◆◆◆【 41/100 】◆◆◆
小さい頃の話なんだけど。
俺のばあちゃんの家にはたくさんこけしがあって、
とりあえず怖くは無かったんだけど、なんか不思議な気持ちだった。
ある晩のこと、俺がばあちゃんの家で寝てたら階下から物音がして、
そんで俺は下に降りてみたんだ。
そしたらさ、ほとんど真っ暗で何も見えないような居間にさ、こけしが一つだけ置いてあったんだ。
ばあちゃんとこの豆電球と、外の外灯の光が少しだけ見えてるような居間にさ。ぽつん、て。
俺はあれ? とか思ったんだけど、眠いの半分だったからそのまま二階にもどって寝た。
んでさ、またしばらくしたら木の音がしてさ、
ばあちゃんち、板張りだからそういうのはよく聞こえるんだ。
んでまた階下に降りていったらさ、さっきのこけしが動いてるんだよ、
二階の階段のほうに。
ばあちゃんの家にはばあちゃんとじいちゃんしかいないしさ、
ふざけて動かすような奴なんかいないわけだよ。
それで怖くなって、それでもこけし戻すの嫌だから二階に戻って扉閉めて、音とか聞こえないようにしてさ。
布団かぶって寝たよ。
しばらくして、ようやくうたたねしてきた頃かな、また聞こえてきたんだ。
今度は止まんないんだよ。
ガタッ、ガタッ、って、こけしが歩いてるみたいな感じでさ、近づいて来るんだよ。
それで俺も本当にビビッて、布団から飛び起きてさ、部屋に入れないようにって、ずっと扉を抑えてた。
ガタッ、ガタッ、つって、足音がさ、俺の部屋の前で止まったんだよ。
鳥肌立ちまくりで震えてたけどさ、開けられる! とか本気で思ってて、必死になって扉抑えてた。
そのまま朝になるまで待って扉開けたら、こけしなんて無くて、下に下りてってもこけしなんかどこにも無かった。
そのこけしさ、笑ってる、っていうのかな、そんな表情のこけしだったんだけど、
そんな表情のこけし、ばあちゃんちには一つも無かったんだよな……