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あなたのうしろに名無しさんが・・・:
30年以上前、4歳くらいのときかな?
夏のあるとき祖母とともに山奥の山荘に泊まった。そこは山の中腹が開けたところで木を伐採して周りの山々がパノラマに見えるところだった。
晴れ渡ったいい天気だったのがしょぼしょぼと小雨混じりになった、いわゆる【狐の嫁入り】というやつだ。
濡れるのが嫌だったのか、俺は小屋のほうに引き返した。
そんな俺を呼ぶ祖母の声。
「見てみぃ、あれが【狐の嫁入り】やに。滅多に見れるもんやないでお前は運がええわ」
声につられて興味津々で行ってみるとそこにはパノラマに広がった山の中ほど、右から左に延々と続く青白い炎?の行列。
炎?にちらつきが美しくもあり儚げでもあった、それがかすかに移動しているようにも見える。
いったいどのくらいのあいだ続いていたのかはわからない、ただ呆然と見つめるだけで声も出なかった。怖さなど微塵もなかった、ただ「きれいだなあ」と。
祖母は「よかった、よかった」と繰り返すだけ。
それは小雨が止むとともに消えていった。
科学的根拠に基づく話なんだろうが、今にして思えばたいへん素晴らしい自然のファンタジーを見ることができたいい思い出として大切にしたい。