747 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :
04/03/22 19:55 デイヴィッド・マレル「トーテム」(ハヤカワ文庫NV) ‘79の作品。検死中に突然蘇り人を襲う死者、凶暴化する動物たち。町の住民たちは次々に襲 われ、また一人と彼らの群れに取り込まれていく。8年前にあった大きな事件以来、平穏に過ご してきた住民たちはパニックを起こし、町は混乱状態に陥る。住民のほとんどが町を捨て逃げ去 ろうとする中、都会の喧騒に疲れ一度は警官を辞めた経験を持つ警察署長のスローターを中心 に町を守ろうとするグループが立ち上がる。狂犬病とは異なる未知のウィルスに脳を侵され、「先 祖帰り」した死者の、狩の始まりをつげる咆哮を合図に、残された住民たちとの死闘の夜の幕が 上がる!映画「ランボー」の原作者、マンハント小説の名手マレルが「呪われた町」にインスパイア されて書き上げたという、<吸血鬼・人狼>テーマの新機軸! 本職は大学教授というマレルが、キングに触発されて書き上げたというホラー処女長編。111もの 断章で構成され、スピーディーな展開や緊張感の高まりを見事に演出している。凡百のパニック物 と本作が異なるのは、マレル独自の<吸血鬼・人狼>解釈とプリミティヴ信仰のイメージを象徴的に 織り込むことによって、そのオリジナリティが存分に発揮されている点であろう。ラストがいささか 駆け足気味なのと、一部解釈するに足りない伏線があるところが実にもったいないが、それでも 十分鑑賞に堪える作品である。マレルはホラープロパーの作家ではないが、いくつかホラーテーマ の中短編があるようなので、ぜひ他の作品も追ってみたい。お奨め。
スレタイに沿わず恐縮なのですが、実家の押し入れから珍しい物が出てきましたのでご紹介させていただきます。 『幻想画集 ヴァージル・フィンレイ T・U』 青心社 ヴァージル・フィンレイは、アメリカの幻想怪奇専門誌で活躍した挿絵画家です。 上下2巻からなる本書には、1932年から1969年までの作品、加えて最晩年の作品と思われるものが 収録されております。全集ではありません。商業誌デビュー作をはじめ、厳選された名品が収められているようです。 創元推理文庫『ラヴクラフト全集』の表紙としてお馴染みのPORTRAIT OF H.P.LOVECRAFTや、 あのアーカム・ハウスが刊行したラヴクラフトの作品集THE OUTSIDER AND OTHERS(アウトサイダー及びその他の物語) の表紙など、有名どころがしっかりセレクトされています。 絵ゆえに作者の言葉こそありませんが、作品そのものが物語性を有し、見る者の心に暗黒の感動を与えてくれます。 挿絵とは元来そういうものですが、なかでも彼の作品には、独特の強烈な力が感じられます。 フィンレイの挿絵がかの『ウィアード・テイルズ』に登場したのは1935年12月号。同誌きっての人気作家だった ラヴクラフトは翌年9月、フィンレイに書簡を送り、冒頭いきなり「私は熱狂的なフィンレイ・ファンであります」と 記していることからも、当時のフィンレイ登場の興奮がおわかりいただけるのではないでしょうか。
>>748 のわっ!新参者さん久しぶりに現れたかと思えば、超レアな画集を
お持ちですね!私もしばらく探し回ったことがありますが、マニア
向けの為か手放す人がいないようで、現在は市場にほとんど出回っ
ていないようです。それにしても実にうらやましい…
どこいってもラブクラフト全集が見つかりません すいません。どれくらいの大きさの本ですか?
>>750 図書館の文庫コーナーに結構あった気がする
長い事行ってないから今はどうかしらんが・・・
あぁ!図書館!ありがとう。 私、根暗ヤローなんで本屋で 「〜はどこにありますか?」 とか聞けないんですよ… 文庫コーナー、行ってみます
恐怖館さんと読むものが似通ってる・・・当り前か ブリジット・オベールの「ジャクソンビルの闇」も読んでたりしてますか? 続編の「闇が噛む」なんかはイマイチでしたねい
だれか、最高にサイコな奴紹介して。鬱はいるような奴。悲劇ものおk。 あと、奇形の出てくる小説で乱歩以外。 たのんます!_| ̄|○ ここの住民なら、こんな無茶な注文にもきっと答えてくれる!・・・かな。
>>754 ケッチャムの作品なら大抵おっけだと思いますねい
奇形ものもあったよーな・・・
>755 ごめそ。それはもう読んだんだ・・・・。(;´Д`) しかも、何気にクリーンヒット。つい最近読み終わったとこだよ。 あの作者、もしかして、このスレでは有名?
>>753 いつも当館を訪れていただきありがとうございます。
今のところ英米以外の作家はノーマークだったので未読ですね。
フランス人作家なんて「怪奇小説傑作集4」止まりです…
ぜひぜひレビューお願いします!
>>754 私もケッチャムの一連の作品はお奨めです。主に扶桑社ミステリー文庫
で出版されています。レイモンなんかもぶっ飛んでますね。この二人はいい。
サイコだと手近なところでキング「ハイスクールパニック」「クージョ」
「ミザリー」、マキャモン「マイン」。それから私が今読んでいるダン・
グリーンバーグ「ナニー」なんかも隣のサイコさん的なストーリー。
ブロックの本家「サイコ」なんかも映画とは一味違います。
「ジャクソンビルの闇」 ゾンビものです 描写が結構エグイです。ノリがバーカーや友成に近いかも・・・ 街の住人が次々と襲ってくるってシチュは多いですが、 キングの「呪われた町」なんかとは違い展開がスピーディーでサクサク読めます。 ただ敢えてキングの作品を意識してる個所もあり、勿体無いとも思いました。 ダン・オバノン監督あたりに映画化して欲しいって思ってしまったw 駄作の多いゾンビものの中で 暇つぶしには充分応えてくれる作品だと思いますよ〜 薄っぺらいレビュースマソ・・・・・
>>754 ちくま文庫の海野十三集などは?「恐しき通夜」「三人の双生児」は、
かなりイッちゃっている話だと思う。奇形もの?らしき短編も収録。
サイコものといっていいものか・・・「聖女の島」(皆川博子)は悲劇的幻想ミステリー。
個人的にお薦めです。
レスありがとうございます!! どれも面白そう・・・・。 ネットで調べて、好みの奴をぜひゲッチュしたいです。 奇形物、ないないと思ってたけど、まだ知らないのが 結構あるみたいですね。捜し方が足りないか。^_^; やっぱりここの人達は沢山読んでるだけあるなぁ。
761 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/01 17:49
「春にして君を離れ」アガサ クリスティー(ハヤカワ文庫) ホラーでもミステリーでもないのですが、私にとっては一番怖かった小説です。 主人公の善意が周りの人には悪意になってしまう物語です。 読み終わったあと、自分自身、他人に親切の押し売りをしていないかと不安に なりました。
762 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/04/01 22:16
ダン・グリーンバーグ「ナニー」(新潮文庫) ‘87の作品。育児と仕事の両立に疲れ、何かと衝突するフィルとジュリーのプレスマン夫妻。 上司のアドヴァイスに従って雇ったナニー(住み込みのベビーシッター)のルーシーは期待 以上に優秀で、育児はおろか、若夫婦の世話までそつなくこなし、プレスマン夫妻を満足させる。 しかし、必要以上に家庭生活に干渉し、高圧的な態度をとるナニーに辟易したフィルが解雇 をちらつかせてから、ナニーの態度は一変する。自らが理想とする家庭像を夫妻に押し付け、 夫妻を支配下に置こうとするナニーの手から逃げ出した一家を追って、もはや「ナニー」という 名の魔物と化したルーシーが邪魔者を屠りながら肉迫する。ナニーの魔力に次第に衰弱して いく妻子を、果たしてフィルは不死身の「ナニー」から守ることができるのか? 後述する一点を除けば実にユニークかつ非常に恐ろしいホラー小説。出産・育児という、未 経験者にとってはただでさえあらゆることが未知の領域であり、不安と、恐怖すら誘う出来 事を題材にし、それに加えてベテランとして有無を言わせぬ態度をとるだけならまだしも、 もはや狂気に近い信念を持つナニーが登場し、夫妻に投影された読者の不安・恐怖感はま すますつのってゆく。これであとは不気味なナニーの出生がいささかでもオリジンなものであ れば名作といっても良かったかもしれない。しかし残念なことに非常に月並みな設定になっ てしまっており、この点が最初に述べた本作品の瑕疵となってしまっている。ここで読者の興 醒めを誘ってしまう可能性も高く、自信をもって「お奨め」とは言えない作品。
>>761 奇しくも同じような題材の作品になりましたね。
親切な態度の裏側には誰でも少なからず下心があるものですが、
それが過度になるともはやホラーのネタだということですね。
クリスティーやエラリー=クイーンといったミステリの方で名を
なした作家たちも、いくつかホラー風味の作品を残しているよう
ですね。既読の方がいらっしゃったらレビューお願いします。
>762 確か映画にもなってましたよね。原作とは大分違ってたけど。 和田はつ子の「ラブ・ミ−・プリーズー侵蝕ー」(角川ホラー文庫、2002年7月) 読み比べてみて下さい。笑っちゃうから。 出来は「ナニー」の方がずっと上だけどね。
保守
766 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/07 19:50 ID:lf209Rnj
レビュー待ちage
レビューというほどじゃないかもしれませんが……。 スティーヴン・キング『スタンド T』(文春文庫) 新刊です。あのバカ重たい「スタンド」がいつでもどこでも読める! というわけで推薦。。 ジョイス・リアドン編『ローズ・レッド エレン・リンバウアーの日記』(ハヤカワ文庫) かのウィンチェスター館を想起させる広大な屋敷を舞台にした物語。全米で放送されたミニシリーズ『ローズレッド』は、 脚本をキングが手がけている。本書はそのノベライゼーションではなく、関連図書に相当する。地味な幽霊屋敷談が好き な人にお薦め(つまり派手さがないのです)。 それにしても編者ジョイス・リアドンはうさんくさい。正体はキングではないのか、という噂も。 まあ、すでに作者の正体はバレているようですが。。ある意味、これが本書最大の謎なのかもしれません。 スティーヴン・キング/ピーター・ストラウブ『ブラック・ハウス 上・下』(新潮文庫) 「タリスマン」ファン待望の1冊!(ま、上下2冊ですが)。あのジャック・ソーヤー少年の20年後の姿がここに! LA市警の敏腕刑事になっているジャック。食人鬼フィッシャーマンによって続発する少年少女誘拐事件。なんとも 面白そうなのでありますが、2月下旬に購入してから、未読の状態が続いています。つい先日、あろうことか、掟破り のパラパラ読みをしてしまったのですが、うーん、やはり期待できそうです! かぁぁ! 読みたいぃぃ! 未読なのにお薦めしちゃいます。
ジョン・ソール「ミッドナイト・ボイス」(ヴィレッジブックス) 02‘の作品。夫が通り魔に殺害されたため、二人の子供を抱えて生活に窮乏するキャロライン。 ある日出会ったトニーは金持ちで子供好きの紳士、そして住まいは「セントラルパークの大妖館」 と称されるロックウェル。彼と結婚してロックウェルに移り住んだキャロライン一家だが、その日 から子供たちが悪夢に悩まされ心身の変調を訴え、次第に衰弱しはじめていく…親切な隣人た ち、何不自由ない生活、そして新しい優しい夫。キャロラインが掴んだかにみえた幸せな生活の すぐそばで蠢く不気味な影の正体は…?キングやクーンツに並ぶ名手ソールが紡ぎ上げた戦慄 のサスペンスホラー!(監督ソダーバーグ、主演J・クルーニーで映画化予定。) たまには新刊のレビューをと思い手にとってみたのですが、これは失敗でした。いわゆる「吸血鬼」 ものの作品ですが、大分量の割に心理描写が薄っぺらでどうにも登場人物に感情移入できない。 ストーリーにも意外性がまるでなく、肝心の恐怖描写もいまひとつ。 これがかの「暗い森の少女」を上梓したソールの作品とは思えないほどの不出来です。彼の作品 に共通する「子供いじめ」という特徴は生かされているものの、それ自体もやはり「暗い森〜」を 越える程ではない。名作と呼ばれる作品を残した作家は、その後その作品を基準に評価される わけですから、ソールには気の毒なところではありますが、残念ながら良い評価はできません。
769 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/04/11 20:14 ID:sFFho3ED
マイケル・スレイドの名作「グール」が創元推理文庫により復刊 されていました!ぜひご一読を!
ポーの「アッシャー家の崩壊」がケンケンガクガクだった
>770 昔読んだけど忘れたなァ。どんな内容だっけ?
>>771 兄と妹が・・・・・・・・・
なんだっけ?
>772 妹が死んだと思ったら生き返って、びっくりした兄も死んで屋敷は沼だか湖だかに沈む話ですね(ウソではない)
そんな大雑把な。(w もう少し詳しく文学的に説明してけろ。
>774 >そんな大雑把な。もう少し詳しく はーい・・・(´・ω・`)ショボンヌ 語り手は親友ロデリックの招きに応じて旧家アッシャー家を訪れる。 ロデリックの唯一の血縁者、双子の妹マデリンは病気で死にかけていた。 心身ともに不安定なロデリックのため、館に留まる語り手。 やがてマデリンが死に、ロデリックは遺体を安置所に仮埋葬する。 ロデリックの憂愁は深まり、その心は病んで行く。 埋葬から数日後の嵐の夜、妙な物音に起こされた語り手はロデリックの部屋へ向かう。 「あれを見なかったのか・・・僕らは彼女を生きながら埋葬してしまったんだ!」 叫ぶロデリック。その時部屋に屍衣を纏ったマデリンが入ってくる。 マデリンはロデリックに覆いかぶさって息絶え、ロデリックもまた死ぬ。 逃げ出した語り手の目前で館は崩れ、沼に沈む。 復活する死美人、はポーが好んだテーマですね。「リジイア」「ベレニス」とか。
>775 ありがd。そして乙! 久しぶりにポーが読みたくなりました。図書館にでも行くかなぁ。
>776 ポーの作品、いくつかは青空文庫で読めますよ。 アッシャー家も。
黒崎緑の「未熟の獣」 最後の三段オチに驚愕した。 怖すぎる
779 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/19 11:53 ID:GH5VjPA3
s
780 :
への4番 :04/04/20 01:55 ID:+dO17cd/
>>754 奇形:親指Pの修業時代
鬱入るようなやつ:十七歳、悪の履歴書(ある意味「隣の家の少女」の上位互換)
>>758 続編は最低でした。奇をてらいすぎ・・・
781 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/04/22 20:04 ID:hMWxStko
ロバート・R・マキャモン「アッシャー家の弔鐘(上下)」(扶桑社ミステリー) ‘84の作品。ポオが取り上げた「アッシャー家」は実在した!冴えないホラー作家リックス。彼は世界 的な兵器製造会社を束ねる父ウォーレン危篤の知らせを受け、忌み嫌いながらも郷愁をさそう一族 の故郷、アッシャーランドに帰りつく。先祖が築いた巨大な“ロッジ”、迷い込んだ子供をかどわかすと いう、怪魔パンプキン・マンが跳梁するという不気味な森、一族の業病アッシャー病に侵され生きなが 腐れ果てていく父親とその遺産の行方を巡っていがみ合う兄妹…一族を嫌悪するあまり、その謎に 包まれた歴史を暴露しようと調査を開始するリックス、弟を怪魔にかどわかされ復讐を誓う超自然の力 を秘めた少年、そしてアッシャー家に人生を踏みにじられた女記者。それぞれが追い求める謎の焦点 が“ロッジ”に絞られた時、悪魔の仕掛けた陥穽が三人を飲み込まんとゆっくりと口を開け始める… 大家マキャモンが仕掛ける、驚愕のホラー・クロニクル! 先般、「アッシャー家の崩壊」が話題となっておりましたので、ストックからセレクトしてみました。さすが マキャモン、登場人物が実に魅力的で生き生きとしています。心理の機微を巧みに描き、緊張感あふれ るストーリー展開、そしてポオに捧げられたとあって、随所に散りばめられた彼の作品へのオマージュ。 サービス精神旺盛なマキャモンのテクニックが存分に発揮されています。もちろん、ポオのファンでなく とも充分楽しめることは請け合いです。ただ…雰囲気に比して、肝心の謎解き部分が若干味気ないもの になっているのは否めません。それでも、怪奇小説ファンをニヤリとさせるアクセサリーと設定にはうな らされます。時間とお金に余裕のあるファンはぜひご一読を!
エロ&グロみたいのでなんか教えて!
784 :
への4番 :04/04/24 21:44 ID:8zgpYjYZ
785 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/27 16:49 ID:2URkuWB5
はじめてオカルト板に来ました というより小松左京で検索したらたどり着いた ラヴクラフトといえばゲームブックの「暗黒教団の陰謀」をもってます 表紙がヴァージル・フィンレイで挿絵が山田章博の あとクロノトリガーのラヴォスも異次元の色彩が元ネタ SFで怖い小説はドウエル教授の首。作者はベリャーエフ 人間の尊厳とかを冷酷に陵辱する心が怖いです ロシアや中国など大陸系の人は素で怖い考えの人が多いですね
「文通」 吉村達也(角川ホラー文庫) 心理的なホラーかと思います。 レビューはうまくできないので割愛させてください。 文通の相手からの文字がちゃんとそれぞれ、 ただの写植じゃなくて文体かえてあって凝ってる。 最後は強引なまとめかもしれないけど、結構楽しめた。
長らく絶版だった、キング幻の評論集「死の舞踏」がこの程 バジリコ社から装いも新たに新訳で再版されました! 800ページ近くあるヴォリュームですが、キングワールドの エッセンスを余す所なく詰め込んだ珠玉のエッセイ集です。 キングファンならずともぜひ一度御覧下さい!
>>786 >>787 今後とも当館をよろしくお願い致します。
新旧問わず、どんどんレビュー&感想してくださいね。
コリン・ウィルソン『宇宙ヴァンパイアー』(新潮文庫) 85年公開の映画「スペースヴァンパイア」の原作、といったほうがわかりやすいのかもしれません。 ですが、本書の中身の濃さは、映画の比ではありません。 宇宙飛行士たちが発見した謎の超巨大宇宙船。それは長さ80キロ近くもある、一万年以上前の傷ついた難破船だった。 内部には、烏賊とも植物ともつかない巨大な異質の生物の群れ。さらには人間としか思えない男女も。 それらはみな死んでいるらしい。宇宙飛行士たちはヨーロッパ合衆国¢蜩摎フの命により、男女の死体≠回収する。 地球に持ち帰られた未知の生命体のうち一体は、妖艶な美女の姿をしていた。 やがて、彼女に心奪われ犯そうとした者が、たちまちのうちに生命を吸い取られるという事態が発生する。 そしてSPACE VAMPIRESは研究所から逃げ出し、殺人を繰り返し始める。 人から人へ乗り移り、巧みに姿を隠しながら……。 SFホラーとしての小道具も品揃え豊富で、さらにはブラム・ストーカーの「ドラキュラ」、性心理学、 錬金術等にまで及ぶ記述はいかにもコリン・ウィルソンらしく多彩で、読者を飽きさせません。 ぼくは94年に小さな古書店で買いました。おそらく現在絶版なんだと思いますが、明言はできません。 もし絶版であるならば、新潮社さんにはぜひ再発刊をお願いしたい。 手元にあるのは当時150円で買ったボロボロの本ですが、大切な1冊です。表紙の女裸体写真も乙。
手塚治虫の作品で似たようなのがあったなぁ。題名憶えてないけど。 知ってる人いない?
792 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/05/05 14:17 ID:+4uH2Kdc
キャシー・コージャ「虚ろな穴」(ハヤカワ文庫NV) ‘91の作品。「ぼく」−詩人気取りのレンタルビデオ店員―と元彼女のナコタがアパートの倉庫でみ つけた「愉快な穴(ファン・ホール)」。30センチかそこらの小さな穴だが、どうやら底なしのブラック ホールみたいだ。興味を示したナコタは、瓶詰めの虫やネズミを置いたり、死体安置所からかっぱ らった人間の手首を釣り糸でたらしてみたりと様々な「実験」を繰り返す。異常な結果に興奮した 彼女は、よせばいいのにビデオカメラで中を撮影しはじめた。映っていたのは何だか気味の悪い、 観るたびに姿を変えるおかしな生き物。映像に憑かれ、とうとう自ら穴の中に飛び込もうとする彼 女を止めようとした「ぼく」は誤って片手をファンホールに突っ込んじまった…片手に開いたミニチュ アのファンホール。その日から次第に変容していく「ぼく」の体。いったい「ぼく」はどうしちまったんだ? 長編処女作としてB・ストーカー賞、ローカス賞の栄冠に輝いたダークでシュールな新感覚ホラー! 権威ある賞のダブル受賞という鳴り物入りで登場したコージャですが、私にはあまり、いやまったく 理解できない作品でした。ストーリーが理解できないというのではなく、何と言うか「ピカソの作品が 理解できない」という感覚に近いものを抱いてしまいました。世の中感受性が鋭いのか「ピカソ」を 愛でる方も多いようですが、私には向かないようです。それと邦訳の問題なのか特に前半は文章が 稚拙・断片的で読み進めるのに実に苦労しました。読了するまでやたらと時間を要した作品で、し かも読了後の消化不良に起因するモヤモヤ感を抱いてしまうという、ある意味で「問題作」です。 とことんダークでシュールな本作品。もしかすると「すごい」作品なのかもしれませんが、コージャの 長編が本作品以降邦訳されていないことを鑑みると、なかなか理解は得られなかったようです…
793 :
への4番 :04/05/05 14:25 ID:W9wc+Y03
理解できなそうと言えば、クチュクチュバーンって、どんな話なんですかね?
794 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/05/05 15:29 ID:B2Rtj6f3
>>792 あなたがそう言って下さると、心強い。
「虚ろな穴」は、私も読了までにえらく時間がかかり、しかもどこが面白いのかさっぱりわからず、
悩んでいました。
金返せ!
ホラー作家の生の声を......
高橋克彦『ホラー・コネクション』(角川文庫)
ホラー作家七人との対談集。2001年刊。
ゲストは荒俣宏、岩井志麻子、小池真理子、瀬名秀明、都筑道夫、丸尾末広、宮部みゆき(収録順)。
やはり、というか……いちばん物騒な発言をしたのは岩井先生でしょうか。静かに怖い。。。
東雅夫『ホラーを書く!』(ビレッジセンター出版局)
インタビュー集。1999年刊。
登場するのは朝松健、飯田譲治、井上雅彦、小野不由美、菊地秀行、小池真理子、篠田節子、瀬名秀明、皆川博子、森真沙子。
巻末に付いている「日本ホラー小説年表」もありがたい。
友清哲『新人賞の極意』(二見書房)
作家10人のインタビュー集。2002年刊。
ホラー専門書ではありません。登場するホラー作家は貴志祐介、五十嵐貴久の御二方のみです。
いかにして作家になったかという話や、デビュー後の苦労、テクニックの披露など、興味があおりの方はどうぞ。
とくに貴志タン(あわわ)のお話は、涙なくしては読めません。。。
スティーヴン・キング『小説作法』(アーティストハウス)
2001年刊。初版は表紙にキングの顔写真が使われていましたが、最近リニューアルされたようで、顔写真が…。
タイトルどおりの内容から、少年期、青年期の想い出、諸作品の成功談・失敗談に至るまで、いつもの饒舌さで
面白おかしく語ってくれています。さらには、1999年6月に妙なおじさんの車にはねられて危うく死にかけ
た話も。これまた涙なくしては読めません。。。話が痛すぎます。ほんとシャレになりません。
>>793 『ハリガネムシ』の著者だとは知っているのですが……ぼくは未読でして。ハイ.....
ひっ!!(汗&赤面) 795 興味があおり→興味がおあり は、恥ずかしい........
797 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/05/09 18:37 ID:ar9cGfvl
G・K・ウオリ「箱の女」(ハヤカワ文庫NV) ‘00の作品。人里はなれた森の中、ハンター相手に獲物の解体を請け負っていたエレン。彼女は 偶発事故で愛する夫に箱の中に三日も閉じ込められ、その時から夫と離れて暮らしている。 町の住人との関係をほとんど持たずひっそりと暮らす彼女の友人は「わたし」の一人娘、ウィルマ だけだ。事故の衝撃から次第に回復しながらビジネスを軌道に乗せたエレン、たった一発の 銃声から全てが一変するまでは新しい環境を楽しんでいたエレン。なぜ彼女は200発もの銃弾を 撃ち込まれなければならなかったのか?四人の婦人警官とエレンの間に何があったのか? そして親友を殺害され怒りに燃えるウィルマがとった行動とは…?小さな町で交錯する憎しみと 愛情。復讐に燃える静かな女の狂気を描いたサスペンスホラー。 帯の「風間賢二氏熱狂」というコピーや裏書のあらすじがあまりにもサスペンスたっぷりに書か れていたのでてっきり純正サイコホラーかと思ったのですがとんでもない。確かに復讐に燃える 女の情念、(キング調の)閉鎖的な町に飛び交う「箱の女」を巡る猟奇的な噂などは描かれて いますが、やはりホラーというよりはサスペンスの領域の作品ですし、原題”An American Out rage”からも、作者が意識したのは擬似ドキュメンタリーによる「アメリカ的」なるものの暗部を 描くことであり、これを前提に読むのであれば面白い作品といえます。ただ早川書房さん、まぎ らわしいあらすじとテーマを外れたタイトリングは止めていただきたいものです。勘違いして 「???」となった方もいらっしゃるのでは…?
>797 >偶発事故で愛する夫に箱の中に三日も閉じ込められ 意味がわからん
>>798 ああ、失礼しました。
「夫の不注意が原因で(工具)箱の中に三日も閉じ込められた」
ということです。言葉足らずで申し訳ありません。
800 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/05/12 11:47 ID:s97z+xQO
浅野、成宮、龍平 究極のトリプル主演実現 オムニバス映画「乱歩地獄」 ◆「火星の運河」(竹内スグル監督、主演・浅野忠信) 男(浅野)は暗黒の森 を歩きつづけている。やがて現れた沼で、ふと自分の体を見ると、恋人とそっ くりな雪のように白い女の肉体となっていた。 ◆「鏡地獄」(実相寺昭雄監督、主演・成宮寛貴) 昭和24年ごろの鎌倉が舞台。 女たちが次々と変死をする事件が発生。捜査を進める明智(浅野)は、事件の陰 に美青年・透(成宮)の存在があることに気づく。透がかかわった女は必ず、彼 の虜(とりこ)になっていた。 ◆「芋虫」(佐藤寿保監督、主演・松田龍平) 屋根裏に潜む平井太郎(松田)は 戦争で両手両足を失い胴体だけになった須永中尉(大森南朋)とその妻(岡元 夕紀子)の生活をのぞいている。愛と残虐性が混在した、その生活の行方は? ◆「蟲」(カネコアツシ監督、主演・浅野忠信) 征木(浅野)は異様なほど内気 な男。親の遺産で、土蔵の薄暗い部屋でひっそりと過ごしていた。あるとき、 少年時代にあこがれた女と再会し、ストーカー行為を続ける。やがて、女を完全 に自分のものにしようと思い立つが…。 芋虫が映画化・・・って(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブルブル
鏡地獄ってそういう話だったっけ??
a
803 :
怖チビ :04/05/12 17:56 ID:Z2oVypUc
田中啓文 「ベルゼブブ」虫が虫が虫があああああ 題名は忘れましたが、鬼が人間の刑事として活躍する話も、スレ違いかもしれませんが、なかなか。 倉坂鬼一郎「屍 船」の、表題と同じ話も、いい感じです。 牧野修 「忌まわしい匣」もなかなか。
>>800 私もニュースで知り、非常に楽しみにしています。
「鏡地獄」は確かに原作とは違う展開のようですね。
>>803 田中啓文といえば、5末か6末にハヤカワ文庫JAから連作短編集
「蹴りたい田中」が発売されます。「茶川」賞作家が宇宙の果てに
旅立つまでを描いた、何やら文学パロディ+クトゥルーのような臭い
がしますが…楽しみです。
805 :
怖チビ :04/05/12 20:00 ID:Sv/dKaOe
>>恐怖館さん け。「蹴りたい田中」っ?Σ(°゜;) うわー、楽しみですねえ。情報ありがとう御座います。 綾辻氏は、「フリークス」も良いかと。 「眼球綺譚」の中のゲテモノ食いの話も、結構ぞわっと。 村田基氏の「夢魔の通り道」もおススめ。 短篇集なんですが、淡々とした文が、切なさやグロさを、すんなりと心に染み込ませます。
806 :
怖チビ :04/05/13 08:32 ID:JbYUyFyg
角川ホラー文庫系だと、 ☆雁屋 哲 「究極の美味」 さすが、美味しんぼの原作者。食べ物の描写が、とても美味しそうで、 漫画に出てくるメニューなども、ちゃっかり書かれていたりします。 設定や内容は特に突出したものでは無いかもしれませんが、美味に対する執念が、 これでもかとばかりに詰め込まれております。
807 :
熱々親指 :04/05/13 11:16 ID:lh0KRYBi
ジョナサン・キャロルは? 「死者の書」 「われらが影の声」 「月の骨」 「炎の眠り」 「空に浮かぶ子供」 「犬博物館の外で」 「沈黙のあと」 「天使の牙から」 “死”と”愛(照” をモチーフにした作品が多い。 ジャンル的にはSFファンタジーかもしれんけど、ホラーやミステリーっぽい部分も結構ある。 小説をまたがって色んなキャラが出てきて、微妙に話が繋がっていったりとか。 キャラも魅力的、熱々親指!
>>807 ジョナサン・キャロルは出す作品という作品が、評論家筋から非常に
評価されていますよね。私はいずれの作品も未読ですが、結構トリッキー
な感じの内容も多いようなのでぜひ読んでみたいですね。
ジョナサン・キャロルの作品はダーク・ファンタジーと言われてるように ファンタジー色が強いね。語り口も独特。 短編集「パニックの手」と「黒いカクテル」も長編とリンクしてる作品が入ってるね。 「黒いカクテル」のラスト、一体何が…ってすごく気になる。
810 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/05/16 01:46 ID:cOBOIdr/
ジェームズ・ハーバート「ムーン」(ハヤカワ文庫NV) ‘85の作品。リゾート地の女子校で教鞭をとるチャイルズにはその特異な能力のために 抱えた、苦い過去があった。連続殺人鬼の精神に感応し、その現場を「目撃」してしまう ことで警察に協力し、事件解決に貢献したものの、チャイルズを待ち受けていたのは好 奇の眼差しとマスコミの容赦ない追求だった。家族と離れ密かに暮らすチャイルズ。そ んな彼が、新たな猟奇殺人の現場を目撃してしまう。…女の腹を切り裂き内臓をすすり… 墓を暴き死んだ子供の心臓をむさぼり…無抵抗の老人の頭を鋸でそぎ落とす… 彼は事件に戦慄するとともに恐ろしい事実に気づく。相手もこちらに気がついている! 自らは望まぬ超能力に悩み続ける男が、愛する家族、恋人、そして生徒たちを毒牙に かけんと肉薄する狂気の殺人鬼に立ち向かう!英国の大家が解き放つ戦慄のストーリー。 クライヴ・バーカーら英国ナスティ・ホラー作家、米国スプラッタ・パンカーに多大な影響 を与えたハーバート第11作。ストーリー展開はさすがにうまい。プロットの構成が非常 に巧みで、スピーディーかつ緊張感を保ったままラストまで持っていく筆力には脱帽です。 ただ残念な(贅沢かもしれませんが)店が二点。一点目は、多作であるがゆえにネタの 掘り下げが甘く、ディティールへのこだわりがあまり感じられない点。二点目は、ナスティ・ ホラーの大家への期待が大きかったせいか、やや「上品」に仕上がってしまっている点 です。過去の幻の作品「鼠」や「霧」に関して語られる評価を前提とすると、おとなしいか なという印象ですが、ストーリーとしては充分楽しめます。今後も彼の作品は追っていき たいと思いますが、これはこれで非常に面白い。お奨めできます。
>>810 記憶違いなら申し訳ないけど、映画化されてませんか?
似たような映画を観たことあるので…
812 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/05/16 03:00 ID:bAtnW3Vi
悲しくて怖くて切ない話なら「ベロ出しチョンマ」と「燈台鬼」が双璧。
813 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/05/17 02:53 ID:2ouyGS4P
>>811 クーンツが似た様な話書いてるよ。そっちは「処刑ハンター」の題で
ビデオ出てる。事故が元で予知能力身につけた登山家が殺人鬼と
対決する話。
>>813 いや、確か高校教師だったと思うんだー。
講義中に犯人を見ちゃうの。
でもクーンツのやつも読んでみよ。
>>813 >>814 まあ、言ってしまえばやや「ありがち」なストーリーではあるんですけどねw
多分、探せばゴロゴロ出てくるはず…ただ、同じパターンでも作家によって
大きく差が出てくるのもまた事実。読み比べてぜひレビューお願いします!
…ってもう夜が明け始めてる…
816 :
814 :04/05/18 04:01 ID:p9P/uYSk
クーンツのやつってひょっとしてハイダウェイ? ずーっと昔に読んだ記憶が‥
817 :
813 :04/05/18 16:57 ID:7KnUXTxl
クーンツのは「マンハッタン 魔の北壁」ってヤツだけどね。 粗筋は前述の通りで、なんかノベライゼーション読んでるみたいだったな。 面白いけど、なんか足りない・・ってのが頭から離れない。
818 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/05/18 19:18 ID:MCgVOhuu
ハリー・アダム・ナイト「恐竜クライシス」(創元推理文庫) ‘84の作品。ニワトリ小屋で何かが暴れている。狐か野犬か、めんどくせえが見に行くか… ショットガン片手に乗り込んだ農夫の前に立ちはだかったのは、何と絶滅したはずの恐竜 だった!封建領主のごとく振舞う大富豪の貴族の私設動物園に秘められた謎を追って、 しがない地方都市の新聞記者デヴィッドとジェニーが目撃したのは古代の怪物どもがひし めく異常な光景。大富豪の歪んだ野望を阻止すべく奮戦する二人だが、何と恐竜たちが 檻から解き放されてしまう!出会う者・物を全て食いつくし壊しつくしながら、奴らが町に 迫ってくる!「ジュラシック・パーク」の6年先を越した手に汗握るパニックホラー!! 基本的なアイディアは「ジュラシック・パーク」と同じですが、あちらが孤島の閉鎖空間を 描いたのに対しこちらの舞台は地方都市。のんびり暮らす住民が突如現れた恐竜たち に驚く暇もなく食い尽くされていくさまは、不快感を通り越して小気味よさすら感じます。 人類にとって極めて有害な野望を抱いた大貴族という悪役の存在もソープ・オペラ的な 楽しさがありますし、ラストもこの手のストーリーの定石で、期待を裏切りません。B級ホ ラーの香りがプンプンするかもしれませんが、グロ描写を散りばめながらも読者を飽きさ せずにスピーディに展開していくストーリーは、やはり優れた筆力の賜物でしょう。久しぶ りに文字通りの「徹夜本」に出会えました。お奨め。
ho
ミネット・ウォルターズ ジョウナサン・ケラーマン フィリップ・マーゴリン オススメ。
ミネット・ウォルターズ ジョナサン・ケラーマン フィリップ・マーゴリン オススメ。
MONSTERSで紹介されてた、 小川勝己の彼岸の奴隷読みますた ホラーじゃないけどホラーじゃないけど・・・
823 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/05/28 23:17 ID:+Ne8MKX1
スティーヴ・ラスニック・テム「深き霧の底より」(創元ノヴェルズ) ‘87の作品。−「いつ帰ってくるんだね、おまえ」深夜にかかってきた電話の相手は、十年 以上も前に洪水に飲み込まれた父だった…考古学者のリードは、誘われるままこれまで 避けてきた故郷シンプソン・クリークの土を踏む。洪水の原因となった鉱山開発会社は今 だ操業を続け、住民たちは自己欺瞞の中、沈黙を守っていた。しかし安らがぬ死者たちの 怒りは街を覆う深き霧の底から湧き上がろうとしていた。人を襲い続ける熊、不気味な人影 や物音に慄くばかりの住民たち。自らの過去を発掘しようとするリードの背後にも静かに 霧が忍び寄る…止まれぬ怒りに駆られた死者たちの怨念と地霊の怒りが結びついたとき、 空前のカタストロフィが町を襲う。「静かな」ホラーの手練が描く驚愕の結末。 「静かなホラー」の傑作だということで取り寄せてみたのですが、クライマックスまでひたす ら静かなテンポで進み、最後の最後でグググッと盛り上がるという構成。ただ静かだという わけではなく、徐々に恐怖感を高め(しかも読者自身が気がつかないほど徐々に)ていき、 クライマックスでそれまで蓄積させた恐怖感を、堰を切ったように解き放つ様子は見事。 ただし、じっくり時間をかけて読み込まないと、そこかしこに埋め込まれた伏線を見落として しまい、味気ないものになってしまうことには注意が必要でしょう。エンターテイメント性の 高いライトな感覚を楽しむ作品ではありませんが、じっとりとするこれからの季節に合わせ て、このクセはあるが極上の作品を愉しんでいただければと思います。
今日みたいな暑くて食欲の無い日は 大石圭の「湘南人肉医」がおすすめ
825 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/05/30 20:37 ID:2AbZ8ewD
デヴィッド・セルツァー「オーメン」(河出文庫) ‘76の作品。6月6日6の刻、アメリカ政界の有力者、駐英大使ソーン夫妻がやっと授かった 赤ん坊は黙示録の獣の数字をそなえた反キリストだった!デミアンと名付けられたその赤 ん坊が成長するにつれ、大使夫妻の周囲では、赤ん坊の乳母、その出生の秘密を知る神 父と、デミアンに関係した人物の謎の死が続発する。一方、大使夫妻の取材を続けていた カメラマン、ジェニングズも関係者の謎の死に奇妙な共通点を発見し、ソーン大使に警告す る。デミアンの出生の秘密を探るべく、ソーンとジェニングズはローマ、そしてイスラエルへ 飛び、恐るべき悪魔の陰謀を阻止せんと奮闘するが…同年公開の同名映画の脚本家自身 によるノヴェライゼーション。 「ローズマリーの赤ちゃん」「エクソシスト」と並んでホラー・オカルトブームを巻き起こした本 作品。通常のノヴェライズのプロセスは映画→小説ですが、本作品はシナリオ→小説・映画 というように直接的に映画の影響を受けていないという面白い製作過程を持っています。 小説→映画のプロセスを辿った上記2作品に比較するとライトであることは否めませんが、 映画ヴァージョンと比較すると、例えばシーンの設定、登場人物の名前や性格付け、小説 特有の心理機微の表現など、ディティールの差異がいくつも発見でき、非常に面白い。 映画ヴァージョンの完成されたイメージを楽しむもよし(役者陣が素晴らしい。G・ペック、H・ ステファンス、D・ワーナーと性格俳優ぞろいです!)、小説ヴァージョンで独自のイメージを 膨らませるもよし。映画では捨象された詳細な設定の部分も明かされていますので、映画 をご覧になった方でも充分堪能いただけることは請け合いです。
>>825 (゚∀゚)ノ
オーメンはまだ未読ですた。探してみます。
あの時代は悪魔のワルツ(71)とか悪魔のシスター(73)とか悪魔の沼(76)とか
邦題に「悪魔」のつく映画がイパーイ公開されましたねえ
小説があったのかどうかは知りませんが悪魔の追跡(75)が1番怖かった(;´Д`)
>>826 もちろん(というのも変ですが)絶版ですので、ご注意下さいね。
少々調べてみますと、「悪魔の〜」とタイトリングされている作品は
60年代後半から70年代末にかけて集中しているようです。
当時のわが国の配給会社が何でもかんでも「悪魔」と枕詞をつけて、
「ローズマリー〜」「エクソシスト」「オーメン」のヒットの二匹目
のドジョウを狙わんとしたのと、世界的に蔓延した終末思想が
善と悪のアーマゲドンという二分論に結びついてこのような結果になった
のでしょう。
蛇足ですが、悪魔シリーズで一番笑ったタイトルは、60年代に作成された
「悪魔のかつら屋」。どうもスウィーニー・トッド伝説のようなストー
リーのようですが…
828 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/05/31 19:57 ID:wWst0LOo
ショーン・ハトスン「スラッグス」(ハヤカワ文庫NV) ‘82の作品。じめじめと湿る地下室。暗闇の中蠢く、一面のナメクジたち!中には異常なほど 巨大化し、その空腹を抑えきれない連中もいる。泥酔した家主を大集団で血祭りにあげるも その飽くなき食欲をもてあますナメクジどもは下水管を通って町中に拡散し始める! 衛星検査官のブラディが発見したのはドロドロの粘膜に覆われ、肉をほとんど削ぎ落とされた 異状死体。他の空き家にもヌラヌラした「何か」の通り道をいくつも発見し、ついに巨大化した 黒光りする醜悪なナメクジどもに遭遇する。町中をパニックに叩き込み、食えるものなら何でも 食い尽くすナメクジどもには、既製の毒物も通じない。寄生虫をばら撒きながら町を蹂躙する ナメクジどもを、果たして止めることはできるのか!?究極のナスティ・ホラー!! 英国オ下劣ホラー界の雄、ハトスン(裏表紙の写真が素敵です)。ストーリー自体は凡百の 動物パニックものと何ら変わりないのですが、今度のモンスターはこれからの季節の敵役、 ナ メ ク ジ さんです。しかも日本にいるようなかわいいサイズのそれではなく、黒光りす る巨大な奴ら。こいつらが大挙して押し寄せ、目から口から耳から鼻から、そして女性の ×××からズルリと入り込み、体中を食い漁ります。誤ってナメクジの断片や分泌液を口に しようものなら、体内で寄生虫が大発生し、漏れなく体が中から食い破られたりします。 比較的短い作品なのが残念(おなかいっぱいという向きもあるでしょうが)ですが、容赦ない グロ描写に感覚が麻痺し、きっと殺人ナメクジの大活躍に心躍らせることでしょう!! 頭を空っぽにして堪能しましょう!!!
829 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/05/31 21:16 ID:ZmOLqtFE
>>828 パトリシア・ハイスミスの短編にもカタツムリの研究に憑りつかれた
男の話があったね。
その男が巨大カタツムリの島で食われていくシーンは気持ち悪かった
830 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/06/01 02:29 ID:OE3n7lza
>>829 パトリシア・ハイスミスの短篇には、巨大カタツムリに食われる話の他に、
無数のカタツムリに窒息死させられる話もあった。
どっちもイヤ〜な死に方だな〜。
死霊のはらわたが流行ると 死霊のえじきやら死霊のしたたりやら 死霊の罠やらトドメに死霊の盆踊り〜
>>829 >>830 ハイスミスはミステリ色の強い作家と思って敬遠していたのですが…
まるでオ下劣ホラー作家じゃないですかw
>>831 わが国も同じようなものですね。貞子(女優霊?)が流行ると怨霊
系はほとんど髪長・顔隠し・白ワンピに四つんばいにモデルチェンジ
しましたからね。それほど元祖が衝撃的だったということでしょうが。
>>832 恐怖館さんは海外小説専門ですか?
題名・作者を失念したんですけど、
ある貧しい一家がお金を稼ぐために娘を工事中?の縦穴に落っことして
救出されるまでの援助金やらなんやらをせしめる話ご存知でしょうか?
穴に落とされた少女は異常な状況下に置かれた結果超能力を得る。
そっから先を読む前にその本無くしちゃったんですよ〜('A`)
もしご存知でしたら題名だけでも教えてもらえませんか?
海外小説だったのは間違いないんですよ・・・
志麻子ねえさんなら「邪悪な花鳥風月」「魔羅節」でしょう。
文章も美しいし最高に面白かったんだけど、エログロすぎて友達に貸せない...
「魔羅節」では男も女も犯す。
犯されるのは、白塗りの男児、男娼、流れ着いた黒人の男、薄汚れた童女、
足のつぶれた娘、子連れの女、盲の処女。
「邪悪な花鳥風月」の「黒い風の虎落笛」なんか腐臭が漂ってきそう...
でも、この悪魔のような男が恐ろしく抜群に色っぽい。
「岡山女」「ぼっけえきょうてえ」より迫力あるとおもったけどな。
その後そんなに迫力ある泥臭いホラーを書いてくれてないんで、がっかり。。。
あと、これ!
http://www.fukkan.com/vote.php3?no=18657 荒俣宏監修、「怪奇幻想の文学 全7巻」!復刊してくれ〜…。
怪奇文学の決定版です。
荒俣先生、いい仕事するなあ。
>>833 う、うーん…何だかお話しの部分はまだまだイントロのようなので、
これとは判断できませんね。残念ながら。(虐待された)少女が超能力
を持つという話ならば、例えばバリ・ウッド「エイミー」「殺したく
ないのに」、ジョン・ファリス「フューリー」、キング「ファイア
スターター」「キャリー」、ディーン・R・クーンツ「12月の扉」
なんかがありますが…
>>834 確か荒俣氏は平井呈一大先生の最後の弟子ではなかったでしょうか。
やはり弟子としては、師匠の業績を越えたいと思うのでしょうかね。
>833 マーティン・シェンク『小さな暗い場所』(扶桑社ミステリー)では? 金に困った夫婦が、井戸に落ちた子供の救出が中継されて義捐金が寄せられた事を思い出して、 息子を井戸に落とそうと計画。しかし、落ちたのは息子ではなく下の娘で…。 って話でした。
837 :
833 :04/06/04 04:03 ID:C1VH9ISG
>>836 おおおお!
それです!微妙に記憶違い申し訳無いです。
今日書店逝ってきます。
ありがとうございました。
>>835 解決致しました。
バリ・ウッドの作品は未読でしたので、
今日見つけられたらまとめて買ってみますw
>>836 なるほど。その作品は知りませんでしたね。しかし
井戸に子供を落として金稼ぎとは…荒業ですな。
そういえば、創元推理文庫から近々本邦初訳のヴィクトリアンばかりを 集めた短編集が出るらしいです。今の時代にまことに奇特な事ですな。 さすが天下の東京創元社。これでヴィクトリアンのブームなんか来てく れると嬉しいですね…まあ…なさそうですが…
ここの皆さんなら新聞広告等で既にご存知かもしれませんが、 新潮文庫からスティーヴン・キングの短編集が発売されました。 『第四解剖室』と『幸運の25セント硬貨』。ともに定価740円です。 この十年の総決算なのだそうです。 新潮社のホームページには「これが最後の短編集かも」とあります。(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル これが最後の短編集かも.......これが最後の....かも.......嗚呼、頭から離れません。。 明日、買いに行こうと思います。
841 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/06/06 01:07 ID:fhIvoR0G
保守
842 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/06/08 18:33 ID:P8qk6gOA
保守
ではちょっとまったりする話を。 恐怖の館でこんな話をするの、間違いかな? ほのぼの系オカルトは、 川上弘美「夏休み」(短編集「神様」に収録) アナトール フランス「聖母の軽業師」 怪奇幻想文学って、読んだ後のトリップ感がいいなあと思うんだけど、 れらは読んだあと、なんかいいことありそうなあったかい気持ちになります。 あと、恋愛モノで何かおすすめないですか? 中上紀の「悪霊」、バリの神々にささげる踊りをモチーフとした、現実と 幻想の狭間でうつろう不思議な小説です。 美しくて官能的な作品です。センスよくエロすぎず人にも貸せます(笑)
>>843 まったり系というか、Gentle Ghostの物語は昔からありますのでね、
間違いなんていうことは全くありません。むしろ盛り立てていただ
きたいくらいですよ。私は日本人のホラー作家はあまり詳しくあり
ませんで、できればどんどん紹介してください。
ガイシュツだったらスマソ。 ルース・レンデルの「メイフィールド館の殺人」 なんてこたぁない、メイドが雇い主の一家を殺すんだけど、 普通の殺人事件モノは、事件が起こって、その犯人や犯行理由等を 解明していくってのが一般的じゃん? これは最初から犯人はメイドだと分かってて、 どうして彼女が殺人を犯すに至ったのかの経緯を描写してる話。 別に特に猟奇的なわけでも幻想的なわけでもないが、 メイドの淡々とした歪んだ価値観が静かに怖かった記憶がある。
846 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/06/20 20:05 ID:OblX3abd
マイケル・スレイド「グール(上・下)」(創元推理文庫) ‘87の作品。ニュー・スコットランド・ヤードが「吸血殺人鬼」と称される連続猟奇殺人犯の 神出鬼没の犯行に振り回されていた折、ロンドンを震撼させる新たな殺人鬼が何と二人 同時に出現した!犠牲者をマンホールから引きずり込む「下水道殺人鬼」に、無差別爆弾 テロをおこなう「爆殺魔ジャック」。ヤードの女警視正ヒラリーが捜査の難航に苦慮する中、 遠く離れたカナダではチャンドラー警部補が麻薬捜査の過程で不可解な殺人事件と、謎 めいた双子の存在に行き当たる。イギリスとカナダの事件は、やがてパンクバンド“グール” を結節にして、複雑に絡み合った糸が次第にほどけ、驚愕の真相が明らかになる!後に 「髑髏島の惨劇」「暗黒大陸の悪霊」などでスリラー作家として地歩を固めたマイケル・スレ イドが、ラヴクラフトに捧げたサイコホラーの決定版!! カナダの弁護士三人組の共同筆名、マイケル・スレイドの第二作。ラヴクラフトに捧げたと 巻頭にあるだけに、随所に神話作品へのオマージュが散りばめられています。しかも、単 なる変則的神話作品に留まらず、秀逸な警察小説、さらにはミステリーとしての要素も閉じ こまれ、実に贅沢な「読ませる」作品に仕上がっています。本作品はサイコホラーとして認 知されていることが多いですが、読み終わった後に、ラヴクラフトのある作品に通じるメッセ ―ジが込められていることに大きな驚きを覚えることでしょう。その点で、この作品は最終的 に単なるサイコホラーに留まらない、コズミック・ホラーの範疇にあると言えるでしょう。 創元推理文庫の復刊フェアの目玉となった本作品。今ならまだ店頭で入手できるのでは ないでしょうか。ぜひ一度、読んでいただきたい名作です。(スプラッタ表現がキツイという 前評判でしたがそうでもありません。そちらに弱い方でも安心して…やっぱキツイかな??)
>>822 さん
ホラーじゃないけど・・・
オモシロカッタよね。
まともな人間が一人も
出てこないところが好きかも。
848 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/06/22 02:20 ID:XG9vciNk
>848 映画のタイトルと混ざった。 サンクスコ。
北村薫編・新潮文庫「謎のギャラリーこわい話」の短編文頭の【七階】 ある大病院に入院した男の恐怖を描いたもの その病院は七階建てで一階は末期患者専用 上階に行くに従い軽症患者となる 七階(軽症)に入院した男は、自分はたいした事ないと安心するが 病院側の手違いやら何やらで次第に下階(重病)へ下ろされる 自らの意志に反して状況が悪化してゆくという心理恐怖物 ちなみに作家はカフカの再来と言われるイタリアの「ディーノ・ブッツァーティ」
851 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/07/03 12:21 ID:yvoKYVRV
トマス・トライオン「悪を呼ぶ少年」(角川文庫) ‘71の作品。ホランドとナイルズの双子の兄弟。父親は数年前に事故死し、それ以来、 母親は塞ぎ込み部屋に閉じこもりがち。何事にも冷笑的な態度のホランド、感受性が 強く心優しいナイルズと、双子は対照的な性格だったが、祖母のアダに見守られながら、 田舎の静かな日常を過ごしていた。そんな折、同居するいとこが事故で急死、隣家の 老婦人も腐乱死体で発見され、そこにはいつも双子の影がよぎっていた。日に日に強 くなる不吉な兆候。アダは孫への愛ゆえに見過ごそうとしていた恐るべき真実に慄然と する…リリカルな文体で語られるあまりにも悲痛で、静かな恐怖を誘うアメリカン・ゴシッ クの正統派ホラー。 元俳優で少数かつ良質のホラー作品を遺したトライオンの長編第一作。あまりにも悲しい 恐怖譚。胸を打つ感動と、雫のように滴る恐怖が同居した超一級の名作です。このような 大作には多くを語ることこそ無粋というものでしょう。とにかく、どこかで見かけたら手にとっ てみて下さい。大のお奨めです。ホント、騙されたと思って読んで。
852 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/07/06 02:21 ID:NZlQgsPn
>>851 原作者が脚本を担当した映画版も良かったですよ。
ナイルズとホランドを、実際に双子の少年が演じてました。
>>852 映画も名作の誉れ高いそうですね。残念ながら現在では絶版状態
のようですが。DVDで復刻でもしたら即買いなんですがね…
854 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/07/06 22:59 ID:/gQp94wq
アイラ・レヴィン「ブラジルから来た少年」(ハヤカワ文庫NV) ‘76の作品。ナチハンターのリーベルマンはブラジルから驚くべき情報を受け取った。 大物戦犯のメンゲレ博士が「65歳前後の男性」94人を殺害すべく、暗殺者たちを世界 中に派遣したというのだ!情報提供者は消されてしまい、空をつかむような思いで 謎の連続殺人を追うリーベルマン。「65歳前後」「男性」「公務員ないしは安定した職業」 「年の離れた妻」…被害者たちのこの共通性の意味とは?メンゲレの狙いはどこに あるのか…?調査を進めるうちにリーベルマンはついにナチス残党の恐るべき陰謀 にいきついた。しかし、既にその背後にはリーベルマンへの憎悪を煮えたぎらせる メンゲレの魔の手が迫っていた!アウシュヴィッツで「死の天使」と恐れられたメンゲレ の狂気の夢と、追うものと追われるものの宿命の対決を描いたサスペンス・ホラー! ナチス陰謀物は私の気に入りのジャンルですが、さらにクローン(ネタばれですが)という 当時としては最新のアイディアを包含し、オカルティックな方向に流れがちな「ナチ物」を 一風変わった、クローン技術が現実のものとなった現代でこそリアリズムを感じる作品に 仕立て上げています。レヴィンのこの先見の明には賞賛を惜しみませんが、いかんせん メンゲレという邪悪で魅力的な悪役にあんな末路を辿らせるのは実に惜しい。 映画「アイヒマン追跡作戦」ばりの緊張感を持たせて欲しかったですね…本作品はG・ ペックがメンゲレ博士役で映画化されているようです(ペックって結構ホラー作品に出演 していますね)。因みに本物のメンゲレ博士は‘79前後に南米(南アとも)で病気でひっそりと 亡くなったそうです。「ナチ物」の金字塔的本作品。一読の価値アリです。
ジェームズ・ハーバート「ダーク(上・下)」(ハヤカワ文庫NV) ‘80の作品。超心理学者プリシュラクが36人の男女とともに集団自殺を遂げた館、 ビーチウッド。ゴーストハンターのビショップは不動産業者に依頼され、館の不気味 な雰囲気の元凶を探ろうとしていた。そこで彼が見たのは集団自殺の幻影だった! それから九ヵ月後、館の周辺で夜間、奇妙かつ残忍な殺人事件が続発する。加害 者たちは夜が明けると放心し、自分たちが何をやったのかも理解できない状況だ。 館から放たれる邪悪の根源を探るべく、超心理学者クーレクに再度調査を依頼され たビショップは、ク−レクの娘と共に死せるプリシュラクの恐るべき野望に立ち向かう。 <闇>の力は今や強大となり、人々を狂気に陥れながらロンドンに迫る!! 英国ナスティホラーの俊英が放つ地獄の黙示録!! 85年の「ムーン」に続きハーバート二作目ですが、初期の作品ほど彼の筆は冴えてい るようです。もはや伝説的な「霧」と同様、集団の狂気をモチーフにした作品で、霧が 闇に変わっただけじゃんという批判もあろうかと思いますが、激しいまでの暴力・グロ 描写、そして危機また危機のスリリングなストーリー展開は充分楽しめます。作風を 例えてみるならば、「下品な(初期の)クーンツ」といった感じでしょうか?難ありとすれ ばラストがいささか拙速かつ大胆すぎる点、女性の話し言葉がやたらとギクシャクして いる点でしょうか。しかし、これらの点を差し置いても、パニックホラー小説としてはA級 と言えるでしょう。お奨めできる作品ですね。
バートン・ルーシェ「人喰い猫」(角川文庫) ‘74の作品。田舎町の屋敷に居を構えたビショップ夫妻。のどかな生活をいたく気に入って いた夫妻だが、ある日森の中で無残に引き裂かれた愛犬の姿を発見してからその生活に 影が差し始める。小鳥のいない森、夜な夜な響く猫たちの鳴き声、そしてついには猫に噛 まれた近所の住人が急死してしまった!愛犬を引き裂き、食い散らかしたのも…? 「都会からの避暑客の気まぐれで捨てられた猫たちはただちに野生に戻り、肉食を始め、 用心深く、単独行動を取るようになる…」単独行動?じゃあ庭徒党を組んでをうろつき回る あいつらはいったい?次から次へ森から湧き出してこの屋敷を囲み始めたあいつらはいっ たい…?凶暴な野良猫たちに包囲されたビショップ夫妻の運命やいかに。 角川「絶版」文庫群の実にマニアックな作品。もしかしたら抄訳なのか?と疑うほどに場面 展開が唐突ですし、これ以上ないくらい薄っぺらな登場人物設定は驚愕物です。さらに 「人喰い猫」と銘打って押し出しているにもかかわらず、実質喰われてしまうのはたった一人で、 邦題の付け方も詐欺まがい(原題は”FERAL(野性味のある・残忍な)”)。全く予想を裏切らない ラストも肩透かしです。よくこれが商業ベースに乗ったなと逆に感心してしまうような作品です (まあ、結果絶版なわけですが)ね。ただ、マニアというものは不気味なもので、これほど褒め所 のない作品にもかかわらずどことなく愛してしまうところですね。どこが?というのがまともな 意見でしょうが…まともなホラーファンなら激怒必至の本作品。読まないほうが利口です!?
トマス・トライオンの「悪を呼ぶ少年」良かった!怖い怖い! で、「悪魔の収穫祭(上)(下)」も買って読みましたよ。私には、こっちの方が、こわ面白かった。 トライオン、いいっ! どうもありがとうぎざいました!!
858 :
新参者 ◆1BoyUhe6Ns :04/07/24 02:09 ID:JevUD0ai
『ウィアード テールズ 1〜5』 『ウィアード テールズ 別巻』 (国書刊行会)
これもマニア向けですね。私も全部は読みきれていません。なんというか、その・・すぐ飽きるんですね。。
それでも資料価値が高いので、手放しておりませんが。
まぁ別巻のほうは何度か読み返しました。これはウィアードテールズを中心に、いわゆるパルプマガジンの歴史をも
記した本ですね。怪作20選なる梗概も面白い。そうですねぇ・・別巻だけ持っていれば充分かもしれません。
>>856 恐怖館主人さん、さすがですね。その作品、存在すら知りませんでした。いつものことながら脱帽です。
角川書店はいろいろ冒険してくれるのがいいですね。その方面では最強かも。
もしも「絶版ホラー文庫完全復刊フェア」とかやってくれたら、神と呼ばせていただきます。
859 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/07/24 15:48 ID:X1eXZibT
マイクル・F・アンダースン「総統の頭蓋骨」(ハヤカワ文庫NV) ‘87の作品。イギリスの地方都市バトフォース。列車の謎の脱線事故を皮切りに、ピクニック場 での惨殺事件、好人物とみなされていた女性の壮絶な自殺劇、頻発する事故、そして、町のあ ちこちに現れ始めた黒い軍服姿の男たち…事件の陰に潜む超自然的存在に気が付いた地方 記者ハモンドは友人の霊能者ロイを呼び寄せるが、立ち向かうべき相手は強力でロイの歯も 立たない。ついにハモンドはロンドンでも指折りのオカルティストに助けを請うが…忌み嫌われ ながらも偉大なパワーを秘める謎の「箱」を巡って、軍服の亡霊たちを向こうに回して、ハモンド 達は町を、そして愛する人を守れるのか…英国の名手が送る新鋭作家の恐怖譚! まず当時のハヤカワさん(モダンホラーシリーズの担当は風間健二氏ですね!)に物申します。 タイトルでネタばらしたらだめでしょう。原題は”The Unholy”で、「総統の頭蓋骨」は後半も後半 で明かされる「衝撃の事実」じゃないですか。それを表紙で…まあ、もういいです。ここからは 作家への文句です。悪役の魔道士を間抜けに描きすぎです。列車から投げ出された「箱」を 探してうろつきまわっても見つけられない。あきらめていたのが主人公の連絡でしめしめとやっ てきたのはいいが面がばれて有無を言わさずボコボコにされて監禁。諸手を上げて逃げ出した はいいが亡霊に襲われてこれまたボコボコに…コミックホラーにしたかったのですか?緊張感 ゼロです。あ、あとハヤカワさんにもう一つ。作家の紹介に「英国のS・キング」と押し出すのは やめましょうよ。本国でも誰も言ってませんから。だから絶パ…ふう。
>>857 そうですか!読んでいただけましたか!紹介したかいがありました。
これを機に他の怪奇文学にも目を向けてみて下さいね。
>>858 ウィアード全巻所有とは…コレクション量質ともに新参者さんには負けますよ。
絶版文庫全巻復刻…口から泡吹きますよ。嬉しくて。
>>856 ここまで言われると逆に読んでみたくなるなw
でも絶版なのか…。
862 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/07/28 00:17 ID:0o6zkdv6
ageていいっすか^^; 恐かったりのとかグロかったりする映像作品がだいっきらい (恐いからw。ついでに言うと音だけでももうだめ)なんですが、 ホラーに分類される小説で「あまり恐くもグロくもなくて」 巧い小説ってなんかいいのないっすかねー。 かつてキングの『痩せゆく男』を読んだ時は「巧いなぁ」って思いました。 「巧い」の基準は人それぞれだと思いますが、そこはそれ、紹介者の 個性ってことで。 繰り返しますけど「あまり恐くもグロくもない」やつをよろしくです>< # 自分で言ってて支離滅裂なのは分かってるんですがw
863 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/07/28 02:35 ID:YXEXFCB8
>>862 スーザン・ヒルの「黒衣の女」とかはどうだろー?
閉鎖的な田舎の、霧がたちこめる沼のほとりに建つ幽霊屋敷に引っ越してきた
一家が、いろんな怪奇現象に襲われる話。
グロ度はゼロに近い。ただし、けっこう怖いかも。
昔、ハヤカワ文庫のモダンホラー・セレクションから出て、一度絶版になって
から、表紙をかえて復刊。現在、入手可能かどうかは不明。
>>862 とりあえず、19世紀後半から20世紀前半にかけてのいわゆるヴィクトリアン
正調怪談物の短編集はいかがでしょうか。時代の色香を漂わせる名品がたく
さん見つかりますよ。因みに「黒衣の女」はこの正調怪談の系統にあたりま
す。拙筆
>>740 をご参考にどうぞ。
865 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/07/28 21:54 ID:YJKMg9bX
オーガスト・ダーレス他「恐怖通信」(河出文庫) ‘85版。収録作品は以下の通り A・ダーレス『幽霊』/R・W・トーマス『ブラッドレー家の客』/R・E・ヤング『犠牲の年』 F・アッシャー『ヴェルサイユの幽霊』/M・レングル『愛しのサタデー』 W・バンキアー『おぞましい交配』/M・ラインスター『悪魔の手先』 M・R・ジェイムズ『バラ園』/W・テン『ぼくのママ魔女』/M・M・ハードウィック『ブラック乳母』 P・アンダースン『サラマンダー作戦』/R・ブラッドベリ『十月ゲーム』 収録作品は大体、50〜60年代の「キング以前」のものが多い。翻訳家、中田耕治氏のお弟子 さんたち(全て女性!)が名刺代わりに訳しましたといった趣です。恐怖通信と銘打ったに しては、ファンタジックな作品(魔女・魔法を題材にした作品)が多いですね。ジェイムズ、ブラ ッドベリの周知の二作品以外では、ヤング、レングル、テンのものがユーモラスでなかなかの 出来。あとの作品は月並みですかね。翻訳の稚拙さがいくつかの作品で目立ちます。 まあ卒業文集的な作品集ですからその辺りは、ということでしょうか?「買い」ではないですね。 凡百アンソロジーの一つ。
866 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/07/28 21:55 ID:YJKMg9bX
スプレイグ・ディ・キャンプ他「恐怖通信2」(河出文庫) ‘87版。収録作品は以下の通り S・V・ベネット『猫の王さま』/R・E・ハワード『屋上の邪神』/R・パーカー『手押し車になった少年』 B・マーシャル『鳩の踊り子』/F・ライバー『レントゲン写真』 R・ブロック『キャンディにはキャンディを』/M・A・デフォード『ヘンリー・マーティンデールと大きな犬』 S・D・キャンプ『タンディラの眼』/L・T・ミード『呪われた魂』/W・H・ホズソン『見えない馬』 前作から時代は遡って30〜40年代の作品が中心。またもや中田耕治先生のお弟子さん達の 翻訳集となっております(前作売れたんですかねぇ?)。掲載基準はどこにあるのかと思う程、 前作よりもカオス状態。好き勝手してます。ブロックの作品は参考テキストのせいなのか、 タイトルが間違っています(内容はさすが巨匠というべき出来です)。ハワード、ブロック、 ホズソン(ホジスン)の作以外では、ライバーが出色で、デフォード、キャンプのユーモアたっ ぷりの作品もおすすめ。ミードが心霊探偵仕立てで次点。残りは凡作です。
867 :
862 :04/07/28 23:33 ID:0o6zkdv6
>>863 >>864 作品を紹介いただきありがとうございました。
「黒衣の女」は、とりあえずamazon.co.jpでは入手可能であるようなので、
市中の書店や古本屋を回ってみたいと思います。
>>19 世紀後半から20世紀前半にかけてのいわゆるヴィクトリアン
>>正調怪談物の短編集はいかがでしょうか。時代の色香を漂わせる名品がたく
>>さん見つかりますよ。
もしご面倒でなければ、書名、出版社名などご教示いただければ幸いです。
話変わって。
このスレで何度か筒井康隆の名前が挙がっていますが、
「母子像(タイトルが変わったんでしたっけ?)」「鍵」「走る取的」
「乗り越し駅の刑罰」あたりはホラーと意識せずスルッと
読んでしまった覚えがあります。
自分が恐がりなのは十分意識しているんですが、
活字ベースのホラーには不感症気味なんだろうかとか思ってみたりして^^;
>>867 絶版になっておらず、一般書店で入手しやすいアンソロジーとしては…
「怪奇小説傑作集1〜3(英米作家編)」「恐怖の愉しみ(上下)」創元推理文庫
「乱歩が選んだベストホラー」ちくま文庫
「淑やかな悪夢」国書刊行会
「ロアルド・ダールの幽霊物語」ハヤカワ文庫
「幻想と怪奇1」ハヤカワ・ポケミス
といったところでしょうか。それからアンソロジーではありませんが、
傑作連作物、アーサー・マッケン「怪奇クラブ」創元推理文庫もぜひ
どうぞ。
869 :
本当にあった怖い名無し :04/07/29 16:40 ID:kgSNklAg
童話「黒犬家具店」 昔、クラスの先生が持ってきてみんなで読んだんだが ほんとに恐怖でした。内容は覚えてないけど、やたら 残酷だった気がしる。当時、トラウマで椅子に座れなく なった記憶が。ググっても出て来ないし誰かしらね?
870 :
869 :04/07/29 17:09 ID:kgSNklAg
新刊情報です。 「怪奇礼讃」中野善夫他編訳・創元推理文庫 本邦未訳の英国正調怪談を中心に22編を収録。かなり太っ腹で 期待できる一冊。
872 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/07/30 22:07 ID:6NNcCtcn
アガサ・クリスティー「死の猟犬」(ハヤカワ・クリスティー文庫) ‘33の作品。収録作品は以下の通り 『死の猟犬』/『赤信号』/『第四の男』/『ジプシー』/『ランプ』/『ラジオ』/『検察側の証人』 『青い壺の謎』/『アーサー・カーマイクル卿の奇妙な事件』/『翼の呼ぶ声』 『最後の降霊会』/『S・O・S』 ミステリ界の不動の女王、クリスティーの怪奇幻想短篇ばかりを集めた作品集。超自然の パワーを持つ修道女の悲劇を描いた表題作、古屋敷に越してきた家族に降りかかる霊現象 『ランプ』、霊能者とその婚約者を襲った悲劇の物語『最後の降霊会』など、純粋なスーパー ナチュラルホラーもあれば、怪奇幻想仕立ての変則ミステリ、丁々発止の法廷サスペンス 『検察側の証人』も収録された実にお得な一冊。もともと18世紀からのゴシック・ロマンスの 系譜を継承し、その超自然性に合理的解釈を加えたミステリと、怪奇幻想文学は兄弟分の ようなもので(ポオなどはその過渡期の好例でしょう)、巨匠といわれるミステリ作家には、 怪奇幻想作品を遺している場合も多い。ただ、やはりクリスティーはプロパー作家ではない ので絶賛に値する作品はないものの、標準以上の小品が揃っています。
873 :
867 :04/07/30 23:16 ID:K5Q0AgfG
>>868 うひょー、思いの外あるものですねー。
読む速度の問題もありますし、
ぼちぼち探していきたいと思います。
コメントありがとうございました。
874 :
本当にあった怖い名無し :04/07/30 23:29 ID:7PFK0rtb
桐生祐狩『物魂―ものだま―』 少女 少女人形 フェチ などがぬるく好きな人と人形が怖い人にお勧め。 作中に2ちゃんが出てくるので、寒いのが好きな人にもお勧め。
875 :
本当にあった怖い名無し :04/07/31 03:04 ID:lewA1Ktg
>>872 クリスティーなら「謎のクィン氏」が、オカルト探偵小説としてなかなか
面白かった記憶あり。
どこにでも自由自在に出没する探偵が、どう見てもこの世の人間ではない。
>>875 ハーレ・クィーン氏でしたか?例の恋愛シリーズを髣髴とさせますねw
オカルト探偵といえば真っ先にサイレンス博士やカーナッキが出て来ますが、
かのディクスン・カーの悪魔的探偵アンリ・バンコラン物にもいくつか
怪奇幻想風味の作品があるようですね。そちらもいずれ。
ポケミスでサックス・ローマー「怪人フーマンチュー」が刊行されるようです。
23日にはDVDでクリストファー・リー主演の同タイトルの映画も発売される
模様。怪談の季節で新刊が相次ぐのは喜ばしいことですが、お財布が追いつかない…
877 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/08/04 19:52 ID:WEG1VQYK
ウィリアム・ホープ・ホジスン「夜の声」(創元推理文庫) ‘85編。収録作品は以下の通り。 『夜の声』(1)/『熱帯の恐怖』(2)/『廃船の謎』(3)/『グレイケン号の発見』(4) 『石の船』(5)/『カビの船』(6)/『ウドの島』(7)/『水槽の恐怖』(8) 作家になる前は船員として世界を旅したという異色の経歴を持つホジスンが、その経験と 想像を最高の形で結実させた、海洋奇譚傑作集。映画「マタンゴ」の原作となった(1)のよ うな大海に潜む奇怪なモンスターを描いた作品をはじめとして、邪悪な原住民の儀式から の逃亡劇を描いた(7)やカーナッキシリーズの原点である(8)と、ワン・パターンでありな がらも、全く飽きないのは各話に登場する数々の脅威が不気味で危険で、そしてぞくぞく するほど魅力的だからです!ラヴクラフトもホジスンのことを絶賛しており、随所に後の彼 の作品に反映されたモチーフが込められ、それを敷衍しつつ読み進めるのもまた楽しい。 船員生活から得たリアリティのある描写も助けて、陳腐な連作集とは一線を画する仕上が りになっています。「異次元を覗く家」「幽霊狩人カーナッキ」と並んで傑作の誉れ高いこの 作品集。絶版ですが、探してでも読む価値ありです。
878 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/08/11 20:31 ID:JQDvUA5w
ディーン・R・クーンツ「12月の扉(上・下)」(創元ノヴェルズ) ‘85の作品。メラニーが見つかった!−6年前に夫とともに蒸発した幼かった娘が全裸で 路上を徘徊しているところを保護されたというのだ。しかも、娘が監禁されていたとされる 家には人外の力でめちゃめちゃに叩き潰された夫を含む男たちの死体が…やっと愛する 娘と再会を果たした心理学者のローラはしかし、完全に自閉症に陥った娘を相手に途方 に暮れる。夫の家に設けられた不気味な実験装置、娘を執拗に追う謎の組織、そして立ち 向かう者全てを粉砕しながらローラとメラニーに迫る途方もない超自然の「力」…刑事ダン とボディガードのアールの助けを借りながら逃走する母子に伸びる死の影の正体は?そし てメラニーが叫んだ「12月の扉」とは?大御所クーンツが放つ驚愕のアクションホラー!! ホラーにスリリングなアクション性を求めるなら、まず真っ先に名前が挙がるのがクーンツ でしょう。本作品もその期待に違わぬ仕上がりになっています。結構わかりやすかったり する展開、正義感の強い刑事の登場といった「クーンツ流」はご愛嬌として、冷酷な少女 虐待というセンセーショナルな押し出し、とにかく息をつかせないストーリー、ハリウッド映画 ばりのラストといった、リーダビリティの高さはさすがというべきでしょう。まあ、「怖い」ホラー とはいえませんが、エンタテイメント性を重視する向きには十二分に応じています。私が 読んだのは旧創元ノヴェルズのヴァージョン(表紙イラストが象徴的でこちらの方が好き) ですが、創元推理文庫ヴァージョンで現在も刊行中です。夏休みにいかがですか?
ウンコもれそ
ディケンズ「信号手」意味の分からないのが今風で実に怖い。えらい文豪の癖にやると思った。
>>880 あれは実に傑作ですね。国内の多くのアンソロジーに収録されている
のも頷けます。ディケンズの怪奇幻想短篇は岩波文庫の「ディケンズ
短編集」で読めますので、よろしかったらどうぞ。
882 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/08/15 16:43 ID:JFTE2EhW
アルジャナン・ブラックウッド「ブラックウッド傑作選」(創元推理文庫) ‘78編集。収録作品は以下の通り。 『いにしえの魔術』(1)/『黄金の蠅』(2)/『ウェンディゴ』(3)/『移植』(4)/『邪悪なる祈り』(5) 『囮』(6)/『屋根裏』(7)/『炎の舌』(8)/『犬のキャンプ』(9) 19〜20世紀初頭の怪奇文学三大巨匠の一人、ブラックウッドの代表作を収録。ジョン・ サイレンス物で猫の町に迷い込んだ旅人の体験する恐怖譚(1)。作者の自然観・宗教観 を如実に著した小作品(2)。『柳』とともに作者の傑作の誉れ高い、大自然の強大さと人間 の卑小さの対比際立つ(3)。変則吸血鬼譚(4)。サイレンス博士と悪霊たちの魔術戦(5)。 幽霊屋敷を舞台に描かれる、男女の愛憎と戦慄の結末(6)。死に別れた子供の霊と 両親の心の交流(7)。歯に衣着せない言動で他人を腐すカップルにかけられた呪いとは… (8)。サイレンス作品の最高峰にして人狼に新たな解釈を与えた傑作(9)。どれも捨てがたい 所ですが、やはり(1)(3)(9)、次点で(4)といった所でしょうか。正調怪談に独自のスピリチュア リズムを融合させた巨匠珠玉の傑作選。
クーンツは怖くないけど実に面白い。「雷鳴の館」なんか、余りの馬鹿っぷりにズコーッとなった。 個人的ベストは「旦那がバケモノになったので逃げる」だけの「戦慄のシャドウファイア」だ。
884 :
本当にあった怖い名無し :04/08/20 01:56 ID:9FyUY0bw
>>883 「雷鳴の館」のオチには大爆笑した記憶がある。
クーンツってハッピーエンド(?)が多いね。 雷鳴の館って、あらすじ読んでちょっと思い出したけど 結末はすっかり忘れてる。 ちょっと見てみようかしらん。
886 :
本当にあった怖い名無し :04/08/20 12:42 ID:1+65lmAN
トレヴェニアンの新作がようやっと出たのでついでに。 「バスク、真夏の死」(原題:THE SUMMER OF KATYA)角川文庫 一作ごとにスパイ物、警察物、歴史小説、純文学などジャンルを書き分け、 そのどれもが傑作だという謎の覆面作家(実は超インテリらしい)のサイコサスペンス。 老境に達した医師の回想録という格好で始まる物語は、スペインはバスク地方を舞台に展開される 豪奢な洋館に住む謎めいた双子と、若き医師との異様な愛の物語です。 エキゾチックなバスクの祭囃子、むせ返るような夏の熱気、浮かび上がる双子の過去… 夕焼けの中訪れる不気味で美しく、物悲しいラストシーン。 そして終幕で執り行われる、ある意味倫理的だけど冷たく恐ろしい犯罪。 ホラーとは言えないが名作です。
887 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/08/29 11:53 ID:7O3HdF/R
レイ・ラッセル「インキュバス」(ハヤカワ文庫NV) '76の作品。ニューイングランドを思わせる片田舎ガレンで起った連続強姦殺人事件。 犠牲者の女性達は皆巨大な陽物に陰部を引き裂かれ、大量の精液と血にまみれて事 切れていた。不吉な前兆を感じてガレンにやってきた人類学者トラスクは、この事件 の背後に、伝説の淫獣インキュバスの復活があることを確信し、その打倒に奔走する も犠牲者は次々と増えていくばかり。地元新聞の女編集長、名士の医師、保安官、そ して「魔女の末裔」であることを苦にする悩める青年と共にモンスターに真っ向から 挑むトラスクに勝機はあるのか…?元「プレイボーイ」誌の編集幹部らしい、 扇情的 な描写に満ちた、エロティック・ホラー! 「エロ」と「ホラー」、この切っても切れない腐れ縁(または最高のカップル) が織り成す、スプラッタパンクの前駆的作品。ワンパターンのプロット、すぐ バレる核心部分、ペラペラの心理描写、意味不明のアイテム(書物)の登場と いった、小説作法を無視した構成もなんのその、インキュバスがひたすら女性を 襲い、レイプしまくり暴れまくりいう、何ともC級の香ばしさが漂っています。 スカッと読み通せますが、後には何も残らない。そんな作品です。欲を言えば、 どうせやるならとことんエロを追求して欲しかったですかね…前評からすると 肩透かしな一冊。
嗚呼・・・インキュバス、ちょうど読みたかったんですよ。 で、(昔買って本棚にあるはず)と思って探してみたんですが、どこにもない。 最近、再読したくなった本がときどき消えてるんですよね。 手放してないはずなのに。おかしなことです。
888に関して。 5、6年ほど前、親がチリ紙交換に出してしまったのかもしれません。 当時、実家を出るにあたり、不要な(2度と読まないし売り物にもならない)文庫を処分したことがあるんですよ。 私は仕事で毎日深夜に帰ってくるという生活でしたので、なかなかうまいタイミングで チリ紙交換に出せなかったため、親に「この束とこの束とこの束を」というように頼んでおいたんです。 するとですね、こっちが指定していない束を売り払っていたわけですよ。 引っ越し先に持って行くはずだった本のうち、絶版多数含む大切な文庫200冊ほどが、どこかへ・・・。 ゴミ束はそのまんま部屋に残されていました。 ハヤカワSF文庫のブラットベリ隊は全滅。創元推理文庫の怪奇シリーズ数点、あとジョーズとかも含まれ。。 インキュバスもそのとき手元から離れたのに私はすっかり忘れていたのかも。 結局、これまでになんとか再入手できたのは100冊弱だと思います。 ごちゃごちゃとわけのわからないことを書いてしまいました。お許しください。。
>>889 よほど悔しかったものとお見受けします。そりゃそうだよね。
常識的な他人様から見れば、絶版だろうが邪魔なものは邪魔なだけ でしょうしね…中には高額な作品もあったことでしょう…お気の毒な話です。 怪奇幻想文学作品の収集が趣味だなんて話すと、ほとんどの方は 「へ、へぇ〜…」というような曖昧な反応をなさいますね。 まあ、自分が好きで迷惑もかけてないわけですから偏見は気 にしませんがね。
892 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/09/01 19:30 ID:1yDxRncX
E・F・ベンスン他「怪奇礼讃」(創元推理文庫) ‘04編。収録作品は以下の通り。 M・ラスキ『塔』(1)/W・H・ホジスン『失われた子供たちの谷』(2)/H・マクダミッド『よそ者』(3) E・F・ベンスン『足音』(4)/H・R・ウェイクフィールド『ばあやの話』(5)/D・トマス『祖父さんの家で』(6) M・アームストロング『メアリー・アンセル』(7)/R・マルホランド『「悪魔の館」奇譚』(8) ダンセイニ『谷間の幽霊』(9)/A・ブラックウッド『囁く者』(10)/J・ホッグ『地獄への旅』(11) M・ボウエン『二時半ちょうどに』(12)/A・M・バレイジ『今日と明日のはざまで』(13) A・J・アラン『髪』(14)/E・アリントン『溺れた婦人』(15)/O・オニオンズ『「ジョン・グラドウィンが言うには」 (16)/S・ベアリング=グールド『死は素敵な別れ』(17)/M・E・ブラッドン『昔馴染みの島』(18) E・ノースコット『オリヴァー・カーマイクル氏』(19)/M・コルモンダリー『死は共にあり』(20) G・W・ストーニア『ある幽霊の回顧録』(21)/J・D・ベリズフォード『のど切り農場』(22) 久しぶりに出版されたヴィクトリアン正調怪談集。(1)(9)(14)(22)を除いて、全て本邦初訳という 意欲作です。いきなりの(1)に戦慄したかと思えば、良質のコンピレーションアルバムのように ユーモアあり、恐怖ありまた涙あり感動あり…と、絶妙な緩急で編集された珠玉の名作集。 どれも味わい深く、ひとひねりした作品でよくもここまで集めたなと感動すら覚えます。 「恐怖小説の醍醐味は短篇に在り」と言われますが、それを見事に証明しています。 正調怪談入門者にも、そしてマニアの方々の期待にも充分応える逸品。お奨めです。 (蛇足ですが、(4)はある日本の古典怪談とそっくりです。英訳されたテキストを参考にしたのでしょうか?)
このての名作談義で度々出てくる ロラン・トポール作「スイスにて」烈しく読みたい!けど無い…創元の短編集には無いし。 あと、早川の異色作家短編集の文庫化はどーなったんだろ。
>>893 以前に早川のブラックユーモア選集に掲載されたっきりですね。
あの選集もとんとお見かけしないのですが…
895 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/09/05 00:46 ID:9oCtlMzj
デイヴィッド・ビショフ「ブロブ」(角川文庫) ‘88の作品。衰退するモーガン・シティ山中に落下した謎の物体。駆けつけたゴミ拾いの老人が アメーバ状のそれに手を伸ばすと、「そいつ」は腕に絡みつき溶かし始めた!まるで老人を喰らい 尽くそうとするように!老人を味わいつくした「ブロブ」は町に潜入、出会う人・動物見境なく全て を溶かし、喰らい尽くしながら町そのものを喰らわんばかりに巨大化していく…「ブロブ」を目撃 しながら大人たちに信用されない札付きの不良少年と、ボーイフレンドをブロブに喰らわれた少女。 大人たちを振り切り、ブロブを食い止めようと二人だけでも戦おうとするが…ジュヴナイルの成長、 崩れ行く町、科学者たちの陰謀、そして迫り来るブロブ、スピーディーかつスリリングな展開に 手に汗握ること間違いない、スプラッタホラーの傑作! ブックオフの100円コーナーで状態が良かったので購ってみたのですが、意外や意外これがものす ごく面白い。同年の映画のノヴェライズなのですが、ノヴェライズに欠けがちな心理描写・情景描写 にも気をかけ、上手く映画的なヴィジュアル感、スピード感、スリルも備えた実に見事な作品。あまり 知られていない作家ですが、実力ありますね。物語のフレームワークはクーンツの「ファントム」と 似たり寄ったりですが、主要登場人物を思われた人々が容赦なく、しかも効果的に次々と殺され、 「どうせこいつは生き残るんだろう」というある種のお約束を打ち破っており、最後までダレない。 ストーリーの破綻もなく説得的な真相とド派手なラストは評価できますし、人物描写もしっかりしている。 もともと期待値が低かったのでベタ褒め気味になったのかもしれませんが、かなりお値打ちな一作。
>>895 そのビデオ持ってますた。
マックィーン主演作品のリメイクですが
ヒロインの娘がリプリーみたいに逞しく戦ってましたねい
小説版読みたくなりました
897 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/09/06 19:38 ID:Zw5oW9s2
ロバート・L・スティーヴンソン「スティーヴンソン怪奇短編集」(福武文庫) ‘88編集。収録作品は以下の通り。 『死体盗人』(1)/『ねじけジャネット』(2)/『びんの小鬼』(3)/『宿なし女』(4) 『声の島』(5)/『トッド・ラプレイクの話』(6)/『マーカイム』(7) かの「ジキル博士とハイド氏」の作者であるスティーヴンソンの怪奇幻想風の作品を集めた 日本オリジナル短編集。注目はやはり、H・ジェイムズが「13ページで書かれた傑作」と評 した(2)でしょう。書かれて100年以上経つというのに、並みの「怪談話」そこのけの戦慄を感じ させる本作は、同時代の怪奇幻想譚の中でも一、二を争う出来栄えです。筆者がこの作品 を妻に聞かせた時、二人とも恐ろしくなって肩身を寄せ合ったといういわく付き。 筆者は晩年サモア島に住んでいたこともあり、(3)(4)(5)はハワイ諸島を舞台にした民話調の ストーリー。ラヴクラフトやサマセット・モームが賞賛した(1)(7)は、あまり私の琴線に触れま せんでしたが、(1)は後のラヴクラフト「死体安置所にて」の原型だったのかなと思うと感慨 深いですが。(2)だけを読みたい向きの方は由良君美編「イギリス幻想小説傑作集」(白水U ブックス)にも収録されています(こちらのほうがお得感あり)。
898 :
本当にあった怖い名無し :04/09/06 21:15 ID:qLCVVsrX
「M・R・ジェイムズ 怪談全集 1」 :M.R.ジェイムズ 紀田順一郎 訳 :創元推理文庫 英国の怪奇小説家、ジェイムズンの短編集。 ゴシックホラーが好きな人には、面白い本だと思います。 16編の話を収録、 奇妙な笛を拾った男が出くわす怪異「笛ふかば現れん」 不気味な銅版画が見せる恐怖を描く「銅版画」 他「十三号室」「人を呪わば」など。 続刊である怪談全集2も出てます。 描写がスッキリしてるので、寝前本として重宝してます。 というわけで、新参者の本紹介でした。
「丘からの眺め」が、J・D・カー「火刑法廷」(これも傑作)のエピグラフに使われてた。
900 :
本当にあった怖い名無し :04/09/07 03:15 ID:TGRDEuHg
今だ!900ゲットォォォォ!!  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ (´´ ∧∧ (´⌒(´ ⊂(゚Д゚ )≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡ ⊆⊂´ ̄ ⊂ソ (´⌒(´⌒;;  ̄ ̄ ̄ ズザーーーーーッ
901 :
本当にあった怖い名無し :04/09/07 03:56 ID:M2glSgmF
くだらない。1は消えろ
そうか?小野不由美しか出てこない怖い小説スレより為になるが。
903 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/09/07 20:34 ID:BebnSFX2
カービー・マッコリー編「恐怖の心理サスペンス」(ワニ文庫) ‘76編集。収録作品は以下の通り。 M・マーマー『嵐の夜』(1)/P&K・アンダーソン『白い小猫』(2)/B・ラムレイ『不気味な囁き』(3) R・キャンベル『恐怖の遊園地』(4)/D・エチスン『真夜中のハイウェイ』(5)/R・ブロック『スカラブの呪い』(6) W・F・ノーラン『死者からの電話』(7)/D・グラッブ『ヒトラーを撃った男』(8) G・ウイルソン『アーネス博士の遺書』(9) ホラー翻訳界の大御所、矢野浩三郎氏の編訳による、「闇の展覧会」編集のK・マッコリー がセレクトした短編集。矢野先生はこの短編集にあまり良い思い出がないそうですが、これがまた 良作ばかり揃っており、隠れた名作集となっています。「怪談話」仕立てで身も心も凍る(1)(5)、 不条理に襲い掛かる恐怖を描いた(3)、憧憬と戦慄が同居した(4)、巨匠得意のエジプト物(6)、 タイトルと不釣合いの流れから、一気に意外な展開を見せる(8)、天才科学者の末路をシニカルに 描いた(9など、どれも捨てがたい。ただ、おかしな段組や興ざめを誘ってしまうイラスト(スカラブ じゃなくてカブトムシが描いてあったり)が惜しい。雰囲気出てるものもあるのですが… 経緯からすると、ひょっとしたら日本の読者向けに少々改変しているところがあるかもしれません。 しかし捨て置くにはもったいない逸品。
このスレのタイトルになってる『ぼっけえ、きょうてえ』を先日買って読んだ。 表題作と「あまぞわい」が怖さの中に人間の哀しさが満ちていておもしろかった。 ホラー作品って直球の怪物物やスプラッターものより 人間の業や哀しさの中から生まれて来るものが一番良いと思う。
905 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/09/09 19:55 ID:+sl7ziPN
パトリシア・ハイスミス「11の物語」(ハヤカワミステリアスプレス文庫) ‘70編集。収録作品のうち、恐怖小説系統の作品は以下の通り。 『かたつむり観察者』(1)/『すっぽん』(2)/『クレイヴァリング教授の新発見』(3) 『アフトン夫人の優雅な生活』(4)/『ヒロイン』(5)/『からっぽの巣箱』(6) 「不安の詩人」、ハイスミスの短編集。以前このスレッドでも言及された(1)(3)を目的に購って みました。(1)はグロテスクな結末もさることながら、むしろその細やかな描写・観察眼に感心 しました。ドイルばりのモンスター譚の(3)も、荒唐無稽な設定にもかかわらず真に迫った描写 で陳腐化しておらず、彼女の筆力のすばらしさを感じる作品。サキやジョン・コリアーの作品 を髣髴とさせる(2)、M・R・ジェイムズ作品のような(6)などは、筆者特有の読者の「不安感」 を掻きたてるようないやらしさを感じます。ただインパクトに欠けることは否めず、佳作止まり の作品がほとんど。むしろ恐怖小説系統以外の収録作のほうが持ち味とストーリーの融合 が見事です。そちらの作品群のほうがお奨めですね。
>604 「ぼっけえ〜」は怖かったけど ところどころの描写が私の脳内でですが妙に美しかったり… 「よって件のごとし」の少女の記憶が戻るくだりとか 山岸涼子系な感じがしまふ でも「花鳥風月」はがっかりだったにゃあ
907 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/09/13 21:40:22 ID:9jONqLrz
ラムジー・キャンベル「母親を喰った人形」(ハヤカワ文庫NV) ‘76の作品。不平屋でニヒリストの兄にうんざりしながらも付き合い続けてしまうクレア。 今夜もその兄を送るために、既に闇深い町をポンコツ車で走り抜けていた。突然車の 前に飛び出した男、利かないブレーキ、慌ててハンドルを切って…兄さんの片腕が… 悲劇的な、もしかすると自分のせいかもしれない事故に落ち込むクレアの前に、作家 を名乗るホールが現れ、ある不気味な男、あの夜兄の腕を持ち去った男の行方探しに 協力を求めてきた。同じようにその男の「被害者」となった人々が集まり、男の行方を 追ううちに、その母親が参加していたという奇妙な集会の存在に行き当たり、徐々に 戦慄の真相が明らかに…英国怪奇文壇俊英の屈指の怪作。 うむむ…どう評価してよいものか迷う作品です。誰しも小説を読むときは、誰かしら登場 人物に感情移入して、その感覚を共有するものでしょう。それが本作品の登場人物は皆 どこか歪んでいて、他人に責任を転嫁し、エゴを露呈し、全く不愉快な印象しか与えない。 逆説的に自分自身の歪みを見せつけられているようで居心地が非常に悪くなります。淡 々と物語が進行し真相が明らかになっても、それはあくまでアクセサリーに過ぎない。自 分の代わりの「犠牲者」を見つけ、追い詰め、そして…ある登場人物が最後に流す涙は 果たして悲しみなのか、それともエゴの充足に過ぎないのか…?読後、眉間にシワがよ ってしまうような怪作。それだけは間違いないでしょう。
908 :
本当にあった怖い名無し :04/09/13 22:03:00 ID:af4RB4qr
ある意味、とても恐い小説 その1 グラハム・マスタートン "TENGU" 日本の神道に伝わる七大悪魔、そのなかでも最凶暴で知られるのがテング。この悪霊にとりつかれた人間はいかなる武器をもはねかえす不死身の狂戦士となる。 さて、ときは昭和19年末、南方戦線。それまで順調に日本軍を撃破してきた米軍は突如として凄まじいばかりの反撃に会い、苦戦を強いられるようになった。 調べてみればなんと日本軍はテング憑きの兵士を製造し、前線に投入しておるではないか。そのテング兵製造工場がヒロシマにあることを知ったトルーマン大統領は、ためらうことなく広島に原爆投下を命じた ・・・それから40年、放射能のため奇形児として生を受けた子供達が秘密結社「ただれた鳩の会」を作り、ふたたびテング兵を製造してアメリカに復讐を遂げんとす! とまあ、こういう作品。最後まで読んだおれもえらい。
>>908 何と言うか…そんな作品に出会えたあなたが心の底からうらやましいです。
どこから切ってもバカ、どうひいき目に見てもバカという究極のバカホラー
の臭いがします。早速探しましたが原書はすでに絶版の模様。どこか奇特
な出版社が邦訳してくれないでしょうか…
恐怖館主人が100円で買えた
911 :
本当にあった怖い名無し :04/09/14 22:22:15 ID:+NZWZiOx
篠田節子の「神鳥」
バカホラーとか、怖い中にもクスリと笑える要素のある小説があったら、 紹介していただけませんか? スプラッタ、サイコ、エログロ等のジャンルは問いません。 個人的には、すごく怖くはないけど、小林泰三「獣の記憶」の、 NHK集金人の挿話なんかが笑えた。 洒落にならない事件に見舞われて、主人公は真面目で必死なのに、 どこかユーモアが漂うような話ってありますか?
>>912 ぱっと思い浮かぶところでは、
T ハヤカワ文庫のモダンホラーセレクションからリチャード・マシスン『縮みゆく人間』
U 文春文庫からスティーヴン・キング『ミザリー』
V 集英社文庫からクライヴ・バーカー『血の本』T〜Y
あたりでしょうか。
ユーモアをちりばめつつ恐怖小説に仕上げているのはさすがだと思います。
メジャー作家ばかり挙げたので、どれも既読だったらすいません。。
914 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/09/19 00:20:26 ID:vFbVjfrh
フレドリック・ブラウン他「猫に関する恐怖小説」(徳間文庫) ‘80編。収録作品は以下の通り。 サキ『トバーモリー』(1)/B・リゲット『猫男』(2)/B・ストーカー『猫の復讐』(3) S・ル・ファニュ『白い猫』(4)/F・ブラウン『猫ぎらい』(5)/H・スレッサー『僕の父は猫』(6) A・ブラックウッド『古代の魔法』(7)/W・デ・ラ・メア『箒の柄』(8)/B・ペイン『灰色の猫』(9) H・P・ラヴクラフト『ウルサルの猫』(10)/A・ダーレス『エジプトから来た猫』(11) C・カートミル『緑の猫』(12)/E・クイーン『七匹の黒猫』(13)/R・ブロック『魔女の猫』(14) L・パジェット『著者謹呈』(15) 本邦の怪奇幻想文学翻訳の屈指の古参、仁賀克雄氏が集めた「猫」がテーマの15編。 (1)(3)(7)(10)は既読だったのですが、何度読んでも(1)のしゃべる猫トバーモリーの愛らし さと小憎らしさには頬がほころびます。「恐怖小説」とは言っても、どちらかというとユー モア短篇も多く、(1)(5)(6)(12)(15)はその傾向が強い。(12)などは知らない者とていない、 あるアニメーションの主人公を彷彿とさせて日本人ならばニヤリとしてしまう。(13)は 巨匠のミニミステリ。(11)はブロックとラヴクラフトをごちゃまぜにしたようなダーレスらしい 小品。(2)(3)(4)(7)(8)(9)(10)(14)あたりが恐怖小説に該当しますが、(7)が素晴らしくて あとの作品は印象が薄くなってしまいます。あと、私が嫌いなデ・ラ・メアの(8)。やはり 今回も好きになれなかった…ユーモア短篇のほうに秀作が多かったですね。
David Langford "The Thing in the Bedroom" シャワールームのドア開閉時、その不幸な事故は起きた。とある不注意な男性の それは本体と分離し、以来、あるじを求めて地縛霊と化しているという。 この怪事件の調査を依頼された心霊探偵が、女装媚態のかぎりを尽くして迷える それを物質化させんとす! とまあ、こういうバカ。1984年にとある成人雑誌に掲載され、二三のアンソロ ジーに入っている模様。全体、カーナッキイのパロ。雑誌から切り抜いて保存して おいたおれもバカ。
>>915 それ=ナニということでしょうか??かのバカ映画「キラーコンドーム」
を越えるBAKAですね。私は原書は読まないタチなので、原書レビュー
は大変参考になります。
917 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/09/20 22:59:25 ID:6BLqN/XJ
ジョー・R・ランズデール「モンスター・ドライヴイン」(創元SF文庫) ‘88の作品。ドライヴインシアター<オービット>で金曜の夜に上映される、いつもの B級ホラー映画のオールナイト。いろんな奴らがごちゃまぜに大騒ぎするシアターを、 突然真っ赤な彗星が襲い。「ぼく」ら観客全員は妙ちきりんな異空間に閉じ込められ てしまった!どんどん減っていく食料と時間の感覚の中で、観客たちは次第に暴徒 と化し、共食いすら始めてしまう。すっかりおかしくなったダチ二人がポップコーンキン グを名乗る化け物になったり、人喰い宗教が流行ったりとシアター内はてんやわんや。 そんな中、いつもクールなボブと「ぼく」は必死に脱出の機会を窺うが…スプラッタパ ンクの敏腕作家ランズデールの、スラプスティックホラー! 私は基本的に「B級、C級」と名の付くホラーは大好きなタチなのですが、作品自身が 「俺ってB級だろぉ?ん?ちょっと斜に構えてバカやってるところがB級だろぉぉ??」 といってるような作品は逆説的なスノビズムが鼻に付いて大嫌いなんです。本作品は 遺憾ながらそれに該当します。作品中に「B級」という言葉を散りばめ、わざとらしく 「ありがち」なストーリー展開をしていき、果てはごく「ありがち」なラストで締めくくる。 B級とは作家自身が売り出すのではなく、判断するのは読者です。評価はどうあれ 想像力を働かせることなくこれまでの敷衍だけでお茶を濁しては読者に失礼という ものでしょう。そこに「B級」のレッテルを貼ったら言い訳になるだろう…とでも思った のでしょうか?とかく腹立たしい一冊。
918 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/09/28 20:44:35 ID:2rMBIlky
トマス・チャスティン「子供たちの夜」(ハヤカワポケットミステリ) ‘82の作品。リリアは、一人娘のジェニファーを育てながらニューヨークで化粧品会社の 副社長を務めるキャリアウーマン。娘を連れて友人のパーティーの帰り道、セントラル パークで車が脱輪。リリアが助けを求めに行っている間に、バックシートで眠っていた はずの娘が消えてしまう。われを忘れて娘を探すリリアの前に広がるのは、公園を覆う 闇。そしてかすかに聞こえてきたのは場違いな子供たちの笑い声…担当刑事のブリー ンや友人たちの努力むなしく、娘は一向に発見されない。業を煮やしたリリアはホーム レスに身をやつし、娘を探して深夜の街を彷徨った。そこで見たものは、彼女の知らない ニューヨークの影の部分だった…警察小説の名手で知られる筆者が大都会の闇とそこ に生きる群像を描いたスリラー作品。 60年代後半から、「恐るべき子供たち」はホラーにおいて大きく取り扱われてきたテーマ の一つであるわけですが、本作品もそこに属します。しかし、ニューヨークのホームレス の生活など、街に生きる様々な人々の生活を闊達に描いている点は非常に評価できる にしても(J・ロンドン「どん底の人々」やG・オーウェル「パリ・ロンドン放浪記」の現代版 は言い過ぎかもしれませんが…)、タイトルに謳い、魅力的な舞台設定にもかかわらず 肝心の「子供たち」の描きぶりがおざなりで、アクセサリ程度の役割しか果たしておらず、 違うテーマの作品を購ってしまったかと錯覚してしまうところは本当に残念。子供たちの 扱い次第では非常に面白い作品になったと思うのですが…ロンドンやオーウェルの作 品を面白いと思われた方にはいいですが、戦慄の需要にはお応えできないでしょう。
919 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/10/03 20:04:13 ID:XAA4ZJEK
フランク・デ・フェリータ「ゴルゴタの呪いの教会(上下)」(角川文庫) ‘84の作品。初代神父が狂気に陥り数々の悪魔の所業を為した挙句狂死し、それから 訪れる者とてなく荒れ果て、ゴルゴタ・フォールズに不気味な影を落とす「永遠の悲哀の 教会」。怪奇現象が数起こる教会を訪れたのは、大学でつまはじきにされ、最後のチャ ンスとばかりに調査にやってきた二人の超心理学者と、近親者をこの教会で失い、悪魔 祓いにやってきた信仰心厚い神父。科学と宗教という信念の間で対立しながらも、次々 と起こる怪奇現象に翻弄される三人。次第に揺らぐ互いの信念。教会に巣食うのは邪悪 な悪魔かそれとも人の欲情が投影する幻か…?ローマ教会や大学上層部を巻き込み ながら、善と悪の相克が最高潮に高まった時、教会で起こったのは−「エクソシスト」「オー メン」に捧げた作者渾身のオカルトホラー!! 「科学vs宗教」という対立軸に始まり、またそれぞれの世界の中での「信念vs信念」の対立 がある。その相克の中、自らの世界が崩れていきもはやどちらが正しいのかもわからなく なり、現実だけが否応なく登場人物たちに降りかかっていく。思想が崩れ人間性がむき出 しなる中、超越した「絶対善vs絶対悪」の戦いが始まり、その最高潮で人々が目撃する 「神」と「キリスト」の姿…作者自ら初期の徹底的な二分法を崩し、混在させ登場人物たち の自我を壊し、もはや科学でも宗教でも分析しきれない神秘の顕現を見せつけるラスト の展開は驚愕。細やかな人物描写も助けて秀逸な作品に仕上がっています。神の奇跡 の美談に終わらせることなく、集団ヒステリーの余地も残した余韻ある終わり方も好ましい。 これは一度読むべき逸品です。
920 :
本当にあった怖い名無し :04/10/12 21:06:43 ID:xjJhNqbh
保守age
921 :
本当にあった怖い名無し :04/10/15 20:31:51 ID:rg8e5vcD
やたっ!「ゴルゴタの呪いの教会(上)」を、ブクオフで見つけた! (下)は、以前に見つけて買ってたのよん。やっと上下巻そろった! 今日は、金曜、明日は休み! いい夜になりそうだァ! 恐怖館主人様のおかげで、期待感高まりっぱなしの毎日でしたよ。 読むゾーッ!
922 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/10/18 08:35:25 ID:3R7GWpHR
ピル・プロンジーニ「マスク」(創元推理文庫) ’81の作品。カーニヴァルの熱気とジャズの旋律にむせぶ街、ニューオリンズ。カメラマン のジルーは傷心を抱え立ち寄ったこの街で、蟲惑的な美女ジュリーンに出会い、成り行 きで一晩を共にしてしまう。翌朝女は消えてしまい、ジルーの横たわるベッド、そして彼 の両手にはべっとりと血糊がついていた!何が起きたのか惑うジルーに次々と襲い掛 かる奇怪な出来事。「写真を渡せ」との脅迫電話、仮装パレードの中つきまとうドラゴン の仮面の人物、そして送りつけられてくる血まみれのヴードゥーの藁人形…次第に追 いつめられていくジルーの前に現れたのは…ヴードゥー呪術と魔都ニューオリンズの 妖美な雰囲気が融合したオカルトホラー。 ストーリーはダン・シモンズ「カーリーの歌」と酷似しており、ジャズ・ニューオリンズ・ヴー ドゥーという組み合わせもシモンズの作品同様に雰囲気があって好ましいのですが、 いかんせんストーリーがつまらない。話に広がりがないしラストに向けてのテンションも 高まらない上に、オチも「ハァ?」というようなつまらなさ。というかこんな腑抜けた終わ り方でいいのでしょうか…?ニューオリンズとヴードゥーの歴史的関係は面白く読めま したが、フレームだけは高級で中の絵は非常に安い。シモンズのようにフレームも絵 も最高級のものとは比べるらくもありません。プロンジーニはスリラー・サスペンス作家 のようなので、「モダン・ホラー」と銘打った創元のプロモートミスにも責任があるかもしれ ませんね。ミステリ、スリラー作品は数多く邦訳されているようなので、そちらでは評 価された作家なのでしょう。畑違いだったということでしょうかね。
>>921 そう言っていただけますと嬉しいですね。
お楽しみいただけましたでしょうか!?
岡山女
925 :
本当にあった怖い名無し :04/10/19 18:51:59 ID:zu22OmK3
>>923 「ゴルゴタの呪いの教会」期待通りでした!面白かった!
「エクソシスト」も読みたくなりました。映画しか知らないので。
私も、心の奥底に小鳥を飼えればいいなと思ったりして。(でも、きっと飼えない)
926 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/10/22 08:33:56 ID:gzTN9E+j
ショーン・ハトスン「闇の祭壇」(ハヤカワ文庫NV) ’86の作品。工事現場から発掘された遺跡の奥に封じられた部屋から、おびただしい 骸骨が発見された。発掘と同時に、その土地に関わる人々に恐るべき災厄が振りか かる。次々と無残に死んでゆく現場作業員、近隣の町では両目を抉られ、奇妙な内臓 文字を残し、惨殺される関係者。考古学者のキムとウォレス警部が謎を追っていくうち に恐るべきケルト神話の伝説に行き当たる。人類は、開けてはならない扉を開けてし まったのだ!酸味の利いたスプラッタ描写で知られる作者がその才能を遺憾なく発揮 した会心作! 面白い。実に面白い。師、ハーバートのナスティな部分だけをしっかり受け継ぎ、その 鬼才の赴くままに「書き倒した」怪作です。プロットなんてなんのその。夜な夜な黒魔術 の儀式にふける農場主、神がかり的な発言をぶちかます少女、頭のイカレた闘犬賭博 師等々、別にいてもいなくても話が進むような怪しい人物を散りばめ、クーンツ定番の 刑事と女主人公の恋愛も漏れなく描きながら、ハチャメチャなラスト、まさにカタストロフィ と称するにふさわしい圧巻のラストに向かって読者を投げ飛ばします。「スラッグス」に続き ハトスン2作目ですが、期待を裏切らないグチャドロスプラッタ描写も相俟って、酸味 利きまくりの逸品に仕上がっております。そっち方面が苦手でない方には読んでいた だきたい作品です。
>>925 あの表現は私も印象に残っています。
とてもすてきな表現ですよね。
保守しておきましょう
929 :
本当にあった怖い名無し :04/11/04 17:09:14 ID:Wmr1xCXs
暗黒からage
930 :
本当にあった怖い名無し :04/11/04 18:28:24 ID:GSa2AeSm
あけ
931 :
本当にあった怖い名無し :04/11/04 20:14:55 ID:RQmd30KD
「ゴルゴタの呪いの教会」!! なつかしい〜!! 早川ホラー、もう一度はまろうかな。
932 :
本当にあった怖い名無し :04/11/04 20:15:23 ID:y0myldNl
933 :
本当にあった怖い名無し :04/11/12 02:36:32 ID:eB4vsLbt
フランク・デ・フェリータ、実力のある作家だと思うけど、日本では全部絶版 だね。サイコものの「カリブの悪夢」も怖かった。 「ハリウッド ゴースト・ストーリー」というビデオ(未見だけど)には、デ・ フェリータ自身が出演し、彼が英国で撮影した心霊映像を紹介してるらしい。
>932 それ落ちてんだが 結局何レスまでいったの?1000?
935 :
◆zombie9MBk :04/11/13 02:26:59 ID:pifW8ef7
ここ、素晴らしいですね。紹介されてた本、何冊か買いたくなりました。 まだ出てないと思われるのをいくつか書いてみます。 我孫子武丸著「殺戮に至る病」…ミステリ界サイコホラーの傑作と思ってます。 生垣真太郎著「フレームアウト」…スナッフビデオを巡る話。 甲田学人著「missing」…電撃文庫では異色のホラー。神隠しや犬神憑きの描写が興味深い。 畠中恵「しゃばけ」…怖いのが苦手な方にお薦め。妖怪物? 物集高音著「吸血鬼の瓶詰」…都市伝説など語られていてなかなか興味深い。 何度か出てますが倉坂鬼一郎氏の作品はゴーストハンターシリーズ以外ほぼ救いが無いですね。全作品読んでますが(笑) 前にあった田中啓文氏の鬼が刑事をやる話というのは講談社ノベルス「鬼の探偵小説」ですね。 朝松建氏は「崑崙の女王」が好きです。
936 :
本当にあった怖い名無し :04/11/13 02:31:25 ID:wnAK+Yd9
>>935 殺戮に至る病は最高ですよね。ラストのオチから読んでもカラクリは絶対解けないし。小説の中に出てくる場所に住んでいるのでリアルだし。読み終わった後ずっとアノ歌が頭離れないし。マジ最高。
「殺戮に至る病」って結構古い? 古本屋で探そうかな・・・。
938 :
937 :04/11/20 20:49:32 ID:laQW0/3M
調べたんだけど、ハードカバーだけしかない? 文庫本が欲しいんだが。
940 :
937 :04/11/20 22:35:40 ID:wifelwN+
ありがとう、でも中古ないな。。。
>>940 図書館にハードカバーと文庫本各2冊ずつあったよ
当方大阪
942 :
937 :04/11/21 21:44:39 ID:xoQjJOLg
そっか、図書館で一度読んでみるのもいいかも。 一度言ってきます。
944 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/11/25 12:30:48 ID:p44B5sUH
ホイットリー・ストリーバー「ウルフェン」(ハヤカワ文庫NV) ’78の作品。警察官二人がむごたらしく惨殺された姿で発見された。拳銃を抜く間もなく 喉笛を切り裂かれた二人の周りには、獣のものと思わしき無数の足跡が発見される。 ニューヨーク市警のジョージとベッキーは、大都会のごく片隅で起きた他の惨殺事件の 痕跡との奇妙な符合から、人外の存在が事件に関わっているのではないかとの疑いを 抱く。上層部の反感を買いながらも協力者たちと調査を進める二人の周囲に不気味に つきまとう影。「彼ら」は周囲の人間達をその鋭い牙の餌食にしながら次第に二人を追い つめていく。まるで狩に興じる狼のように…「吸血鬼ミリアム」シリーズで好評を博してい る筆者が独自の視点で大都会の闇と古代からの伝説を見事に融合させた意欲作。 言ってしまえば(タイトルでばれてしまいますね)変則人狼物なのですが、従来の作品 とは異なる新しい着想に基づいており、とても興味深い、面白い設定となっています。 正確には「人狼」という表現も間違っており、「ウルフェン」としか言いようのないオリジ ナリティとストリーバー作品の特徴でもある異種族から見た人間の姿に係る様々な描 写、そしてそこに警察小説のエッセンスを取り込んだ構想は秀逸でしょう。人狼に関 する古典的伝説とその双璧としてしられる吸血鬼との関係性への新たな解釈も説得 的であるなど、様々な側面から非常に完成度の高い作品です。
945 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/11/25 12:31:31 ID:p44B5sUH
ピーター・ベンチリー「海棲獣」(角川ホラー文庫) ’94の作品。ロードアイランド沖の小島でサメの生態研究に打ち込む海洋学者サイモン。 彼がフィールドとする海域の周辺で、「金属製」の牙と鉤爪に引き裂かれた生物の死体 が頻繁に発見され、ついには人間にも犠牲者が続出する。警察はサメのせいだと事態 を沈静化させようとするが、サイモンにはどうしてもサメの仕業には感じられなかった。 これ以上の被害を防ごうと奔走するサイモンたちの前に現れた奇妙な老人の口から語 られたのはナチスの壮大な悪魔の実験から産み出された凶悪な怪物の存在だった! 「ジョーズ」の原作者であり海洋パニックホラーを得意とする筆者が放つ、人間と海魔 の死闘を描いた傑作! 「ビースト」に引き続いてのベンチリー作品です。ワンパターンであることは否定できま せんが、海洋生物の生態や生物学的なディティールを実に細かく描いており、さらに ナチスが行ったという悪夢の実験も真に迫って非常におぞましく感じられ、全体より も細部で楽しめる作品です。パターン化されているためきれいにまとまっており破綻 もないのですが、その分面白味に欠けるかなという印象。ただ、安心して読めると いう向きもあるかもしれません。「海」そのものが充分恐怖を誘う存在ですが、そこに 正体不明の怪物が潜んでいるとなると…海洋物は人気のあるテーマですが、その 中でも秀作と言えるでしょう。
>>944 (゚∀゚)ノ
「ウルフェン」の映画の方は映像を凝り過ぎてイマイチでしたが
小説の方は面白かったですねい
てか、原作より面白い映画って少ないな・・・
947 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/11/29 08:31:59 ID:qOTaZufc
イアン・バンクス「蜂工場」(集英社文庫) ’84の作品。フランクは父親と一緒にスコットランドの小島でひっそりと暮らしながら、 学校にも行かず、世にも奇妙で残虐な方法で小動物をなぶり殺すことを愉しんでいた。 彼は幼いころ犬にペニスを食いちぎられ、残虐さを誇ることで、自らの「男性」を確認している かのようだった…ある夜フランクの元に、精神病院から逃げ出したという兄エリックから の電話があり、彼はじわじわとフランクと父の家に近づきつつあるという。「あの」兄が 帰ってくる。恐怖と期待半ばに、フランクは「蜂工場」にこれからの運命を問わんとする… 狂気に駆られた兄が近づき、動揺した父が明かした戦慄の「家族の秘密」とは…? 狂気の一人称で綴られた、英国の俊英による究極のニューロティック・ホラー。 以前このスレッドでも話題になりました「蜂工場」です。全編に渡って狂人の一人称で 綴られ、奇妙で残酷な描写に満ち満ちているにもかかわらず、どこか幻想的でリリカル な雰囲気を漂わせているという不思議な作風(スプラッタ描写を排除しているという 特徴もありますが)。ペニスを犬に食いちぎられたという「記憶」をきっかけに、失った 性というアイデンティティーを埋め合わせるかのごとく次々と奇怪に凝った装置で小動 物を虐殺し続ける主人公には嫌悪よりむしろ哀れさを感じます。しかも彼にはまだ 知らない残酷な運命が待っているわけですが…しかし、全ての秘密が暴露された 後のカタルシスの何と爽快なことか(それでも残酷な現実は変わらないのですが)。 実に奇妙な読後感のある、ニューロティックホラーと称するにふさわしい一冊。
恐怖館主人さん、ご無沙汰しておりました(ずっとロムしてましたけど・・)。 蜂工場。。題名からしてインパクトのあるこの作品、思えば時代の先をいきすぎた感があって、 当時は現実離れした物語に見えた読者が多かったんじゃないかと思うのです。が、今ならリアリティが ずいぶん感じられるようになったのではないでしょうか。世の中、いろんな特殊な人間がいて、新たな パターンの事件が毎年のように起きていますから。とくに日本の場合。 なんとなく書いてみますが、狂気の宿った人物を扱ったホラーはとくにそうなんですけど、 そういうホラーはけっして犯罪者にアイデアを授けるものではなく、時代を予告する存在であり、 かつ、場合によっては正常な人間(読者)の中にもある異常性を気づかせてくれ、さらには 修正してくれるものだと考えています。推理小説なんかも同じですね。 実際、犯人が読書家だったという例はあまり聞きませんし、仮に、ホラーに影響を受けて罪を犯したとしても、 そのような人はホラーがなければ別のものに影響を受けて悪いことをしていたでしょう。 いまや多くの人がそのことに気づいておられると思うのですが、いちおう書いてみました。
「岡山女」は怖いっていうより サイコメトラー物でカッコイイ!
推薦お願いします。 どなたかラストが言葉も出ないほど絶望的なホラー・サイコ小説を推薦していただけないでしょうか? 和・洋問いません!お願いします。
>>950 ではまず私から一冊挙げさせていただきます。
斎藤 澪(みお)『この子の七つのお祝いに』(角川文庫)
昭和56年、第一回横溝正史賞受賞作。賞名からおわかりのように、この作品は推理・ミステリー小説に
分類されるものですが、あまりに怖く、ラストが絶望的なので、推薦いたします。
章によって、一人称と三人称が使い分けられており、独特の効果をあげています。
なお、素晴らしい出来の映画版もあります。同名です。
いわゆるホラー小説でなくて、なんなのですが、サイコの色合いは濃いですし、大好きな作品なので。。
新参者さんありがとうございます! さっそく探してみようと思います^^!
クロウリ−「マグダレン・ブライアーの遺言」(創元推理文庫『黒魔術の娘』収録) 意外と正統的なホラー。着眼点よし。後味の悪さもなかなか。 心身ともに健康な方におすすめ。入院患者に読ませてはならない。
>>新参者さん
ロムだけとおっしゃらずにレビューの方もお願いします!
それから、「ホラー」の社会的影響に関する書き込みに関してですが、
後段には大賛成ですね。ダグラス・E・ウィンターが述べたように、
「ホラー」とは「感情」なわけですから、あくまでゾクゾクワクワク
を愉しむ(例えば遊園地のような)立派なエンタテイメントジャンルだと
思います。それにしては認知度は低いですけどね…
>>950 シャーリィ・ジャクスン「たたり」を推薦します。これまで出会った中で
最高の作品。露骨な狂気ではなく人間の心が少しずつ「ずれて」い
く感覚。短編ではギルマン「黄色い壁紙」なんかもいいですね。
956 :
950 :04/12/02 16:52:07 ID:U6I9s1p8
みなさんありがとうございます!
今受験でなかなか読む時間が見つからないんですが、少しずつ読ませてもらいます!ありがとうございました。
>>955 殺戮に(ryは読みましたよ。あのラストはたまらなかったw
957 :
955 :04/12/02 19:17:56 ID:Gf+3ovct
>>956 そでつか( ´・ω・)
雨宮町子の「たたり」なんかもドゾー
>>957 >雨宮町子の「たたり」
「日本版シャイニング」の帯に釣られて
読んだけど、後半がメタメタで萎えたよ。
ラストは絶望的というより収拾がつかなくなって絶望的って感じだったw
>>958 えーっ、あんまり面白くないの?
一昨日、ブクオフで、カバーのあらすじ読んで買ったのだが。期待してたのだが。
>>957 さんは、でも、面白かったようだし。よし、今晩読んでみよ。
せっかく「お見世〜」買ったのに、今だ読めていない。 最近うつが酷いからなぁ。
961 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/12/06 08:13:58 ID:7bY7Jm4J
ダフネ・デュ・モーリア「鳥」(創元推理文庫) ’52の作品。収録作品は以下の通り。 『恋人』(1)/『鳥』(2)/『写真家』(3)/『モンテ・ヴェリタ』(4)/『林檎の木』(5)/『番』(6) 『裂けた時間』(7)/『動機』(8) ロアルド・ダールやジョン・コリアーら、いわゆる「異色作家」のカテゴリーで才気を 放つ女流の短編集。ヒッチコックの映画化作品としてあまりに有名な(2)(モチーフ 以外は映画と全く異なりますが、静かな凄味のある傑作)をはじめ、険しい山中に 佇む秘密教団の寺院を中心に、男女の美しくも残酷な運命のめぐり逢いを描いた 幻想譚(4)、死んだ妻の身代わりとばかりに痩せた林檎の木に憎しみを向ける男 に降りかかった悪夢を描いた秀逸なニューロティックホラー作品の(5)、そしてモー リア版「みにくいあひるのこ」といった面持ちの(6)と、他の作家にはない、まさに 異色の着想と多彩な筆致を備えた瞠目の作品集。「豊饒なる物語の数々」という 帯書きに偽りなしです。ぜひ一読あれ。
>>961 ・その短編集から3篇だけ選ばれて収録されているのが
『鳥』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)ですね。
私の手元にあるのは、これのみです(創元推理版を入手せねば)。
・レビューの件、ありがとうございます。必ずや。。
・それから、続編スレのほうも、是非とも。宜しくお願いします。
963 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/12/08 12:08:18 ID:OiM0tXFT
ついに…ついにあの伝説のシリーズ、創元推理文庫版「ラヴクラフト全集」 の第7巻が発売されるようです!第6巻発売から何と15年、幻とも言わ れた最終巻の発売には嬉しさもひとしおです。来月の発売になるようです。 今から楽しみですね!
え、ほんと? いやー、長かった。 創元全集の前身「ラヴクラフト傑作選1・2」を手にしたのは、まだ高校生だったような気がする。 そうかぁ、ようやく出るのかぁ・・・・・・ うれしい情報、ありがとうございました。
漏れは中学だったよ…。 そういえば青心社(だっけ?)のクトゥルーのシリーズは まだあるのだろうか。
966 :
本当にあった怖い名無し :04/12/10 20:57:30 ID:wqLsof6R
<補足> 四六判「クトゥルーT〜Y」は、「品切れ」となっていたよ。
968 :
恐怖館主人 ◆m2/JIAzxUM :04/12/20 08:27:34 ID:tThf6FGI
ジェームズ・ハーバート「魔界の家(上下)」(ハヤカワ文庫NV) ’86の作品。その館、通称”グラマリー”は、都会の喧騒から逃れたがっていたミュ ージシャンのマイクと、名の知れたイラストレーター、ミッジのカップルにとってうって つけの物件、まさに「運命の」出会いだった。自然に囲まれ朝な夕なに森の動物た ちの訪問を受けるすばらしい毎日に二人は才気煥発、これまで以上に仲睦まじくな っていた。しかし「神人協力論者神殿」を名乗る新興宗教のグループが館を訪ねて 以来、”グラマリー”を不吉な影が覆い始める。うまくいかない仕事、屋根裏で暴れる コウモリの大群、押し寄せる不気味な幻覚…マイクとミッジの仲に分け入ってくる 宗教団体の目的は?不思議な力を持っていたとされた”グラマリー”の以前の持ち 主に関係があるのか…?その秘密が明らかになったとき、”グラマリー”は文字通り 「魔界の家」と化す! どうしちゃったのハーバート?と言いたくなるような、これまでの作品と趣を異にした 超牧歌的な作品。彼一流のナスティ描写は鳴りを潜め、上巻の9割までは自然や 動物と戯れる、不思議で童話的な日常が描かれ、ホラー作品であること を忘れてしまうほど(表紙とのギャップがありすぎです)。しかも最後まで特に大仕 掛けがあるわけでもなく、ひたすらワンテーマで進行し、これまで読んだ作品(『ムー ン』や『ダーク』)に比してあまりに「まとも」、換言すれば「月並み」なエンディングを 迎えてしまうという淡白さ。「幽霊屋敷」テーマの作品を読む上で、使い古され た素材がどう斬新に、あるいはトラディショナルに料理されているかを楽しみにして いるのですが、本作品はどっちつかずのまずさで、お客様にはお奨めできません。
969 :
新参者 ◆1BoyUhe6Ns :04/12/20 11:21:18 ID:cgf6xCdK
斎藤澪『この子の七つのお祝いに』(角川文庫) とおりゃんせ とおりゃんせ ここはどこのほそ道じゃ…… よくその歌を聞かせてくれた母は、二十数年前の元旦、幼かった私を残して息を引き取った。 母は私に、ろくでなしの父への復習を強く望み、思いを託して、死んだ。形見のすり切れたアルバムと、遺書を残して。 あれから二十数年。もはや遺書は紙が黄ばみ、文字はかすれた。しかし、私の復讐心はかすれることなどないのだ……。 ルポライターの母田耕一(もだ こういち)は、ある女の正体を追っていた。政界の黒幕・秦一穀(はた いっき)の陰にいる 謎の女占い師・青蛾(せいが)だ。この女の驚異的な占いの影響力は、いまや政財界におよんでいるらしい。 そして母田はついに、青蛾のことを詳しく知る女に会う約束をとりつけた。だがその女は、面会直前に何者かに殺される。 ある宿命を背負った者が、ついに動いたのだ。謎を追う者と過去の痕跡を消そうとする者。やがて明かされる衝撃の事実……。 以前ご紹介したように、昭和56年の第一回横溝正史賞受賞作である本書は、推理小説・ミステリー小説に分類される 作品なのですが、何度読み返しても、私はサイコホラーとしての面から、この作品を見てしまいます。 全編にわたって漂う濃厚な血の匂い、怨念、猟奇的殺人。そして最後に明かされる母娘の重大な秘密。 この物語では、アルバムの中に残された親子三人の手型をめぐるくだりがとくに推理小説的要素を果たします。しかし、 先に挙げた諸要素は、ホラー小説のそれに匹敵するほど濃く、ラストのどんでん返しはめまいすらおぼえるほどです。 様々な人物の視点から物語は進みますが、読者が混乱することはありません。この多視点がむしろ効果的に用いられています。 読みやすい文中にハッとさせられる良質の描写がちりばめられている、血と女の怨念にまみれたドロドロ素晴らしい一冊。
嗚呼……。
>>969 、誤字はあるし、内容的にも説明不足だし。。
今度からは、書いてすぐ投稿せず、一日二日は推敲する癖をつけるようにします。