ほんのりと怖い話スレ その13

このエントリーをはてなブックマークに追加
538530
20年以上前の話だそうだ。
知人から聞いた話なので、詳細は不明。
まあ、あまり深く知りたいとも思えな種類の話だ。

九州のとある離島。といっても、何という島かはすぐに
分かるんだが、とりあえず伏せておく。
その島に海老の養殖場が造られることになった。
大規模なもので、工事期間は一年近く及んだ。
その間、かなりの事故や人災が起きた。
建設現場で働く人々も、これは何かあるなと思っていると、
案の定多数の人骨らしきものが出てきた。
それはかなり古いもので、埋葬もされておらず、打ち捨てられ
朽ち果てたものだったらしい。
539530:03/06/16 19:50
何か歴史的な経緯があったのだろうが、出資者や建設会社は具体的
な調査もせず、そのまま工事は続行された。
ただし、不安に包まれた現場の空気を察して、ある徳の高い僧侶が招かれ、
祈祷供養することになった。
一昼夜にわたる祓い清めの最中、その僧侶は己の力不足と、加持による
恒久的な慰霊を勧めたそうだ。曰く
「ここには一族郎党を屠られた怨みの念が強くある。その一族の長を
弔わねば、災いがなくなることはないでしょう」
それを聞きつけた関係者は、やっぱりと思ったそうだ。
地鎮祭の時、神主の振る榊がまっ二つに裂けたという。

540530:03/06/16 19:50
大幅に工事は遅れたものの建物は完成し、何とか養殖所の操業が始まった。
あいかわらトラブル続きで、事業はうまくたちいかない。
融資者の何人かは、説明のつかない災難に見舞われたりしたそうだ。
そして養殖場の中では、いくつもの幽霊が徘徊した。
事務所、冷凍工場、養殖池、至る場所、昼夜を問わず幽霊は出現した
らしい。
そこで働く従業員のうち、そういう現象に慣れる者もいた。
手首に数珠を巻き、出くわしたら両手を合わせる。
そんな光景があたりまえになった頃、やはり、どうしても
馴染めぬ人たちもいた。
内地から泊りがけで勤務する警備員は、特にそうだった。
541530:03/06/16 19:51
当時、その知人は地元でフリーターをしていた。
ちょうど仕事が切れた頃、割のいい警備員のバイトを見つけた。
配置先がその養殖場だったというわけだ。
「幽霊を見たからって、何があるわけじゃない。ただ、気味悪い
だけだと思ってた」
知人の仕事は敷地内の巡回警備と、建物の入管チェックだったが、
その他にも重要な仕事があった。
それは、深夜に頻発する電源トラブルの復旧作業だった。
海老を冷凍保存するための設備が、原因不明の停電を起こす。
その際、設備の分電盤に行ってブレーカーを戻したり、制御盤の
ヒューズを交換するというものだった。
「でも気になってたよ。背筋がぞくっとくるのがさ。あれって
人間の本能的な反射だろ。危険を感じた時なんかのさ」

542530:03/06/16 19:51
知人が冷凍工場のトラブルに対処する際、常に二人で行動した。
そして、工場内のとある場所で、必ず二つの幽霊を目撃したそうだ。
一つは、通路の曲がり角をすっと横切る姿。
もう一つは、機械室の扉を開けるタイミングで、ぼーとあらわれる
着物を着た男。
「何度も遭遇して、場所もタイミングも分かってるんだけど、ぞぞっ
てくるんだよな。俺の本能が危険を知らせてるのかと思ったね」
同じバイトだった知人の同僚は、勤務して三日目に高熱を出し、
耐え切れずに仕事をやめたそうだ。
「そいつがいなくなってから、曲がり角の幽霊がぱったり現れなく
なった。たぶん、幽霊がそいつに取り憑いて、一緒にどっか行った
のかもしれないな」
そんなことを考えていた知人は、ある時、気味の悪い妄想を払拭でき
なくなったという。
「つまり、幽霊が成仏するとしてさ・・・・誰かの死に便乗?みたいな
ことするんじゃないかってね」
543530:03/06/16 19:52
知人はその考えに囚われて、仕事を続けられなくなったそうだ。
「俺も馬鹿げた考えを否定したくて、いろいろ聞いて回ったんだが
やっぱり、因縁はあるんだよ」
その島は、鉄砲伝来の地であるということ。
そして、刀狩や鉄砲禁止令によって、一つの技術者集団が、
歴史から抹殺されたこと。
知人は、何ら確証があるわけではないと断りをいれながら、
自分が目にした幽霊の姿や振る舞いから、そんな風に想像したのだと
語った。
「技術大国の日本が、ロケットの打ち上げに失敗するだろ。
そのたびに、何か非科学的な妄想にとらわれるな」

そう言えば、あの島には衛星打ち上げの基地があった。



           お わ り