「奇跡の詩人」データ&意見の整理・収集スレッド

このエントリーをはてなブックマークに追加
489 ◆luY64TBk
鵜の目 流奈君の会話 (中沢佳子)

2001.11.28 朝刊 20頁 岐阜版 (全512字) 
------------------------------------------------------------------------

 【岐阜県】流奈君はたくさんの言葉を知っている。おしゃべりも大好きだ。
けれど声が、出ない。

 極小未熟児、先天性腹壁破裂状態で生まれた。間もなく、三回の手術を受けた。ストレスで、
脳障害になった。

 文字盤を指さす。その文字を母親が読み上げる。それが流奈君の会話。小さな文字盤からは、
優しくも鋭い言葉がどんどん紡がれる。やがて言葉は詩に変わり、十一歳の少年は、本を何冊も
出す詩人になった。

 良い先生になれないと悩む教師がいる。「知識を教えるのでなく、知恵が生まれるのを待ってください」。
自分が嫌いだといら立つ少女がいる。「自分に厳しすぎるよ。もっと自分で自分をほめて愛して」。流奈君の
言葉に魅せられた人たちの悩みに、丁寧に答え続ける。

 子どもだから。障害者だから。言葉が通じないから。考えが違うから。声を持っていても、そんな理由で
まともに他人と話さない人があまりに、多い。だれかと話す時「なぜそう思ったの?」「どうしてそうしたの?」と
尋ねてほしい、と流奈君は提案する。それが、相手の目線で考えることだから。それが、本当の会話だから。

 声を持たない流奈君。でも、本当の会話の難しさと楽しさを知っている。だからその言葉は、他人を救い、
幸せにする。

中日新聞社