◆タイトル
独占インタビュー バッシングに答える
奇跡の詩人 日木流奈クンの母親が涙の反論
◆見出し
「私は常に成功者でした、私自身において。だれかと比べてでは決してなかったのです。
私は私自身でありさえすればよかったのです。」
歩けない、声を出すことができない12歳の脳障害児の「魂の言葉」が
感動の輪を広げている。そんな彼の母親が沈黙を破り初めて語った「批判への回答」
「息子の素顔」
脳障害で言葉は話せないが
「放送直後から多くの反響があり、2000件近くになりました」(NHK広報局)
4月28日に放送されたNHKスペシャル「奇跡の詩人」に対する視聴者の反応は凄まじかった。
また、書店に並びだした「ひとは否定されないルール」(講談社刊)の買われ方も尋常ではなかった。
2万部も刷られた本がわずか5日間で消えたのである。
5月9日現在10万部を増刷中だ。
◆この本の読者は次のような感想を本社に寄せてきている。
「ただただ感動、感動!そして勇気をもらった!表現がすごい。天才!ホントに」
(43歳・女性・会社員)
「ちょうどこの本が出たとき、私は全てが嫌になっていて、自分の存在さえ消してしまいたいと
思っていました。そんなときこの本を読んで、なんだ、このままでいいんだ、
と思えるようになり、読み終える頃には、苦しんでいる自分さえいとおしく思えました」
(23歳・女性・学生)
「人間はこのままで自分の能力を引き出すことができるということに
驚きを隠せません。自分のこれまでの生き方を反省するとともに、私は
自分の子供にどのように接しただろうか思い返しています」
(57歳・女性・公務員)
◆このあとルナくんの紹介。
12歳までの経歴。
8歳児の時のポエムもあり。
今回出版された「ひとが否定されないルール」は、そんな流奈君が
世間に向けて発したメッセージ集ともいえよう。
同書の中で、彼は執筆動機を、こう語っている。
「私は今年12歳になります。世の中の大半の人が行くであろう中学には、
たぶん私は行くことはないでしょう。
ですが、私の人生はとても豊かで、希望に満ちています。
もし世の中の人たちが、世間一般とか常識にとらわれずに物事を見ることができたら、
ステキなことがおきるのだと伝えられたらいいと私は思っています。
「自分の思い」がどこにあるかを問うて生きたとき、どこにいても、だれといても
心が平安になると伝えたいのです」
流奈君に対する共感が集まる一方で、NHKスペシャルの放送後、
「週刊文春」「週刊新潮」は次のように批判した。
批判の第一は、流奈君の著作は本当に彼が「書いた」のかというもの。
第二は、リハビリプログラム「ドーマン法」の効果に対する疑問。
第三は、流奈君の両親が特定の宗教と関連しており、その宗教のメッセージを
流奈君を通じて流しているのではないかという批判である。
第一と第二の疑問について、講談社の担当編集者はこう答える。
「真の著者は母親ではないかという批判があるが、さまざまな角度からの
チェックの結果、本当に流奈君の言葉だということが確認されています。
それは流奈君の番組を作ったNHKでも確認済みです。また、ドーマン法への疑問の声もあるが、
流奈君は自分の本の中で自分にとって、効果があったということを述べているだけで、
このハードなプログラムが合わない人もいることは、本書を読めば容易に推察できると
考えています。この本はあくまで流奈君の体験を書いたものだと理解して欲しいのです」
◆中見出し
夫妻と新興宗教の本当の関係
今回、本誌は、これまで沈黙を守ってきた母の千史さん(38歳)に話を聞くことができた。
今回のバッシングや子育てについて、千史さんは時には涙声になりながらも
丁寧に答えた。
その一部始終を紹介しよう。
●現在の心境から聞かせてください。
千史 複雑な心境です。流奈の言葉を受けとめてくださる方がこんなにいらっしゃるというのを
知ったことは、すごくありがたいんです。
今回も雑音(批判)が出るのはわかっていたので、それは仕方ない、受けとめようと
思っていたのですが、突然家に(マスコミの人間)押し掛けられたりすると・・・・。
●ドーマン法はかなりハードで、人によっては合わないとか、悪化する人の方が多いとか、
流奈君に運動能力面の効果が出ていないなどの批判もあります。
千史 ドーマン法によって肉体的にも良くなっている方はいらっしゃるんです。
流奈の場合はかなり重度の障害だったので、なかなかそこまではいっていません。
でも、健康面では、何かというと、すぐに入院していたのが、ずいぶん改善されました。
●日木さん夫妻の「友人」に、アメリカで国外退去処分となったラジニーシという
教祖が開いた新興宗教の信者がいて、一家はスポークスマンとなっているのではないか、
といった批判も出ています。
千史 流奈の文章を読んで、来てくださった中に、そうした方はいます。
ほかにも、ボランティアの中にはキリスト教の方もいれば仏教の方もいらっしゃいます。
ただ、その方々が、もしわれわれに「こうしなきゃいけない」「こうするのが正しい」と
押しつけてきたら、それは「ちょっと申し訳ないですが」と敬遠します。
でも、現実にはそんなことありません。
われわれは個人と個人として付き合っていて、全然問題はないんです。
●「週刊文春」には、ラジニーシの信者は赤い服を好んで身につけるが、
千史さんのいでたちに合致するとも書かれていました。
千史 赤い洋服って、いまはピンクを着ています(笑)。
放映された番組を見ても、私、いろんな服を着てるんですがね(笑)。
●流奈君は文学・哲学から宇宙論まで2000冊以上を読破したといいます。
一番気に入っている本は何ですか?
千史 本人に聞いたら、市販の本より主人が手作りした自分の本(流奈君が話したこと
を写真付きでまとめたもの)が気に入っているそうです。
影響はいろんな本から受けています。たぶん表現の仕方を学んでいるんでしょうね。
どういう風に伝えたら伝わるのかと、いつも本の中で捜していると言っています。
●この先、流奈君にはどんな人間に育ってほしいと思っていますか?
千史 人間としては、彼が彼らしくあればと考えています。
流奈もよく、「私でありさえすればいい」という言い方をしています。
体のコントロールがきかない部分は少しでも楽になってほしい。
脳障害の子は呼吸が悪くて亡くなったりするんです。
幸いドーマン法には呼吸を良くするプログラムがすごく多いんですが、
それでも追いつかない。ドーマン法は続けますが、違ういい方法があれば試したい。
◆中見出し
「自分の声でしゃべりたい」
●印象に残っている詩、言葉はどんなものですか?
千史 「私に声をください」(「はじめてのことば」に収められている詩)
です。作るのに3日くらいかかったはずです。
それまでは、私がみつけてきたドーマン法が(流奈君にとって)いいのかわからなかった。
でも、この詩ができたとき、流奈の夢を実現できたと思いました。
それから、初めて私に伝えた言葉、「わたすさかな」(食べたさかながおいしかったので
これを父に渡したい、という意味)です。
ついに自分の言葉で表現できたのだと、感動しましたね。
「本の反響が大きいのは、時代が彼のメッセージ、彼の存在を受け入れているからです。
彼の発しているメッセージは、いま多くの人に必要なものなのです」
2児の父親である作家の重松清氏はこの本の読み方についてこう語る。
「障害者の本というと、そのメッセージすべてを肯定的に捉えなければならないという
<感動しなければ症候群>に陥る人が多いが、この本は無理に感動しようとしなくていい。
著者も<感動>ではなく、同じ土俵に立った<共感>を求めているのではないか。
だからこそ、きちんとそのメッセージに向かい合い、是々非々で読んでみるべきで、
それこそが著者の願っていることだと思う」
さて、流奈君自身は飛び出した批判についてどう考えているのだろうか。
「新作」にはこんな一説がある。
「本当は、私は自分の声でしゃべるたいのです。
ですが、私は母の補助がないとしゃべれません。
その声は私から出るのではなく、私の母から出るのです。
ですから、私が考えているのに、私の思いは私が考えているのではないと思う人たちがいます。
私たち脳障害児というものが、物事を感じたり考えたりする力があるのだという
ことを知らない人たちが疑うのです。
私は、自分が<考える葦>として存在しているのだということを
人々に強く知ってほしかったのです。
私が感じたり、考えているのだということを強く知ってほしかったのです」