洒落にならないくらい恐い話を集めてみない?Part33
今住んでるマンションから徒歩十数分のところにハンバーガー屋が
ある。フランチャイズ店ではなく、手作りの味を売りにしている店
だ。セット(バーガー+ポテト+ドリンク)で頼むと800円以上
はするし、すごく美味いってわけでもないせいか、いつ行っても
客がいない。店内はそのくせわりと広いので、ちょっと寂しささえ
感じるほどだ。
店は中年男性がレジと厨房、その奥さんらしき女性が
ウェイトレスや雑用を担当している。店の奥は彼らの住居に直接
繋がっている作りで、よく言えばアットホーム、悪くいえば生活感
があり飲食店としてはだらしない感じ。店も店の二人も70年代を
感じさせるスタイル。それもオシャレな感じじゃなく、ちょっと
陰気な、貧乏臭い感じのものだ。
フロアの中央には各種調味料が置いてある。おれの好きなサルサソース
も置いてあるので、他に食べたいものがない時に消去法でここに来る
ことがたまにあった。
調味料置き場には、「当店のハンバーガーには独自の味付けを
しております。調味料の類は一度召し上がってからお付け下さい」
というメッセージが書かれている。独自の味付けっていっても
ケチャップとフレンチドレッシングがかかっているだけだ(たぶん)。
おれは最初からサルサソースをドバドバかけて食っていた。
確か3度目にこの店を訪れた時だったと思う。レジでの注文時に
「うちのハンバーガーはそのまま食べてみて下さいね。あまり
調味料を使うと味がわからなくなりますからね」
と言われた。おせっかいだなぁと思いながらも、「ええ」と
だけ無難な返事をしておいた。
その日も結局いきなりサルサソースどばどばで食べた。
それからなんとはなしにその店に行かなかったのだが、
2,3ヶ月は経ってからふとまた食べたくなり、久しぶりに
店を訪れた。
「うちのハンバーガーはそのまま食べてみて下さいね。あまり
調味料を使うと味がわからなくなりますからね」
はっきりと覚えているわけではないのだが、前回と同じセリフを
そっくりそのまま言われた。で、今回はおっさんの顔がちょっと
引き攣っていて、口調も何か感情を押し殺した様に、変に棒読み
なんだ。口元なんかちょっとプルプル震えて、どもりをすれすれ
で免れた感じ。
ここに至って初めてちょっと不審に思った。この店はレジが
一階にあり、客が飲食するフロアは階段を上ったところにある。
ウェイトレスの奥さんも注文した品を席まで届けると、飲食
フロアの奥にある自宅へと引っ込んでしまうので、おれが
ハンバーガーを食べているところを彼らに直接見られた記憶が
ないのだ。でも、さっきの口調は通り一遍の説明ではなく、
はっきりとおれへの非難が感じられるもの。いつもおれが
サルサソースどばどばやってるのを見られていたのかな。
まあでも、客がどんな食い方をしようと勝手だ。奥さんが
注文したセットを置いてフロアの奥の方へ向かったのを確認して
おれはまた調味料コーナーへ向かい、バーガーのバンズを取り、
サルサをどばどばかけた。
なんかおっさんが押し付けがましいのがムカつくけど、
たまに食うとわりと美味いなーと思いながらむしゃむしゃ
やっていた。
半分くらい食べたところだったか、不意にガシャンという
ガラスの割れる大きな音がした。驚いて音のする方を反射的に
振り返ると、それはフロアの奥の店主達の住居の入り口。
そこから半身だけのぞかせ、店主と奥さんがこちらを凝視していた。
店主は何かを床に叩きつけた直後の様な姿勢で、顔だけこちらを
向いている。一瞬だけ視線が合ったが、すぐに目を逸らせて
小走りに店を出た。ただただ、怖かった。
彼の表情はおれに暴力的な危害を加えようというような、つまり
殺気を感じさせるようなものではなかった。自我の崩壊という
ものが表情に表れるとしたら、ああいう感じではなかろうか
と思わせるものだった。
さらに数ヵ月後、店の前を通りかかった。
店は売りに出されていた。貼り紙から察するに、最後に店を
訪れてからほどなくのことのようだった。
649 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/16 21:03
たまにはそのまま食ってやれよ。
味覚不全の奴は、調味料いっぱいかけないと味がしないんだよ。
この辺は仕方あるまいて。
>>644 なんかハンバーガ屋の夫婦が可哀想。
よっぽど思い詰めたんだろうな。
何が怖かったのかわかるように書かれていると思います。
読んでいて怖かったです。
でも、ハンバーガ屋さん可哀想。
なんでわかったんだろうね?
サルサソースどばどばで食べていたことが…。隠しカメラ?
>>652 客が少ない店でサルサソースだけが妙に減ってたら、
誰がソースどばがけで食ってたかバレバレじゃねーの?
いや、客があまりにも入らないからテーブルの調味料を全部チェックしてあって
客が帰るとそれを見て 「……あの野郎」とか思っているのでは
655 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/16 22:45
そんなにプレーンに食べさせたいんだったら、
そもそも調味料を置かなきゃいいんだよ。
656 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/16 22:52
サルサ入りのを作ればいいんじゃないの?
最後、店が売りに出されてたってところが
後味の悪い話スレ向きでもあるね
658 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/16 23:09
初めての書き込みでした。心霊体験などがなく(ひとつあるけど全然怖くない体験でした)、
こういう話しか書けません。レスをくださった方々、ありがとうございます。
途中で飽きられるのがこわくて極力短く書こうと思って、説明不足な文章になってしまったようです。
一度書いた文章に説明を加えるのは恥ずかしいのですが、
店主が気にしていたのは、「味見をせずにいきなり」調味料をかけることだったと思っています。
わたしが味見をしてなかったのは、奥さんがフロア奥のドアから覗いてたのではないかと、
今となっては思います。レジ奥からも2階に上がれるようになっているようだったので、
もしかしたら店主も一緒に覗いてたのかも知れません。いや、鈍感なので最後の訪店に
いたるまで彼らの視線には全然気付かなかったのですが。被害妄想かも知れません。
一軒家を改造したような造りの店で、勿論住居部分もあわせて売りに出されていたので、
たしかに後味悪かったです。なんていうか、味が悪いわけじゃないんだけど、店の色んな
部分がちょっとずつ良くなくて、なにより立地が悪かったのが閉店の理由だと思います。