プロ野球のゴタゴタを嘲笑い、その終焉を語るスレ

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69無礼なことを言うな。たかが名無しが
201X 千葉

今日は彼女とデートだ。久々の野球観戦なので気合が入る。
少し遅れてきた彼女との儀式めいたお約束のやり取りの後、
俺たち二人は、舞浜行きの電車に乗り込む。

3年前に「千葉ロッテ危機」(4度目だ!)が勃発した時、
「最後の希望」ディズニーグループがようやくチームを買収することになった。
というわけで、今ではロッテの全試合が「ディズニーランド」で催されている。

園内に入った俺たちは、事前の予定通り早速「ファストパス」を取った。
試合開催までの時間は、空いてるアトラクションやパレード見物で過ごす。

…「ねぇ、そろそろじゃない?」「だね、行くか。」
これをきっかけにして、試合会場へと向かうことにした。

俺たちは少し歩いて、白い縦縞模様の風変わりな小屋に入る。
階段をとんとんと駆け上がっていくと、目の前には二人乗り用のゴンドラ。
このロープウェイ風ゴンドラが、試合会場へのアクセス手段なのだ。

会場に着くまでの間は、スピーカーから野球についての説明が流れてくる。
そして最後に、「…ほら、足下を見てごらん?あれが、野球場なんだ。」

ゴンドラを降りた俺たち二人は余裕で最前列の席を確保した。さすが「ファストパス」。
すぐ目の前には、直径30mにも満たない小さなフィールドがある。
その外周をぐるっと囲んでいる客席のキャパは300人程度だろうか。
そうこうしている間に、場内アナウンスが聞こえてくる。開始時間はもうすぐだ。
70無礼なことを言うな。たかが名無しが:04/09/17 19:07:12 ID:bCrqsP67
201X 千葉 その2

ざわめきが止み、静かになった会場がふっと暗転し、そして打楽器のリズム。
悪党になった選手達が四方八方から飛び出して来てアヤしく踊る。
そして、スポットライトが中央の一点を照らすと、そこに…
着ぐるみ主人公が、せり上がりでピッチャーマウンドに登場した。

「ハハッ、やぁみんな、これから試合が、はじまるよ!フフフッ」

試合の流れは、当たり前の事だが、いつ見ても同じだ。
ロッテ球団にある日突然悪い奴らがやって来て、心を操る魔法をかけてしまう。
それに気付いた主人公たちが、野球で悪者どもに勝負を挑むのだ。
1回は両者が1点ずつ取り、2回はどちらも無得点。3回は悪者が3点リード。そして…
二死満塁でツースリーの窮地に立った主人公が、雷鳴エフェクトの中、観客に呼びかける。

「ここにいる、みーんなの力を貸してほしいんだ!」
「合言葉は、知ってるよね?じゃあ、行くよー………、今だっ!」

「はっつしば!、はっつしば!、はっつしば!…」

観客全員ののコールと同時に、花火と爆音。煙が晴れ、会場が明るくなってきて…
主人公チームが劇的な代打逆転サヨナラ満塁HR、起死回生の大勝利を収めた。
正気に返った選手達が、笑顔でバク転をしながら退場する。観客からは大拍手。
25分間の野球ショウは、あっという間に終わった…4回までしかやってないけど。

「サイン、もらっとく?どうする?」と俺。「結構持ってるしいいよ、次行こ?」は彼女。
というわけで俺たちはさくっと次のアトラクションを目指すべく、帰りのゴンドラの列に並んだ。

3年前のリーグ解散の後、悲しいかな日本で「野球」が残っているのは、こことUFJだけだ。
だから、結末が分ってても、ただのショーであっても、俺はつい何度も来てしまう。

「ねぇ、あれ見てていつも分んないんだけどさー、あの合言葉ってなんか意味あるの?」
彼女が尋ねてくるが、俺はいつものようにはぐらかした。「さぁ、知らねーよ。」
…というのも、「毎月6の付く日は『彼』が最後の代打として出演することになってる」
という説明で彼女が全ての事情を理解できる可能性はゼロだと、俺は確信していたのだ。