NHKスペシャル「奇跡の詩人」part12

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555内科医
私は神経内科を専門とする勤務医です.
GW当直に当たってしまい久々に2chをみたら大変な騒ぎになっているので驚きました.
私の流奈君の画像を見た感想を書きたいと思います.断っておきますが私はNHKの番組は見ていません.
ネットで流れている 「私はたったこれだけ喋るのも呼吸が大変で体のコントロールを失います」
と言っている15秒ほどの動画について書きます.

まず流奈君の状態ですが,頚部,口唇,顔面にアテトーゼ様の動きとジストニア様姿勢が認められます.
左手は母親に握られているため詳しくはわかりませんが,指が過伸展(反り返っている)している状態からわずかに屈曲することもあり,
これもジストニアあるいはアテトーゼである可能性が示唆されます.
15秒間で左手が文字盤から離れようとする動きが1回認められ,何らかの不随意運動が存在するか,
ジストニア姿勢が母親の力で強制されている印象を受けました.
ジストニアというのは筋肉の持続的な収縮で通常でない異常な姿勢をとるものをいう医学用語です.
アテトーゼは不随意運動(自分の意志と関係ない運動)のひとつで,主動筋と拮抗筋両方の収縮によりおこるゆっくりとした不随意運動です.

したがって流奈君は常時筋の緊張が高まっている状態が示唆され,
このような場合文字板の指示といった細かい運動は難しいのではないかとおもいます.
母親の介助によ流奈君の微細なての動きが増幅されてあのようなすばやい手の動きが可能であるとの意見もあるとおもいます.
本人に力が足りない場合介助により文字盤の指示が可能となるばあいはあると思いますが,
15秒で45文字を指示する本人の手のうごきを感知し,1秒間に3回という速度で方向を変えるのは不可能とおもいます.
ついでに言うと母親の手は流奈君の微細な手の動きを感じるにはしっかり握りすぎているとおもいます.

ちなみに15秒間で指と文字盤の接触が確認できるのは20回ほどであり,すべて母親が持っている文字盤が指にあたりにいってます.