今昔物語

このエントリーをはてなブックマークに追加
1角瓶
【今昔物語集】
全部「今は昔」ではじまるところからこの名前がついた。
全31巻の説話集。8・18・21巻はなくなっちゃった。
1120年以後にできた。編者は誰かわからない名無しさん。

天竺(インド)・震旦(中国)・本朝(日本)の三部に分かれてて、
本文がなくて標題のみとか、あるいは標題のあとに本文の一部だけ
とかいうのも含めて1059の説話がある。
2のほほん名無しさん:04/07/09 19:37 ID:bipsuD/K
2
3のほほん名無しさん:04/07/09 19:51 ID:Wjaw+Vd8
謙虚に3ゲト(゚∀゚)
>>1
4のほほん名無しさん:04/07/09 20:23 ID:gYelylGx
いまはむかし、のほほむといふをとこありけり。
5角瓶:04/07/09 21:46 ID:???
巻十四

和歌山県の道成寺の僧が法華を書写して蛇を救うはなし第三

6角瓶:04/07/09 21:50 ID:???

今となっては昔のはなしだけど、聞いてよ。
熊野に参拝に行く二人の僧があったんよ。
一人は爺さんの僧、もう一人は年も若くてツマブキばりのいけ面だった。
二人はある村までやってきて、人の家に泊まらせてもらった。
その家の主は独身の若い女で、ほかに召使いの女が二、三人いた。
この家主の女は、自分の家に泊まった若い僧があまりにも美しいのを見て
心の底から欲しいと思って、徹底的に心を込めてもてなした。

夜になって二人の僧が寝静まった真夜中に、女は若い僧の寝ているところに
そっと入っていって、自分と僧に着物をかけて並んで寝た。
それに気づいた僧が驚いてうろたえていると、女が言った。
「普段はこの家に人をお泊めするなんていうことはしません。
でもあなたを今夜お泊めしたのは、お昼に一目見た時から、
どんなことがあっても必ずあなたを夫にしようと思ったからなの。
だからあなたをお泊めして、いま思いを遂げようとここに来ました。
私は彼氏もいなくて独りで淋しい…。可哀想と思ってどうか私の願いを
叶えて?」
7角瓶:04/07/09 21:53 ID:???

僧はこれを聞いてめちゃめちゃびっくりして、かつ恐れた。
そして体を起こして女に答えて言った。
「俺は昔からある念願があって、毎日修行してきたんです。
今日も熊野に行くためにはるばる遠い道をやってきたのに、
今ここでやっちゃったらすべてがパーになっちゃうよ。
だからどうか我慢してほしいんだけど」
と言って絶対に「うん」と言わなかった。

女はものすごく恨んで、夜の間ずっと僧を抱きしめて、
あちこちキスしたり愛撫したりして誘惑したけど、
僧はいろいろないいわけを言って頑張った。
でも女はあきらめないので最後に僧は言った。
「俺は君の望んでいることをイヤだと言ってるわけじゃないんだよ。
ただ、今は熊野へ行く途中なわけだから、その用事だけは終わらせたいんだ。
向こうへ行って、またここに帰ってくるには三日かかると思う。
そして帰ってきたら君の言う通りになるよ。ゼタイ。
だから三日だけ待ってほしい。そのくらいは待てるだろ?」
女はそれを聞くと、やっと安心して自分の部屋に帰ってったんだ。

夜が明けて、二人の僧はその家を立って熊野へ行った。
それからのちの女は、約束の日を指を折って数えて他の事はなんにも考えられず、
僧のことばかり想いながらいろいろな準備を調えて待っていた。
8角瓶:04/07/09 21:58 ID:???

一方、僧は熊野での用事は終わったけれども、
あの女のストーカーまがいの執念が恐ろしくて、
わざわざ女の家を迂回して別の道から逃げ去ってしまった。

約束の日、女は僧が来るのをじっと待っていたがあまりに遅いので、
とうとうしびれを切らし往来に出てそこらへんを歩いている人に尋ねて回った。
するとちょうど熊野から帰ってくるらしい一人の僧を見つけたので女はその僧にきいた。
「こんな色の服を着た、年寄りと若い二人連れの僧が熊野にいませんでしたか?」
「ああその二人ならねぇ、もうとっくに帰ったみたいよ。ニ、三日前だったかなぁ」
女はこれを聞いて、あの僧は約束を破って他の道から帰ったのだと知って
目を吊り上げて激怒し、家に帰って自分の部屋にこもったまま出てこなくなった。
音もしないので召使いが覗いてみると、女はすでに死んでいた。
召使いたちが泣き悲しんで大騒ぎしていると、
その部屋から体長8メートルあまりの毒蛇が這い出てきて家を出て、
道のほうに進んでいった。
そのルートは人々が熊野から帰るときの道のりだ。
往来の人々はこの大蛇を見て腰を抜かして驚いちゃってる。
9角瓶:04/07/09 22:01 ID:???

あの二人の僧は、この蛇より先に歩いていたわけだが、
人のうわさは千里を走る、ってわけで自然と二人の耳にこのことが伝わってきた。
「あんたたち聞いたかい! この道の向こうで恐ろしいことが起ってるんだってさ。
8メートルもある大蛇が野山を乗り越えて、もの凄いスピードでこっちのほうへ
向かってるんだってよ」

二人の僧はこれを聞いて思った。
これはきっとあの家主の女が約束を破ったのを怒って悪心を起こして、
毒蛇となって追ってきているに違いない。
二人は全力で走って近くにあった道成寺という寺に逃げ込んだ。

二人が転がるように入って来たのを見て、寺の僧たちはどうしたのかと尋ねてくれる。
二人の僧は事情を詳しく話して助けを請うた。
寺の僧たちは集まって話し合うと、寺のつり鐘を下ろして、
その中に若い僧を隠して寺の門を閉めた。
年老いたほうの僧は寺の僧たちの中に紛れさせた。
10角瓶:04/07/09 22:05 ID:???

しばらくするとうわさの大蛇がこの寺まで追いついてきて、
閉じてあった門を乗り越えて入って来ると、
本堂の周りを中の様子を探るようにぐるぐると二回まわった。
そして若い僧を入れた鐘突き堂の扉まで来ると、
その入り口の扉を尻尾で百回ぐらい叩いて壊し、中に入ってしまった。
長い体を鐘に巻きつけて、鐘の上にある突起の部分に尻尾を叩きつける音が、
なんと四時間ばかりも続いた。
寺の僧たちはあまりのことに震え上がっていたが、
恐る恐る鐘突き堂に集まって見てみると、
毒蛇は両方の目から血の涙を流して、
首を持ち上げて舌なめずりをしてもと来たほうへ走り去っていった。

僧たちが見てみれば、大きな鐘は真っ赤に焼けていて、
熱くて近づくこともできない。
水をかけて鐘を冷まし、鐘を取り去って中の僧を見れば、
僧は焼け尽くされて骸骨すら残っておらず、わずかに灰があるだけだった。
老僧はこれを見て泣き悲しみながら仕方なく寺をあとにした。
11角瓶:04/07/09 22:07 ID:???

それからしばらくして、この寺のトップ5に入るエライ僧が夢を見た。
こないだ見た大蛇よりももっと大きな大蛇がこの老僧の前までやってきて言った。
「私は先日、鐘の中にかくまっていただいた僧です。
あの悪女が蛇になって、ついに強引に夫にされてしまいました。
劣ったけがれのある身になってしまって、その苦しみはとても耐えられないほどです。
この苦しみから逃れたいと頑張ってみるのですが、自分の力ではどうすることもできません。
生きていた時には法華経を読経してはいたのですが…。
もうこのうえはあなたのお力におすがりするしかなくなってしまいました。
どうかお願いです、大慈悲の心を起こして私たち二人の蛇のために法華経の
如来寿量品を書写して、その功徳を回向してこの苦を抜いて下さい。
法華経の力でなくしてどうしてこの大苦を消し、
身を救うことなどできるでしょうか」
と言って帰っていったと思ったら目が覚めた。

目を閉じて静かに考えていた老僧の胸に、強い憐れみの心が湧いてきた。
弟子に命じて筆と硯を用意させて、自分の手で法華経の寿量品を書写した。
そしてたくさんの僧を集めて法要を行い、二匹の蛇のために供養をした。
12角瓶:04/07/09 22:12 ID:???

そしたら数日後。
老僧の夢に一人の僧と一人の女が現れた。
二人ともなんともいえず嬉しそうな笑顔をたたえてる。
そして二人は老僧の前にひざまずき、礼をして言った。
「あなたが清らかな法華経の功徳を回向して下さったおかげで、
私たちふたりはあっという間に蛇の身を捨てて、
清浄の世界に生まれることになりました。
私は都率天、女は刀利天に昇ります」

そう言い終ると、二人は分かれて別々に天に昇って行った。
そんところで目が覚めた。

老僧は涙を流して喜んだ。
そして法華経の威力というものをますます信じ尊んだ。
本当に法華経の力というものは不可思議にして偉大なものだ。
たちまちに畜身を捨てて天上に生を受けるということは法華経の力じゃなければ
叶いっこない。
このことを見たり聞いたりした者は、それからはみな法華経を書写し読誦した。
また、この老僧は希な心がけを持った人だ。
それもきっと過去世の修行によるのだろう。
もしそうならば、あの家主の女が僧に惹かれたのも
きっと過去からの強い縁があったと言えるんだろうね。
だからきっと仏様はいろいろな経文に「修行中の僧は女に近づいてはならない」
っていましめておられるんだろうとも。
このことをよく考えて身を慎まなきゃだわね、って人々は言い合ったということだ。
13のほほん名無しさん:04/07/10 14:39 ID:???
超良スレだなあ。
次回に期待。
14角瓶:04/07/11 05:34 ID:???

巻三十一

竹取のじいさんが女の子を見つけて育てたはなし第三十三
15角瓶:04/07/11 05:36 ID:???

そんな事より1よ、ちょっと聞いてくれよ。
今はむかしだんだけどさ。

昨日、近所のタケヤブに行ったんです。タケヤブ。
そしたらなんか一本だけ竹がめちゃくちゃ光っててまぶしいんです。
で、なんだろうと思って切ってみたら、
なんか中に9センチぐらいの人が座ってるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。

竹の中に人なんか座ってんじゅねーよボケが。
植物の茎の中だよ?
なんか着物とか着てるし。髪も長くて超美人ですか、おめでてーな。
よーし珍しいもの見つけた、なんて内心喜んじゃってんの。
我ながら見てらんない。

タケヤブってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
むかし切り落としたたくさんの竹が鋭い切り口を並べてて
うっかり転んだ日にはいつ串刺しになるかわからない、
刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。
女子供は、すっこんでろ。
まして9センチの人は。
16角瓶:04/07/11 05:41 ID:???

で、つれて帰ってやっと育てたかと思ったら
国の奴らが「お嫁さんにください」とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。

あのな、女の出した無理難題に応えて褒美に結婚してもらおうなんて根性は
きょうび流行んねーんだよ。ボケが。
得意げな顔して何が「ゼタイ幸せにします」だ。

お前は本当にうちの子が欲しいのかと問いたい。問い詰めたい。
小1時間問い詰めたい。
お前ら、ただ美人とやりたいだけちゃうんかと。

子育て通の俺から言わせてもらえば、今の子育ての最新流行はやっぱり
養子縁組。これだね。
タケヤブで9センチからスタート。これが通の育て方。

9センチってのは小さいけど、そん代わり成長がものすごい速い。これ。
で、気がついたら絶世の美女。これ。最強。

しかしこんな子を育ててるといきなり天皇にマークされるという危険も伴う
諸刃の剣。素人にはお薦め出来ない。
まあお前らド素人は初産の女房のために
「つわりに効くツボ」でも読んでなさいってこった。
17のほほん名無しさん:04/07/11 06:49 ID:???
期待通りだった
18のほほん名無しさん:04/07/12 19:58 ID:???
ここらで保守書き
19のほほん名無しさん:04/07/12 21:26 ID:???
hoshu
20のほほん名無しさん:04/07/14 02:19 ID:???
保守
21角瓶:04/07/14 20:37 ID:???

巻十七

比叡山の僧、虚空菩薩によって知恵を得たはなし第三十三

22角瓶:04/07/14 20:37 ID:???

今となっては昔のはなしなんだけど、比叡山にひとりの若い僧がいたんだ。
出家してからも勉強しようという気持ちあったことはあったんだけど、
実際にはいっつも遊んでばっかでぜーんぜん勉強してなかった。
ときたま気が向いたときだけ法華経をパラパラとめくって
ちょっとだけ読んだ。そんくらいしかしない。

でもね、毎日遊びまわってばかりいながらも「学問を究めたい」って
気持ちは結構マジで、いつも遊びに行く前とかお寺に行って
そこの虚空蔵菩薩に真剣に祈ってたのね。
「どうか学問を成就させてください!」なんつってかなり真剣。
でも勉強はぜんぜんしないの。祈るだけ。
だからいつまで経ってもこの僧はなーんにも知らないおバカさんだった。
僧は自分がいつまで経ってもバカなのが悲しかった。
23角瓶

そんで9月のある日、またお寺にいったのね。
早く帰ろうとは思ってたんだけど顔見知りの僧がいたからしゃべくってたら
遅くなっちゃったわけ。
ヤベっと思って速攻帰ったんだけど、京のあたりまできたら日が暮れちまった。
昔は今と違って街灯なんかなかったから日が暮れたらアウトなわけ。

しょうがないから近くの知り合いの家に行ってみたんだけど、
どっか出かけてるらしくて誰もいない。

ヤベェ本格的にヤベェと思ってほかの知り合いを思い出しながら歩いてると、
ちょっと異国風の門構えをした家の前に出た。
その門の前にはコジャレた着物を着たきれいな少女が立ってた。
僧は近づいていってその女の子に言ったわけ。
「あの、みません。じつは私、山からお寺に行っていま帰るところなんですが、
もう日も暮れてしまったので、今夜だけこの家に泊めていただくわけには
いかないでしょうか」