【懐かしい】昔話はオカルト満載・第2話【語れ】

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513ある独身男の死 (グリーンランド)
昔、一人の若者がいた。

一度も猟に出なかったために、彼のカヤックはすっかり緑の草に覆われてしまった。
家族がいいかげんで猟に出てみたら、といくら勧めても知らん顔で、いつも家にいた。
ある日、フィヨルドの奥地に住む男のところにたいそう美しい娘がいる、という噂が
伝わってきた。
若者は、その娘を自分の妻にしたい、と考えた。

ある朝みんながまだ眠っているうちに若者は起き上がって、顔や体をきちんと
洗い、自分のカヤックに生えていた草をすっかり抜いた。
それからカヤックに乗り込んで、漕ぎだした。
しばらく漕いでいくと、旅の目的地である居住地が見えてきた。

岸の人々は若者のカヤックを見ると、
『岸につけろ!岸につけろ!』
と呼び掛けた。

若者がカヤックをつけると、人々は歓声をあげて迎え、うわさの娘とその父親に
ついて喜んで教え、若者を娘の家につれていってくれた。
516ある独身男の死 (グリーンランド):03/01/05 17:30
娘の父親は若者を親切にもてなした。

娘は少し離れたところに座っていたが、若者は娘が本当にとても美しいことを
確かめることが出来た。
若者は自分の家の場所や家族の話を聞かせ、たっぷりともてなしを受けた。

そのうちに夜になり、父親は横になって眠った。
しかしまえもって若者に、娘のところに行っても構わないと言っておいた。
若者はそのとおりにした。
しかし、まだ娘に近づかないうちに気を失った。
娘のあまりの美しさに、意識をうばわれたのだ。

だがそれも長くは続かなかった。
男はやがて我に返って娘に近付いた。
しかしその美しさに目がくらんで、ふたたび目を閉じたとたんに又も失神した。
まもなく意識をとりもどした若者は、寝台のそばに立った。
美しい娘は、男にほほえみをなげた。
若者はその衝撃に耐えられなかった。
なんとか寝台のふちにしがみつこうとしたが、無駄だった。
手から力がぬけて、若者は床に倒れた。
息をふきかえした若者は、これでもうあらゆる試練を克服したつもりだった。
しかし、寝台に這い上がろうとした調度その時、娘が自分を受け入れる用意を整え、
身仕舞いをするのを見てしまった。

これは刺激が強すぎた
。若者は失神し、しばらくは寝台の上に横たわったままだったが、美しい娘はその間、
若者を待ち続けた。
520ある独身男の死 (グリーンランド):03/01/05 17:36
しかし、この失神も終わった。
男はようやく寝台に上って、娘の隣に寝ることができた。

今度こそ望みを遂られる、と思った。
だが、それは思い違いだった。
美しい娘が側にいるのに圧倒されて、また目の前が真っ暗になったのだ。
ふと気がつくと、美しい娘が隣で、自分を待っているではないか。

男は娘の体をなで始めた。
そのうちに、すさまじい情熱が高まってきて、娘のわきの下、乳房の間、ひかがみの
中に消えてしまいそうな気がした。
そして突然うめき声をあげたかと思うと、美しい娘の体の中に姿を消した。

『大声で呻いたのは誰だい?』
と、眠っていた家人の何人かがつぶやいた。
しかし、それからまた、静まりかえった。
522ある独身男の死 (グリーンランド):03/01/05 17:38
翌朝、若者の姿が消えたのをみんなは不思議がり、もう帰ったのだろうと思った。

しかし何人かが、若者のカヤックが水ぎわに置いてあるのを見つけ、彼の行方を探した。
しかし、見つからなかった。
美しい娘がおしっこをした家の裏手から、一山の骨が発見されただけだった。


それはあまりにも情熱的に、美しい娘を愛したばかりに、娘の体のなかに消えた若者の骨だった。