■日刊ゲンダイ「工藤健策『W杯におけるマスコミの煽りっぷりは見ていて恥ずかしい』」[2006/06/13]
日本楽勝を予想していたのは誰だ 浮かれていた実力なきジャパンに衝撃 日刊ゲンダイ 2006.6.14付1-2面
ジーコ日本が前代未聞の醜態をさらした。後半38分まで1点リードでゲームを進めたが、39分から残り6分間で
立て続けに3ゴールを奪われて力尽きた。ジーコが日本代表監督に就任してから4年間の集大成として臨んだW杯ドイツ大会。
1次リーグF組突破には勝ち点4が最低ラインで、そのためには1勝1分け1敗が必要だ。それが初戦からつまづいた格好だ。
それどころか、2戦目のクロアチア(18日)、3戦目のブラジル(22日)はオーストラリアよりも強豪国で、
この日の戦いぶりでは到底勝ち目はない。ジーコ日本は3戦全敗の目も出てきたといえる。
それにしても無責任の極みなのが、日本のスポーツマスコミだ。自国の代表チームの実力を見て見ぬフリをしたのか、
「ジーコ豪語 豪州戦『結果出す勝利確約』」「勝ち点3いただく」「日本の夜が明ける」などと連日ド派手な見出しを掲げ、
1次リーグ突破は当たり前、あわよくばベスト8も狙えるとチョーチン報道の連発。冷静な戦力分析などゼロで煽りまくって
いたのだから、どうしようもない。スポーツジャーナリストの工藤健策氏が言う。「マスコミの煽りっぷりは見ていて
恥ずかしくなるほどです。川淵キャプテンが大会前、『第1戦に負けても終わりじゃない』と言っていましたが、
今回の代表に1次リーグ突破の実力どころか、F組で最も弱いオーストラリアにすら、ほとんど勝つ見込みがないのは
関係者や専門家はみんな知っていた。地元ドイツのブックメーカーでも日本のオッズは125倍で出場32ヵ国中25番目です。
そんなチームをスポーツマスコミはきちんと彼我の実力を比較分析せず、優勝候補のようにあげつらう。
その神経は、とても正気とは思えません」
この前のトリノ五輪でも、マスコミは日本がたくさんメダルを取るかのように煽ったが、結果は荒川静香の金メダル1個だけで
赤っ恥をかいたが、全く懲りていない。どうして日本の実力をありのままに伝えないのか。W杯報道のスポーツマスコミは
戦時中の大本営発表をそのまま報じていたマスコミと同じ。盲目的愛国心を煽った戦時中の指導者同様に罪は重い。【文章一部略】
スポーツジャーナリストの工藤健策氏が言う。
「冷静に戦力を比較すれば、オーストラリアの方が断然上なんです。
ところが、日本に期待を持たせるために、スポーツマスコミは笑っちゃうような非科学的データで煽ってきた。
気温が高くなるから背が低い日本人が優位とか、オーストラリアは32年ぶり出場だから目じゃない、とか。
こじつけですよね。私との会話では冷静に分析しているのに、テレビカメラが回ると、全く別のことを言い出す評論家は大勢いる。
テレビ局の意向で、日本が弱いなんて、口が裂けても言えないんです」
工藤氏は「無理に日本が強いという根拠をひねり出しているスポーツマスコミの報道姿勢は、
『勝てる』と報じないと非国民扱いされた戦争報道を連想させる」と言っていたが、その通りだ。
メディアがこうだから、バカなサポーターが出てくる。
冷静な分析をすると「それでも日本人か」などと噛み付いてくる。こうした世論にテレビが迎合、ますます「がんばれニッポン」一色のような報道になる。たかがサッカーとはいえ、気味悪い光景だ。
ttp://eritokyo.jp/independent/nagano-pref/nikkangendai-col035.html