PED 厳戒続く 万全期すも「不安」 鹿児島県の養豚地帯 (2014/12/22)
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31357 豚流行性下痢(PED)の再流行の恐れが高まっている。鹿児島県では、今冬の再発に最大限の警戒をしてきたが、
10月以降に発生した9農場は、全てが再発だ。県は農水省の防疫マニュアルに従い、
鹿屋市と垂水市を特別防疫対策地域に指定して手厚い防疫措置を施す。
だが、感染拡大を防げるか現場の不安が募る。気温の低い冬場は、豚の免疫も弱まりやすい上、
ウイルスも活発化するとされるだけに、予断を許さない状況が続く
「農家の体力はぎりぎりだ」。鹿屋市や垂水市が管内のJA鹿児島きもつき養豚課の中村進一課長の表情は暗い。
県内で昨年12月から今年6月までに約6万2000頭の子豚が死んだ。肥育豚の減少で、今年10月は、同JAの肉豚出荷頭数が前年の半分以下に落ち込んだ。
11月には、頭数が回復してきたものの、PEDの再流行を警戒する。
鹿屋市では6農場、いずれも昨冬に感染した農場で再発した。豚に完全な抗体はできないため、同じ母豚が再感染しているケースもある。
乳房炎を起こすケースは少なく、症状は軽いが、県内では哺乳(ほにゅう)豚を中心に子豚約2200頭が死んでいる。
黒豚で母豚80頭を飼う一貫経営の男性は「感染経路は不明で、打つ手が分からない状態だ」と焦りを隠せない。
前回の流行期、地域ではワクチン接種や農場の消毒などできる限りのことをした。それでも、ほとんどの農場で発生したつらい記憶がよみがえる。
同市は動力噴霧器、消石灰など防疫資材の費用の半分を支援する対策を取る。
しかし、長引くウイルスとの戦いが農家経営を脅かしている。JA鹿児島県経済連養豚課の松枝数久課長は
「現場の声に合わせ、防疫や馴致(じゅんち)などの措置も考えていきたい。経営面での援助も打たないと、存続が危ぶまれる状況だ」と話す。
1年前と違うのは、防疫マニュアルによって、地域内で関係者が養豚農家の住所などの情報を共有できるようになったことだ。
これまでは、組合員の養豚場での発生状況は、JAや部会で把握できたが、組合員以外の情報は限られていた。
農家からは「情報共有で、発生農場を避けて飼料を運搬する迂回(うかい)経路などの対策が取りやすくなった」との評価がある。
県畜産課は「一気に冷え込んできたため、豚の免疫が下がり、また爆発的に広がりかねない。先手で対応して、長引かせないよう努めていきたい」と話す。
・再び流行の兆し マニュアル徹底を 農水省
夏までに沈静化した豚流行性下痢(PED)が、再び流行の兆しをみせている。
農水省によると、9月〜12月第2週にかけて31農場で発生した。ウイルスの活動が盛んになる低温・乾燥が続き、感染リスクが高まっているためだ。
前年は12月以降にまん延したため、同省は「豚舎の消毒やワクチン接種を、農家は徹底してほしい」(動物衛生課)と呼び掛けている。
PEDは9月以降、10都県で発生。発症したのは5675頭。冬型の天気が目立つようになった10月からほぼ毎週発生しており、流行を警戒する。
ウイルスの活動が弱まっていた8月の発生は今年最少の4件だった。
流行時期に備え、同省はまん延阻止に向けた対策を進める。10月には防疫マニュアルを作成。都道府県を通じて、豚舎へ人の出入りを制限するなど、
飼養衛生管理基準の遵守を農家に促す。
まん延を抑えるには、母豚へのワクチン接種も有効だ。メーカーは、今年度内には、前年度比3倍に当たる300万回分のワクチンを製造・出荷を計画する。
同省は「充分な量が確保できる。農家は適切に利用し、予防に努めてほしい」(同)と訴えている。
PEDは2013年10月に沖縄県で発生後、気温が下がるにつれ、感染が北上した。8月末までに38道県で発生
、約38万頭の豚が死亡した。その影響で12月の肉豚出荷頭数は前年比で約5%減る見通しとなっている。(竹林司)