雪の内に春はきにけり鴬の氷れる涙今やとくらん
梅が枝にきゐる鴬春かけて鳴けどもいまだ雪は降りつつ
春たてば花とや見らん白雪のかかれる枝に鴬の鳴く
霞たち木のめもはるの雪ふれば花なき里も花ぞ散りける
春やとき花やおそきと聞きわかん鴬だにも鳴かずもあるかな
谷風にとくる氷のひまごとに打ち出づる波や春のはつ花
花の香を風のたよりにたぐへてぞ鴬さそふしるべにはやる
春日野はけふはなやきそ若草のつまもこもれり我もこもれり
春日野の飛火の野守出でて見よ今幾日ありて若菜つみてん
み山には松の雪だに消えなくに都は野べの若菜つみけり
梓弓おして春雨けふ降りぬ明日さへ降らば若菜つみてん
君がため春の野に出でて若菜つむ我が衣手に雪は降りつつ