女子トイレの扉を閉めた。
アケミ!?
アレは、アケミ!?
ドンッ!とドアに体当たりしてくる。
わたしは必死でドアにカラダを押し付け、開かないようにする。
カラダが震えて、扉を押さえる力が出てこない。
ドンッ!とまたぶつかってきた。
アケミ・・・
そんな、アレがアケミだなんて・・・
彼女は首を傾げるような格好で、ドアの隙間から覗き込んでいた。
白い膜のようなものに包まれた、焦点の定まらない虚ろな瞳で、わたしを探していた。
アレは、人間の眼じゃない。
唾液がいっぱい溜まっていたのか、ニチャッと粘っこい糸を引きながら、口を大きく
開け、噛み付こうとしていた。
わたしを・・・食べるつもりだったの!?
ウソよ。
こんなのウソよ。
ウソ、ウソ、ウソ、ウソ・・・
わたしは、変わり果てたアケミの姿が悲しくて、声を上げて泣いた。
アケミはなおもドアをこじ開けようと、ものすごい力でカラダを押しつけてくる。
ドアがやや開くと、そこに指を強引に入れてきた。
「アケミ!!やめてよ、アケミ!!やめてええええ・・・!!」
わたしの涙は、醜い姿で甦ったアケミに対する憐れみではなく、いつのまにか恐怖に
よるものに変わっていた。
彼女はやめるどころか、ますます力を込めていく。
こじ開けられつつあるドアの隙間から、焦点の定まらない眼が覗き込んでくる。
わたしを認識しているのか、よだれを出しながら紅い舌を踊らせていた。
『グホォ・・・オォオホォオォ・・・』
人為らざる声を出す口から、生臭い息が吐き出された。
『ヒヒヒッ・・・グゲッ・・・ヒイイイッ・・・ウヒャッ・・・イヒャヒィ・・・』
その声にはもはや、知能の欠片すら含まれていなかった。
「いやああああっ・・・!!」
自分の憧れていたヒトが、好きだったヒトが、醜い怪物に生まれ変わってしまったことに
ショックを受け、恐ろしさのあまり、わたしはパニックに陥った。
そのため愚かにも、ドアからカラダを離してしまい、背後の壁際にへたり込んだ。
瞬間、ドアが勢いよく開き、アケミが入ってきた。
が、急に抵抗がなくなったためか、ドアの脇にいたわたしの横をそのまま走り抜け、
そして血に濡れたタイルに足を滑らせて転んだ。
ビタ〜〜ンッという豪快な音とともに、派手に床を滑っていくアケミの姿を見て、
わたしは笑い声を立てた。
彼女が起き上がり、驚いた?と微笑みながら語りかけてくるような気がしたのだ。
しかし奇妙な呻き声を出し、振り向いた彼女は、やはりわたしの知っている、いつもの
アケミではなかった。
743 :
東京くだん ◆pxvKLXYkO6 :04/11/07 23:30:01 ID:/yNOuwdd
アケミは全身、血にまみれていた。
制服をすべて脱がされ、丸裸にされている。
ふたつの乳房は無残にも噛み千切られ、白い骨が赤黒い肉の間から、見え隠れしていた。
そして股間の大切な部分も同じように、ざっくりと齧り取られている。
オンナとしての証が、ことごとく失われていた。
こんな屈辱的な仕打ちをされた彼女は、しかしそれらを隠すことも許されず、恐ろしく
醜い姿で、校内を徘徊しているのだった。
あの知的で、美しかった大きな瞳は白く濁り、スラリと細長い首筋は、片側の肉と骨を
失ったためか、首をかしげた、というよりも、不自然な方向へと捻じ曲がっている。
あんなに綺麗な女の子だったのに・・・
彼女は呻き声を上げながら、ゆっくりと立ち上がっていく。
逃げよう・・・早くここから、逃げなければ・・・逃げなきゃ・・・逃げ・・・逃げな・・・
下半身をガクガクさせながら、女子トイレを脱出したわたしは、向かいの職員室に行く。
だが、その扉は固く閉じられていた。
先生たちが、向こう側から押さえつけているのだ。
「開けてください!・・・開けて!・・・ねぇ、開けてぇ!開けてよぉ!!」
半狂乱のわたしは懸命にドアを開けようとするが、ビクともしない。
ドアを開けることを諦めたわたしは、ドンドンッと激しく叩いて叫んだ。
「・・・助けて!助けてよ、先生!!・・・助けてええぇぇぇ!!」
泣き叫ぶわたしに、男性教師たちは怒鳴るように言った。
「ここはダメだ!早く階段から逃げろ!!」
女性教師たちのヒステリックな泣き声がする。
「先生!!入れて!!先生!!怖いよ!!助けて!!怖い、怖いよぉぉぉ!!」
職員室のなかでは、なにやら口論が始まったようだが、扉が開く気配はなかった。
やがて、キイイッ・・・と女子トイレのドアが、開く音が聞こえた。
ビクッとして振り向くと、アケミがヨタヨタと出てくるではないか。
『・・・ウォモォゲクボ・・・ヒャンナイ・・・オォ・・・イヒ・・・ヒョホハハハ・・・』
寝ぼけたような口調の、わけの判らない言葉を出すと、アケミは濁った瞳を瞬きもせず、
口をパクパクさせながら、わたしに向かって歩いてくる。
歩くといっても、早歩きといった感じで、けっこう速い。
だがその歩き方は、奇妙なものだった。
首をかしげているため、上半身は全体的に斜めになっており、わたしを抱きしめるつもり
なのか、両手を前に突き出し、指をひっきりなしに蠢かせていた。
足を一歩前に踏み出すたび、カラダが痙攣するかのごとく斜めに跳ね上がる。
ボキボキッ、ミシミシッという、痛そうな亀裂音が聞こえた。
死後硬直という現象に逆らって、強引に動かしているせいだ。
腰を左右に大きく振りつつ、ガニマタ気味の股間から紅いものを垂れ流している。
まだ体内に残っている、血の塊だった。
「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ・・・」
カラダの底から湧き上がってくる嫌悪感で、全身が総毛立っていた。
アレは、アケミなんかじゃない。
ちがう。
アケミじゃない。
そう自分に言い聞かせながら、わたしは震える足を動かし、その場から逃げた。
階段は、廊下の両端にひとつずつあった。
一番近い階段は、職員室とトイレの向こう側にある。
そこへ行くには、化け物になってしまったアケミのわきを、すり抜けなければならない。
それは嫌だった。
となると、反対側の廊下の突き当たりにある、もうひとつの階段まで行くしかなかった。
現場検証のためにとでも考えていたのか、廊下は血に濡れたままになっている。
アケミが漏らしている血のせいか、さっきよりもビチャビチャだった。
わたしは生臭い匂いのする道を、一生懸命に走った。
上履きと靴下は、職員室にいるときに、バケツに汲んだ水で英語教師が洗ってくれた
ので、いまのわたしは、裸足にスリッパという状態だ。
床の材質のせいか、乾いているように見えた血痕は、意外と滑りやすかった。
薄い膜を張った血の表面を踏むと、そのなかからドロッとしたものが押し出される。
粘り気のある血の塊のせいで、わたしはまるで初めてアイススケートをしているヒトの
ように、廊下を何度も滑って転んだ。
足の裏が汗でじっとりと濡れ、さらに下半身が震えていたから、なおさら足がもつれて
しまったのだろう。
床にへばりつくたびに、後ろを見る。
アケミに追いつかれそうで、怖くて見ずにはいられなかったのだ。
そして彼女は、わたしの予想通り、すぐ後ろにまで迫ってきていた。
自分では走っているつもりでも、実際には腰が抜けたようになっているので、アケミとの
差はたいして縮まっていなかったようだ。
わたしは転んだ体勢から、すばやく四つん這いになり、あわわっと間抜けな悲鳴を上げ
ながら、ひたすら前へと進む。
途中でなんとか立ち上がるが、何歩も進まないうちに、また転ぶ。
その繰り返し。
まるでお笑いコントのようだが、わたしは必死だった。
スリッパは、いつの間にか脱げていた。
鼻を刺激する血の匂いが、全身にまとわりついてくる。
何度か転びながら後ろを振り返っていると、職員室から顔を覗かせている教師たちと
眼が合ってしまった。
転びまくっている自分が恥ずかしくて、鼻水を垂らしながら、エヘヘッと照れ笑いをする。
教師たちもそれにつられて、にこやかに笑った。
そして急に真顔になるや否や、バツが悪そうに職員室のドアを閉めてしまった。
わたしは泣き笑いの表情で、今度はアケミを見る。
彼女は、ハアア〜〜ッ、フウウ〜〜ッ、とよだれを垂らしながら追いかけてくる。
『キョウコ、元気ないけど、なんかあったの?』
『ねぇ、今日の帰り、ちょっと買い物にでも行かない?』
『あはははっ、キョウコったらさあ、カラオケでいつもさあ・・・』
アケミと過ごしてきた日々が、走馬灯のように頭のなかを駆け巡っている。
それは、もうずっと昔の、懐かしい想い出のような気がした。
乳房を失い、大切なところまで噛み千切られた彼女はいま、わたしの真後ろにいる。
濁った眼をした彼女は、ガニマタで歩きながら、わたしを食べようとしていた。
これは夢?
そうよ、これは夢なんだわ。
だってこんなこと、本当にあるはずがないじゃないの。
眼が覚めたらベッドのなかにいて、ホッとしながらエミにおはようメールを送って・・・
そうだ、学校のみんなにも、この怖い夢の話をしてやろうっと。
アケミってば、自分がバケモノにされちゃって、怒っちゃったりして。
ふふふっ、早く眼が覚めないかなあ・・・
・・・ああ・・・夢ならば・・・これが本当に夢ならば、早く覚めてほしい。
お願いです、神様。
こんな怖い話は、全部夢にしてください。
・・・怖くて、怖くて、さっきから気が狂いそうなんです・・・
(・・・来週に続く)
現在のスレタイは「zombie」「ゾンビ」と、検索には便利だけど、
なにをやっているのか判らないスレなので、「小説」「創作」という
キーワードを入れてみたらどうだろうか?
【小説】zombie ゾンビその10【創作】
まあ、スレちがいとか言われて、創作文芸板へ飛ばされてしまう
危険性もあるが。
>>739さん
深夜の建物は怖いよな。
病院、学校、会社、無人の駅のホーム。
人間は知能が高いから、闇に空想の敵を生み出して怯えるけど、
自分たちを守る建物にすら、恐怖の片鱗を見つけ出してしまうなんて
業が深い動物ともいえる。
別の見方をすると、世の中には闇に生きる異形の生き物が本当に存在していて、
それを本能的に感知しているのかもね。
ううっ、今度はsage機能がOFFになってるじゃんか。
過去ログあぼんといい、コテ記憶機能OFFといい、なんか専ブラの調子が変だな。
>転びまくっている自分が恥ずかしくて、鼻水を垂らしながら、エヘヘッと照れ笑いをする。
なんかこの辺がもの凄く可哀想な感じでたまらんなぁ
誰か助けてやって欲しいが、自分の命が掛かると難しいのかな
キョウコまで死んで欲しくないな…それにしても、くだんさんは良いところで区切りますね
ここ名無し何匹くらいが読んでんの?
70%くらい自演なようにも見えるんだが実際どうなんだおまえ。
読んでるけどレスしてないよ
自演じゃないのが分かるのは作家さんだけだな。
俺は偶に感想書いてるよ。
自演だったらもっとID変えていっぱい感想つけるんじゃないかな?
>>738の続きは明日には貼れそう。
でも現在477kbだから新スレが立たないとマズいかな?
学際準備用の教室に戻ったボクと志保を迎える雰囲気はひどく居心地の悪いものだった。
一瞬だけ向けられた視線は返事を返す暇も無くあちらこちらへと霧散し、あまりの様子に言葉を発する機を逃してしまった。
作業を手伝おうと近づくが、歩み寄った相手はみな一様に黙々と手元を忙しく動かし始めてこちらの相手をしようとしない。
やりすぎたことへの後悔と反省ではない。忌々しげな敵意が感じられる。
何があったのか問い掛けようにもだれも顔を合わそうとせず、そのくせ正面以外からは痛みすら感じるような視線で射抜いてくる。
ボクは志保を手近な女子グループのほうへと何気なく押しやり、教室の空気を変えた張本人へと足を向けた。
何をすると言うことも無く壁際に積み上げた机に腰をかけ、そいつは蛇のような嘲笑を浮かべている。
「森山クン、ずいぶんと機嫌がいいみたいだね。いつも以上に薄ら笑いが似合ってるよ」
先ほどの腕騒ぎの首謀者で日頃から意味なく突っかかってくるその男は、ますます白痴じみた表情で楽しそうに答えた。
「あんなのでびびって気絶したお前がおかしくてな。すげえ顔青くして倒れやがって。今時幼稚園児でもああはならねーよな」
予想通りの悪罵に怒りが込み上げる。こちらの様子に興がそそられたのかさらに森山は悪意を垂れ流し続ける。
「大げさな演技かまして、忙しい中一人だけ保健室で休めて羨ましいぜ。下手すりゃ出し物が潰れてたんだぜ?
必死に準備しているこっちは説教されてて、お前はぐっすりとご休憩かよ。時間もあんまねえってのによ」
――そういう筋書きか。大方教師の巡回時間にあわせて気絶するよう仕向けたのだろう。
お化け屋敷の準備の遅れで苛ついているところに、タイミング合わせで中身を知っているのに気絶して休む男子生徒。
傍からはサボりか嫌がらせにしか見えない。しかも夜間仕事が増えて気が立っている教師からの説教つきだ。
ボクの沈黙を臆しているとでも取ったのか、森山は赤黒いメーキャップを残したままの両腕を見せ付けるようにして肩をすくめる。
こちらは軽く細めた瞳に侮蔑をこめてただ黙っていた。
「少しは謝ったらどうなんだよ、「死神くん」? だいたいよぉ、頭のおかしなやつが学校に来るんじゃね―よ」
弄うように右手の甲で頬を叩く。それでも反応しないのに安心したのだろう。ついに目的の言葉を口にした。
「お前さー仲間見殺しにして、そいつらの幽霊が見えるって言い出して入院させられてたんだろ。前の学校それで辞めさせられて
こっちに逃げてきたんだよな。周りを身代わりにして自分ひとりだけ生き延びたなんて気持ち悪すぎんだよ。知ってんだぜ。
病院のトイレで幽霊見て小便漏らしたんだって? 腕に襲われたとか言って泣きがはいってたって聞いたぜ」
「腕が怖い? 面白すぎんぞ、びびりが。毎朝自分の腕見て漏らしてんでちゅか、ぼ〜く〜ちゃん?」
そこまで聞けば十分だ。その間抜け面は一生分拝ませてもらった。これ以上耐える理由は無い。
ボクは得意満面の森山に微笑みかけ先ほどのやつと同じように肩をすくめる。と同時に、その喉に右腕を伸ばし吊上げてやった。
あの日から鍛錬を欠かしたことは無かった。あらゆる隙間から突き出す腕たちをねじ伏せるにはやつら以上の腕力が必要だった。
教室が一瞬前までと全く異なる沈黙に包まれる。敵意と薄気味悪さの混じった視線は恐怖と驚愕に染め直されていた。
ボクは床の上に森山を投げ捨て、間髪いれずその背を踏みつけることで逃亡と無駄な口上をさえぎる。
「どこで聞いたかは知らないけどずいぶんと物知りだね。でもいくつか間違えているようだから本人の口から説明してあげよう」
我ながら随分と冷静な口調だ。突き抜けた怒りは逆に精神を冷ますのかもしれない。
背に乗せた片足に力をこめながら、教室を見渡すとみな凍りついたようにこちらを凝視している。志保とは視線を合わせなかった。
「入院したのは怪我が原因。脳の検査で少し延びはしたけどね。転校したのは前の学校でもお前みたいな馬鹿がしつこかったからだ。
幻覚は運良く用を済ませてから見たから、この年で漏らさずにすんだよ。それと腕の幽霊についてだけどね。
確かに幻覚かもしれないね。腕そのものはボクしか見ていないし、痣や手の痕なんて幾らでも偽造できる」
傍らに立てかけてあったのこぎりを拾い、もがく守山の肩に押し当てる。
「下手に動くと痛いと思うよ。とりあえずおとなしくしていた方がいいと思うな。でも、まあ、痛いのはそっちだからどうでもいいか。
うん、利口だね。君はおとなしくしていた方が幸せになれるタイプだ。いつもこう素直なら助かる」
押し当てられた刃物の感触に暴れる同級生に、体重をかけてしゃがみながら囁く。
「話を戻そう。ボクが見続けている『腕』は文字通り腕しかなくてね。体がついてる状態じゃ怖くも何とも無い。
弱点を見つけて有頂天になっていたところ悪いと思う。でもボクは隙間から這い出てくる腕たちが怖いんだ。
だから、お詫びというほどのことじゃないけど、ボクが気絶するほど怖がっている姿の腕にしてあげるよ」
乗せたままの右足で動きを封じ。
左腕の肩関節を極めながらのこぎりを上腕部にそえて。
――挽いた。
以上です。
すーぷらったぁ、すぷらったぁ。
鋭くない刃物はホラーの基本です。錆びた刃を見せつけて長引く苦痛あたりを想像させるのは基本です。
順調に主人公のボクが壊れていってます。書いているほうは不思議です。
次のシーンはとうとう『腕』に襲われる山場です。
もちろん腕だけゾンビだけじゃなく、まるごとゾンビも出す予定ですのでお楽しみに。
そういえば新スレはどうしましょう?
巡査物語さん、サンゲリアさんカムバックギボン
そういや少女のやつとか魔術のやつはどうしたんだ
「ボク」かっこいいな
一度、来た道を戻ったオレは、岩槻のインターから高速道路にダンプを進めたのよ。・・・何でも学者先生は、
T大の医科学研究所とかに立てこもってるらしくて、場所は品川の白銀台なんだとよ。
なにしろ下道は、放置された自動車やゾンビ野郎で一杯だろうし、ここからなら東北道から首都高に乗っかってくのが
一番よ。
ホントは自衛隊の奴等のヘリコプター使って、空から救助して貰うのが良いんだろうが、あっちこっちが、こんな状況じゃ、
奴等も手が廻らねぇだろうなぁ。
・・・くよくよ考えねぇで、手っ取り早くやれそうなことを、やっちまうのがオレ様の主義だから、誰も居ねぇ浦和の料金所を
突破して高速をどんどん進んでった。
そうは言っても、野郎どもはどこにでも現れる。・・・大破した車の影やら、ぶっ壊れた防音壁の隙間なんかから、
たまぁに何匹か、お客さんが寄って来やがるのよ。
でもよ、オレが朝っぱらに苦労して取り付けたダンプのバンパーのH鋼材は無駄じゃ無ぇぜ。・・・跳ね飛ばされた奴は、
半身不随、鋼材に引っかかって落っこちネェ奴は、止まってる乗用車とのサンドイッチで上下分断にしてやった。
高架の高速から見える景色じゃ、生きてる奴等もかなり居るみてぇで、ビルの屋上から煙が上がったり、布にペンキで
「SOS」って書いてある垂れ幕を下げてる建物も見えた。
・・・助けてやりてぇのは山々なんだが、こちとら先を急ぐ身の上だから、何にもしちゃやれねぇ。まだ通じる無線で
所沢の奴等に、その場所を教えるのが精々よ。
自衛隊のヘリが、運良く通りかかってくれるまで、どうにか生き残ってりゃ良いんだが・・・。
首都高速も、最初のうちは障害物も少なくって結構距離も進んだんだが、都内に入った頃から道路を塞ぐ車が増えて
来やがった。
なにしろ高架2車線の首都高じゃ、車線をふさがれたら逃げ場も無ぇから、オレも用心してたんだが、遂に大渋滞に
填っちまった。・・・しかも、絶対動きそうもネェ渋滞車両の向こう側から、ゾンビ野郎がうろうろ近づいて来るから参ったぜ。
仕方なしにオレは、ダンプをバックさせながら、首都高の千住新橋のランプまで戻って行ったのよ。
・・・高速の入り口をバックしながら下って行ったのは初めてだったから、料金所のバリケードをぶっ壊しちまったが、
怒る奴はここらには居ねぇだろ。
でもよ、下道にもゾンビ野郎の団体さんが、待ちかまえて居やがるのよ。
いったい何匹のゾンビ野郎を引っ掛けたか判からねぇが、奴等の肉片にスリップしながらも、何とかそこを抜け出して
国道4号線に乗り入れた。
荒川に掛かる千住新橋の上には、自衛隊のトラックがひっくり返って止まってた。・・・戦闘でもあったんだろう。
爆破された車両の破片や、弾の貫通痕だらけの乗用車が歩道にまで乗り上げてる。
破片でも踏んでタイヤがパンクしたら詰まらねぇから、オレもダンプをゆっくり進めたんだが、自衛隊のヘルメットやら
背嚢袋まで落ちてるから、防戦側も相当な被害が出たんだろう。
奴等の機関銃でも落ちてりゃ使えると思ったんだが、そんなにうまい話は無かったぜ。
隅田川を渡って荒川区に入った頃には、正面からのお客さんも増えて来た。・・・野郎共のしつっこさには、
まったく嫌気が差して来る。・・・向かってくる奴は踏み潰しながらダンプを進めるんだが、奴等を踏み潰すたんびに、
嫌な音を立てて車体が跳ねるから、こっちも神経がどうにかなっちまいそうだ。
そうこうしてるうちに、台東区の下谷警察署の前あたりにやってきたんだが、ゾンビ野郎の大群が道一杯に広がって、
いよいよ危なくなってきた。
「こりゃ、やべぇ。」と思った瞬間、突然反対車線の道路が爆発しやがった。
野郎共が何匹か吹き飛ばされて、ダンプのフロントウインドウにまで奴等の千切れた破片が降ってきた。
次の瞬間、ダッダッダッとドラム缶を勢いよく引っぱたく音が聞こえてきたかと思うと、何匹かのゾンビ野郎が尻餅つくように
ひっくり返ったのよ。
オレにも判ったぜ。・・・ありゃあ、自動小銃ってやつの音だ。・・・どこかに生き残ってる奴が居るんだよ。
小銃の射撃音は、どうやら警察署の建物の方から聞こえてくるのよ。
オレは奴等に囲まれねぇようにダンプを運転しながら、誰とも知らねぇ連中にホーンで合図を送った。・・・警察署の
建物は下り車線にあるから、遠くて良く聞こえねぇんだが、人の怒鳴り声が聞こえてきたぜ。
やっぱり、生きてる奴が居るらしい。・・・そいつが噛まれてなければ、なお良いんだけどよ。
さぁて、何とか助けてやりてぇンだが、警察の前には何十匹ってゾンビ野郎がたむろしてるだろ。敷地の中だってどんだけ
居るか判からねぇ。・・・ダンプで突っ込んで行っても、出てこれる保証は無ぇよなぁ。
オレはゾンビ野郎がダンプに取り付かれねぇように注意しながら、警察署の前を通り過ぎるとき建物をよく見たんだが、
三階の窓が開いてて、自衛隊のヘルメット被った奴が手を振ってた。
オレもダンプの窓を細めに開けて、「助けてやるから、待ってろ。」って怒鳴ったんだが、向こうに聞こえたかどうかは
判らねぇな。
横に乗ってる姉ちゃんが、「どうやって助けるんだ。」って聞きやがったが、いい考えなんか浮かばねぇよ。・・・とにかく、
警察署の裏側に回り込もうと思って昭和通りを右折したのよ。
そんで、金杉通りの交差点を戻るつもりで、もう一回右折したら角のガソリンスタンドに使えそうなモンが見つかった。
そいつは黄色い貝殻マークを横腹にくっつけた大型のやつで、どうやらスタンドへ配送中に店員もろとも運転手が
どっかに行っちまったらしい。
そいつの後ろに掲示してある積載物の表示は「ガソリン」、「軽油」って書いてあるから、こいつは使えるってピンと来たのよ。
けどよ、あれを動かすにしても、またこっちのダンプを姉ちゃんに運転して貰わなきゃならねぇだろ。
それで、オレは姉ちゃんにオレの考えを伝えたんだが、「危険すぎてダメだ。」って言いやがる。・・・そのうえ、「オレには
自分と娘っ子を安全なところまで連れて行く義務が有るから、無茶するんじゃネェ。」とまで言い出しやがるから、
オレも頭に来て「お前ら、降りるか?。」って聞いてやったのよ。
本心じゃ無ぇのは判ってるだろうけど、それで何とか姉ちゃんも了解してくれたぜ。
久しぶりの書き込みだなぁ。
時間が無くて、なかなか書けねぇから、この次はスレが変わってるかもな。
んじゃまた。
乙です。そろそろ次ですかな
挽いちゃうのか?
すべては回り続けるチェーンだ。俺も、お前も、空も大地も、この世の中すべてが。
吹き付ける風にもチェーンを感じる。
狂ってしまったこの世の中も、やはりチェーンしている。
しぶきかかる血と脳漿をかわす。正面のゾンビから抜き放った相棒を男は胸に引き寄せた。
それは愛しげにため息をついて男の懐へ帰ってきたことを喜ぶ。だがまだ終わってはいない。
後ろに迫ったゾンビめがけて間髪いれず、体を反り返らせ反動のスピードを利用した相棒の刃を叩きつけた。
神業ともいえる流れるよう斜め上空からの斬戟。チェーンソー術式第3の型が華麗に決まった瞬間だった。
チェーンが通過してもまだゾンビは襲おうとしてきたが、少しずつ体が斜めにずれ始める。
最後まで自身がどうやって袈裟切りにされたのもわからないまま、そいつは崩れ落ちていった。
「・・・これで終わりか」カウボーイハットをあげて男は周囲を確認する。
ほぼ真上から重く乾いた光がのしかかる。灼熱地獄があるならばまさにここだ。
古い西部の町並みをかすかに残すゴーストタウンの広場には、およそ50体分のゾンビの肉片が転がっていた。
その凄惨な空虚にたたずむのは、くたびれきった革ジャンとジーンズの細身の男ただ一人だけ。
男の名はセス。昔はもっと長い名前だったが、いまではなんの意味もない。
両腰に小型のチェーンソーを下げ、ふしだらけの手に持つのは刃渡り1m以上の巨大なチェーンソー「相棒」だ。
厚手の革ジャンを着込んでいるにもかかわらず、そのハットの影からのぞく肌にはほとんど汗がみえない。
体中には血液や内臓の破片がこびりついていたが、セスは気にすることもなく無造作にぬぐった。
「・・・ひねったか」舌打ちして埃だらけのジーンズの左足をまくる。
その下に鈍く光る鉄の塊がみえる。頑丈そうなのが取柄だけの不恰好な義足だった。
セスは痛みをこらえ義足の位置を左右にひねってをなおすと、ザックからぬるいビールを取り出してのどに流し込もうとした。
と、背後から死に切れていない両腕のないゾンビが、セスの顔めがけて噛みかかる!
「!!」セスは瓶を上空へ投げ上げると、上体はそのままに両足を180度に開いてすばやく体を沈めていく。
チューンソー術式、拝復の猛弧の型。頭上を狙ってくる敵から見るとセスが突然消えたように写るだろう。
カウボーイハットを目深にかぶったまま、ハンドガードを中心に相棒をくるりと回してブレードの狙いを定める。
ゾンビの顎へ真下からするどい突き。ひと時の間をおいて「残念だったな」と、葬送の言葉をかける。
トリガーを引くと、ブルンと誇らしげに排気を噴出して相棒がいななく。肉を寸断する確かな手ごたえ。
そいつは顔の前部を失なうと、血を撒き散らしながら後ろへ倒れた。
再び血だらけになったセスは何事も無く足のばねだけで一息で立ち上がる。
そして落ちてきたビールを見もせずにキャッチすると、あごをそらして飲み干した。
「・・・」しばらく時が止まったように微動だにしない。傷だらけの首筋を汗が一筋流れ落ちる。
セスはおもむろに大きくゲップを放ってつぶやいた。
「・・・まずいぜ」
なにがまずいって、文章がまずい・・・モウダメポ_| ̄|〇illi
769 :
本当にあった怖い名無し:04/11/11 17:32:31 ID:jLGfukVx
>>768 そんなことないですよ
こんな時間にupしていただいてじっくり読ませていただきました
続きも是非お願いします
こおった湖のほとりを、ひとりの男があるいていました。
かれは寒そうに、毛皮のコートのまえをぎゅっとひきしめて、ふううとしろい息を吐きながら、
なにもない雪のうえをただただあるいてゆくのでした。
かれはするどくとがった、たかい木の立ちならぶ、うすぐらくふかい森のなかをすすんでいきました。
きつねも、鳥も、いきものの声ひとつ、聞こえてきませんでした。なんの音も、しませんでした。
「お父さん、これからどこへ行くの?」
幌の中から聞こえる幼いキャシーの不安げな声にダンは
返事を返せなかった。
だまったまま痩せた馬の背中ごしに前方を眺める。そこに映るのは
ただ荒れ野のみ。
熱風にさらされひび割れた大地に希望はどこにも見えない。通り過ぎてきた
場所にもなかった。
「また、おっかないゾンビに会わないよね?」
何も答えない父に不安になったのか、キャシーが顔を出してたずねた。
「ああ、大丈夫だよ。今度はお父さんがやっつけてあげるから」
にこやかに娘に返事をかえすも、ダンの心の中は不安に渦巻いていた。
この前まで、ダンたちが平和に暮らしていた山あいの土地は、
ゾンビの襲撃で崩壊した。
そこはまずしい土地ながらも作物を収穫することも出来、5家族ほどで
平和なコミュニティが作られていた。
守るのは時代で鍛えられた男が8人。武装は貧弱だが、大抵の襲撃には
傷ひとつ負わない強い男たちだった。
だが、一週間前の早朝、見張りをしていたアルフの絶叫で飛び出したダン達は、
目の前で首を引きちぎられるその姿に戦慄した。
襲い掛かってきたソンビたちは信じられないことに、いままでみたことも無いような
すばやい動きをしていたのだ。
ゴリラのように半ば四つんばいで走りまわり、家畜にすばやく襲い掛かる。
腕が異様に太く、小木をひき抜けるほどに力が強い。いままでみた事もない光景だった。
なお目を疑う事に、そのゾンビ達はまるで音というものを立てなかった。
見張り役だったアルフが自身の断末魔でしか警告できないくらいに。
男たちはそれぞれ武器をもって果敢に立ち向かったが、人間以上に機敏に動くゾンビと
その怪力に翻弄され、一人、また一人と餌食になるほかなかった。
ダンは敵わないとさとって住民全員に警告を発しながら、自身も眠るキャシーを腕に抱えて
必死に馬車で逃げ出したのだった。
「マイクとベスとマリア、だいじょうぶかなぁ?」キャシーは荷台から
足をぶらぶらさせて不安げにつぶやく。
ダンが最後に見た時、キャシーの友達のマイクとベス兄妹がいるファーガソン家も、
マリア・バンデラスの住む家も、共にゾンビに包囲されていた。
とても助けられる状況ではなかった。
ダンの心のなかでは、見捨ててしまった命に対して悔恨の気持ちが渦巻いていたが、
「ああ、元気でピンピンしているさ。また会ったら遊んでもらいなさい」と努めて
あかるく言うほかなかった。
突然、馬がいなないて前足をあがかせる。ダンは馬車を必死に操って転倒をまぬがれた。
「ドゥドゥ、どうしたんだ?蛇でもいたか?」馬をなだめて落ち着かせる。
だが、馬はしじゅう足踏みをして恐怖を現したまま、鼻息を荒げて落ち着く様子がかない。
「キャー!!」幌の中からキャシーの悲鳴がひびく。
ダンは錆びの浮いたショットガンを掴みあわてて幌の敷居を開けた。
ダンの目の前には怯える娘の姿、そしてその向こうに幌馬車をめがけて向かってくる
4つ足のけものの群れ。
「しまった!!」ここはゾンビ犬のテリトリーだったことを失念していた。
キャシーを腕にかき抱き、馬車の後方から向かってくる犬の群れにショットガンを振り向ける。
だが黒波のようなゾンビ犬の群れにはなにもならないだろうと悟り、運命を呪った。
「だめか・・・っ!!」
ダンは自分自身のことよりも、胸の中の娘を思って硬く目をとじた。
ギャン!キャワ!!
ゾンビ犬の悲鳴が耳にとどく。
「?」いぶかしく思ってダンが目をそろそろと開けると、ショットガンの照星の向こうに
細身の人影がみえた。
その男は凶暴なゾンビ犬を近寄せないように、たやすくつぎつぎと蹴りつけている。
男の革ジャンとジーンズは風雨に晒されて汚れ、血を浴びたかのごとく赤く黒光りしていた。
頭上にはつばの広いカウボーイハットを目深に被る。
異様なことに、人一人で持ち上がりそうにない巨大なチェーンソーを無造作に肩にかけていた。
こんな荒野をどうやって歩いてきたのだろう、なぜか小さなザックしか身に着けていない。
腰につけた太い皮ベルトの両側には、拳銃ではなく刃渡り30cm程のチェーンソーが
ぶらさがる
ダンの脳裏に行商人から聞いた噂話がよみがえる。あのとても信じられない話の。
「マスターチェーンソーだ・・・、ほんとうに実在していたのか・・・」ダンはその人影に
目を見張ったままつぶやいた。
マスターチェーンソー。チェーンソー術免許皆伝者。
チェーンソー武術は古来より伝われてきた数々の武術が統合した究極の一である。
それは時代が求めたゆえに結実した果実であった。
この時代の、ゾンビにひとたび噛まれると死に直結する戦いは人類にとって消耗戦だった。
銃器や火器は非常に有効であるものの、新たに供給されるはずもなく、使い切れば
それは死につながる。
剣や刀などの刃物で応戦する者もいたが、人間の体はやすやすと切断できるものでもなく、
同時に攻撃されればなすすべもなかった。
そこで必然として求められた武器は、本来武器ではなかったチェーンソー。
使い慣れた人間が扱えば、その威力は人の胴体はおろか硬木までも瞬時に断つことができる。
そしてそれを効果的に使いこなすため、各武術の達人達が著したものが
「チェーンソー秘伝絵巻(上巻)」である。
だが、これを書き下ろした武人たちは、自身でその修行にはいったものの、誰一人として
マスターすることはできなかった。
なぜならば、その修行は危険を極め、一度でも失敗すれば五体満足ではいられないからだ。
破断せよとむせび啼く凶器はつねにチェーンしつつ震える。少しの振動が自身を傷つけて
しまうその緊張に人間は耐えられるものではなかった。
そのために人にはマスターできるものではないと、門外不出の封印をされたハズであったが・・・
いつのころからか、人々のなかで放浪のチェーンソー使いの話が噂されるようになった。
いわく、瞬時に100体ものゾンビを倒したとか、
いわく、弾よりも早く動ける体の持ち主だとか。
ダンはむなしい希望が生んだ英雄崇拝としか思っていなかった。いままでは。
いま、あの凶暴なゾンビ犬の群れを目の前にして飄々と立つ男の姿をみると、
なぜか信じざるをえなくなってくる。
自分がその人物にショットガンの照準を合わせたままにしているのも忘れて、
ダンは目を張りつづけた。
ゾンビ犬たちは急に出てきた人間に、爛れた脳が意識できる程度には
不可解さを感じ取った。
こんなに不用意に群れの真ん中に立ち入ったエサはいままで無かったからだ。
だがエサはエサ、二本足の生き物はうまい。犬の全身が肉を食せよと命じてくる。
本能の赴くまま、群れはいっせいに大地を蹴った。
輝く閃光が二筋の軌跡を描いた。まぶしく照りつける日差しよりもきらめく。
男にとびかかったゾンビ犬は一瞬滞空したかと思うと、尽く地面へ打ちつけられる。
すべの犬の首と胴体が離れていた。
それはまさに電光。
落雷のようなエンジンの響きが今更ながら耳に轟く。
自分の見た光景が信じられず、ダンは惚けたまま身動きもできなかった。
「・・・ふん、犬、か・・・」カウボーイハットの下で男がぼそりとつぶやく。
ゾンビ犬はいまの光景が理解できていないらしく、唖然としたように男を遠巻きに
眺めるだけだ。
しばし奇妙な停戦状態のなかで、巨大なチェーンソーのアイドリング音だけが響く。
チェーンソーを肩に戻して男がゾンビ犬の群れをひととおり見渡した。
「・・・こいよ」そう言って左手で侮蔑のジェスチャーを作る。
その意図が理解できずゾンビ犬たちがいぶかしそうに思ったように見えたが、
次の瞬間、思い直したかのごとくいっせいに男へと牙を剥いて疾った。
その津波のような同時攻撃に飲み込まれる寸前、男は片頬で笑みをうかべて
チェーンソーのスロットルを最大に噴かしあげる。
ダンにはそのエンジン音が巨大なチェーンソーの血に飢えた咆哮のように聞こえた。
カウボーイハットの男が両手でブレードを天に突き上げ鬨の声をはなつ。
「レッツ、チェーンリアクション!!」