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沖縄へのとがった視線。裾野はどのくらい広がっているのだろうか。
読売テレビは昨年11月、毎週日曜のトーク番組「たかじんのそこまで言って委員会」で、沖縄の基地反対運動を批判的に取り上げた。
関西地区での視聴率は、この番組の昨年放送分では4番目に高い16・1%。首都圏を除くほぼ全国の系列24局で放送された。
番組では、反対派が米兵の車に「ヤンキー、ゴーホーム」と叫ぶ場面が強調され、沖縄在住の作家、恵隆之介さん(60)が
「左翼に中国のカネが流れている」と主張した。米占領下にあった歴史や、騒音や事故など基地被害への言及はなかった。
読売テレビの広報は取材に対し、「事実」に基づいて問題点を整理したとし、「放送内容が全て。判断は視聴者がされる」と
文書で回答した。
「中国からカネ? 証拠を見せてほしいね」。普天間飛行場前で抗議を続ける男性(64)はあきれる。オスプレイ配備に反対し、
12年に始めた。自宅から車で50分。ガソリン代など月約3万円の活動費は年金頼みだ。
だが、ネットに投稿された番組へのコメントには、賛同の言葉が並ぶ。「沖縄県はいらない」「糞左翼」……。昨年1月には、
東京・銀座でオスプレイ反対を訴えて行進した沖縄全41市町村の代表者に、沿道の保守系団体などから「売国奴」「日本から
出て行け」と罵声が飛んだ。
特定の集団などをののしる「ヘイトスピーチ」に詳しいジャーナリスト、安田浩一さん(49)は「何かに反対する人を『左翼』と記号化し、
攻撃する。沖縄もネット右翼らのターゲットの一つになった」と言う。沖縄バッシングは、在日コリアンに対し差別的なデモをする
「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の出現と地続きにある、とみる。
日本は不景気なのに、沖縄は基地の見返りにカネをもらっている。これは「特権」ではないか。こうした論法を安田さんは取材で
聞いてきた。「でも(米軍に有利な)日米地位協定という最大の『特権』には目を向けない。沖縄への攻撃は、物事の一面だけを捉えた、
マイノリティー(社会的少数者)への明らかな差別だ」
(さらに続きます)
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戦前、沖縄から本土に移住した世代は「琉球人お断り」といった差別に苦しんだ。いま、大阪沖縄県人会連合会の嘉手川
(か・で・かわ)重義会長(72)の心はざわつく。
沖縄料理店を開いたのは約30年前。食や文化を通して沖縄への理解は進んだと思う。NHKのドラマ「ちゅらさん」などの影響も
大きいという。だが――。
嘉手川さんも一昨年、大阪駅前で関西の県人会とオスプレイ反対のビラ配りをした。ほぼ同じ場所で、辺野古移設反対を訴える
団体が、ののしられている。
ゆがんだ言葉の数々は、差別や偏見の再来の兆しなのか。「心配がないとは言い切れない。ウソも百遍言えば本当になる」
(終わり)