OECD:課税逃れ対策報告書 特許など評価の統一基準を
http://mainichi.jp/select/news/20140917k0000m020123000c.html 毎日新聞 2014年09月16日 22時05分(最終更新 09月16日 22時25分)
経済協力開発機構(OECD)租税委員会(議長、浅川雅嗣・財務省国際局
長)は16日、多国籍企業による課税逃れの防止策の検討状況をまとめた報告
書を発表した。米アップルなどで社会問題化したケースでは、特許や商標など
の「無形資産」を税負担が軽い国にあるグループ企業に譲渡する手法で課税逃
れしたとされる。OECDはこうした行為を防ぐため、無形資産で統一的な評
価手法の導入や企業の情報開示の徹底を求めた。20日からオーストラリアで
開かれる主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に報告する。
無形資産の対応が焦点になっているのは、無形資産をグループ内の子会社に
売却することで課税逃れする事例が多いためだ。具体的には、多国籍企業が法
人税率が低い国にある子会社に特許などの無形資産を低価格で売却することで、
(1)無形資産がなくなった分だけ本国での納税額を抑制する(2)無形資
産の使用料収入(利益)を子会社に集中させ、本国よりも安い税率で現地で納
税する−−といったケースだ。
OECDは無形資産の価値(子会社への売却価格)の評価手法が各国・地域
間でバラバラで、企業任せになっていることを問題視。報告書では、無形資産
から将来得られる使用料収入を基に適切な資産価値を算出する統一的手法を導
入するよう求めた。多国籍企業が節税目的で海外子会社に資産移転することを
防ぐ効果を期待している。
また、多国籍企業が納税に関連する情報を各国政府に報告する仕組みの制度
化も要請。グループの組織図や事業概要だけでなく、保有する無形資産▽グル
ープ全体の財務状況と納税状況▽子会社が所在する国ごとの財務情報−−などの
開示を求めている。「各国の税務当局が不当な資産移転の有無を調べる端緒に
する」(財務省)狙いがある。
無形資産への対応の強化について、政府関係者は「日本企業は税率の低い国
に資産を移転して課税逃れをしているケースは少なく、影響は限定的」と指摘
する。ただ、情報開示の徹底に対しては、経団連をはじめ経済界が「事務負担
が増大する」と反発している。OECDはさらに検討を進め、来年末までに最
終案を決定する方針だ。【竹地広憲】
◇キーワード・多国籍企業の課税逃れ
世界各国で事業展開する企業が納税額を抑えるため、法人税率の低い国に利
益を集めるなどして節税すること。米アップル、米スターバックス、米グーグ
ル、米アマゾンなどが批判を浴びた。2013年5月には米上院で米アップル
が、英議会では米グーグルの担当者がそれぞれ課税逃れの問題を追及されるな
どして政治問題化した。経済協力開発機構(OECD)は13年7月に15項
目にわたる行動計画を公表し、対応を本格化。同年9月の主要20カ国・地域
(G20)首脳会議(サミット)も同行動計画を全面的に支持する方針を表明
した。各国が対応を急ぐ背景には、課税逃れによる税収減で財政が悪化するこ
とへの懸念や、競争上不利になる国内企業の不満の高まりなどがある。