【懐かしい】昔話はオカルト満載・第2話【語れ】

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795Zanoni
犬神 (中国)

于七(うしち)の乱(1648-62年に山東省で起こった反乱)の時には、罪もない住人たちが、清軍のためにまるで
麻を刈るように殺された。

そのときのことだが、李化龍(りかりょう)という者が、夜の闇にまぎれて避難先の山から村の様子を見に帰って
行進してきた清の軍隊にぶつかった。
問答無用で斬られてはたまらんと、あわてて逃げようとしたが隠れる場所もない。
やむなく死人の群れの中に倒れ込んで、死人を装って棒のように伸びていた。
796犬神 (中国):03/02/08 21:15
兵隊は通り過ぎたが、なおしばらく我慢しているうちに、首や腕を切り落とされた死体がぞろぞろと
立ち上がった。

中の一人、斬られた首が皮一枚で肩にぶら下がったのが、
「犬神様が来たらどうしよう。」
とつぶやくと、死体たちが口々に言った。
「どうしよう、どうしよう。」

間もなく死体たちはばたばたと一斉に倒れ、物音一つしなくなった。
797犬神 (中国):03/02/08 21:18
李がぞっとして、がたがた震えながら立ち上がりかけたとき、何者かが近づいてきた。
頭は犬、体は人間という怪物が、死人の頭に噛みついて、片端から脳味噌を啜っているのである。

李は肝をつぶし、頭を死体の下に突っ込んだ。
すると怪物が来て、李の肩を持ち上げ頭に噛みつこうとした。
798犬神 (中国):03/02/08 21:21
李が死体にしがみついて頑張ると、怪物がまわりの死体をどけたので、頭がむき出しになってしまった。
死にものぐるいで腰の下を探ると、茶碗ほどの石があった。
それをしっかり握りしめ、怪物が身をかがめて食いつこうとしたとき、やにわにぱっと立ち上がり、
「これでも食らえ」
と叫んで叩きつけたところ、怪物の口に当たった。
799犬神 (中国):03/02/08 21:24
怪物はフクロウのような絶叫を残し、口を押さえて逃げ去った。
吐き出した血が道に残っていたので、近づいて見てみると、血だまりの中に歯が二本残っていた。
真ん中で折れ曲がり、端が尖って長さは四寸あまりもあった。

持ち帰って皆に見せたが、怪物の正体を知っている者は一人もいなかった。
800Zanoni:03/02/08 21:28
この話の原題は野狗(やこう)、ネタ本は岩波少年文庫の「聊斎志異」です。