104 :
リトアニアの民間伝承:
むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがおりました。
二人には子供がいませんでした。
ある日、おばあさんはおじいさんに言いました。
「じいさんや、たきぎを取りにいっておくれ」
105 :
リトアニアの民間伝承:03/03/30 00:42
おじいさんはたきぎを取りに出かけましたが、森の中でばったり熊に出会いました。
熊はおじいさんに言いました。
「じいさん、ひとつおれと相撲をとろうぜ」
すると、おじいさんはやにわに斧を振るって熊のあしを切り落としました。
106 :
リトアニアの民間伝承:03/03/30 00:45
おじいさんはそのあしを家に持ち帰り、おばあさんに渡して言いました。
「ばあさんや、熊のあしを料理しておくれ」
おばあさんは即座に熊のあしを受け取って皮をはぎ、その上に座り込んで、
毛をむしりはじめ、あしは料理するためにかまどに入れました。
107 :
リトアニアの民間伝承:03/03/30 00:48
熊はうなりにうなって考えたすえ、菩提樹の木で義足を作ることにしました。
熊は村のおじいさんの家に出かけて行って歌いました。
あしよ軋め
菩提樹のあしよ、軋め
水は眠り
大地は眠り
大村は眠り
小村も眠る
ただ独り婆さんが眠らずにおり
おれの皮の上に座っている
おれの毛で糸をつむいでいる
おれの肉を煮込んでいる
おれの毛を乾かしている
108 :
リトアニアの民間伝承:03/03/30 00:51
そのときおじいさんとおばあさんはびっくり仰天しました。
おじいさんは寝棚の上の桶の下に隠れ、おばあさんは暖炉の上に黒い上着にくるまって隠れました。
熊は家の中に入ってきました。
おじいさんは恐ろしさのあまりうめき声を出し、おばあさんは咳が出てしまいました。
熊は二人を見つけ、すぐさま食べてしまいました。