ある年の夏の終わり頃の事でした。
私が住宅街の中にポツンとあるカフェバーで働いていた時の話です。
その店はあまりお客も来ず、私と友人達の恰好の溜り場となっていました。
ある時、いつものように開店準備をしている所に、友人が彼女を伴いやってきました。
普段は私達の笑いの中心にいる、とても明るい奴なのですが、その日に限り妙に無口で、
顔色も悪い様に見えたので、少し心配になったのを覚えています。
とりあえず、私は声をかけました。
「どうした?元気無いじゃん。何か在ったのか?」
「ああ、すげぇー怖い事があった・・・。」
「何だよ、怖いことって。また幽霊か?」
「・・・・・。」
しかし、それっきり彼は黙り込んでしまいました。
彼女もまた、彼に口止めされているらしく、何も話してはくれませんでした。
彼は霊感が強いようで、これまでにも何度か、自分の不思議な体験談をしてくれていたので、
私としては、「あぁ、また幽霊なんだな。」という感じでした。
ただ、今までと違っているのは、いつもは無理にでも聞かせようとする位だったのですが、
今回は何も話そうとせず、じっと頭を抱えて黙り込んでいるのです。
私は段々好奇心を抑えられなくなり、どうしても聞き出してやろうという気になりました。
その後、何とかその話を聞き出そうと、彼とその彼女にしつこく尋ね続けた結果、
彼はやっと重い口を開き、不思議な体験を語り出したのです。
それは、このような話でした・・・。