NHKスペシャル「奇跡の詩人」patr35

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(文字盤を指差している写真のキャプション)
 議論を呼んでいる「奇跡の人」の1シーン。流奈くんの手(下)に母親が指を添え(上)、母親が持った
文字盤を指して詩作する。

(本文)
 「奇跡の詩人」は、横浜市に住む脳に障害を持つ日木流奈(原文ルビ「ひきるな」)君が、米国のグレン
・ドーマン博士が開発したリハビリ・プログラム「ドーマン法」によって、文字盤を指して意思を伝える方
法を覚え、多くの本を読破し、詩やエッセーを執筆するよになる。そのメッセージが多くの人に感動を与え
ている……という内容。番組の視聴率は14%。通常のNHKスペシャルが10%前後なのとくらべて高かった。
2000件もの反響があり、約半分は批判的なものだった。
「土曜スタジオパーク」内での説明とともに、NHKはホームページで同番組について、「番組は、脳障害児
の能力を科学的に検証するものではなく、流奈君が発する感性豊かなメッセージを伝えることを意図した」
との見解を発表している。しかし、この姿勢が「説明不足」なものにしたと言える。
 多くのドキュメンタリーやドラマを制作してきたテレビマンユニオンの今野勉・武蔵野美術大学教授は、
「ホーキング博士のような例もあり、『奇跡』が絶対ないとは言えないが、どういう奇跡であるのかを視聴
者に納得させる必要がある。ドキュメンタリーの作り手は、視聴者が抱くであろう疑問を予測して答えるべ
きなのに、疑問を最後まで抱かせた」と語る。
 そして、「例えば本を2000冊読破したというが、6歳から11歳までに読んだとして一年に何冊になるか。
どうやって読むのか。そういうシーンも説明もない。そうした構成が不信感をおぼえさせた」と指摘する。