画面の中では、本人そっくりの『影武者』が、被験者たちと共に、たった今現れたばかりの
廃棄物に立ち向かっていた。
『危ないッ…!! 女子供は下がってなさい!! そこのあんた、救助を呼ぶんだッ!!』
オペレータから奪い取った支柱付きマイクを正眼に構え、周囲の人間を廃棄物どもの群れから
庇うように対峙して、仁王立ちで叫んでいる、富士高丸。
かつて俺が惚れこんだ男は。日頃政治の必要悪に手を染めていても、ここぞ、という時には、
身を挺して国民を守る、と言っていた男は。
確かにあそこにいる。
だが、俺の目の前でソファーに座った『本物』は、
「しかしまあ、わしのところにはあんな」
『それ』を鼻で笑い飛ばした。
「廃棄物並みの人材はおらんのです。こいつのような、正真正銘の本物しか」
彼らにとって、あそこで死んでいく人々は、彼らが作り出した廃棄物と同じ、生きる値打ちの
ない偽者、なのだ。
そして俺は、……『彼らにとっての本物』かどうか、試された、のだろう。