巨人戦 今週テレビ中継なし…視聴率惨め 地上波撤退現実味 「ビール手に…」今や昔?
http://up2.viploader.net/pic/src/viploader256418.jpg プロ野球の巨人戦ナイター中継が8日から1週間、お茶の間から消える。巨人が敵地で
戦うヤクルト、広島の6連戦のテレビ中継は、視聴率低迷を受け、地上波での全国生中継が
ない(広島はローカル中継)。ペナントレース佳境の時期に1週間の中継なしは異例。
かつて絶大な人気を誇った巨人戦は魅力を失い、放映権料値下げが現実味を帯びる。
「お父さん」がビールを手にナイター中継に見入る、日本の家庭風景は今や昔に―。
「ソフトとしても(視聴率的に)あまりに惨めな状況で出すのもどうか。今季について
現状ではやらないという判断をした」。7月24日、フジテレビの村上光一社長は
ヤクルト−巨人3連戦(神宮)の地上波生中継を取りやめる決定の背景を説明した。
・各局敏感に反応
かつて「ただ流すだけで20%は取れる」と他を圧した巨人戦の視聴率は「惨め」の表現
そのままに下降を続けた。昨年、年平均で10.2%と過去最低を記録した数字は今季、4月の
12.7%から7月の7.2%まで、月別集計のある1989年以降の各月最低記録を次々塗り替えた。
民放各局は敏感に反応した。TBSは6月下旬の横浜−巨人3連戦(横浜)で地上波を1試合にとどめた。
フジテレビの8月以降の地上波生中継撤退に続き、日本テレビも放送延長の打ち切りを発表した。
巨人戦ナイター中継は長くお茶の間の定番だった。それが消えゆく傾向に若者や
世相評論の米沢嘉博氏は「巨人が弱く野球が盛り上がらない。テレビを中心にした一日の生活
という環境が崩れた。歌番組や時代劇、プロレスなど昭和30年代に栄えた番組が様変わりした
流れがついにナイターまで来たかと感じる。生活の変化、家族のあり方の変化の表れ」と見る。
・放映権料値崩れ
1試合1億円といわれた巨人戦の放映権料は今季既に値崩れしているという。あるセ・リーグの
球団は今季序盤、テレビ局側からCS放送並みの安さで巨人戦の地上波放送権を買いたいとの
要望を受けた。その球団は「セが大事に育てたソフトのブランドイメージは落とせない」と地上波中継
そのものが消滅しても、かたくなに拒否した。だが、来季もさらなる減額は避けられないとみられている。
各局とも来季の放送形態は未定だが、水面下では地上波の全面撤退の局も出るとささやかれ始めた。
最も注目されるのは日本テレビの動向だ。4〜7月の視聴率で、ナイター中継の影響を受ける
ゴールデン(午後7〜10時)とプライム(同7〜11時)はキー局3位に甘んじた。同局は巨人戦とともに
繁栄した歴史があるが「近い将来に撤退が検討される時が来る」とみる放送関係者は少なくない。
セの各球団は長年、巨人戦の放映権が収入の柱だった。ただでさえ交流戦導入による巨人戦減少で
経営は悪化し、地上波削減となると大打撃必至だ。在京のセ球団幹部は「もし来年、最初から
地上波がなくCS放送だけなら放映権収入が1試合2、3千万円になる。セも20億〜30億の赤字が
当たり前のパと同じ時代が来る。巨人戦に頼らない経営モデルを確立しないと」と危機感を募らせる。
ある民放キー局幹部は「コンテンツとしての魅力がねえ…。(来年は今季)後半戦の様子も見ながら
秋までに考えないといけない」と話す。今後の放映権交渉が球界に及ぼす影響は小さくない。
北國新聞6面 2006年8月8日(火)