78 :
満潮 ◆wmmanCHo :
02/06/27 12:33 今、食事中の方もいるだろうけどちょっとだけ我慢してもらいたい。 もし、ゲロを吐いたおっさんを思い出したくないなら、逆に ゲロを吐いたおっさんを思い出そうとする心がけが肝心なんだ。 実にリアルに、実に鮮明に思い出すべきだ。 最初、あのおっさんは頬をパンパンにふくらまして口を押さえていた。 ところが後から後からポンプのように逆流する胃の内容物。 ドロドロに溶けた未消化物が鼻孔にまで入り込む。 鼻からうっすらと胃液が垂れてくる。あまりの辛さに涙ぐむおっさん。 限界を超えた口から火砕流のように一気に吐き出されるゲロ。 だが胃は容赦しない。第二弾がさらに胃から食道をとおり まるで蛇の舌のようにブシャッと勢いよく口から飛んでくる。 あたり一面、ゲロだらけだ。飛び散ったゲロがズボンのすそや 靴に跳ねている。ゲロの塊から徐々に流れ出す胃液。 ちょうど股下をすり抜けるように、蛇行しながら流れていく。 自販機に手をあて、身体を支えるおっさん。 自分の目の前に展開しているのは、ついさっきまでの 楽しいひとときを過ごした時の思い出の品でいっぱいだ。 ちぎれたワカメ、砕けたマグロの赤身、原型を完全にとどめたナメコ、 エビチリのエビの断片、そしてビールの麦芽が隠し味として より酸味をひきたてている。おっさんはこう思うはずだ。 早く家に帰りたい。家には妻が待っている。そして今年高校にあがったばかりの 娘とまだ小学生の息子が待っている。あいつらはお母さんの言う事をきちんと聞いているのだろうか。 でもパパは今こんな惨めな姿になってしまった。 ネクタイを下ろし、第一ボタンをはずし、曇った黒ぶちのメガネは斜めに曲がり、 左手に持った傘と右手に持ったカバンはどれもはねかえったゲロでマダラ模様になっている。 そしてそこに残された無数のゲロ。
79 :
満潮 ◆wmmanCHo :02/06/27 12:44
おっさんの黒いパンストのような靴下にもゲロは容赦なくはねかえっている。 黒い靴を縛っているほどけた紐は既にゲロの中に垂れ、 足を動かすたんびに、まるで筆のようにゲロで足元に線を描く。 パパ、今はこんなに負け犬だけれど、必ず家には帰るからね。 周りを見渡すと、電車を待つ乗客はまるで他人のようにそっぽを向いている。 こんなに辛いのに。こんなに苦しいのに。誰も俺を助けてはくれないのか…。 だが悪夢はこれだけにとどまらなかった。 急激に腹部が痛む。畜生、こんな時に下痢をするなんて。 思いあたるフシはあった。今朝の朝食だ。 妻が出してくれた朝食の中に、なぜかツンと匂うものがあった。 妻は気のせいだと言った。あれは確かにおとといの夕飯で見かけた 昆布巻きだった。今思えばなぜあんなにネバネバしていたのか。 妻にハメられた。おっさんはこの時初めて真実を知ってしまったのだ。
80 :
満潮 ◆wmmanCHo :02/06/27 12:53
ゲロの中に指をつっこみ、昆布がないか確かめた。 何度も何度も人差指でゲロをこねくりまわし、 昆布を探した。でもどこにも見当たりはしなかった。 そうだ。俺は今朝、現場に直行しなければという一心で 昆布巻きを疑ってる暇はなかったんだ。 そして寒風吹きすさぶ中、俺は図面を片手に 黄色いヘルメットをかぶって現場監督と打ち合わせをしたんだ。 「山ちゃん。今日、直帰なんでしょ?いっぱいやろうよ。」 あの時、断っておけばよかったんだ。明日は娘のピアノの発表会だ。 お父さんはそれを理由に断ればよかったんだ。 だが断れなかった。パパは仕事でしか家族に見返してやることはできない。 だからパパは飲めもしないのに無理して飲んだんだ。 パパは6大学を出ている。だからプライドも高い。 若いもんには負けてはいられないんだ。負けたら最後、なめられて終わりだ。 だからパパはがんばった。ビールを注がれると無理してでもグラスをあけた。 そしてその結果がこのザマだ。 おまけに腹が痛い。ゴロゴロしてておさまらない。 ああ、なんてこった。よりによってこんな時に。 母さん、迎えにきてくれ。俺が悪かった。接待のゴルフももうやめるよ。 だから今すぐ迎えに来てくれ。 おっさんは携帯を取り出した。ゲロまみれの手で上着の内側のポケットに手をつっこむ。 そして携帯を取り出した。 なんてこった。 ゲロで濡れた手のやつが、携帯を下に落っことしてしまった。 携帯はものの見事にゲロ溜まりに着水した。 ベチョっと音がした。スピーカーの穴にまで浸透するゲロ。 ああ、何もかも終わりなんだな。
81 :
満潮 ◆wmmanCHo :02/06/27 13:04
全身に鳥肌が立った。 いよいよ腹痛も大詰めを迎えたようだ。 アナルに全身全霊を込め、必死に耐えるおっさん。 顔から額から脂汗がしみ出てくる。ギンギンと押し寄せる腹痛。 この痛みがいったんひいたら一度下に下りていって便所に行こう。 だがおっさんはもはや歩けなかった。日頃飲めないおっさんが、 今日に限って量を飲んでしまったのだ。 足がガクガクと震え、徐々に力が抜け、その場にへたりこむおっさん。 手をついた先は案の定、自分のゲロにジャストミートだ。 だがこの際ゲロのことなんてどうでもいい。 傘をぶん投げ、カバンを落とし、ゲロの上に座り込むおっさん。 気温により、それまで温かかったゲロは既に冷えかかっていた。 そうだ。ポカリスエットでも飲もう。ゲロから手をあげ、 糸をひいた手でズボンのポケットをまさぐるおっさん。 思うように出てこない。苛立ちはとどまるところをしらなかった。 無理矢理手を突っ込んだせいでポケットのわきが裂けた。 でも気にするもんか。帰ったら母さんに縫ってもらおう。 だがケツの下の冷えたゲロは、かえって腹痛を増幅させることとなってしまった。 ああ、腹が。腹から液体の流れるようなゴロゴロいう感触があった。 再び吹き出る脂汗。女子高生が2人、こっちを見て怪訝そうな顔をしている。 おいお前ら。おじさんは見せ物じゃないんだぞ! お前らがガキの時分、日本国の経済を支えたのは誰でもない、俺達の世代なんだぞ! 一瞬、アナルが反応を示した。 しまった!漏れた!
82 :
満潮 ◆wmmanCHo :02/06/27 13:16
おっさんは既に限界を悟り、這ってでも便所に行くべきだと実感した。 ゲロをひきずりながら這うおっさん。 駅の階段まで残り5メートル。なんてこった。これしきの距離に恐れおののくなんて。 おっさんは這いずった。犬の視点から駅のホームを見たのはこれが初めてだ。 なんとか最初の一段目まで辿りついた。 階段は幸いなことに上りではない。転がってでも下に下りてやる。 おっさんは闘志に燃えていた。昨日までの俺は傘で素振りをやるような つまらない人生を送ってきた。だが今日からは違う。 この試練に耐えた暁には、希望という名の明日が待っている。 おっさんは一段、また一段と階段を降りていく。 だがおっさんが次の一段を降りようとした時、 間違って腹筋を使ってしまったのだ。 あ…。 しばらくの沈黙、そしてそれを破ったのは、ケツから聞こえる かすかなブチュッという湿った音。 みるみるうちにケツに温もりを感じる。 畜生。なんでこいつらは俺を助けてくれないんだ。 なんで俺を避けて通るんだ。 薄いグレーのスーツがみるみるうちに茶色くにじむ。 やがてそれは足元へとつたっていく。 鼻をかすめる悪臭。かつてないまでの羞恥心。 だがおっさんはそれでもがんばった。 後から後から吹き出る下痢便。垂れ落ちたそれは靴下に到達し、 さらに靴の中にまで進入する。 もうやめてくれ!もうたくさんだ!俺が何したっていうんだ! だが排泄物は容赦しない。動くたびに、一段降りるたんびに 足元から点々と軌跡を残していく。 下では駅員が待っていた。くそっ、来るのが遅い。 いいから早く手伝ってくれ。俺の腰に手を回し、肩を貸してくれ。 俺はもう限界なんだ。 だが非情にも駅員はただ突っ立っているばかりだった。 所詮は人の子なのか。
83 :
満潮 ◆wmmanCHo :02/06/27 13:26
おっさんの身体から闘志の炎は今まさに消え失せようとしていた。 足が止まった。ふと振り返る。 なんてことだ。これが俺のしてきたことなのか。 ゲロをこすりつけ、糞を撒き散らした凄惨な情景が背後に広がっていた。 ついにおっさんは泣き出した。時分の変わり果てた姿に思わず手で顔を覆い、 声をあげて泣いた。泣けば終わる。泣けば誰かが何とかしてくれる。 泣けばこの場から立ち去れるかもしれないんだ。 おっさんは泣きながら自分の半生をかえりみた。 就職してからこのかた、楽しいことなどあっただろうか。 係長のポストに同僚を蹴落とし、ある時は上司にチクり、 ある時は同僚にデマを吹きこみ、そして自分はようやく アームレスト付きの椅子に座ることができた。 椅子に座って何度も椅子を回転させてみた。 居心地がよかった。勝者にのみ許されたシートだ。 そして次は課長だ。俺は課長候補だ。 娘が生まれた時、俺は嬉しくもなんともなかった。 面倒なことは母さんに任せ、俺は娘を我が母校に入れることだけを 考えていればそれでいい。 ストレスが溜まると母さんをむさぼった。 母さんの身体を、ほてる肉体をむさぼり尽くした。 そしてやがて息子が生まれた。 母さんはラマーズ法で産みたいと懇願した。 でも俺は断った。仕事にさしつかえるようなことはできないんだ。 足を引っ張るのはやめてくれ。
84 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/06/27 13:27
ハラハラ ガンガレ、トーチャン
…俺、今飯食ってんだよな・・・・・。
86 :
えび ◆euwbZ/5E :02/06/27 13:49
(´Д`;) それって心眼なの!?
しかもこれ、カレーだし・・…。
88 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/06/27 14:19
終わり?
89 :
満潮 ◆wmmanCHo :02/06/27 16:16
おっさんは涙が枯れるまで泣いた。そして泣き疲れた後に残ったのは 絶望感だった。ふと見ると既に駅員はいない。 そろそろ終電の時間だ。 涙を拭いたおっさんは階段の手すりにつかまりながらもなんとか 下まで降りていった。 残り3段。後ろを振り向くな。後ろを振り返れば負けだぞ。 残り2段。過去の自分はもういないんだ。今を生きろ。前に進め。 残り1段。もう間もなく栄冠を手に入れられるぞ。 ゴール! おっさんは階段わきの公衆便所に、ついに自力で到達した。 おっさんは一番手前の個室に入っていった。 和式便所の前にしゃがみこみ、まずは残りの内容物を吐くことに専念する。 ウェッ!オゥェッ! 便器の中の水の上には、白い泡のような一口ゲロが浮いていた。 ツバとはちょっと違う白い塊。それを何度も何度も吐き、 さらには指を突っ込んで吐こうとした。 胃はほぼ空の状態だった。だが吐き気はまだ止まったわけではない。 吐きたいのに吐けない時ほど辛いものはない。 おっさんは試行錯誤した。そうだ。水を飲めばいいんだ。 苦肉の策の末、おっさんが取った行動は便器の中の水を手ですくって 飲むことだった。
90 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/06/27 16:18
>【BBS#8ログより(一部伏せ字を追加)】 > >1 #EXA岡本 QZR05214 97/02/19 23:22 >題名:多七情報です。 >HPのUPに多七情報を少し混ぜましょうか。 >まず >〒### 東京都●●市??####ー# >TEL ####ー●●ー#### >FAX ####ー●●ー#### > さわざき???? >携帯電話の番号は、030ー###ー#### >いきなり全部とはいかずに、とりあえず、「●●市??」とか >「####ー●●ーXXXX」とか >などでいいですね。 >HPメンバーで全部知っているのは私くらいですから >いきなり全部繰り出したらすぐにバレちまう。 >ただ、PATIOにUPしたら逆効果になってしまった。 >まさに四面楚歌だ。 >今夜から休養しよう。 >恐ろしい敵だ。 >「教師EXAの悩みは本日をもって終了します。」 >というUPを入れます。 >それから、チョー卑怯な手ですが >別IDでPATIOに入って >「ここでクスリとかビデオ買えるって聞いたけど 本当?」 >とかいうUPをさせます。 >非合法な行為に使われているHPやPATIOは >一気に吹っ飛びます(笑)。 >それではまた。 >EXA
91 :
満潮 ◆wmmanCHo :02/06/27 16:24
身も心も疲れ果てたおっさんはやがて急激な睡魔に襲われる。 グシャグシャに散乱したトイレットペーパーが 誰ともつかない者の尿によってドロドロに床にへばりついている。 便器のフチには誰のものともつかぬ排泄物がこびりついている。 だがおっさんにはもはや無用の長物だ。 ビシャビシャになった床にそっと身体を横たえる。 ふと思った。暖かい布団で寝れたらどんなに幸せなことだろう、と。 本当の幸せとは、なに不自由なく布団で寝れることなのだとふと思った。 だが今はとにかく眠りたい一心だ。便所の床の汚れたタイルに頬を押し付け、 寒さをしのぐように便器を囲むように身を縮めるおっさん。 壁には無数の落書きがあった。 彼氏募集のおしらせと携帯の電話番号、エッチ大好きな女の子さちえのeメールアドレス、 高校生のものと思われる内弁慶な文章、それを見た者の追記、 ありとあらゆる文字が今のおっさんには新鮮に感じられた。 おっさんはフフと笑い、いつしか寝息を立てて深い眠りについた。
満潮いい仕事してるな。 でも冗長すぎ。
93 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/06/27 16:33
涙で文字がかすんでしまったよ。。。
94 :
満潮 ◆wmmanCHo :02/06/27 16:35
温かい食事、温かい食卓、そして暖かい家族に囲まれて過ごす 12畳のリビングの幸せなひととき。 テレビのチャンネルを野球にまわすときまって大騒ぎする息子。 頭をポンと叩きながら「あたしだって我慢してるんだからね。」と怒る娘。 両手に布巾を当て、「やーめなさい!」と注意をしながら鍋を運ぶ妻。 だがそれは夢だった。 おっさんが夢から覚めて辺りを見回した時、そこには紛れもない事実が 目の前に展開していた。 ゲロにまみれた時計を指で拭き、時刻を見ると既に朝の4時だった。 駅は既に電気が消えていた。だが便所だけは電気がついていた。 きっとさっきの駅員のはからいだろう。 おっさんはしばらく呆然と座りこんでいたが、グシャグシャになったタバコに火をつけ、 吸い終わった後に吸殻を便器に投込み、水で流そうとしたがタバコのフィルターが 浮いてしまうせいで思うように流せなかったのでそれを指で拾い、 上着のポケットに入れてからようやく覚悟をきめて外に出ることにした。 明け方近い町を歩く。辺りは人の気配すらない。 時折遠くで新聞配達のスクーターの音が聞こえる程度だ。 おっさんはフラつく頭と足で、駅から歩いて10分の自宅まで歩を進めた。 途中にあるクリーニング屋のガラスをふと見た。 そしてそこで初めて自分の姿を目にすることになる。 なんてことだ。これが私の姿なのか。 一流大学を卒業後、一流商社に勤務して、一流とは呼べないまでも 中流意識の中で築いた生活、それを支えていた人物とは まさかガラスに写っているこの私なのか?
95 :
満潮 ◆wmmanCHo :02/06/27 16:46
おっさんは衝撃を受けた。まるで脳天をハンマーでかち割られるような 鋭い衝撃だ。まだ明けぬ町の中で呆然と立ち尽くすおっさん。 このままじゃ帰れない。もしかしたら自分は永久に家には帰れないかもしれない。 そんな考えがふと頭の中をかすめたとき、再びおっさんはしゃがみこみ、 顔を両手で覆いながら泣いた。でも今度は声を殺して泣いた。 泣きながら考えたことが幾つかあった。 いずれもみな、死ぬことばかりだった。 そうだ、死のう。死ねば恥をかかなくて済む。 そう思ったおっさんはいつしか多摩川の方角へと向かっていった。 幹線道路をはさんだ先が土手になっている。 入水自殺をしようか、それとも橋から身投げでもしようか、 おっさんが土手にあがったとき、前から70代の夫婦がウォーキングしている 姿が目に飛び込んだ。その瞬間おっさんは土手の傾斜に身を伏せ、 見つからないよう身をかがめて様子を伺っていた。 草むらに顔をつけていると、ふと懐かしい感覚に陥った。 そう、子供の頃に遊んだ原っぱだ。 あの頃に戻りたい。でもあの頃には戻れない。 あの頃に戻るには死ぬしかないか。やっぱり死のう。 老夫婦が通りすぎるとおっさんは河原へ降り、 まずは水温に慣れるために足を水に浸してみた。 靴にジャボジャボと水が入る。靴の中のゲロが水面に浮いてくる。 水面にはうっすらと油が浮いていた。それが青や紫の模様を作り、 しばらくおっさんの目を楽しませていた。だがやはり水は冷たかった。
96 :
満潮 ◆wmmanCHo :02/06/27 16:54
あまりの冷たさに耐えられなくなったおっさんは いったん水辺から出ようと思った。水に濡れたズボンのスソがやけに重い。 水気をしぼろうとかがんだ瞬間、意外なことに気がついた。 そう、靴がきれいになっていたのだ。 これはひょっとするとひょっとするぞ! おっさんはまず試しに背広の上着を脱ぎ、川に投げ込んだ。 それからゆっくりと揉み洗いをし、丹念にゲロを取り除いていった。 親指の腹で何度もこすり、ゲロをすり落とそうと懸命だった。 なんとか取れそうだ。シミの部分に鼻をつけて匂いをたしかめる。 かすかに匂うものの、洗わないよりは全然ましだった。 続いてネクタイをはずし、Yシャツを脱いだ。 Yシャツは比較的汚れてはいなかった。ただタバコと携帯を取る際に 手についたゲロがこすれた跡があったものの、それほど被害は甚大ではない。 問題はYシャツの色だ。これはまだ買ったばかりで汚れの首輪も かすかにしかついていないほどの純白ぶりを見せていたのだ。 黄ばんだシミはどうフォローしよう。 そこで今度は平べったい石を探し、洗濯板代わりにこれを使用し、 川底の細かい砂をこすってなんとか目立たない程度のレベルまでに 仕上げることに成功した。 おっさんはいつしか生きる希望を胸に抱いていたのだ!
これって、もしかして自伝?
98 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/06/27 16:57
いい加減にしとけよ満潮
ガキのころ近くに空き家があって 秘密基地にして遊んでた。 帰り際に友達が部屋の中を指さして 「おじいさんが怒ってる」「ホントだ」とか言うので 俺も覗いてみたが俺には何も見えなかった かわりに綱引きの縄より少し細いロープみたいなものが ぶら下がって揺れていた。 これは逆に霊感がゼロということかな?
101 :
満潮 ◆wmmanCHo :02/06/27 17:06
上着とYシャツを近くの木の枝にかけたおっさんは、あたりをくまなくチェックしてから 今度はズボンを脱いだ。脱いだとたん悪臭が放った。 ズボンを手にとり、顔の位置まで持ち上げ、前後を見比べたとき一瞬の絶望と衝撃が走った。 こ、これは落ちない…。 そう、下痢便を漏らしてから既に4時間半が経過していたのだ。 もはや布地は染色され、ズボンはガビガビになって茶色いマダラ模様を織り成していた。 おっさんは再び生きる希望を失いかけていた。どうする?何度も自分に問い掛けた。 ふとスズメのチュンチュン鳴く声が聞こえてきた。 いけない!朝がくる!世の中はまだ平日だ! おっさんは焦った。とにかくもズボンを洗ってしまわないことには 帰るに帰れなくなる。おっさんはズボンを勢いよく川に放り込み、ザブザブと音を立てて洗いはじめた。 もうこうなったら多少のシミなど気にしてはいられない。 だがシミは多少どころの騒ぎではない。 おっさんに名案が浮かんだ。そうだ、川のヘドロでズボンの色を変えてしまえばいいんだ。 おぼつかない足取りで川の底砂に手をつっこんだ。うまい具合に泥は見つかった。 バクテリアとアンモニアに満ち溢れた腐敗臭のたちこめるヘドロ。 おっさんにとってこれほどありがたいお宝はなかった。
>>100 「怒っているおじいさん」よりその「友達」のほうが怖い。
>>102 いやその時友達4・5人居たんだけど
みんな見れたんだよそのおじいさん。
その空き家は潰れちゃったけどいまだに空き地。
神奈川県のT警察署の近くにあるから、
もし霊感が強い人がいたら霊視してほしい。
だが思ったより作業は難航した。ズボンの生地がヘドロと馴染まないらしい。 おっさんはズボンを洗ったあとにトランクスを洗おうと思っていたが これでは時間が間に合わない。 こうなったら一か八かの賭けに出るよりほかない。 おっさんはおもむろにトランクスを脱ぎ、固形物の張り付いたそれを 川にぶん投げて流し去った。これで証拠は一つ減った。 と同時におっさんも全裸になってしまっていた。 人目につかぬよう細心の注意を払いながらもおっさんはヘドロを塗りたくる作業に没頭した。 それから思い出したようにしゃがみ込み、水の中で股間を念入りに洗った。 まさに天然ウォシュレットだ。 だがおっさんの苦労もここまでだった。
>>103 何か、いわくつきなんですか?その空家って。
おっさんが新しいヘドロを取りに行こうとちょっと目を離したすきに あろうことか水面に浮いたズボンがクルクルと回転しながら 下流へと流されていってしまったのだ。 おっさんがヘドロをさっきよりも多めに取ろうとしていたことが さらに事態を悪化させることとなった。 おっさんが気づいた時は時すでに遅く、目測で40m離れた下流に流されていた。 しばらく呆然と立ち尽くすおっさん。 そして本日3度目の涙をこぼし始めるおっさん。 かすむ目で時計を見ると、時刻はまもなく5時半になろうとしていた。 ヘナヘナと川の中に座り込み、真っ白になった頭の中でそれでもおっさんは 家に帰ることを夢見ていた。 恵美、隆司、そして母さん。父さんはもう帰れないみたいだ。 子供たちをどうか頼む。苦労かけて済まなかった。
105>> いや、どうなんだろ? 木造で外から見た感じ二階建てだったんだけど 何故か階段が無かったり、 土間みたいなのがあったり(でも土間じゃない) 自分が体験した奇妙なところは沢山あったけど、 その当時噂はきかなかったね。 気味悪くて大人は誰も近寄らなかったみたいだし。 小学二年生だから出来た業だな。
母さんと初めて知り合ったのはいつの頃だろうか。 たしかあれは17年前の春のことだったっけ。 母さんは最初、俺よりも同僚の吉岡のことが好きだったんだな。 俺は母さんを手に入れたい一心で策略を練っていた。 吉岡と母さんがデートの日に、俺は売春婦に金を与えて 吉岡の元に向かわせたんだ。売春婦はうまくやってのけたよ。 「ちょっと吉岡クン!誰この女!」 吉岡は豆鉄砲を食らった鳩のような目でびっくりしていたっけ。 「君のことなど知らない。」 必死に叫ぶ吉岡をよそに、女は腹をなでながら 「責任取ってよ。あなたの子よ!」と食ってかかっていってたな。 母さんは真っ赤な顔をして怒って帰っていったよ。 俺は一部始終を見ていた。そして先回りして母さんと 新宿駅でバッタリ出くわすよう待ち伏せしていたんだ。 母さんは涙ながらに訴えた。俺は優しく抱きしめた。 「あんな男のことなんか忘れてしまえよ。僕と映画でも観に行こう。」 これが母さんとの最初のデートだった。 梅宮辰夫主演の映画「不良番長・突撃一番」だった。 母さんはエンディングで俺の手を握ってきたっけ。 でも母さん。 父さんはもう帰れないかもしれないよ。
おっさんの回想はさらに続く。 恵美、お前の5歳の時の誕生パーティーな。 父さん家に帰ってやれなくて悪かった。 父さんは今、夜明けの河原ですっ裸でいる哀れな中年おやじだが お前のことはいつでも第一に考えてきたつもりだ。 お前が中学に入ってから父さん気が気ではなかったんだよ。 赤飯炊いてお祝いもした。でもそれと同時に お前はどんどん大人になっていくんだ。 いずれどこの馬の骨ともわからん男に大切な娘をもてあそばれるかと思うと 父さんは辛くて仕方がなかった。 お前はいつでも穴のあいたルーズソックスでどこでもアグラをかいて座り込むが、 父さんは目のやり場に困って仕方なかったんだ。 今だから言う、父さん、お前の寝ている隙に何度か部屋にしのびこんでいたんだ。 お前が留守の時に日記も読ませてもらった。クラスの田中君が好きだったんだってな。 父さん、田中君を待ち伏せて車のバンパーで当て逃げしたんだ。 お前が入院先の病院に行くといった時に父さんが反対したのも、実はそういう理由からだったんだ。 でも悪く思うな。これが娘への愛情ってやつなんだ。
隆司。お前は本当に可愛い子だった。 お前は常にクラスで一番の成績を取っていたな。 本当にいい子だ。エリートの息子は当然エリートであるべきなんだ。 父さん、お前が95点を取った時には本気で怒ったぞ。 母さんが止めたからいいようなものの、父さんは折檻用の竹刀まで用意してたんだからな。 お前がきちんと大学を卒業しないと、父さんはお前を子供とは思わなくなるかもしれない。 だから父さんの子供であり続けるには常に優等生でいなければならない。 父さん、お前の担任の石川先生に何度も貢いだんだぞ。 そこまでしてお前を守ってたんだってこと、大人になればお前もわかるんだ。 ここでおっさんはふと大事なことに気がついた。 このまま自分が死んだら、いったい子供たちはどうなってしまうだろう。 母さんはもしかしたら同僚の吉岡とヨリを戻そうとするかもしれない。 そうなったら恵美はもしかしたら吉岡にイタズラをされるかもしれない。 いや、それはないか。いいや、吉岡のことだ。何をするかわかったもんじゃない。 それに息子のことはきっと見向きもしないだろう。あいつは俺によく似ているから。 そうだ。家族を守れるのはこの俺しかいないんだ。 家族を幸せにしてやれるのも俺をおいて他にはいない。 大切なことに気づいたおっさんは思う間もなくザバザバと水をかきわけ、 濡れたYシャツを着始めた。ナイロンとポリエステルの合成素材は とかく地肌に貼りついた。乳首が透けても気にはならなかった。 Yシャツのボタンをはめると今度はまだゲロ臭の漂うネクタイをしめる。 そして上着をはおってから黒い靴下、黒い革靴を履き、 急いで土手を駆けあがった。 家族のことを思えばズボンなどどうだっていい。 家に帰れるならノーパンだろうが知ったこっちゃない。 急げおっさん。日の出はもう間もなくだ!
町がしらじらと朝を迎える。この頃にはジョギングする人や 通勤通学者もチラホラと姿を現し始める。 おっさんは両手で股間を押さえながら茂みを移動し、まず土手から一番近い 一戸建ての庭先に忍び込むことにきめた。壁は思ったよりも高い。 だがこの障害を乗り越えなくては先へは進めない。 壁の上にまたがった時、睾丸をしたたかに打ちつけた。 激痛に耐え、バサリと庭に落ちた時は家の者に気づかれたかと思ったが どうやら中はまだ睡眠中のようだ。 壁と家の隙間を這い、次は背中合わせに立っている隣家の塀をよじ登る。 壁の上に立った時にあることに気がついた。 このまま壁を伝っていけば、一区画向こうへは移動できるはずだ。 このまま行けばここからだと80mは前進できる。 家の方角とはやや違うが、迂回しても損はない。 そう判断したおっさんは狭い塀の上をまるで綱渡りのようにヨロヨロと歩き、 民家の住人に気づかれないよう細心の注意をはらいながら一歩また一歩と 前へ進んだ。 ところが。 ある家の裏に達した時に予期せぬ事態が待ち受けていた。 そう、犬だ。突如犬が吠え出したのだ。 ううぅー、ワン!ワンワン、ワン! おっさんの試練は続く。
犬を黙らせるためにおっさんは民家の庭に降り立った。 噛まれることを覚悟でおっさんはしゃがみこみ、手を出した。 手を引っ込めなければ恐らくは噛まれていたであろう。 だが犬はあるモノに興味を示し始めた。 そう、おっさんのソーセージだ。犬は耳を数度ピクピクと動かしてから 今度はクーンと鼻を鳴らし、おねだりをするようにソワソワし出した。 さすがにおっさんもこれには動揺した。これを食わせてやるわけにはいかないからだ。 ここでおっさんは咄嗟に足元の石を拾い、ポンと放り投げてみた。 するとどうだ、餌と勘違いした犬はそそくさと背を向けていってしまったではないか。 おっさんは即座に壁によじ上り、足早に去っていった。 窮地を脱したことで自信もついてきた。 が、ここで壁も終わりだった。 次の区画に進むには幅5mの通りを横切らなくてはならない。 おっさんは家の隙間からそっと顔を出し、まずは歩行者をチェックした。 歩行者はどうやら一人だけだ。やつが通り過ぎたら一気に突入しよう。 問題はすぐ目の前にある家だ。隣との間がわずか50センチしかなかったのだ。 このせり出した腹であの隙間に入れるだろうか。 だがここは先に進むしかない。 クリスチャンなおっさんは眉間で十字を切った。ミドルネームはセバスチャンだ。 ようやく歩行者が通りすぎた。だがなかなか足が前に出ない。 不安材料はいくらでもある。まずどこから人に目撃されるかわからない。 だがここに留まっていても見つかることは時間の問題だ。 あと30分すれば交通量も増えるだろう。 行けるかどうかよりも、行くしかないという覚悟をきめ、 背水の陣を敷いたセバスチャンが今まさに道路を横切ってみせた。
たった50センチの隙間に果敢に挑んだおっさんは まず腹をへっこまし、カニのように横に這っていくことでピンチを切り抜けた。 だが、家の壁のモルタルのオウトツがダイレクトに陰部を刺激する。 それは徐々にすり切れるような痛みと化し、やがて出血が始まった。 それでもなんとか這って歩くこと10m、再び壁によじ登って進撃を開始する。 途中に古ぼけたアパートが出現した。トタンを打ち付けた貧相なボロアパートを 横切る際、ふと2階の窓に洗濯物が干してあるのを発見した。 何か履けるものはないかと背伸びをして調べてみた。 だがその持ち主はどうやら女性らしかった。 ブラウスが2枚、黄色いスカートが1枚、それから シワシワに垂れ下がっているベージュ色のパンスト、 それに下着類がタオルに覆われるように干してあった。 1階の軒下に足をかけ、なんとか手を伸ばそうとした。 だがなんとか手に触れたのはパンストだけだった。 おっさんはとりあえずパンストを引っ張った。 洗濯バサミがジリジリと引っ張られる。徐々に洗濯物が外れかける。 あとちょっと。あとちょっと。 パチッ。かすかな洗濯バサミの音と共にパンストがフワッと落ちてきた。 さらに手を伸ばした。どうしてもブラウスを手に入れたかった。 だがこれはハンガーにかかっていて取れそうにない。 もはやこれまでか、とその時、パンストを取った時の衝撃で パンティーの留めてあった洗濯バサミ2つのうちの1つが はずれたことを知った。今ならこれも取れそうだ。 おっさんはさらに背を伸ばし、フクラハギが引きつるくらいまで背伸びをした。 パチッ。とれた。 手のひらの中でそれはクシャクシャッと縮こまっていた。 おっさんに考えている猶予はない。まずパンティーを履き、 腰を左右にクネクネくねらせながら気休め程度にパンストを履き、 一路自宅へと急行した。
おっさんはこれで下半身を露出せずに済んだ。 だが欠点もあった。締め付け具合が強いのと、先ほどの怪我で 下着がまるでアノ日のように血で染まってしまったのだ。 ビジュアル面で精細を欠いているものの、今までよりはマシだと思い さらに先を進んだ。ここから先は比較的楽に移動できる。 ふだんは人気のない竹ヤブに入ることができるからだ。 竹ヤブは蜘蛛の巣で覆われていた。なるべく姿勢を低く保ち、 木の根っこにつまずかないよう慎重に歩いた。 ここへは何度か粗大ゴミを捨てに来たこともある。 だから勝手はわかっていた。 一歩進むごとにパキッ、パキッと小枝の折れる音がする。 ふだんは気にならない物音が今ではすっかり神経質になっていた。 ずいぶん奥まで入ってきた。ここを抜ければ家までは100mだ。 が、ここで古タイヤに蹴つまずき、木の根っこにこめかみをしたたかに打ちつけた。 激痛が顔面を襲う。どうやら口も切ったようだ。 鉄分の含んだ嫌な味が口いっぱいに広がる。 さらに右ヒザを痛めたせいか思うように立ち上がれなかった。 そこでおっさんは歩伏前進に頼ることにした。 パンストのゴムがズルズルと下にさがる。 上げては下がり、履いては落ちを繰り返しているうちに どうやらパンストはデンセンしてしまったようだ。 なんとか木につかまりながら立ち上がり、全身についた 泥と落ち葉を落としてから今度はゆっくりと下り坂を降りていった。
時刻は既に7時を回っていた。 竹ヤブを出ようとした矢先に、肝心なことを忘れていた。 そう、自宅に戻るにはバス通りを横切らなくてはいけないのだ。 この時間はバス停に並んでいる人が多い。 連中に見つかったら今までの努力も全ては水の泡だ。 あの列の中に知った顔がいないとは限らないからだ。 おっさんはクシャクシャになったタバコの最後の1本に火をつけた。 しばらく作戦を練り直そうと思った。 1台目のバスが出て行ったら乗客はいなくなる。 が、7時14分の次は7時16分だ。これをやり過ごせば 次のバスまで5分ある。乗客は新宿行きの急行に乗るために 16分のバスに乗るのが普通だ。バスが停車したらまずバスに走り寄り、 バスの後方に迂回して乗客が乗ったと同時にバスについて走り、 すぐわきの路地裏に飛び込めばほぼ見つからずに済む。 しかもここは建設途中の新興住宅地で、バスの乗客以外に人はいない。 作戦は決まった。 おっさんの心は既にきまっていた。 もはやこの突撃に託す以外他に方法はない。
だがここで問題が生じた。先ほど痛めたヒザで走れるかということだ。 ここから自宅まで100メートル、学生の頃のタイムは11秒フラット、 この歳になっていったい何秒で走れるかわからない。 が、仮に20秒かかったとしても、たった20秒だけ恥を晒せば 或いは近隣住民にもバレずに済むかもしれない。 そうこうしているうちに1台目のバスが到着した。 おっさんは決行に備えて入念にチェックする。 バスが到着してから発車するまでにおよそ20秒。 走り出してから路地まではおよそ10メートル、 そこから先は走れるだけ走る。 おっさんはネクタイをはずした。 それをヒザにきつく縛る。これで痛みを麻痺させようと思った。 果たして効果があるかはわからない。 だがやってみる価値はあるだろう。 ふと頭の中にある曲が浮かんだ。
タバコをフィルターぎりぎりまで吸い、士気を高めるために口笛を吹いた。 若かりし頃、妻と2人で聞いたエルビス・プレスリーの「ジェイルハウス・ロック」だ。 ♪Goin' to a party in the county jail♪ 手にしていたタバコを藪の中に放り投げる。 ♪Prison band was there and they began to wail♪ 16分のバスが来た。 ♪Kid is shakin' and began to sing♪ バスのドアが音を立てて開いたようだ。 ♪You should've heard them knocked out jailbirds sing♪ おっさんがおもむろに藪から走りだした。 ♪Let's rock! Everybody, let's rock!♪ 低姿勢を保ったままバスの右側面に取り付く。 ♪Everybody in the whole cell block♪ 運転手には気づかれていないようだ。急いで後方に回れ。 ♪Was dancin' to the jailhouse rock♪ ああ、後ろから乗用車が。 ♪Spider Murphy sittin' on a block of stone♪ こうなったらバスの下に潜りこむしかない。 ♪Little Joey blowin' on a slide trombone♪ よし、乗用車はバスを追い越した。 ♪Come on, Silly Willy, don't you be no square♪ バスが走り出す前にここから脱出しなくては。 ♪If you cannot find a partner, use a wooden chair♪ パンストがずり落ちたが後で直せ、今は這って外へ出ろ。 ♪Let's rock! Everybody, let's rock!♪ なんとかバスの後方へ回りこんだぞ。 ♪Everybody in the whole cell block♪ 取っ手に捕まってバンパーに足をかけろ。 ♪Was dancin' to the jailhouse rock♪ バスが走り出した。 ♪Shifty Henry said to Bugs,"For heaven's sake♪ そのままゆっくり走ってくれ。 ♪No one's lookin'; now's our chance to make a break♪ あと3メートル。 ♪Bugsy turned to Shifty and he said, "Nix nix♪ あと2メートル。 ♪Wanna stick around awhile and get my kicks♪ あと1メートル。 ♪Let's rock! Everybody, let's rock!♪ よし飛び降りろ。一気に路地裏に走り込め。 ♪Everybody in the whole cell block♪ 家が見えた。手で顔を覆って走り抜けろ。 ♪Was dancin' to the jailhouse rock♪ ついに我が家だ!我が家に着いたぞ!
なんだ、満潮まだやってたのか。 エンディングまで流して本格的だな。
家の前に着いた時、インターホンに指を置いて一瞬ためらった。 果たしてこの不様な姿を家族が受け入れられるのか。 もしこの姿を見て別れたいと言われたら、その時はその時だ。 今はとにかく家族に一目会いたい、それだけだ。 おっさんは意を決し、ボタンを押した。 いつもの聞きなれた音が家の奥で鳴り響く。 静寂…。 そして沈黙…。 やがて鍵の開くカチャッという音がした。 おっさんは動けなかった。今このドアノブに触れ、 勢いよく手前に引けばそこには家族がいる。 だがおっさんは躊躇していた。開けるべきか、待つべきか。 中でサンダルを履く音がした。そしてゆっくりと扉が開く。 「あなた…。」 そこには紛れもない妻の姿があった。 「どこ行ってたのよ…。」 おっさんは黙っている。 「心配したのよ…。」 おっさんはうつむいている。 「警察の人が来たのよ…。」 妻はおっさんのゲロまみれのカバンと携帯を持っていた。 「迎えに行ったのに…。」 妻は鼻をすすっていた。 「あなたどこにもいなかったじゃない…。」 おっさんも鼻をすすった。 「ずっと起きて待ってたのよ…。」 妻の目からは大粒の涙がこぼれ、そして玄関のタイルの上にはじけた。 「死んだらどうしようって思ってた…。」 おっさんは一歩前に出た。そしてゆっくりと顔をあげる。 「あなた!」 おっさんは玄関の中に入り、そして妻を力いっぱい抱きしめた。 家の奥から、口々に「お父さん!」と叫ぶ子供達が走ってきた。 4人で輪になって抱き合った。 「ごめん。俺、死のうとしてたんだ!」 近所の人が一人、また一人と姿を現し始めた。 どうやら夜中にパトカーが来たせいで、近所中で騒動になっていたらしい。 そしてついに近所中がおっさんの自宅前に集まり出した。 山田さん、石塚さん、井上さん、木下さん、知った顔が勢ぞろいだ。 おっさんは振り返り、4度目の涙を拭きながら叫んだ。 「ご迷惑をおかけしましたっ!」 ドッという歓声とともに湧き上がる拍手の渦。 おっさんは左手で妻の肩を、右手で2人の子供の背中を押しながら 家の中へと静かに消えていった。 完