財務省が20日発表した10月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7099億円の赤字だった。
貿易赤字は28カ月連続だが、額は前年同月に比べ35.5%減った。
輸出が中東向け自動車などの好調で1割近く増えた一方、輸入は原油安の影響で3%弱の伸びにとどまったためだ。
円安が続くなか、海外需要の回復で輸出に持ち直しの兆しが出ている。
貿易赤字の減少率は10月までの28カ月間でみると最大だった。
これまでは2014年5月の8.1%が最も大きかった。
赤字の減少につながったのが、2カ月連続となった輸出の増加だ。
10月は前年同月比で9.6%増え、輸入の伸び(2.7%)を大きく上回った。
輸出は数量でみても4.7%増と、2カ月連続で拡大した。
数量が2カ月以上続けて前年同月を上回るのは、2013年10〜12月以来となる。
輸出額が伸びた主な品目は自動車だ。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)向けを
中心に6.2%拡大した。シンガポール向けの貨物船やタイ向けの鉄鋼も好調だった。
国・地域別では、アジア向けが船舶や電子部品の増加で10.5%伸びた。
対米は自動車部品や建設用・鉱山用機械の好調で8.9%増えた。
輸入は中国からの携帯電話など通信機器が29.6%増えたほか、デンマークや米国からの肉類の伸びが目立った。
携帯電話は米アップルが9月に発売した新型スマートフォン「iPhone6」が増えたとみられる。
一方で輸入数量は2.1%減った。外貨建て取引の基準になる円相場の
公示レートが平均1ドル=108.36円と前年同月より10.3%の円安になり、輸入価格が上昇したことが響いた。
近年、輸入額を押し上げてきた原油は金額で10.8%、数量で8.8%減少した。
原油価格の下落で通関単価が下がったほか、国内の電力需要が少なかったためだ。
国・地域別の貿易収支は対米が6144億円の黒字で、黒字額は6.8%増えた。
対アジアは1383億円の黒字で、2カ月ぶりに黒字に転換した。アジアのうち中国とは5867億円の赤字。
携帯電話や太陽光発電に使う部材の輸入などが増え、赤字額は15.1%拡大した。
輸出の動向について、SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは「米国の景気の持ち直しで、
米国向け製品をつくるアジアの工場に向けて日本からの輸出も増えている。
米国で労働市場が改善し、需要が高まるかが日本の輸出の焦点になる」としている。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS20H0T_Q4A121C1MM0000/