俺はやっぱりお前が嫌いだお前をみると心臓がガクガクするし
恐怖感を覚える。
ある日ユニットバスの鏡の横に小さな虫がいた。目の悪い俺だが顔を近づければ
確認は出来るそうそれは小さいゴキブリだった。
成体ほどの醜悪さはないがいずれは成長し俺の眠りを妨げるかも知れないであろう
そいつをティシューでつぶそうと俺は思った。
だがふと仏心とでもいうのか命を奪うこともあるまいと、壁を叩き振動でそいつが下に落ちるのを確認した。
次の日起きて顔を洗っていると昨日より少し上の方にまたそいつがいた。やはり叩きつぶそうとして
俺は手を止めた。そして壁を叩きまた下に落とした。
その次の日もそいつはいた。俺の目線より少し上、そう電球に向かって昨日より少し高く壁に張り付いていた。
不思議なものでもう殺そうなどとは思わなかった。
成長して俺の前に現れろそうすれば俺は遠慮無くお前を叩きつぶすだろうと一人つぶやいて
電気はつけたままにしておくことにした。
次の日あいつはいなかった。ユニットバスの水滴の中仰向けで死んでいた。
そうかそうなのかと俺は水を流した。
手は合わせない。いつかおれはお前の仲間を殺すのだろうし
もしお前が成長して俺の前に現れたのなら俺は恐怖におののきお前の命を奪わずには居られないだろうから。
またゴキブリとして生まれてくるなら俺のところに来るといい。せめて一人の人間として一匹のゴキブリと対峙しよう。
新聞紙を手にそのときはまたお前との静かなときを過ごそう。
http://www1.odn.ne.jp/setsuna/za_insect.html