34 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/23 03:00
俺の彼女は妖怪なんですとか
私の彼氏は妖孤なんですとか
そういう体験談希望
35 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/23 07:28
俺の彼女は猫娘
彼女は12歳、でも妖怪だからOKさ
毎日放課後に俺の部屋に遊びにくるんだ
彼女は後ろから犯されるのが大好きで
その上全部お口で受け止めてくれるのさ
さすが猫だよね(笑
でも彼女の両親はなぜか?人間なんだって
世の中不思議なこともあるもんだよね
36 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/23 08:35
ちょっとスレ違いかもしれないが
チャイニーズ・ゴーストストーリーはよかった…
37 :
山野野衾 ◆UJr4Al4ZYM :03/01/23 09:13
>31
残念でした。支那では「聊斎志異」にあるような狐・幽霊妻との結婚が成功
したという話が多いですが(時代が下るせいか)、日本では少ないですね。
折口信夫は異族間結婚を伝えたものだと解釈していました。いずれにせよ、
こういった話の中心となっていたものは「タブーを破った事による別れ」で
あったようです。そうでないと教訓にならないし面白くも無い。
世界的に有名なものは「羽衣伝説」でしょうか。欧州ではメリジューヌが有
名で、ルクセンブルク大公家の先祖だとされています。
ただハッピーエンドで終わる話も無くはありません。
38 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/23 09:18
「鶴女房伝説」ってやつだな。
異類婚姻譚なら三輪明神の説話、ギリシアのクトニオスなど
古代神話にはいくらでもあることを忘れちゃいかん。
むかし、欽明天皇の御世に、美濃国大野郡の人が妻にするような良い女を求めて、道中馬に乗って出かけた。
たまたま広い野原で美しい女性に出会った。女は男になれなれしく近づいた。
男はちらっと横目で見て「何処へ行く娘さんですか」と尋ねた。女は
「良縁を求めようとして歩いている女です」と答えた。男は心を打ち明けて、また
「妻になりませんか」というと、女は「はい」と答えたので、男は早速家に連れてきて相交わって一緒に住んだ。
しばらくして女は懐妊し、男の子を産んだ。ところが家の飼犬も子犬を生んだ。
その犬の子はいつも家の主婦にむかって、少しもなじまず、歯をむき出して吠え立てた。
主婦はおびえ恐れて主人に「この犬を打ち殺してください」といった。
それでも主人はかわいそうに思って殺さなかった。その年の米をつく時、その主婦は米つき女達に
間食をやろうとして碓屋にはいると、たちまち犬の子は主婦に噛み付こうとした。
主婦は犬に追われて驚き。おじ恐れて、狐の姿となり、垣根に登ってそこにいた。
…続き
主人はこれを見て「お前と私の間には子供が生まれたのだから私は忘れない。
いつもきてとまりなさい」といった。主人のいうとおり、来てとまった。
そこで来つ寝と名づけた。そのとき妻は紅色に染めた裳をつけて、上品な様子で
裳すそを引いて去って行った。夫は妻が去って行く様子を見て、恋い慕って歌った。
“こひはみなわがへおちぬたまかぎるはろかにみえていにしこゆゑにや”
(わずかに見えて行ってしまったあの女の所為で、恋は皆私一人で引き受けてしまって
非常に恋しくてたまらない)
そこで二人の間に出来たこの名前を岐都(示爾)“きつね”と名づけた。またその子の性を
狐の直(あたえ)とつけた。この人は力が強く、走るのが早くて鳥が飛ぶようであった。
『日本霊異記』より
41 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/23 10:29
「信田妻」だね。
42 :
山野野衾 ◆UJr4Al4ZYM :03/01/23 10:40
狐が人と夫婦になるという話は「善家秘記」(10世紀)、「今昔物語集」・
「江談抄」(共に12世紀)に見られますね。でもいずれも別れている。
「信太妻」の話が完成したのは近世になってからで、本来は阿倍野の童子(寺
に奉仕した村人。この場合は天王寺か住吉。)村の村人の間で語られていた伝
承だろうと考えられています。
43 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/23 20:01
蛇・竜系は多いね
「とこしない」とか
目の見えない僧侶が自らを慕う蛇に洪水の起こる日を教えられ、それを村民に教え蛇に殺されてしまう話とか
44 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/24 00:44
好爺さんキタ━━(゚∀゚)━━!
種族が違うだけで受け入れないなんて人間として不出来です
『千と千尋の神隠し』もある意味、千尋と白(龍=川の精)の恋愛話でしたね。
『美女と野獣』は、この枠に入るのかなぁ。
当初、人間ではない者が愛の力によって魔法が解けて人間に戻るという話まで
含めるともっと数は多いし、ハッピーエンドになるしね。
個人的には元人間の異形のものより
人間じゃないものが人間に化けてって話のほうが好きだなぁ
前者はハッピーエンド、後者はバッドエンドが比較的多い気がする
48 :
山野野衾 ◆UJr4Al4ZYM :03/01/25 14:56
>46
蛇婿系(?)ですかね。あれだとタブーを破ったせいで娘が実家に帰って来
れなくなってしまう。
河内国更荒郡(大阪府北河内郡)に裕福な家があった。その家に娘が一人いた。
天平宝字三年(759)の夏四月、その娘が桑の木に登って葉を摘んでいると、大蛇がその桑の木に
巻きついて登っていった。道を歩いている人がそれを見て、娘に教えた。娘はそれを見て、
驚いて木から落ちた。蛇もまた一緒に落ちて、娘に巻きついて犯した。娘は気を失って横たわった。
父母はこれを見て医師を招き、娘と蛇をいっしょに同じ板に載せて家に帰り、庭に置いた。
そしてきびの藁三束を焼いて湯とまぜ三斗の汁をとり、これをさらに煎じて二斗とし、
猪の毛十把を刻んで粉にして汁と混ぜた。一方、娘の頭と足のところに杭を打ち、掛けて吊り、
口を開いて汁を入れた。汁が一斗ばかり入ったところで蛇が離れたので、殺して捨てた。
蛇の子は白く固まって蛙の子のようであった。猪の毛が蛇の子の体にささって、女陰から五升ほど出た。
その口に二斗の汁を入れると、蛇の子が全部出た。するとそれまで気を失っていた娘が眼をさまして
ものをいった。父母が娘に聞くと
「いままで夢を見ているようでした。いま、さめてもとのようになりました」と答えた。
その時から三年すぎて、娘はまた蛇に犯されて死んだ。娘は蛇を深く愛し、死別する時
夫の蛇を恋いしたい、父母に向って、
「私は死んで、来世もかならず蛇と夫婦になろうと思います」といった。
50 :
銀龍 ◆XXSDRAGtw6 :03/01/25 19:26
まこぴー・゚・(ノД`)・゚・
このままdat落ちするなんてそんな酷な事はないでしょう……
54 :
顔射星人スペルマンX ◆dN7xH1bm4Q :03/01/28 06:22
よぅし、ご本、読んでやろうな
森本さんの声でお願いね
有名な話ですので特に書きませんけど
妖怪ではないけど
昔別れた妻の下に戻ってみると、今も同じ場所に住んでいて
感激の余り一晩共に寝てみると・・・
翌日には妻の骸骨と共に寝ていた。
という話もありますよね。
57 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/29 03:56
雨月物語でしたっけ?
あの話好きなんですよね
妖怪や幽霊ではないがこのようなお話も・・・
中国の衡州の田舎の村に王宙という青年がいた。秀才のほまれたかく、科挙の試験を受けに
有力者の伯父の張某を頼って町に出た。張某には倩娘(せんじょう)という美しい娘がいた。
二人はすぐに恋仲になり、張某も王宙を気に入っていたから、彼が科挙に合格したあかつきには
二人の結婚を許すつもりでいた。科挙試験は娘をやる条件でもあった。しかし、5年が過ぎても
彼は科挙に合格出来なかった。張某は娘の年齢と幸福を考えるとこれ以上王宙の合格を待つわけにも
いかないと、王宙には悪いが、他に科挙に合格した男と倩娘の縁談を進めてしまった。
だが、彼女の気持ちはあくまでも王宙にあったから、縁談を知らされ悲しみのあまり床に臥してしまった。
一方、王宙は張某を恨まずにおのれの不甲斐無さにを情けなく思い、王宙の家を黙って去ろうとした。
憂いにくれながら河を下っていく王宙を、若い娘が追ってきた。もちろん倩娘であった。
意を決した二人は駆け落ちして、遠く離れた土地へ逃げて、そこで暮らし、子供もできて、
5年の歳月を幸せのうちに過ごした。そんなある日、倩娘がさめざめと泣きながらやはり両親に
詫びて、孫の顔を見せてなんとか許しを得たいと言い出した。王宙とて心苦しかったから、張某に謝罪して
本当の夫婦と認められようと二人して里帰りする決心をした。
…続き
船が船着場に着いた時、王宙はまず先に自分が行き、張某にひたら詫びるから、ここで待っていてくれ
と倩娘に言って、一人で張某の家に向った。王宙は張某に面会するや土下座して平謝りに謝り、倩娘との
5年間のささやかで幸せな暮らしを話した。ところが張某はなんとも奇妙な顔付きをしている。
「宙よ、黙って出て行ったお前にこうして会えたのは嬉しいが、ただお前が何を言っているのか
さっぱり分からない。それというのも、倩娘はお前が去ってからと5年というもの、体を患ってしまい、
ずっと床について寝たきりなのだよ」と言う。
王宙はまさかと言って、今船着場に倩娘を残して来ていると言った。張某に命じられて
確認に行った使用人がまさしくお嬢様が船着場にいらっしゃいましたと張某に報告したものだから
張某は驚いて倩娘の病室に行くと、倩娘はいつものように床についていた。
倩娘は尋常ではない父親の顔付きを見て、わけを聞いた。王宙等のことを話すと倩娘は病み疲れて
蒼白だった顔は見る間に元気になって、跳ね起きると船着場に向って走り出した。
同時刻、船着場に待たされていた方の倩娘もはっとして張某の家に向って走り出した。
二人の倩娘は走り来るお互いの姿を確認するや、喜びの声をあげて抱き合い、そのまま姿が重なって
一人の倩娘となった。
いい話だ
61 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/30 03:11
好爺さんは、色々な話をご存知ですね。
宜しければ、どのような本を読まれているのか教えていただけませんか?
>>49は『日本霊異記』から
>>58-59は『陋巷に在り8』の中に中国の志異譚からということで引用されていた話です。
『陋巷に在り』は酒見賢一さんの小説ではありますが、孔子とその弟子、顔回の話で
中国のの当時の情勢、神仏についての考え方、儒教についての考え方、儒教の元となっている
源儒そのほかいろいろとオカルトな事が沢山載っていて、かつ小説としても面白いので
お奨めです。新潮文庫より8巻まで出ています。
その他は、広く浅く読んでいます。
よく考えると宮崎駿さんの作品って、人間とその他のものの恋愛って結構作ってますよね。
『紅の豚』は、元々人間だけど豚に変化したものとの人間との恋愛話だし、
『もののけ姫』は、人間だけど妖怪に育てられたものとの恋愛話
前述の『千と千尋の神隠し』もそうだし・・・。
まあ、話としてこういうの好きなのかな?
ある人が、奉公人になろうと思って、加賀の国に行き、町屋に宿を借りていた。
この人の主人の娘が見目美しくしかった。この男は物影から彼女をみそめて、ひたすら思いつめて
召し使えていた侍に言い合わせて、色々さまざま、心の思いを彼女に打ち明けたが、
彼女もいつか心が打ち解けて、互いに想い合うようになった。
もとより、人目を忍ぶ恋であったため、夜更けになって人が静まってから、彼は彼女のもとに
通っていた。ある夜に、その女性の寝屋に彼が一緒に寝ていた時、主人の部屋からも
彼女の声が聞こえてきた。不思議に想い、主人の部屋をこっそり覗きに行くとそこには彼女の
姿があった。あまりの不思議さに、ある人の所に行き、このような事が合ったと話してみると
これは怪しく、変化の物のしわざに違いないと、何にも無いように彼女を引き寄せると
刀で一刺しした。すると彼女は「あっ」と言ったかと思うと姿が見えなくなってしまった。
夜が明けてから血の後を求めていくと二里ばかり言った所に山があり、その山をかき分けて
入っていくと大きな岩穴の中に彼女の姿をしたものがいた。日がたつと普通の死人のように
枯れていった。主人の娘はというと普通に生活をしていた。
これはどういう事だかなにも分からなかった。
中川の何某という摂州茨木の城主が居た。この殿、京に月越して逗留した。その供のうち去る人、
ある夜に茨木に帰り、自分の妻の寝ていた戸を叩いた。妻はとがめて「誰ですか、夫も居ない
寝室に来るとはあさましいではないですか。他の人も夢から覚めてしまうでしょう。
夫のある身ですから、恨まずに帰ってください」といえば「いや何を言ってるのか、知らぬ仲なら
どうして妻の戸の前まで忍んで来よう。早く開けてくれ」と強く言った。その声が夫の声であった為
わきまえもなく扉を開けた。「逢う事が絶えてつかの間も寂しかった。宮仕えの身なれば、力も無く
今日も恋しさのあまり忍んでやってきた。又、夜の内に帰ってしまうこの身を許して下さい」といった。
妻はそれを聞いて「年ごろ日ごろただ歳を取ってしまった私に、最初に会った時のように頂けるとは
深き契も嬉しく思います」と枕をよりそって眠ったが、暫くすると「もう帰らねばいけない。
この事は人には漏らさずにいてくれ」と言い捨てて、また明け方に京に上った。
それから、一月のうちに四度まで通ってきた。妻は「何度も忍んで来ていればそのうち
殿のお耳に入るのではないですか。いかになんでも通いすぎではないでしょうか」というと
「今は言葉が無い。もう通う事はしないでおこう。後ろ髪引かれる重いではあるが、くれぐれも
この事をもう私に言わないでくれ」と去って行った。
…続き
さて、時期がきて四度目の契を済ましたが、他の月と異なり、それより十月後に妊娠してしまった。
産婆も着て取り上げてみれば、いたちのようであり、これはどうした事かと思っていると
また、一つ産んだ、これも毛むくじゃらで四足のものだった。そのあとさらに二つ産まれた。
産婆と心を合わせて、皆ひねり殺して、子供は流産したと広言した。
よくよく思い合わせれば、彼の留守の間に四度通ったのは狐が化けた者だたのだろう。
68 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/18 20:20
人魚は妖怪の範疇にはいるかな?
あぼーん
侍ほどの身分の男前の一人の若者がいた。その男が二条大路と朱雀大路の交わるあたりを
歩いていて、ちょうど朱雀門の前を通り過ぎる頃に、年の頃十七,八歳ばかりの美しい女性
にであった。男は一目ぼれして、近づいて手を取った。人の通らぬ場所に女を連れて行き
心のたけを打ち明けた。
「しかるべき縁があればこそ、こうして逢えたのでしょう。私のこの気持ちを汲んで
どうか嫌だとは言わないで下さい。けっして軽はずみな心で言うのではありません」
そこで女が答えて
「気持ちは私とて同じことです。貴方のお言葉に従いたいとは思いますが、もしそうすれば
私が命を失う事は間違いないのです」
これを聞いても、男は合点がいかず、ただの断り文句だと思ったから、無理にでも
女を抱こうとした。そこで女は泣く泣く
「貴方は世の常の人と同じく、わが家に帰れば奥様もありお子様もいらっしゃるでしょう。
ただ行きずりの恋というまでです。それにひきかえこの私は、一時の戯れに長くこの命を
失う羽目になるのが悲しいのです」と言って争ったが、とうとう男の言葉に負けてしまった。
…続き
そのうちに日が暮れて夜になったから、近所に小屋を借りて、そこへ女を連れて行って泊まった。
一緒に寝ても夜もすがら行く末までの契を交わした。夜が明けて、女が帰るさに男に言うには
「私は貴方の代わりに命を失う事は間違いありません。それゆえ私のために、法華経を書き写して
後世を弔ってくださいませんか」男はそれに答えて
「男と女とが情を通じることは、世の常のならいであるから、何も必ず死ぬと決まった事じゃない。
けれどもそれほどまでに言うのなら、必ず法華経を書き写して供養をしよう」
と約束した。女はそこで
「貴方がもしも私の死ぬ事を嘘だとお思いでしたら、明日の朝早く武徳殿のあたりに
言って御覧なさい。では、その時のしるしに」と言って、男の持っていた扇を貰い受けると
泣きながら別れて行った。男はまさか本当とは思わずにわが家に帰った。
あくる朝になって、女の言った事もしかしたら本当かもしれない、行って様子を見よう、
と思い返し、武徳殿に行ってそのあたりをめぐり歩いた。すると真白い髪をした老婆が
現われて、男の前でさめざめと泣いた。男はそこで老婆に
「これはお婆さん、何をそんなに泣いているのですか」と聞いてみたところ、答えるには
「私は昨晩、貴方様が朱雀門のあたりでお逢いになった者の母でございます。
…続き
その者はすでに亡くなりました。そのことをお告げしようと思い、ここでお待ちしていました。
その死人はあそこに寝ています」と指差して答えるや否や、かき消すようにその姿は見えなくなった。
男は怪しんでその方向に近づいてみると、武徳殿の中で、一匹の若い狐が扇で顔を隠して
横になって死んでいた。その扇は確かに昨夜自分の手渡したものである。
さては昨夜の女はこの狐であったか、自分はこの者と情を通じたのか、とその時になって
初めて気がつき、哀れな不思議な事だと思いながら家に帰った。
その後、法華経を書き写して供養をし、その後世を弔った。
好爺さん、お話おもしろいです。
安倍晴明の母親は白狐だったって云う説もありますね。
ちなみに夢枕獏の「陰陽師」では、安倍清明の初めての女性は八百比丘尼だった。
74 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/21 16:17
>ちなみに夢枕獏の「陰陽師」では、安倍清明の初めての女性は八百比丘尼だった。
うおっ、それは初耳でした。今度読んでみます。
あぼーん
76 :
銀龍 ◆XXSDRAGtw6 :03/02/22 07:39
↑何があったんだ?
大和の国に姿かたちも美しければ心ばえも清らかな娘がいた。
一方また、河内の国に男ぶりもよく宮仕えをしている若者がいた。
笛を上手に吹き、性格もやさしかった。この二人は、互いに思い思われて一緒に暮らすようになった。
三年ほど経ってから、夫のほうが思いもよらぬ病気になり、看病のかいもなく、とうとう亡くなった。
女は、心から嘆き悲しみ、亡くなった夫のことばかり思いつめて暮らしていた。
しきりに文を送って懸想する人も多かったが、聞こうともしない。
夫を慕って泣き暮らしているうちに、いつしか時が移って三年目の秋が来た。
あたりの寂しさにいつもよりひとしお涙にかき暮れて横になっていると、夜中頃になって
遠くのほうから笛を吹く人がいる。ああ、何と昔の夫によく似た者かと、いよいよ哀れに
思っているうちに、笛の音がしだいしだいに近づいてくると、その女の蔀のそばに来て
「ここをお開け」と言う声、まさしく昔の夫の声にまぎれもないから、あっと驚いた。
悲しいよりも恐ろしさが先に立って、そっと起きなおり、蔀の隙間からそっと覗いて見ると
間違いもなく我が夫がそこに立っていた。泣きながら歌を詠んだ。
『しでの山こえぬる人のわびしきは 恋しき人にあはぬなりけり』
…続き
死出の山を越えた身は、恋しい人に逢う事も出来ない、と言って嘆いている姿かたちが
昔生きていた頃と寸分変わらないのも恐ろしい。逢いにきたしるしに下紐を解いていた。
また、その身体からは煙が立ちのぼっていた。女は怖さのあまり返事も出来ずにいると
「無理もない。あまりに私のことを慕ってくれているのが哀れなので、無理に暇をもらって
来たのだが、そんなに私が怖いのならもう帰ろう。日に三度火炎の業苦をうけているのだ」
と言って、姿はたちまち消え失せた。女はさては夢かと思ったが、しかし現に見たことに
間違いはなかったから、ただ不思議な事と思うばかりであった。
79 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/27 07:53
エロゲの恋姫思い出しました。
あれは良かっただす。
『とんだ婿入りして笑われる話』―今昔物語より―
備中の国、賀陽の郡、葦守の里に賀陽の良藤という人があった。銭商いを商売にして豊かに暮らしていた。
ところが生来多情で女には目が無かった。寛平八年の秋のこと、その妻が用事があって京にのぼったあいだ
良藤は一人でやもめ暮らしをしていたが、夕方ぶらりと外に散歩をしていると、年若い美しい女にばったり
であった。そこでたちまち愛欲の心を生じて手を取ろうとすると、女が逃げていきそうな様子なので、
大急ぎで歩み寄って「どういうお名前かな」と聞いてみた。
すると女ははなやいだ口調で「名前なんかありませんわ」と答えたのが、ふるいつきたいほど可愛い。
「どうです、私の家に来ませんか」と誘ったが、「まあそんなはしたないことが」と言ったなり
女は見向きもせずに手を引き離そうとするから良藤は
「ではお宅はどちらかな。私が送って行ってさし上げよう」と言った。
「あっちのほうよ」と言って女が歩き出したから、良藤はとった手を離さずにいっしょにくっついて行った。
ほんの近所のみごとな構えの家に女が入った。こんなところにこんなりっぱな家があったかな、と不思議に
思っていると、家の中には奥向きから使い走りまで大勢の男女がいて一斉に
「お嬢様のお帰り」と言って騒ぎ合っている。女は此処の家の娘であったと思えばうれしくてならず、
そのまま泊り込んでその夜、女と情を通じた。
…続き
あくる朝になって、家の主人と見える人が現われて、良藤に向かい
「それだけの縁があればこそ、こうしておいでになったのでしょう。これからは我が家の婿として
お過ごしください」と言って下へも置かずもてなしてくれる。それでなくても良藤はこの女にぞっこん参って
すっかり心が移ってしまった。末の末まで契り合って起居を供にしていたから、肝心の自分の家にある
妻や子供の事は、てんから忘れ去ってしまった。
ところでそのもとの家のほうでは夕暮れがたから良藤の姿が見えなくなったので、例の病気が出てどこぞの
女のもとに這い込んだのであろう、と思っていたのだが、夜になってもさっぱり帰って来ないから、
こころよく思わない者もいる。
「正気の沙汰じゃない。早くお探し申せ」などと騒いで、やがて夜中も過ぎたが近所近辺にいる様子も無い。
遠くまで行ったのかと思えば装束の類もそろっている。普段のままの白衣の略服で姿を消してしまった。
こうして大騒ぎをしているうち、いつか夜も明けた。行きそうな場所をくまなく探したが
いっこうに見当たらない。
「若いうちなら、不意に出家をしたり、身を投げたりする事もあるだろうが、大の男が消え失せるとは
不思議千万」と噂し合った。
…続き
さて良藤のほうは、年月が経って、その妻が懐妊した。日が満ちて玉のような子を安産した。
そこでいよいよ契も深く暮らすうち、年月はみるみるうちに経つと思われるほどの幸せで、
何一つ不自由も無い生活が続いた。
もとの家では良藤が失踪した後もいろいろ手をつくしたが、どうしても見つからない。
良藤の兄や弟、子供達が嘆き悲しんで、せめてその亡骸なりと求めようと思い、一同願を立てて、
柏の木を切って良藤の背丈と同じ大きさの十一面観音の像を造った。それに向って礼拝し、
せめて亡骸なりと見て心をやすめたいと祈った。また、失踪の日から念仏読経を始めて、
良藤の後世を弔った。
一方の良藤のところでは、ある日、一人の俗人が杖をついて、つかつかと家の中に入って来た。
家の主人をはじめとして家中の者が、これを見て一人残らず恐れまどい、慌てて逃げ去った。
俗人は手にした杖で良藤の背中を突き、狭い所から外に出してくれた。
ちょうど良藤がいなくなってから十三日目のことである。その夕暮れに、人々が良藤の思い出話をして
悲しみながら
「さても不思議ないなくなりようだった。ほんのちょっとの隙であった」などと言い合っているところに
前にある藏の下から小さくて真っ黒な猿のような形をした者が、尻を高くして這いながら、そろそろと出て来た。
…続き
「これはいったい何だ」と、そこに居合わせた一同が、指差して騒ぎ合っていると
「俺だ」と言う声がまさに良藤である。
子の忠貞がそんなはずはないと奇怪に思うものの、声は間違いなく父親の声であるから
「何とした事だ」と叫びながら、地面に跳び下りて縁へと引き上げた。すると良藤が言うには
「妻が京にのぼってやもめ暮らしをしている間に、女を物にしようと願っていたら、すてきな女のところに
婿入りして年ごろを過ごした。男の子を一人もうけたが、何とも可愛い男の子で、朝晩抱いて片時も離した
ことがない。そこでこの子を跡継にする。忠貞はその次だ。その子の母親は俺は愛しているからな」
忠貞は聞いて吃驚し、「その子はどこにいます」ときけば
「あそこだ」と言って、藏のほうをさし示した。
忠貞をはじめ家中の人が、これを聞いてあさましく思い、当の良藤を見れば痩せこけて病み上がりの病人に
変わらない。着ているものといえば、いなくなったその時のままである。そこで人をやって藏の下を探らせると
多くの狐が巣をくっていて、ちりぢりに逃げて走り去った。そこには良藤が寝ていた跡もあった。