ホームセンターの中に人間が立てこもって3週間が次ぎた。
周りには数百体のゾンビがひしめき脱出することは到底不可能。
50人近く居た人間も次々と減りいまや10人を切ろうとしていた。
皮肉な事に食料には余裕が出来たが
すでに人間達には諦めの気持ちが漂い始めていた。
そんなある日のこと、どこからともなく
「めーん!!」
というかなり場違いな、しかしどこかできいたことのある声が響きわたった。
中にいた人間が慌てて窓から顔を出すとそこには異様な者達がいた。
格好は別段異様ではない。
場違いでは有るが日本人なら一度はみたことのある剣道の防具をつけた武者。
問題は人数である、少なく見積もっても150人以上
おのおのが手に木刀、六角棒、鉄パイプ等をを携えている
中には大型ハンマーを持っている者もいた。
よく見ればライダースーツにフルフェイスのヘルメット、プロテクター装備の者もいたが
圧倒的に剣道姿の者が多かった。
そしてその後ろに続く数台のトラックとバス、なぜかブルドーザー。
ホームセンター内の人間は一瞬躊躇し、複雑な表情でおずおずと集団に手を振った。
とたんトラックの屋根に立ち上がったリーダーと思われる赤い胴をつけた武者の
「かかれー」
という号令が飛び、
「面、面、面」「面」「麺」「めーん」「面」「men」「め、め、め、め、め〜ん」
と、まるで経文でも唱えるかのよな怒号が辺り一面に響き渡る
あたりまえといえばあたりまえだが「面」しか無い。
一撃必殺。
次々と頭を粉砕され正しい屍となるゾンビたち。
疲れた武者は後ろに下がり、下がればすぐに新しい武者が入る
道が広がれば横の人数が増える
撃ち損ねて掴みかかれた武者は後ろに倒れこむと控えの武者達が倒れこんだ武者ごとゾンビを滅多打ち
入れ替わり立ち代り、とてつもない勢いと手際でゾンビを打ち倒していく武者の集団を
ホームセンター内の人間はただただ呆然とした表情で眺めていた。
約一時間後、ホームセンターの周りに群がっていたゾンビは完全に掃討され、
巨大な骸のキャンプファイヤーが出来上がっていた。
余りの勢いに逆に恐れをなしてしまい、中の人間が出てきてくれないという事態が有ったものの
翌朝、人数を増やし使えそうな物資を掻き集めた異形の集団は
北海道への輸送を行っているという自衛隊の駐屯地をめざしホームセンターを後にした。