大河ドラマ初芝清（○з○）

第４５話　「アジアの英雄」

開幕前に大見得を切ったはずの李承�Y（ぺ=ヨンジュン）は、初芝（渡辺謙）や、
ロブソン（ミッキー・ローク）、ランペン（アンディ・ガルシア）両コーチによる精一杯の
指導もむなしく遂に浦和行きを命ぜられた。チョコレートの匂い漂うグラウンドを
澤井（永井大）ら、若手に混じってとんぼでならす失意の李。

「くそっ！なんで私が、こんな事をしなければならないんだ！
全ては環境の違いのせい、日本のせいなんだ！」

そんなクサりかける李の肩をたたき励ます一人の中年男がいた。
「ボクニハ、オマエノキモチガヨクワカルヨ！」
「誰だ？」
ふりむくとそこには、かつてのアジアの英雄、
荘勝雄二軍投手コーチ（アンディ・ラウ）の人懐っこい笑顔があった。
「ゴウニイラバ、ゴウニシタガエ、ネ！」

一方、李自慢の美人妻イ・ソンジョン夫人（チャン・ツィイー）は夫の不甲斐なさに呆れ、
日本には居たものの家庭内は冷え切っていた。浦和には足を向けず、夫の出るはずの
無い千葉マリンに通うのが、自棄になり家庭を省みなくなった夫へのせめてもの反抗だった。
ため息をつきながら試合を眺める李夫人の目に一人の男が映った。

「…ナンテ、ステキナヒト！」

李夫人は、夫には抱いた事の無い初めての感情が沸き上がるのを感じていた。
潤んだ熱い視線の先には、近鉄岩隈（オダギリジョー）から逆転サヨナラのグランドスラムを
東京湾にぶちこみ、意気揚揚とダイヤモンドを一周するリアルエイジァンヒーロー初芝（渡辺謙）の姿があった。