墓の中まで持っていく話 2

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今から、15年近く前の話

小さい頃母の田舎の実家(東京)に帰った時、
近所の公園で妹と二人で遊んでいたら、一人の男がやってきた。
「君、悪いけどこのヘルメット見ていてくれないかな?ココに置いてなくちゃダメなんだ。
それで、妹さんちょっとついてきて。」
そう言って、そいつは僕にフルフェイスのヘルメットを渡し、
妹の手を引いて歩き出す。
僕と妹は訳の分からない突然の出来事にうろたえて、どうしていいのか分からずにいた。
「すぐ戻ってくるから」
そう言い残してそいつは妹と、近くのビルに入っていった。
僕は、おろおろしていたが、周りに人も居ず、どうしていいか分からなかった。
家まで走ろうかとも思ったが、本当に妹を見失ってしまいそうで怖くてその場を動けなかった。
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数十分後妹は戻ってきた。
そいつは僕からヘルメットをひったくると何も言わずに足早に去っていった。
そいつが消えてから妹は泣き出した。そして、僕をぼかぼか叩いた。
僕は泣きじゃくる妹の手を引きながら、祖父や母の居る家に帰った。
事情を知った大人達は、すぐに警察を呼んだ。
そして、精神的なショックの大きい妹よりもむしろ僕が質問に答えなければならなかった。
だけど、僕も妹ほどではないにせよショックが大きかった。
僕らの地元はそんなことをする奴は居なかったからだ。
僕はあいつのヘルメットの色さえ思い出せなかった。
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「妹がDQNに猥褻なことをされた。」
その事実があるだけで、手がかりが全くなかった。
当然この一件は解決しなかった。

それから、この一件は僕の家族のタブーになっている。

基本的に僕達家族は仲が良い。
だけど僕は、あの一件以来ずっと妹に罪悪感をいだいている。
そして、妹はあの一件以来ずっと僕を軽蔑している。
それ以外の家族は、僕のことを情けない奴だと認識している。

だけど、何となく感じる。
僕の家族は皆この一件を墓場まで持っていく気だろう。