―小松氏が脚本で伝えたいテーマとは…。
「ささやかな幸せみたいなもの、ですね。激流があっても、最後は春の小川みたいな感じで終わっていたい。
疲れて帰ってきて、ドラマ見てほっとして眠るというのが、ドラマの一つの役目ではないでしょうか。
私は性善説で書くんです。生まれながら人は善であるということに基づいて書くので、テーマがあるとしたらそこかもしれないですね。」
―2009年の大河、『天地人』について
「愛や友情という概念がない時代に兜に『愛』という字をつけていた越後の武将・直江兼続を描くんですが、
そんな時代に兼続の掲げた愛とはどういうものだったのか、興味がありますね。歴史が知らない人でも面白く見られる大河にしたいです。
いま、毎日勉強です。例えば、お風呂が無いんですよ。あの時代は。においがつきそうとか、水浴びをしていたのかとか、
当時の生活を想像すると、いろんなことが気になってきちゃって。もう書く前から疲れてます。(笑)」
―韓流ドラマとかお好きだそうですね。
「韓流は『愛してる』って、平気で言うんですよ。日本のドラマには、そのストレートさはなくて、脚本家の感性で別の言い方や表現にするんです。
そこが等身大なんですけど。技巧的と言うか、おしゃれで繊細的ですよね。韓流は細かいことは気にしないで、気持ちをガッと押してきますから。
凝った映像やストーリーのアメリカのドラマも凄いし面白いけど、どっちが強いかと言ったら、気持ちでくるドラマのほうなんじゃないかと。
だから『天地人』でも、気持ちを見せていきたいなと思っています。」
(スカパーの広報誌より)
「(略)オリジナルストーリーとなる第1回から第5回は、わりとスムーズに
書けたんです。ところが、原作をベースにする第6回以降はどうしても史実に
引きずられてしまって。読み直してみたら、ただその間に起きた事象をつないで
あるだけで、ドラマが全然描かれていなかったんです。そこで原点に立ち戻って、
起承転結のある物語へと書き直していきました」
「原作では一行の表記で終わってしまっている場面にも、人の心の交わりは
あるわけです。そういった行間をふくらまていく醍醐味を、今は書きながら
実感しています。(例えば菊姫輿入れの場面は)武田の姫が上杉に心を開く過程
にこそドラマがあるんですね。(略)。心の機敏を描いてこそですね、やっぱり」
「私の仕事が感動をつくり出すことだと思います。それは事象を描くだけでは
つくれません。事象の裏にある人間ドラマを描かなければ。そこはフィクション
の領域になっていきますが、恐れずに書き進めていって、兼続の成長を描きたい。
そして、毎回毎回、カタルシスを感じてもらえたらと思います。」
「従来の勝者の歴史の物語を描くのでなく、敗者と言われる人々を描こうと思ったことが
直江兼続というテーマにたどり着いたきっかけ」
と話すNHK大河ドラマ「天地人」の制作統括、内藤愼介氏。
自分のしたいことしかせずにやりたいことはやらないというように価値観がずれて来ている中で、
見えないものに価値を感じるもっとも日本人らしい生き方をしたんじゃないかという
直江兼続という人物を取り上げたということです。
また、講演の中では、最終話の撮影のため、オープニング映像で直江兼続に扮する
妻夫木さんが立っていた山の頂に再び訪れた際、片道4時間も掛かるにもかかわらず、
たくさんの観光客がオープニングを真似て記念撮影している姿を 目にして、
とても嬉しかったと言うお話や、ガチャガチャで家康が出るとお子さん達が
悲しそうな顔をすると聞いて、天地人の影響なのかなと嬉しくなったというお話もされていました。
大河ドラマは、その内容を史実と思う視聴者がたくさんいるということで、
時代考証の方と話し合いながら、登場人物達を描いていると言う苦労話もありました。
なお、「天地人」は来月11月まで放送されます。