http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/worldtown/CK2014070902000264.html ドイツ・アウクスブルク 500年変わらぬ家賃
ドイツ南部アウクスブルクに「フッガライ」と呼ばれる世界最古の福祉住宅がある。
一五二一年に豪商フッガー家が建て、貧しい市民を住まわせた。
改築はされているが、今も現役の住居。お年寄りを中心に百五十人が住む。
見学用のモデル住宅に入ると、世帯ごとに四畳半ほどの居間、寝室、台所、浴室という間取りだ。
日本のワンルームマンションよりよほどゆったりしているが、年間家賃は〇・八八ユーロ(約百二十円)。月にすると十円だ。
開設時に労働者の一週間分の賃金に当たる一ライングルデンを年間家賃と決めてから五百年近く改定なし。
貨幣価値の下落で超格安になった。
運営財団の職員ザビーネ・ダリウスさん(57)は「今さら変えられないわね」と笑う。
アパートが並ぶ敷地には観光客向けの資料室や土産物店が点在する。
きょろきょろと歩いていたら、一階の窓辺にたたずむおばあさんと目が合った。ギクリとしたが、よく見ると、それは等身大の写真シール。
観光客にさんざん家をのぞき込まれた住人が意趣返しに貼ったのだろう。タダ同然の代償は、やはりあるようだ。