>>951つづき
そこで御前会議は終わり、結局、買収費用はスポーツ以外の別のセクションから捻出されました。要するにNHKという組織は、どこからでもカネをひねり出せるのです。
巨人戦を購入する話は、01年の9月に開かれた会合で、海老沢会長が渡辺恒雄オーナーに持ちかけられたもので、後日、ナベツネオーナーが、スポーツ紙の取材に対して、
「海老沢君は非常に判断が早く、わずか15分で決めてくれた」と答えているのを読みました。
「スポーツの連中に(契約交渉を)まかせると、いつも高く買ってくるから、自分が行く」と、自ら値段の交渉を買って出たNHKの理事は、わずか5試合の地上放送権
を約8億4000万円で購入する契約を結んできました。1試合単価がじつに約1億7000万円にもなる、桁外れに高い買い物でした。
当時の東京ドームの巨人戦は8000万から高くても1億円程度が相場でした。事実、「阪神―巨人」戦や「中日―巨人」戦といった、甲子園球場やナゴヤドームでの試合を、
NHKはこのころ約9000万円で購入しています。1億7000万円は、いくらなんでも高すぎるのです。
企業防衛
値段もさることながら、私は別の意味でも、この契約の不可思議さを感じていました。当時はまだ“発展途上”だったBS放送のソフトとしてならば受信料の増加が見込めますので、
たしかに巨人戦はそれなりの投資効果があったでしょう。しかし、いまさらNHKが地上波で巨人戦を放送するメリットはありません。当時、巨人戦はCS放送
(現在の「G+スポーツ&ニュース」)が、それこそすべての主催試合を試合前の練習風景までサービスして放送しているわけですから、コアなファンを獲得するのは難しい状況でした。
高い上に効果も見込めない。
契約を結んだ翌年、私はスポーツ放送権の契約担当者に尋ねました。「××さん。BSで流せなかったら意味ないでしょう。何でこんなに高いんですかね」
すると担当者は、ニコッと笑いながら私にこう言ったのです。
「ハナちゃん(=立花氏の愛称・編集部注)、これは「企業防衛」なの。NHKがおカネを払う、読売はNHKの悪口書けない。すなわち「企業防衛」。読売1000万読者は大事・・・・・」
それを聞いて「ああなるほどな」と合点がいきました。