「風林火山」に内藤昌豊は出るのか

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397 :@ :2007/02/04(日) 03:54:59 ID:LDqQ6cY8
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この男の名は工藤下総守虎豊、内藤修理亮の父である。
無類の硬骨漢として知られた武田家の老臣であった。 

/ ^ω^ \虎豊「今帰ったぞ」

( ^ω^)「父上、お帰りなさいお」

/ ^ω^ \「おお、源左衛門。 武芸学問に励んでおるか」

この時、後の内藤修理亮は工藤源左衛門祐長と言い、まだ十三歳であった。

( ^ω^)「学問は好きじゃないですお。 武芸を磨き、早く父上と共に戦さ場を駆けたいですお」

/ ^ω^ \「そいつはいかん! ワシは若い頃から戦続きで学問に励む暇があらなんだ。
        故に今となって学問の大切さがよぉ〜く分かる! よいか、文武の両道を目指すのだ」

( ^ω^)「……はいお」

そう返事はしたものの、以降も源左衛門は槍弓の稽古ばかりして学問には興味が湧かなかった。
しかし、天文六年のある日……

(`メω・)虎昌「虎豊殿は……お館様のお手討ちに遭われました」






240転載:2007/02/28(水) 13:46:42.83 ID:+qjEOHj6
398 :A :2007/02/04(日) 03:55:35 ID:LDqQ6cY8
虎昌が告げた瞬間、虎豊の妻は泣き崩れた。
筵を被せられた父の遺体が工藤邸へと運ばれてきた時、源左衛門は呆然とするばかりで涙も流れなかった。
兄である長門守昌康は虎昌へ問い詰めた。

( ;Ω;)昌康「何ゆえ、何ゆえに父が討たれたのでござる!」

(`メω・)虎昌「虎豊殿はな、お館様へ諫言を致したのじゃ。 次の出陣を取止める様にと。
       今の甲斐には戦などする様な余裕は無し、民を慈しみ力を蓄える時≠ニ申し出た……」



/ ^ω^ \「お聞き届け下さいお館様!」

信虎「黙れや! 海賊ふぜいの家が我が武田に拾ってもらった恩を忘れたか!」

工藤家は甲州の武士では無く、虎豊の四代前までは相模の三浦氏に仕える水軍であった。
先祖を海賊呼ばわりされた虎豊は顔に朱を注ぎ、声高に言った。

/ ^ω^ \「……海賊でも分かる、此度の出陣の愚にござる!」

次の瞬間、鞘走りの音が聞こえたかと思うと、
虎豊の肩から入った太刀は腰までを深々と切り開いていた。
241転載:2007/02/28(水) 13:47:25.42 ID:+qjEOHj6
399 :B :2007/02/04(日) 03:56:19 ID:LDqQ6cY8
(`メω・)「一瞬の出来事で我らが止める間も無かった……」

( ^ω^)「兵部様……」

(`メω・)「酷な事を申すが、そなたらは府中……いや、甲斐より落ち延びた方が良かろう」

( ^Ω^)昌康「我等にまで咎が及ぶと……」

(`メω・)「充分にありえる事よ。 ほとぼりが冷めるまで身を隠すのが良いだろう」

( ^Ω^)「……冷めるでしょうか」

(`メω・)「いずれな。 もし冷めぬ時はお館様を……」

( ^ω^)「お館様を?」

(;`メω・)「……ゲフンゲフン! それにしても武田はまた忠節の士を失った……」

信虎が手討ちにした家臣は虎豊だけでは無い。
馬場伊豆、山県河内、後に源左衛門が名跡を継ぐ内藤相模も直諫の末に手討ちに遭っていた。

(`メω・)「よいか、そなたらは力を合わせお袋様を支えるのじゃ。 いずれ必ず甲斐に戻れる日が来よう」


400 :C :2007/02/04(日) 03:56:56 ID:LDqQ6cY8
父の遺品をまとめていた時、源左衛門は帳面を見つけた。

( ^ω^)「何だお? これは」

捲ってみると、粗末な字で工藤下総守≠ニ何度も書かれてあった。他にも何やら書かれているが誤字が目に付く。

( ^ω^)「父上の日記かお」

興味が湧き、頁を捲っていくと今年行った源左衛門の元服の日が記してあった

○月×日
次男源左衛門元服ス 我至上ノ喜悦也 
我ノヤフナ愚直無骨ノ侍ニ成ナラズ 願ワクバ文武両道ノ士ニ成リテ 武田ガ支エト成ルヲ欲ス

( ^ω^)「……ハハ、それにしても下手な字だお……」

( ^ω^)「ハハハ……」

( ;ω:)「ぉぉぉ……おっおお〜ん!」

父の死の直後泣けなかった源左衛門は今、父の心からの願いを知って泣いた。
日記に記された粗末ながらも無骨な字が、父そのものを表しているようで源左衛門はどうしようもなく泣けるのだった。
242転載:2007/02/28(水) 13:52:33.14 ID:+qjEOHj6
409 :D :2007/02/06(火) 00:27:06 ID:2U+1PAnX
( ^ω^)源左衛門「府中ともお別れだお……」

工藤一家は府中を後にし、相模の三浦半島に向けて足を進めていた。

( ;ω:)「ううう……」

( ^Ω^)昌康「泣くでないわ源左衛門」

源左衛門が泣いていたのは故郷を去る悲しみではなく、父への不孝を悔やんでいた為だった。
あの時、父に言われていた通りにしていたらと思うと涙が溢れてくる。

( ;ω:)(府中ならまだしも、三浦の漁村では文を修めるにもどうすりゃいいお)

落胆する源左衛門の耳に馬蹄の音が聞こえてくる。

(;`メω・)虎昌「若様ーっ! 早すぎまする!」

(´∀` )「……!!」

( ^ω^)「ん?」

源左衛門の目の前で止まったその武士は、にこやかな笑みを浮かべて口を開いた。

(´∀` )「工藤下総が次男、源左衛門か?」

( ^ω^)「いかにもそうですお」

(´∀` )晴信「武田大膳大夫晴信である」

工藤一家は慌てて平伏する。

(´∀` )「よいよい、お忍びで参ったのじゃ」

(; ^ω^)(まさか若様自ら逆臣の家族をお手討ちに参られたのでは……)

危惧する源左衛門に馬から下りた晴信は頭を下げる。

(´∀` )「此度の一軒、真にすまなかった。 父の不徳、恥ずかしく思う」

(; ^ω^)「若様、頭をお上げ下さいお!」

(´∀` )「工藤下総が忠誠は父には伝わらなかったようだ。 しかし、この晴信がしかと見届けたぞ」
243転載:2007/02/28(水) 13:53:07.84 ID:+qjEOHj6
410 :E :2007/02/06(火) 00:27:43 ID:2U+1PAnX
( ^ω^)「若様……」

(´∀` )「今年の内にはな、その方を我が近習として召抱えるつもりだったのだ。 だがこのような事になってしまった……」

(´∀` )「下総はいつも言っていたぞ。 晴信様の文を我が息子にも教えてやりたい、とな」

そこに遅れて虎昌が駆けつけて来た。

(;`メω・)「ゼヒィー、ゼヒィー」

(´∀` )「兵部、遅いぞ。 あれは持ってきたろうな」

(;`メω・)「は、これに」

包みを受け取った晴信は、それを源左衛門の前に差し出した。

(´∀` )「これをその方に貸して進ぜよう」

( ^ω^)「これは……孫子の計篇∞作戦篇∞謀功篇=H」

(´∀` )「兵法書じゃ。 わしが書き写した物でな」

( ^ω^)「勿体のうございますお」

(´∀` )「与えるとは言っとらんぞ、飽くまで貸すのだからな。 返すのはその方が甲斐に戻って来た時じゃ」

( ^ω^)「若様……」

(´∀` )「では、さらばだ」

(`メω・)「あっちでも達者でな」

源左衛門は数冊の孫子を抱えたまま、二人の後姿が見えなくなるまで立ち続けていた。

( ^ω^)(晴信様……この御恩生涯忘れませんお)