「もう疲れちゃった。治療の苦しみに耐えることにも、病気のこと考えるのも。
わたし、朔ちゃんと2人で世界一きれいな青空を見に行きたいな・・・」
アキは日ごとに弱っていった。髪はほとんど抜け落ちていた。身体のあちこちに
小さな紫色の出血斑が出ていた。ぼくらにもうためらってる時間なんかないんだ。
アキをオーストラリアへ連れて行く!こんなところでアキを1人で死なせない!
ぼくは航空会社のカウンターへと向かった。もう何もかも振り切ってしまいたい。
アキと一緒にオーストラリアへ行く。アキに世界一きれいな青空を見せてやる。
怖いものなどもうなかった。前だけをみていた。そのとき、後ろで物音がした。
振り返ってみるとアキがソファの下に倒れこんでいた。
「アキ」
駆け寄ったときにはすでに周りの通行人も何人か足をとめて、集まり始めていた。
抱きかかえたアキは鼻と口が血で真っ赤になっていた。もう間に合わないのか?
何もかもが音をたてて崩れていく。アキと結婚することも、幸せに暮らすことも、
そして、たったひとつ最後に残されたオーストラリアへ行くことすらも・・・。
「たすけてください! たすけてください!」
空港の係員がタカツカ氏をつれてやってきた。アキの手にタカツカ氏の手が乗ると、
アキはかすかに目を覚ました。引き続き、タカツカ氏は血で真っ赤になったアキの
口、鼻、と順に手をかざしていった。不思議なことにアキの出血は止まったのだ。
ぼくとアキはその後、定期的にタカツカ氏のヒーリングを受けるようになった。
驚くことにアキの腕や足から紫の斑点は次第に消えていき、体調もみるみるうちに
回復していった。ぼくもタカツカ氏の著書や体験セミナーを参考にヒーリングを
学んだ。そして、アキはすっかり髪の毛も伸び、入院の必要すらなくなった。
「タカツカさん、ありがとう」