夏に向けて、、

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1あなたのうしろに名無しさんが・・・
皆を死ぬほど怖がらせるような話がしたいんだが、やっぱ
洒落コワから抜き出すのがベストか?とにかく聞いてる側が
泣くくらいのがいいな。去年の夏は「かしまさん」が
かなりヒットしたんだけど。
2あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 16:18
>>1
同じ板から抜き出すなよ・・
4あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 16:24
生き人形にしれ
>>1の部屋のPCの隣の本棚が一番怖い
お祓いをおすすめします
6じゃの:02/05/28 16:27
>>5
お払いより焼却のほうがむしろ良いかと思われ
7sage:02/05/28 16:28
とりあえず、あんまし長いのはダメだろ。
短く、怖く。
7、、、、、、、、
sageはメール欄に入れましょうね〜(藁
10あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 16:31
このスレはオカルトと関係ないので
以下、放置を強くお勧めいたします。

なお、「sage」書き込みに限り、落書き帳として自由にご利用いただけますので
コピペ、AAの練習などにご利用ください。

11岡田:02/05/28 16:33
かしまさんみたいに実際に起こるかもしれない系は
怪談慣れしれない奴にはけっこう怖がられる罠
12あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 16:34
終了
すいません。
その「かしまさん」って何処スレ探せば読めますか?
…シラナインダヨ ウワァァァン!
14あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 16:46
>>13
「検索」って知ってます?
15ほい:02/05/28 16:48
時は第二次世界大戦の日本敗戦直後、日本はアメリカ軍の支配下に置かれ各都市では
多くの米兵が行き交う時代でした。
ある夜、地元でも有名な美女(23歳の方)が一人、加古川駅付近を歩いていた時 
不幸にも数人の米兵にレイプされその後殺すにも苦しみながら死んでいくのを楽しむため
体の両腕・両足の付け根の部分に銃弾を叩き込み道路上に放置したまま立ち去りました。
瀕死の状態をさまよっていた時、運良くその場を通りがかった地元でも有名な医者に発見され
腐敗していた両腕・両足を切り落とすことを代償に一命を取りとめました。
しかし、自分の美しさにプライドを持っていた女は生きることに
希望が持てず国鉄(当時)加古川線の鉄橋上へ車椅子で散歩につれられているスキをみて
車椅子を倒し、両腕・両足のない体で体をよじらせ
鉄橋の上から走ってきた列車へ身投げし自殺しました。
16ほい:02/05/28 16:49
警察、国鉄から多くの方が線路中で肉片の収集をしましたが、
不思議なことに首から上の部分の肉片は全くみつからなっかたとのことです。
しかし時代が時代だったもので数日経過すると、その事件を
覚えている者はほとんど居なくなりました。
事件が起こったのは、数ヶ月後のある日です。
朝は元気だった者がなぜか変死を遂げるようになってきました。
それも一軒の家庭で起こるとその近所で事件が起こるといった具合です。
警察も本格的に動き出し、事件が起こった家庭への聞き込みではなぜか共通点がありました。
それは死亡者は必ず、死亡日の朝に「昨日、夜におかしな光を見た」というのです。
実際に当時の新聞にも記載された事件であり加古川市では皆がパニックになりました。
加古川所では事件対策本部がおかれ事件解決に本腰が入りました。
 そこである警察官が事件が起こった家庭を地図上で結んでみると、あることに気がつきました。
なんとその曲線は手足のない、しかも首もない胴体の形になりつつあったのです。
17ほい:02/05/28 16:50
こうなると当然 次はどのあたりの者が事件に遭うか予測がつきます。
そこで前例にあった「光」を見た者は警察に届け出るように住民に知らせました。
やはり、曲線上の家庭では「光」を見たといい死んでいきました。
しかし、実は「光」ではなかったのです。
 死者の死亡日の朝の告白はこうでした「夜、なぜか突然目が覚めました。
するとかすかな光が見え、見ているとそれはますます大きな光となります。
目を凝らしてみると何かが光の中で動いているのが見えます。
物体はだんだん大きくなりこちらへ近づいてきます。
その物体とはなんと、首もない両腕・両足のない血塗れの胴体が肩を左右に動かしながら這ってくる肉片だった。
ますます近づいてくるので怖くて目を閉じました」というのです。
18ほい:02/05/28 16:50
 次からも、その同じ肉片を見た者は必ず死にました。
そこで次は自分だと予想した者が恐ろしさのあまり加古川市と高砂市(隣の市)の間にある鹿島神社(地元では受験前など多くの人が参拝する)でお払いをしてもらいました。
すると「暗闇のむこうに恐ろしい恨みがあなたを狙っているのが見えます。
お払いで拭いきれない恨みです。
どうしようもありません。
唯一貴方を守る手段があるとするならば、夜、肉片が這ってきても絶対目を閉じずに口で鹿島さん、鹿島さん、鹿島さんと3回叫んでこの神社の神を呼びなさい」といわれました。
 その夜、やはり肉片は這ってきましたが恐怖に耐え必死に目を開いて「鹿島さん」を 3回唱えました。
19ほい:02/05/28 16:51

すると肉片はその男の周りをぐるぐる這った後、消えてしまいました。
通常、話はこれで終わりますが、やはり恨みは非常に強く、その男が旅へ出てもその先にて現れました。
その後、その方がどうなったかは知りません。
ただ非常にやっかいなことにこの話は、もし知ってしまうと肉片がいつかはその話を知ってしまった人のところにも現れるということです。
 私(兵庫県出身)が知ったのは、高校時代ですが私の高校ではこの話は人を恐怖に与えるためか、迷信を恐れるためか口に出すことが校則で禁止されました。
皆さんはインターネットで知ったので鹿島さん(地元では幽霊の肉片を鹿島さんと呼ぶ)を見ないことに期待します。
もし現れたら必ず目を閉じず「鹿島さん」を3回唱えてください。・・・・
俺は「残念ながらお嬢さんは、、」を友達に聞かせたが「で?」
の一言で済まされましたが何か?
語れ
22あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 16:56
>>20
「ですが何か?」の使い方を間違えてると思われ・・・
23あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 16:57
おお怖い!
でも検索して出てきた話とはぜんぜん違うなー
俺の中でのエースは「マイナスドライバー」だけどな。
ただあれは好き嫌い分かれるけどね。ってやっぱりこれもシャレコワかよ!
25あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 17:01
叫び声で怖がらす話はだいたい成功する
>>25
ナイス・スマッシュ!その通りだ。
>>15-19
感謝感謝!

>>14
片足の無い女の霊。「かしまさん」と三回唱えないと死ぬってくらいしか、
引っかからないよ!
他人の教えてくれレスに突っ込んでる暇あるなら、その脊椎反射レス止めてくれ。
28岡田:02/05/28 17:04
やっぱり夜部屋を暗くして語るのがよいだろう。なんか
斬新な怪談はないもんかねえ〜
終わり方が意外な怖い話が好きなんだけど。
なんか(・∀・)イイのありませんか?
30:02/05/28 17:11
そういえば厨房の頃、同じ部活の奴らとキャンプもどきみたいのを
したことがあって、肝試しをやろうってことになったんだ。
ルールは3人一組で順番に神社、公園、墓場を回って、
それぞれの場所に置いてあるうまい棒(ちなみにチーズ、てりやき、たこやきw)
を取ってくるというもの。
そこで俺は皆を怖がらせてやろうと思い、俺の班の残り二人に、俺の考えた
企画を教えた。友達も「よし、やろう!」とノったので、俺らの番になるまで
綿密に企画を推敲していた。
31:02/05/28 17:41
そしてついに俺らの番。キャンプにいる他の班の奴らに
「軽くいってくるぜい〜」と言って出発した。
俺らの班はコンビニへ行って、うまい棒を三つ買った。
そして、わざと俺だけを残し他の二人を帰らせた。
数分後、俺はさっき買ったうまい棒手に、キャンプへ戻り、
丁度皆から見えない位置で皆の会話を盗み聞きしした。
キャンプでは、俺の班の残り二人が「1と途中ではぐれたんだよ!
だからキャンプにいるかなーと思ってたんだけど、、」等と
俺が行方不明になったということを伝えた。当然、周りの奴らは
ザワザワ騒ぎ出す。しめしめ、いい感じだ。
さらに数十分後、俺がうまい棒を振りながらキャンプに入った。
「お〜い遅くなったよ!!すまんすまん。でもちゃんとうまい棒持ってきた
ぜ〜」と明るく振舞って言った。当然みんなは「オイおせえよ!何があったんだよ?」
と聞いてきた。俺はそれを無視して、俺の班の残り二人に掴み掛かった。
「おいテメーらなに逃げてんだよ!!」「ちげーよオメーが逃げたんだろ!」
「は?何言ってんだよ弱虫がw。俺はおめーらと違って怖がりじゃねーん
だよ。ほら、一人でうまい棒3本全部取ってきてやったよ」と、
俺はその三本を皆に見せた。その場は一瞬でシーンとなった。
俺はしてやったりと思った。何を隠そう、そのうまい棒は納豆味、キャラメル、コーンの、
チェックポイントにあるはずのない味だったのだ。
皆はその後「やべーよやべーよ、肝試しをした罰だよ。なんで味が
変わってるんだよ、、、」などとわけの分からないことで怖がっていたw。
翌日、みんなでお払いに行くことになって、wウン年経った今でも
まだあの時の出来事は夏になると皆の語り草になっている。ちゃんちゃん

なんかよくわからん文章で、しかもくだらない話でスマソ
32あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 17:45
怖がらせる目的だけだったら、皆で廃校にでも忍び込むがよかろう
>>32
僕は廃病院のほうが怖いなぁ
34あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 18:00
kokkurisan yare
35あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 18:01
夏に向けて、腋毛を剃ろう!
36あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 18:04
夏age
37あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/28 18:16
夏に向けて必読のサイト
最初出てくる画像にびびらんように、、、、
漏れはビビったがな(w
http://www2.csc.ne.jp/~okaruto/index.htm
38あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/30 02:51
期待age
宇野さんは最近、電話が嫌なのだという。
怖い、といってもいいかもしれない。
いたずら電話でも執拗にかかってきて、それに悩まされているの
かと思ったら、そうではないようなのだ。
ほとんど家族経営の小さな倉庫業を営んでいる宇野さんは、仕事場
や訪問先から自宅に電話することが多かった。奥さんが経理担当と
主婦業を兼ねているのである。
宇野さんはいつものように自宅に電話をかけた。
夏の夕方で、日没にはまだ間があり、仕事場の事務所の窓の外は熱気
でむんむんしていた。
しばらく電子音の呼び出し音が続いたあとで、電話はつながった。
「あっ、もしもし。わしや--」当然、電話口にいるのは奥さんだと思って、
宇野さんは用件を言いかけた。
そうして口ごもった。相手がうんともすんとも言わないのである。
「・・?ちょっとお、もしもーし。そこにおるんやろ?」
本当につながってるのかどうか心配になった宇野さんは、大声で呼びかけてみた。
けれども、何の答えもない。
そうして電話は向こうから、何の前ぶれもなくぶつっと切れてしまった。
「けったいやなあ・・間違うたとこに、かけてしもうたんかな?」
事務所の人間にわざとふざけた調子でそんなことを言いながら、今度は少し
慎重になって番号を確かめつつ、宇野さんは電話をかけ直した。
ところがだ。
何度かけ直してみても、奥さんが出ないのである。
いや、電話はつながっている。・・・つながっているはずだ。
それなのに相手は何も言わなくて、すぐに電話を切ってしまうのだ。
宇野さんは帰宅した。
自宅は、何の異常もなかった。
奥さんに尋ねると、宇野さんが電話をした時間帯はちょうど買い物に行って
留守だったらしい。
宇野さんの子供たちはとっくに成人してそれぞれ独立しているので、家の
中には他には誰もいない。
いつも唐突に切れてしまうのである。
あとで確かめると、それは決まって奥さんが留守のときばかりだ。
電話回線の異常なのだろうか。
それとも電話機の故障かもしれない。
・・・そう思って色々調べてもらったのだが、べつだんおかしな箇所はない。
それなのに。
はじめは鷹揚に構えていた宇野さんもだんだんおかしな気分になってきた。
まず第一に、電話の異常は宇野さんが自分でかけるときだけで、仕事場の他
の人間が用事で奥さんに連絡するときは何も起こらないというのが変だった。
第二に向こうにいる「もの」のことである。受話器が取り上げられるという
ことは、そこに誰かがいなければならない。
実際、そうではないか?
「おい!そこに誰かおるんか?おるんやろ?」
「・・・・・・・」何の答えもない。
けれども、なんとなく人の気配が伝わってくる。
そこにいて、じっと息をひそめているような、そんな気配だ。
そのうち、いつもよりもずいぶん長く、無言状態が続いたことがあった。
その晩は、仕事場の事務所には宇野さんが一人きりだった。
ばたん。ばたん。ばたん。ばたん。
風の強い夜で、外のどこかではがれたトタン板がしきりにバタバタと音を
たてていた。
蛍光灯が古くなってきたようだ。室内が暗い。
(・・・・・アレやな?きたな?)
もう何十回も同じ経験をしたおかげで、電話がつながったとたん、宇野さん
にはふつうではないということがわかった。
「・・・・・・・」
相手はいつものように無言だ。
けれども宇野さんは以前のように半ば怒鳴り声で呼び掛けたりはしなかった。
そんなことをしても、まったくのれんに腕押しで、手ごたえなどないのだから。
そのかわり彼は、神経を集中して耳をすましていた。
パタタタタ。パタタタタタ・・・・・。
(---?)そうすると、軽い足音がした。小さな子供が、とてつもなく長い板敷
きの廊下を素足で走っている---そんな足音だ。
それが、遠くなったり近くなったりする。
(ウチやない。ウチにこんだけ走れる板の間はあらへんもんな。
この電話はウチとつながってるんとちゃうぞ)
電話はいったいどこにつながっているというのだろう?
続けて伝わってきたのは、やっぱり小さな、それも何人もの子供の声だった。
かすかな歌声なのである。
どうやら童謡のようだ。
“おつむふりふり”とか“かわいいおてて”とか
“三角ぼうし”とか、いかにも可愛らしい文句がまじっている。
可愛らしい童謡なのだが、それがちっとも楽しくなさそうな調子で、切れ
切れに宇野さんの耳に届いてくるのである。
昔の絵本なんかについていた、雑音だらけのソノシートそっくりだ。
ザーッと豪雨に似た音までときおり入るのだ。

・・・・おつきさん・・・。ズーッ・・・・つないで・・・・ぴょんぴょん。
ブツッ・・ヨ・・・お服・・・そろって・・ブツン。

やがてそれは、ちょっと想像ができないほどの人数が集まったヒソヒソ話の
ようになって、何がなんだかちっとも聞き取れなくなった。
「なんや、これ!」ガチャ〜ン!
宇野さんは、思わずそう叫んでいた。
そして、はじめて自分の方から電話を、それも叩きつけるようにして切っていた。
とんでもない大きな音が室内に反響した。
気味の悪い歌を聞いているうちに、彼は頭の中の平衡感覚がおかしくなった
ような感覚におそわれたのだ。
それ以上耐えられなかったのだ。
ばたん。
それまで吹いていた風が、ぴたりとやんだ。
どこか遠くから、犬が変な調子でうなる声が流れてくる。
宇野さんは、顔をあげて電話機を見つめ、それからゆっくりと視線を動かして
いった。
誰もいない事務所の中で、自分以外の誰かの息遣いが聞こえたようだった。
これが、つい先日のことである。
宇野さんは、自宅の電話番号を変更しようかと考えている
。もっとも、そんな御手軽な方法で、あの原因も何もわからない“逆無言電話”と
縁が切れるかどうか。本人も、実はまったく自信がないという話だ。
暗黒坂〜一
駆け出しだった頃の神溝さんは方々の編集プロダクションに
出掛けていっては、夜通し仕事をすることが多かった。
昼間仕事をするライターから原稿を受け取って、昼間に動いている
印刷所に届けるためには、どうしても編集者の活動時間帯は
夜中になってしまう。
その晩も護国寺の近くにある編集プロの事務所で夜を徹して
仕事をしていた。
「腹減ったな」夜中の一時を回った頃、先輩の一人が呟いた。
「江戸川橋の方にコンビニがありませんでしたっけ?」その部屋にい
た四人の編集者は「じゃあ、そこに散歩がてら弁当でも買いに行こう」
ということになった。
道程の途中に、不気味な小道があった。奥の方が軽く登り坂になっていて、
登り切った坂の頂点で右に曲がっている。
昼間の買い出しでも通ったことはある道なのだが、夜の顔はずいぶん違って
見えた。
坂の突き当たりの角にある電柱にぽつんとついている街灯が、やけに小さく、
弱々しく光っている。
コンビニからの帰りに同じ道を通って、その坂の入り口にさしかかった。
何気なく坂の入り口から奥の電柱の方をのぞき込んだら、突然、背筋に寒気
が走った。
季節は夏である。
冷たい風どころか、あたりは風もなく蒸し暑いくらいだった。
嫌な予感とでもいうのだろうか。
闇がやたら暗く深く感じられた。
坂の入り口に立っている地名表示の木柱を見ると、<暗黒坂>という妙に
不気味な名前が書いてある。
振り向くと他の三人も神溝さんと同じように坂を見つめて立ち尽くしている。
神溝さん自身何が見えたというわけでもないのだが、三人の先輩たちの怯えた
顔つきを見たとき、口から出た言葉は一つだった。
「気味悪いから早く戻りましょうよ」
暗黒坂〜二
三人は互いに顔を見合わせ、無言で頷くと事務所への道を急いだ。
足早に事務所に戻ったものの、誰も暗黒坂のことは口にしなかった。
そのうち先輩の一人が異変に気づいた。
「・・・玄関の外に、気配がする」
確かに、玄関の外でコンクリートと靴底が擦れるような音がする。
「隣の人じゃねーの?」
「バカ。隣は空き室だ。それに、この部屋より先に部屋はねェ」
足音のような気配は、玄関のドアの前をうろついているようだった。
かと言って、ノックするでもなければ、声をかけるでもない。
そのうち気の短い先輩が辛抱できなくなって玄関の内側まで近づいていって
怒鳴った。
「いいかげんにしろ!うろうろしやがって・・・どっかに行け!消えろ!去れ!」
その途端、徘徊する靴底の音はピタリと止んだ。
わずかに間を置いて、誰かがスチール製のドアを「がんっ!」と蹴っとばす
ような音がして、それっきり静かになり、気配も消えた。
夜明けまでには、まだしばらくの間があった。
もし、ドアの向こうの暗闇にやたらなモノがいたら?
そう思うだけで怖くなって、誰一人、ドアを開けてみようとはしなかった。
朝になって、新聞配達がドアの外に新聞を投げていく音が聞こえた。
「そろそろ大丈夫、かな?」
おそるおそるドアを開けると、玄関先には見慣れない・・・いや、見慣れて
はいるが、こんなところにあるべきではないものが落ちていた。
そういうば昨晩、夜道で見た木柱には確か<暗黒坂>と書かれていたように思う。
今、どこかからか引き抜かれてきて事務所のドアにたたきつけられている木柱
にも、同じ地名が書かれていた。
そう、<暗黒坂>と・・・。
廃屋を見上げる者〜一
こんな話を聞いたことがある。長年、会社勤めをしていた人が退職をした。
名前がないと不便だから、この人を仮に田中さんと呼ぶことにしよう。
田中さんがその男に出会ったのは、ある秋の夕暮れだった。
パチンコ帰りの田中さんは、裏通りを通ってブラブラと自宅へと向かっていた。
きれいな夕日だった。
パチンコで少しツイていたこともあって、田中さんは秋の風情をしみじみと
楽しむことができた。

「ごぞんじですか」

と耳元でとつぜん低い声がしたのは、そのときだった。
田中さんはちょっと驚いた。急に声をかけられるとは思っていなかったからだ。
(誰か、知り合いが自分を見掛けて、声をかけてきたのだろうか?)
横を見ると、男が立っていた。
田中さんくらいの年格好の、眼鏡をかけた初老の男で--ぜんぜん知らない
人間だった。
無個性な顔であった。

「ごぞんじですか」

と、男はまた言った。
廃屋を見上げる者〜二
まわりには田中さん以外に人はいない。
男が田中さんに話し掛けているのは明らかだった
けれど、「ごぞんじですか」とはどういうことだろう?

「は?何をです?」

と、田中さんはちょっとうろたえて聞き返した。
これは当然の反応だ。

「あれですよ」

男は、顎でそれを指し示した。
こぎれいな建て売り住宅にはさまれて、ちょっとした広いスペースがそこにあった。
といっても駐車場を兼ねた空き地や、更地ではない。
家は一応、建っていたから。
もっとも、どう見てもそれは、人が住んでいるとは思えない空き家であった。
いや、もっと正確に言えば、屋根も壁も長期間にわたって風雨に叩かれ、崩れか
けてぼろぼろになった、木造の廃屋なのであった。
田中さんは、この町に来て以来、自宅のすぐ近くにこんな廃屋があることを知ら
なかった。
現役であったときは極端な会社人間で、仕事に追われて町内のつきあいはもっぱ
ら奥さんにまかせていたし、駅に向かう以外の道はほとんど通ったことがなかった。

「あの家が、どうかしたんですか」

あらためて田中さんは、男に聞き返した。
廃屋を見上げる者〜三
「ああ、ごぞんじない?・・・・・・夫婦がね、住んでたんです。
あそこに。ずっとね」

「はあ・・・・・?」

「たいへん仲が悪くてね。子供もいないし。かすがいってやつがない。
喧嘩ばかりでね。暴力ざたなんてしょっちゅうでしたよ。それでも別れ
なかったのは、どちらかが少しばかりまとまった金を握っていて、まあ
それが惜しかったんですね」

「ははあ」

田中さんは、機械的にあいづちを打ちながら、この男は何のつもりで
こんな話を見ず知らずの自分に聞かせるのだろうと考えていた。
廃屋に昔住んでいた夫婦が、不仲であろうと、自分には全く関係のないことだ。
この男は自分同様、ヒマをもてあましている、しかも孤独な人間なのだろうか。
そうして話し相手がほしくてこうやって、誰彼かまわず道で通行人をつかまえて
世間話を聞かせるのを、日課にしているのだろうか。
だとしたら、面倒な相手につかまってしまったものだ。
(適当なところで話をきりあげさせて、早々に立ち去るようにしなくては・・・)
もじもじしている田中さんには、いっこうかまわずに、男はしゃべり続けた。

「ところがあるときから、奥さんの方の姿がばったり見えなくなってしまった。
ダンナの方は、女房は実家に帰ったとかなんとか、いろいろ言っていたらしいん
ですけどね。とにかく、奥さんの姿はそれっきり近所で見られなくなってしまっ
たんです。・・あなた、どう思われます?」

「蒸発ですね。世間じゃよくある話じゃないですか。いや、ダンナさんには気
の毒なことでしたね。それはそうと、ちょっと私は急いでいますんで、これで失礼
させてもらって・・・」

「気の毒?いやいや、そうじゃあない」

その場を離れようとした田中さんの挨拶に被せるような口調で、男はうむ
を言わせず言葉を続けるのだった。
廃屋を見上げる者〜四
「蒸発ですね。世間じゃよくある話じゃないですか。いや、ダンナさんには気
の毒なことでしたね。それはそうと、ちょっと私は急いでいますんで、これで失礼
させてもらって・・・」

「気の毒?いやいや、そうじゃあない」

その場を離れようとした田中さんの挨拶に被せるような口調で、男はうむ
を言わせず言葉を続けるのだった。

「蒸発なんかじゃあありません。・・・その時以来なんですよ」

「・・・・何がですか?」

話を切り上げそこなった田中さんは、むすっとしながらもたずねかえした。

「そのとき以来なんです」

「だから、何がです?」

男は初めて、田中さんの方を向いた。
眼鏡があかく、ぎらぎらと光っていた。
廃屋を見上げる者〜五
いや、眼鏡の奥にある眼が光っていると言った方がいいだろう。

「すだれ、ですよ」

「すだれ?」(・・何のことを言っているのだろう?この男は?)

「ごらんなさい、あの窓を。ほら、ほら。あそこに、ぼろぼろになった
すだれがかかっているでしょう?」

なるほど、たしかに二階の窓にはすだれがかかっている。
いや、正確に言えば、もともとは、すだれであったらしい残骸が。

「このあたりは高台で風が強いし、西日も強いですからね。ああやっ
て風よけと、そして日よけがわりに一年中、すだれを吊るしていたわけです。
あそこの家はね」

「ハア」

「そのすだれがね。鳴るんです」

「すだれが鳴る?」

「ええ。今はあんなありさまですが、もともとはしっかりとヒモ
でくくりつけて、丈夫な鉤で吊るしていましたからね。アレは。
少々の風ではぱたぱたと、はためいたりはしないのです。
それが、ぱたぱたというかわいい音どころか、ぎいぎいぎしぎしと
軋むように鳴るんですな。それも、風がないときにもですよ」
廃屋を見上げる者〜六
「どうしてです?」

むすっとしていたはずの田中さんだったが、ほんの少し好奇心を動かされ
ていたことも事実だった。

「家に残ったダンナも、そう思いました。なんべんも、すだれを調べて
みました。でもべつだん、ヒモがゆるんでいるわけでも、鉤がおかしいわけ
でもないんです」

「じゃあ、どうしてなんです?」

「・・・・ある晩のことですがね」男はしばらく間を置いてから、
ふたたび口を開いた。
「その晩は、とりわけすだれが、ぎしぎしと軋んだのだそうです。
軋むというよりはもう、悲鳴のような音でね。
そうなんです。
ぞっとする、悲鳴のような・・・。ダンナは家の中に一
人でしょう?もうたまらなくなった。
家中の電灯を全部つけて、他のどの部屋に移っても、その音がついてまわ
るんです・・・」

ギイッ。ぎいーっ。ぎぎっ。きいぃぃぃぃっ
田中さんには、その音が本当に聞こえるような気がした。

「で、ダンナは最後に刃物を持って、二階のあの窓のところに駆け上がった
わけです。すだれを切り落としてしまおうと思ったんですね。がらっと
勢いよく窓をあけて、体を乗り出した。すると」

「すると?」

「・・・目の前には、奥さんがいたそうです」
廃屋を見上げる者〜七
「奥さんが?」

「ええ。すごい形相でねぇ。ぶらさがっていたそうですよ。ぶら〜ん、
とねぇ。・・・ヒヒヒ」

男は、低くふくみ笑った。
耳の奥に、いつまでも残るような笑い方だった。

「嘘でしょう?」

思わず田中さんは、そう言っていた。

「いくら丈夫に吊るしているといったって、しょせんはすだれでしょう。
すだれに人がぶらさがっていられるもんじゃない。違いますか?」

「ええ」

男は、また笑った。

「人だったらできません。ひひひ。・・・人だったらね。そうだろう」

夕日が山の向こうに沈んだ。
田中さんは、あたりが薄暗くなっているのに気がついた。

「そうなんだよ。だから・・・」
廃屋を見上げる者〜八
首のあたりが、妙に寒かった。

「つまり」

自分の前に立っている男も、なんだかひどく、影が薄くなっているような気がした。

「・・・・で?」

「・・・で、とは?」

「いや、ダンナはどうなったんです?」

最初とは逆に、いつしか田中さんの方が何度も尋ねかける形になっていた。

「どうなったかって?」

最初とはまるで違って、男の言葉遣いはひどくぞんざいになっていた。
声はいっそう低く、ほとんど聞き取れない。

「どうもしやしない」

眼鏡の奥の眼は、光線のかげんだろうか、まったく見えなかった。
まるで黒いふかい穴が、そこにぱっかりと、あいているようだった。

「・・・二人ともいるよ。今でも。あそこに」
廃屋を見上げる者〜九
そう言うと、男はゆっくりと指で廃屋の窓をさした。
同時に強い風が、通りの向こうから
やってきた。バサッばさばさばさ!すだれが、ばたばたと激しくはためいた。
その奥に、青白い顔が二つ並んで、田中さんの方を見つめていた。
少なくとも、田中さんにはそう見えた。

「あっ」

声をあげた田中さんは、男の方を振り返った。
・・・そこには誰も、いなかった。
人気のない裏通りには、田中さんがたった一人で立ちすくんでいるだけだった。
彼はもう一度視線を廃屋の窓の方に戻したけれど、そこにもやっぱり、何も
見えはしなかった。
微動だにしない、すだれの残骸があるだけだったそうだ。
田中さんが、帰宅してから家の人間に、廃屋にまつわる話を確認して
まわったかどうか?
また、それが気味の悪い初老の男が、話した通りであったかどうか?
そこまでは、聞いた話の中には入っていなかったので、なんとも言えない。
たとえば、廃屋に住んでいたという夫婦の夫の方が、銀縁の眼鏡をかけた
初老の男であったか
どうかも、まったくわからない。
55あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/30 18:10
さんくすage
56あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/30 21:20
ヒマ
犬の散歩に逝ったらすげぇ怖い目にあった。
もう暗くなってから霊山の麓は通らない事を決意したよ。

夜になってからいわく付きんトコは逝ってはならんって事を実感した。
スレ違いかもしれんからsage。
58あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/30 22:14
はよ夏こいや〜とっておきの怖い話したるで
夏は鯖に負担が、、、、、、
自殺名所の管理人〜一
後輩の塩崎が「よいバイトがあるんすよ」と寄ってきたのは危険も終わり、
残り数日で大学恒例の長い長い夏休みに入るという頃だった。

「何だよ。屍体洗いとか、新薬の実験はいやだぜ」

と茶化すと、シオ(塩崎)は笑った。

「大丈夫ですよ、公園の管理人なんですから」

シオも私と同じ映画サークルだったから毎度毎度、製作費用造りにヒーヒー
言っているクチだった。

「いくら?」

「十日で二十万。その代り、泊まり込みですけどね」

その当時はコンビニの時給が430円から始まる世界だったから、それは
もうもの凄い美味しいバイトだった。

「これから面接があるんス」

シオはそう言うと、ひとり私を残してホールを出ていった。
翌日、顔を合わせたシオに、私はバイトの結果について訊ねた。

「どうだった?」

「ええ」
自殺名所の管理人〜二
シオは複雑な心境を、顔にそのまま出して頷いた。
シオの話ではバイトは一日二万円、その代り途中で辞めたら全額パァー
という過激なものだった。

「変な条件だな。公園の管理だろう?」

するとシオは顔を上げて、嘆願するような表情になった。

「だって****ですよぉ」

「え?あの自殺の名所の!」

私はつい叫んでしまった。
ハードだ。なんてハードな仕事なんだろう。
事情により名は伏せるが、****は断崖絶壁から人がバラバラ落ちる
のが有名すぎて、小説の舞台になったりもしている場所だ。

「どうすんだよ」

「やりますよ」

シオは暗い顔で言った。
管理事務所は公園の中にあった。
観光協会の人が案内してくれた絶壁の景色も、夕方になると、オレンジ色
の日差しの中で凄みを増した。

「もう汚名返上だよ」

協会の田辺さんはそう言った。
自殺名所の管理人〜三
彼が言うには、自殺者のおかげですっかり家族連れが来なくなってしまった。
この暗いイメージのままでは、みんなの生活が成り立たなくなってしまった。
それ故、毎年夏になると、二十四時間体制で自殺者を防止しようとしているのだ。

「去年はふたり助けたんだよ」

しかし途中で逃げ出すバイトが多く、しかたなく高額ながら後払いという
形式にしたのだ。

「ずっとやるわけでないから、あんたの後釜探せないからね」

シオの役割はこうだ。
夕方、管理事務所の人が帰る頃から部屋で待機。
旅館の方から不審な人物の連絡を受けた協会が、シオの部屋に電話を入れる。
そして、シオは公園をチェックする・・・・というわけだ。

「普段は協会の人がやってらっしゃるんですか?」

田辺さんはシオの問いに答えた。

「おっかなくて、やんね」

頂上から長い階段を下ると、岩盤剥き出しの岸についた。

「ここが通常の落下地点だ」
「屍体は必ず1回は波で外海に出てしまう。戻ってくるのは一割くらいで
、そうするとここにたどりつく」

田辺さんは、顔が赤くなったり白くなったりするシオを連れて、洞窟
の中に入っていった。洞窟の中は広く、奥には驚くほど大量の蝋燭と社が
ひとつあった。
自殺名所の管理人〜四
「この洞窟の岸に、打ち上げられる。満潮時には波がここまでやってく
るから、いま入ってきた入口も潜ってしまうわけだ」

シオはさっきから肩を軽く引っ張られるような気がしていた。
田辺さんも、しきりと肩のあたりを揉んでいる。

「じゃ、部屋に行くか」

田辺さんは入口とは逆に洞窟の奥へ進んでいった。

「ここだ」

そこには錆び付いた鉄の門があり、鎖がグルグルと巻き付けてあった。
苦労して開けると岩を削った白い階段が続いていた。
田辺さんが近くのスイッチを捻ると階段の天井に吊るされた裸電球が点いた。

「上だ

」田辺さんはヌラヌラと染み出す水で濡れる岩肌に手をつきながら階段を
昇っていった。
シオは既にショックと恐怖で頭がフラフラしていたが、取り残されないように
ついていった。

「ここは崖をくりぬいて造った階段だ。屍体を引き上げるときにアッチの階段
じゃ危なすぎてな、それで造った」

「上は何ですか」

「公園に出る。さあ、ここだ」

このときのショックを、シオは後に「背骨が抜けそうだった」とこぼした。
そこは階段の途中にあった。

「ここですか」
自殺名所の管理人〜五
うむと田辺さんは頷くと、すりガラスの引戸を開けた。
四畳ほどの広さの部屋だった。
なんとも言えない嫌な湿気が充満していた。
「年に何年も使わないからな。湿気てんだ。でもTVあるから」

電話は協会との連絡専用で外部にはかからない。
田辺さんはそれだけ言い残すと部屋を出ていった。
シオはひんやりとした部屋に一人残された。
一日目、二日目は何もなかった。それが始まったのは三日を過ぎてからだった。
昼は町に出てぶらぶらし、夕方頃には戻っているというパターンを造った
シオは、その日、映画を観て(これは協会からタダ券を貰えた)、パチンコを
してから戻ってきた。
戻ってTVを見ていると、下の鉄扉をガンガンと殴る音がする
。誰か連絡に来たのかなと
思って時計を見ると、いつの間にか十時を過ぎていた。

「ハ〜イ」

引き戸を開けて声をかけるが返事はない。引き戸を閉めると、再びガンガン
と叩く音が階段の奥から反響してきた。

「誰かいるんですか」

声をかけてハッとした。
この時間には入り口が水没している。
外から洞窟に入れる者はいなかった。
シオは部屋へ戻ると敷きっぱなしの布団の中に潜り込んだ。
ジュースをガブ飲みするとTVのボリュームを上げて横になった。
そのまま少しウトウトとした頃に電話が鳴った。
飛び起きて出ると無機質な合成音の声がした。

「時報をお知らせします」

なんだと切ろうとして外線は通じていないことを思い出した。
何かがペタリペタリと上がってくる音がした。
自殺名所の管理人〜六
シオは布団を巻き付けると壁に身体を押し付けて、さらにTVのボリューム
を上げた。
「何か」は暗い階段を上がってきた。すりガラスにはボンヤリとした影が映った。
シオは眠れずにいた。
四日目の夜、協会から電話が入った。

「赤い服の女性を探してくれ」

公園の中に人影はなく、また該当する女性の遺留品もなかった。
部屋の中に戻るとTVが反対の側においてあり、テーブル上は、なぎ払われた
ように畳の上にすべて落とされていた。
電話は放り出され、受話器が外れていた。
シオは驚きながらも、協会に連絡を入れた。

「夕方からここにいますけどそんな連絡してませんよ」

年配のおばさんが答えた。
その夜、下の扉を叩く音と女性のもの凄い悲鳴が聞こえる。
五日目。
身体の調子がダルくて睡眠不足から目が痛くなったシオは、布団を公園に
運びだしベンチで眠った。
起きたときには夕方になっていた。
部屋に戻るとドドドッとべらぼうな数の人間が駈け降りる音がして、部屋が
揺れた。
身構えていると上の方から声が聞こえてきた。

「弱虫・・・・」

「うるせぇ」

すると「それ」は笑ってシオを挑発した。

「見せてやろうか見せてやろうか」
自殺名所の管理人〜七
シオはそのとき、誰かに足を掴まれた。
驚いて布団を剥ぐと今度は下の方からゲラゲラと笑い声がしたという。
翌日、田辺さんが訪ねてきた。

「できるかね?」

シオの様子を見て心配そうに声をかけて
くれた。
シオは、これまで見たことを田辺さんに話した。

「いろんな事情の人間が死んだから、君みたいな元気の良いのが羨ましいんだろう」

シオは連日の睡眠不足から「船酔い」のような状態になっていた。
横になると胃が騒いで吐きそうになるし、座っていると目が回るようだった。
いつのまにか寝てしまっていた。
目を覚ますと午前二時になろうというところだった。
今度ははっきりと女の声が聞こえた。

「弱虫」

「うるさい」

シオが乱暴に言い返すと、ゲラゲラと笑い声が聞こえた。
突然停電した。
同時にすりガラスがドンドンと叩かれた。
懐中電灯で照らすと引き戸の向こうに人が
立っていた。背広姿で、足はあった。
でも頭の部分には何もなかった。
シオは布団をバリケードにするように壁に背中を押し付けた。

「こんばんは」

突然、耳もとで声がして、後ろから抱きつかれた。
背後は壁である。
シオは悲鳴をあげた。
自殺名所の管理人〜八
肩にかけられた手がズブズブと自分の中に突っ込まれていくような気がした。
鋭い痛みとともに、なんだかわけがわからなくなってしまった。
失神したシオは何か異様なものを感じて目を覚ました。
日の出が見えた。
ボグッと勢いよく水に顔を突っ込み、シオはむせた。
あたりを見回すと、自分は海の中にいた。背後には洞窟。
驚いて引き返すと鉄の扉の鍵は外され、扉は開いていた。
鍵はシオの部屋の中と協会にしかないはずなのに、だ。
全身ズブ濡れになりながら、シオは外の階段を登っていった。
あの洞窟の中には二度と戻りたくなかった。
シオの様子を見て田辺さんは仰天し、途中で帰るのを許してくれた。
お金も六日分、交通費込みで払ってくれた。
以後、そのバイトは募集されていない。
夏に向けて出た腹を抑えるため腹筋を鍛えている俺。
夏に向けて包茎を治そうとしてる友人。
ちょっとちがうんだよなぁ。
子供〜一
“クロちゃん”という呼び名の、某ゲーム会社で働いている
男がいる。
ある連休の初日に、クロちゃんはひさしぶりに遊び仲間と飲み会
をやって、べろんべろんになってしまった。
クロちゃんの実家は郊外にあるI市だ。
方向がいっしょの仲間の車に便乗して、国道の適当な場所で降ろし
てもらった。
二キロメートルほど歩かなくてはいけないが、終電なんてとっくの
昔に出てしまっているし、タクシーもめったにつかまらない時間なの
だから、これはどうしようもない。

「ほんなら、気ィつけてな」

「ん。また近いうちになー」

で、クロちゃん小さくなってゆく仲間の車のテールランプに手を振って
から、脇道に入ってゆっくりと歩き始めた。
郊外都市といっても、このあたりは古い街道町のおもかげが残っていて、
うらさびしい。
まして深夜なのだからさおさらである。
道の両側の、こちらに倒れかかってきそうな圧迫感を感じる木造家屋の
窓は、黒々とした闇を内側に閉じ込めていて、ひっそり閑としている。
まるで穴蔵だ。

カタカタカタ、カタカタ----。

その腐った格子のついた窓が、いっせいにかすかな音を立てた。
風のいたずらであるらしい。
子供〜二
(はじめて通る道だけど・・・え〜と、まちがっちゃいないよな)

よく知っている町であるはずなのに、なんとなく違和感をおぼえたクロ
ちゃんは、アルコール分120%の頭のかたすみで、そんなことを考えていた。
めったに散髪しない髪の毛が、さやさやと風に動いて首筋にあたるのが気持ち悪い。
心なしか、風がなまぐさい。

(橋は渡ったかな?渡ったはずだよな?渡らなかったかな?)

そんなときだった。

キ-----ッ、きききききききききッ。

静まり返った闇をやぶって、夜の町に甲高い音が響いた。
獣の鳴き声にも、鳥の声にも似ていた。
だが、どうやら人間の奇声であるらしい。
ガラスの表面を針の先でひっかくような、神経を逆なでする奇声だ。
ひどくいやらしい、笑い声にも思えた。

(-----? なんなわけ?)

頭の後ろのほうにちりちりしたものを感じながら、反射的にクロちゃん
はあたりを見回した。
誰もいない。
何もない。
奇声はあれ一回きりのようだった。
頭の中で尾を引いていた奇声も、すぐに現実味を欠いていった。
ほんとうに奇声が響いたのかどうか、わからなくなってしまったクロちゃん
だった。

(気のせいじゃないよな。人間の声だったよなあ。鳥とかじゃなくてさあ)

自分自身にたずねながら、闇の向こうをすかして見ていたクロちゃんの耳に
、やがてまた伝わってくるものがあった。
といっても、二回目の奇声じゃない。

(これは---)

足音のようだ。
子供〜三
道の彼方から、こちらに近づいてくる。
こちらに向かってくるようだ。
が、それにしてもなんだか濡れているような、ねばっこい足音なのだ。

ぺたっ。ぺたっ。ぺたっ。ぺたっ。

闇の中に、人影がにじみ出た。
自分のように終電に乗りそこねて、深夜の家路を急ぐ通行人だろうか。
まさか、さっきの奇声を発した本人とは思えないが。

(もしも、そうだったら・・・ヤバイな)

それにしても、ずいぶん小さな影だ。
背が低い。
極端に低すぎる。
「-----」
子供だった。
五、六歳だろうか。
髪をおかっぱに切りそろえた男の子である。
それが、小走りにこちらに向かって駈けてくる。
ぺたっ、ぺたっ、と足音をしきりにたてて。
こんな時間に子供がどうして外をうろついているのか。
いや、そんなことよりも近づくにつれて、もっと異常なことが見て取れた。
丸裸なのだ。
何も体にまとっていなかった。
そして全身は濡れているらしう、ぬらぬらと光っているのが、闇の中でなぜ
かはっきりと見てとれたのである。
あれは、水で濡れているのだろうか?
気のせいか赤い色がちらちらする。
煮凝りの汁のように、ねっとりした---。

ぺたっ。ぺたっ。びちゃっ。ぺたっ。
子供〜四
クロちゃんは、酔いが急速にさめていくのを感じた。
常識はずれた正確だと日頃自分でも思っていたはずなのに、こんな場合
どうしていいかわからなかった。
道を引き返して、あの子供をやりすごすべきだろうか。
それとも反対に子供をつかまえて、事情を確かめるべきなのか。
しかし、つかまえるといっても、あれはほんとうに子供なのだろうか。
・・・人間なのだろうか?

ぺたっ。びちゃっ。ぺたっ。びちゃっ。ぺたっ。ぐちゃっ。

そんなことを考えたのは、あっという間である。
すぐに子供は、クロちゃんのそばまで
やってきた。
子供は、にこにこと笑っていた。
何かが、べっとりとついているらしいその顔で笑っていた。
ただしそれは、クロちゃんに笑いかけているのではなくて、虚空をただ
じっと見つめながら笑っているのであった。
そうして、その子は両手に何かを握っていた。
よくわからなかったけれど、クロちゃんの目にはそれが、おそろしいほど
たくさんの髪の毛に見えた。
水垢みたいなものがこびりついている髪の毛。
それが小さな握りこぶしの間から房になって垂れて、揺れていた。
バサバサと・・・。
裸んぼの子供は、クロちゃんとすれちがうと、国道のほうに駈けていった。

びちゃっ、びちゃっ、べちゃっ、ぐちゃっ・・・・。
子供〜五
今や“ぺたっ、ぺたっ”ではなく“べちゃっ、びちゃっ”と、何か汚らしい
汁をまきちらしているような粘液質の足音は、しだいに遠ざかっていった。
あとには道の真ん中に、完全に酔いのさめてしまったクロちゃんだけがぽつん
ととり残された。

「何だったのかって?あのガキが?・・・・なんなんだろうなあ。
今でもあの、びちゃっ、びちゃっ、っていう気色の悪い音が、耳に
こびりついてたまんないよ。あんなのにまた夜中にばったり会うくらい
だったら、簀巻きにされて川ン中に放りこまれる方がなんぼかマシだよなあ」

人を食ったコメントも、また彼らしいものである。
雨男の話
どんよりとした曇り空の夕方、ある学生街の一室で二人の男子学生が、
とりとめのない話をしていた。

「今にも、降り出しそうだなあ」

窓際の壁にもたれかかっていた先輩の方が、ちらっと窓の外を見てそう言った。

「雨ですか?」

「ああ、雨だ」

狭い部屋の中で、何度か留年をくりかえしてだいぶん年長の先輩は、がりがり
と髪を掻いてからこんなことを言い出した。

「雨といえばな」

「はあ」

「雨の夜になると、この窓の下を男が通るんだ」

その部屋は二階にあって、窓の下には細い道が建物にはさまれて通っていた。

「男が、ですか?」

小柄で童顔の後輩は、ちょっと気が抜けたような声を出した。
道が通っているのなら、男でも女でも犬でも猫でも通るだろう。
男が雨の夜に通ったからといって、それがどうしたというのか--そんな声だった。
けれども先輩の方は、いっこうに後輩の口調にはかまわなかった。
雨男の話〜二
「男なんだ。雨の夜にこうやって」

先輩は、窓のところに行ってガラス戸をからからと開け、レールの上
に腰をおろした。

「ここに座って窓の下を見ていると、かならず通る。青い靴に青い服を
着ていてな。傘もささずに歩いていく」

「はあ」

「このあたりは街灯がないだろ。そいつがやってくると、ぼうっとした青い
火の玉みたいに見えるんだ。そして、足音もたてずにすーっとこの下を通って
、向こうにいっちまう」

「変わった人間ですね」

「変わった人間・・・?」

先輩はなぜか、そこでうっすらと笑った。

「・・・うん。そうだ。変わっている。それでな。そいつがこの下を通る
のは、一晩に一回だけじゃあない。しんぼう強く待っていると--そうだな。
一時間に三回くらいは通るんだ。同じやつだ。間違いない。そいつがこの下を
通って、どこかに行くんだ。こっちから向こうへ。またこっちから向こうへ」

先輩はそこで、いったん息をついだ。

「何度も何度もな」

「へえ・・・」
雨男の話〜三
後輩は今度は関心したような声を漏らすと、しばらく何も言わなかった。
同じ行動を飽きることなくくりかえす、変わった人間に対して感心したのか。
それともその変わった人間を、これまたしんぼう強く待ち続ける、先輩の方に
感心したのか--それはわからなかったけれども。
先輩の方も、しばらく何も言わなかった。
かさかさと、暗い部屋のどこかで音がした。
目を上にあげると、黒い虫が天井を、まだつけていない電灯の方に這っていく
ところだった。
虫というよりは、黒い小さな影のようだ。

「・・・この道な」

からからからから
先輩は、ガラス戸を元のように閉めながら、あいかわらずたんたんとした
口調で再び口を開いた。

「この道な。一本道なんだ」

「知ってますよ」

「突き当たりは行き止まりで、この先は枝道もない。両側は建物の壁で、
乗り越えられる塀もない」

「そうなんですか」

「あの、なんべんも見かける青い服の男--いったんつきあたりまで行
ってから、どうやってここに戻ってくるのかな。・・・・え?」

「・・・・・・・・」
雨男の話〜四
落ち着いていた後輩の顔に、先輩の話しへの理解の色が広がっていくその
かわりに、彼の落ち着きはどんどんなくなっていくようだった。
もう部屋の中はすっかり暗くなっていて、先輩の顔は窓際にいるにもかかわらず
ほとんど見えない。
そのほとんど見えないもくもくとした影は、うっそりと笑ったようだった。

「な。変わっているだろ・・・・?」

さーっとかすかな音がして、外はいよいよ小雨がぱらつきはじめたようだ。
天使
Aさんという女性が、昼間のビル街を歩いていた。
その日は快晴だったが、急に雨が降りそうな気配になった
ので、ふっと空を見上げた。
すると、天使のような女性が笑顔でふわあっと舞い降りてくる。
不思議だ、という気はその時はしなかったらしい。
その幸福感に満ちた天使の笑顔に思わずAさんも微笑むと、天使は
手を振ってくれた。
Aさんも手を振り返すと、ドサッ!
凄い音がした。
あっと足元を見ると、女が倒れていた。

飛び降り自殺だった。
何ではがすんだよ〜一
世の中、アルバイトって仕事はいろいろなものがありますね。
バブルがはじけてだいぶ減ったと言われてますけど、それでも
まだ日本は充実しているんじゃないでしょうか。

「仕事があること自体、ありがたいことですよ」

しみじみつぶやいたのは、40歳過ぎてもアルバイトで食いつないでる人。
ビッグな役者を目指していることもあって、稽古を優先できるようにって
のがバイトをしている理由なんですけどね。
その彼が比較的割が良くて日払いでバイト代が貰えるという、引っ越し屋
の仕事をしていたときのことです。
家具や荷物の入った段ボールをトラックに積んだり、片付けをしているとき
、その人は、そこに住んでいた子供が、柱に下から上までこれでもか、とい
うほど、び--っしり貼ったシールをはがすのに、ものすごく苦労していました。

「全部はがすんですか?」

と引っ越し屋のリーダーに聞いてみると、

「当たり前だろ。全部はがせ」

というので、できる限りきれいになるようにシールをはがしました。
柱の一番上には、白地に文字が書かれた、筒型をしたお札のようなもの
が貼ってありました。
何ではがすんだよ〜二
「こいつもはがすのかなあ」

と思ったんですが、さっき全部はがせと言われているので、
それもはがしたそうです。
そのとたん、突然電話が鳴りました。
辺りを見回すと、コードをぐるぐる巻きにし、片付けられた電話が

“プルルルル プルルルル・・・”

と鳴っているんです。
リーダーも他のバイトのふたりもトラックに荷物を運びに行ったまま
だったので、その人は恐る恐る受話器を取ると、バイト先の社長の声で、

「あ、誰?**くんかあ、ごくろうさん。どお?仕事は順調?ところでさ
、部屋の柱にあるお札、あれはそのままにしておいてくれよな」

「え?もうはがしちゃいましたよ」

「何で?何で?何ではがした?」

と社長は同じことを何度も繰り返し聞いていたんですが、
だんだんその声は社長の声ではなくなってきたんです。
そして最後にものすごく低くてゆっくりした口調で、

「何ではがしたんだよ」

ハッと気づくとお札を取ろうとして手を伸ばしたままの自分がいたそうです。
81あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/06/02 15:09
連続カキコさんくす
タネ切れ。
83あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/06/03 23:13
あげる
幽園地〜一
都内某所にある有名な遊園地での話だ。
田中さんはその遊園地で夜警のバイトを始めた。
その初日目の話だ。
先輩である野々村さんとともに、あちこちのアトラクションを
巡回していた。
野々村さんは意地悪なことに、この遊園地の夜にまつわる様々な
噂話を彼に聞かせた。

「ここは昔、動物の墓場だった」とか、

「このゲームセンターは夜になると、黒マントの怪人が走る」

等々。
そんな話をしているうちに、一番最後の場所、「ゆうれい屋敷」
にやってきた。
こころなしか、あたりの空気が妙にかび臭く、ねっとりと体にまとわ
りつくようだったという。

「さあ、入ろうか」

野々村さんはシャッターをガラガラと開けた。
濃密な闇と、湿っぽい空気が二人を包んだ。
客が通るルートに沿って懐中電灯を照らしながら進む。
ここはさすがに野々村さんも怖いようだった。

「こ、ここは・・・まさ、妙な噂なんてないでしょうね」
幽園地〜二
田中さんがそう聞いた時だった。
「ゆうれい屋敷」のどこかで、不意に女の金切り声が聞こえた。
二人はさすがに蒼ざめた顔を見合わせた。

「な、なんだ?いまのは」

「出ましょうよ」

「馬鹿野郎。俺達はな、警備員だ。びびってどうする」

野々村さんは虚勢を張り、さらに奥へと歩きだした。
とたんにまた、あの声がした。
今度ははっきりと、聞こえた。女の絶叫。
野々村さんの足が震えているのがわかった。
すると、今度は足音がした。
ハイヒールやパンプスなどの固い靴底の独特の音が、狭い通路の奥から
近づいてくる。

カツ、カツ、カツ、カツ、カツ・・・・・。

二人は震えだした。
音はするのに、懐中電灯をいくら照らしても姿はまったく見えない。
しかも、足音は次第に早く、だんだんと間近に迫ってくる。

カツカツカツカツカツカツカツカツ・・・・・。

「やばいな」野々村さんが呟いた。
幽園地〜三
「やっぱ、引き返そうか」

「そうしましょうよ」

足音はもう、目と鼻の先だった。
すぐそこではっきりと聞こえる。

カツカツカツカツカツカツカツカツカツ-----!

「うわああああ!」

矢も盾もたまらず、二人は踵を返すと、一目散に逃げ出した。
二人は事務所に駆け込んだ。
事務所の窓の向こうには、あの「ゆうれい屋敷」が黒々とそびえ立つ
ように見えた。
翌日、田中さんはそのアルバイトを辞めてしまったそうだ。
87kiyo ◇OpeTE2Ts
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