【懐かしい】昔話はオカルト満載・第2話【語れ】

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 牛鬼は、島根県の海岸に住む妖怪だ。
 海岸といっても、人があまり行かない、断崖のようなところだ。

 明治の初めころの、まだ寒い四月の夜のことだった。
 島根県温泉津湾の大浜村の漁師たちが、高さ三十メートルの断崖のある海岸に、船を浮かべ、鯖釣りをしていた。
 そこは昔からあまり人が行くところではなかったが、魚がたくさんとれるというので釣っていた。

 真夜中になった頃だった。急に漁師たちはみな同じように妙な不安を感じて、急いで漁をやめようとしたときだった。
「行こうか。」
 突然、海岸の方から、こう声をかけたものがある。

 
これはきっとキツネが魚ほしさに、人間の声をまねたのだ、と思った漁師が
「おう、きたけりゃこいや。」
とからかい半分に答えた。

 すると、この返事に応じるように、何かが海中に躍り込んだ。
 見ると夜光虫のように光る波を蹴立てて、船に泳ぎ着こうとするものがある。
 船にともした火の薄明かりでのぞいてみたらなんと『牛鬼』だった。

 みんな、色を失って、千メートルばかり、必死で漕いでやっと渚にあがった。
 だが、牛鬼は妙なうなり声をあげて荒れ狂い、漁師の家まで追っかけてきた。

 さいわい、ふところに出雲大社の護符があったので急いで投げつけた。
 牛鬼はものすごいうなり声をあげたかと思うと、逃げ去ったという