編集長インタビュー
重光昭夫氏(千葉ロッテマリーンズ オーナー代行)
「戦力補強は経営から」
改革元年と言われた2005年のプロ野球の覇者、千葉ロッテマリーンズ。
前年に合併策を模索していた低迷球団は、フロントの人材補強で蘇った。
打線同様、改革のアイデアも切れ目がない。(聞き手は同誌編集長、井上裕)
問 そういう人たちが携わっていたとは知りませんでした。改革を決意され
たきっかけは何だったのですか。
答 資金負担が重くなりすぎました。球団の損失を親会社が損金算入できる
とはいえ、耐え切れない水準に達していました。ご参考までに2003年度の千葉
ロッテマリーンズの収支をお教えしましょうか。入場料などの収入が17億1100
万円。これに対して選手の人件費が34億5700万円。その他の経費を加えると、
締めて35億1000万円の赤字でした。2004年度はさらに悪化し、38億7100万円の
赤字。
これは何とかしなければ、と考えていたら、一足先に大阪近鉄バファローズが
オリックス・ブルーウェーブとの合併を決めた。実は、我々も2004年の夏頃に、
ホークスと合併するかしないかという瀬戸際に立っていたんです。そうしない
と、生き残れない状況でした。
ただ、そうなるとパ・リーグが4チーム、セ・リーグが6チームになりますの
で、セ・リーグから1チームこちらに来てもらって、5チームずつでやれない
かとか、いろいろ検討したわけです。
問 実際には、マリーンズとホークスの合併は実現しませんでした。
答 ええ。ファンの反発もありましたから。そうこうするうちに楽天の新規
参入が決まった。
実を言うと、私は楽天球団(東北楽天ゴールデンイーグルス)は初年度、20億
円の赤字と読んでいた。それが、終わってみると5000万円の黒字です(注:こ
ののち、黒字額は1億5600万円と発表される)。調べたら、スタジアム経営を
自分でやり、入場料のほかに飲食料販売やグッズ販売でも稼いでいた。ちょっ
と恥ずかしいんですが、「その手があったか」と思いました。
問 楽天の参入は、やはり刺激になりましたか。
答 なりましたね。いいところは取り入れようと、本拠地の千葉マリンスタ
ジアムを所有する千葉市と交渉し、今年から、我々がスタジアムの運営をでき
るようにしてもらいました。
問 球場全体の利便性やエンターテインメント性をどこまで高めるかがカギ
になりますね。
答 試合のある日、開門2〜3時間前から並んでくれるファンがいます。こ
れからは、開門時間を早めて、できるだけ長くスタジアムの中にいてもらえる
ようにします。われわれにしてみても、その分、スタジアム内で消費していた
だける機会が増える。焼きそばとビールが定番の飲食も見直して、ワンランク
上げたいと思っています。
球場全体も、レストランやトイレをきれいにしたり、球場に広告を出してくれ
るスポンサー企業がお客様を接待できるVIPルームを作ったりと、このシー
ズンオフに9億円をかけて改装します。
問 逆に、これまで収益機会を逃していたとも言えますね。
答 グッズ販売も専門の会社に丸投げでしたが、これからは、球団がやりま
す。今は3〜5%のコミッションをもらっているだけですが、デザインから在
庫管理まで自分できちんとできれば40%の利益が出せる。優勝効果もあって入
場料が増え、球団の収入は46億2800万円に伸びました。これを2006年は60億円
にしたい。3年計画で、84億円を目指します。