プロ野球の視聴率を語る4886

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535無礼なことを言うな。たかが名無しが
>>532
No.535
 土曜日の午後。
 東京都品川区立戸越小学校(児童数358人)の運動場で、サッカーの練習着やランニングシャツを着た男児3人が、野球のユニホームを着た小学生たちに囲まれた。
 「ねえ、キャッチボールはしたことあるの?」
 「分かんないことがあったらさ、何でも俺に聞いてよね」
 「人数が少ないから、きっとすぐに試合に出られるよ」
 戸越小で活動する少年野球チーム「豊(ゆたか)ベアーズ」。この日、体験参加の3人が来ていた。4年生1人と3年生2人。
うち2人はサッカーチームに所属している。元気よく声を出しながらのランニングで練習が始まった――。
 「『絶対に楽しいから、とにかく練習においで』って誘ってるんだ」。3年生の内野手、多田哲朗君(9)が言った。
「このままだと人数が少なくて、来年は試合ができなくなっちゃうかもしれないから」
 ベアーズは創設33年目。かつては区大会で優勝争いの常連だったが、近年は部員不足にあえぐ。今は高学年チーム(5〜6年)が9人、ジュニアチーム(4年以下)が15人。
最盛期の3分の1の数だ。来年度、7人いる4年生が高学年チームに上がると、ジュニア組は8人しかいなくなってしまう。監督やコーチを務める保護者十数人も、やきもきしている。
    *
 戸越小では、野球よりサッカーの方が人気で、地元のクラブチームには全校の男子の約6割、ざっと100人が所属しているという。
 実は、多田君もその1人。友だちに右へならえで、小学校に入学すると、迷わずサッカークラブに入った。
 野球に気持ちが向いたのは、1年生のクリスマスに黒いグラブをもらったから。
学生時代にソフトボールをしていた母(46)とキャッチボールをしたり、家族で東京ドームにプロ野球の試合を見に行ったり。いつの間にか、ベアーズの練習を遠巻きに眺めるようになった。
 2年生の秋。ジュニアチームの監督に声をかけられ、練習に体験参加した。初めてのバッターボックス。緩い投球を何度も空振りする。キンッと金属音が響き、手のひらに衝撃が走った。鋭い打球が前に転がっている。「気持ちいい」。胸が高鳴ったのが今も忘れられない。
 「あの1回の練習で、ベアーズに入りたいって思った」
 当時も選手不足だったので、その週末には試合デビューをはたした。打ったら一塁へ走るというルールさえ知らなかった。
 俊足を買われ、今ではジュニアチームの1番打者だ。
 「バッターボックスに入るとドキドキするけど、とにかくゴロを打って走る。盗塁は今までに10回以上やって、1回しか失敗していないよ」
 野球とサッカーの練習日が違うので、二足のわらじを続ける。でも今は、どちらかといえば、野球の方に熱中している。
    *
 同じ3年の田口遥平君(8)は多田君から誘われ、今年、チーム入りした。
 2月にあったベアーズの野球教室をのぞいた。バーベキューパーティーも兼ねた、年に一度の勧誘イベント。スピードガンを使う球速コンテストや、的当てのストラックアウトもする。
 「投げてみたら、けっこう的に当たった。俺、やれるじゃんって」
 兄(13)と一緒で大の巨人ファン。田口君はとくに外野手の長野久義選手が好きで、「テレビでナイターを見ていて負けたときには、『何やってんだよ』って自然に声が出ちゃう」。
 でも学校では、プロ野球ファンは少数派だ。
 6月5日、教室では、前夜にサッカー日本代表がW杯出場を決めた話題で持ちきりだった。
 「3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のとき、日本が勝ったと騒いでる人は少なかったのになあ」と多田君と田口君は口をそろえる。
 創生期からベアーズに携わってきた高倉邦夫代表(70)は時代の流れが恨めしそうだ。
 「私らが子どものころは、男の子は誰でも野球をして遊んだ。漫画でも、テレビのアニメでも、野球が一番人気だった」
 サッカーに人気の座を奪われただけではない。「今の子どもたちは、『遊びは携帯ゲーム、スポーツは習い事』と考える。ちょっとしたきっかけをつくってやれば、野球の楽しさを分かってもらえるんだけどなあ」