【毎日新聞】「安倍カラー」の経営委員人事…運転する自動車は公共の財産。乱暴な運転で車を壊し人でもはねたらどうするつもりか

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1伊勢うどんφ ★
 「小説家たらんとするものは自動車学校を卒業せざる運転手の自動車を街頭に駆(か)るがごとし。
一生の平穏無事なるを期すべからず」。こう述べているのは芥川龍之介(あくたがわ・りゅうのすけ)の「小説作法十則」である

▲およそ作家というものは、その筆をもって世の常道を踏み破るのが一つの仕事だろう。時に人倫や公序良俗(こうじょりょうぞく)をもくつがえし、
人間の真実や社会の深層に迫ってみせることもある。ありふれた常識の上を安全運転していては凡庸(ぼんよう)というそしりを受けることになるだろう

▲だから時の売れっ子作家が選挙の応援で日本のアジア侵略は「大うそ」との歴史認識を説き、中韓に気を使う政治家を「売国奴」と罵倒(ばとう)して
人目を引いても驚くほどのことはない。
他候補を「人間のくず」呼ばわりすれば、眉(まゆ)をひそめる人がいるのも承知の上だろう

▲だがその当人、作家の百田尚樹(ひゃくた・なおき)氏がNHKの経営に影響力を振るう経営委員とあれば話は大分違う。
放送法は経営委員に「公共の福祉に関し公正な判断ができる」ことを求めている。人前で公人を「売国奴」「人間のくず」呼ばわりする振る舞いなどは想定外である

▲昨秋百田氏と共に経営委員になった哲学者の長谷川三千子(はせがわ・みちこ)氏についても、
朝日新聞社で拳銃自殺をした右翼団体元幹部を礼賛(らいさん)した過去が小紙で報じられた。
哲学者が独自の思索を世に問うのはいいが、メディアへの暴力的圧力の称賛と経営委員の職責とは両立しまい

▲共に「安倍カラー」といわれた経営委員人事だが、運転してもらっている自動車は視聴者が受信料で作ってきた公共の財産である。
乱暴な運転で車を壊すばかりか、人でもはねたらどうするつもりか。

2014年02月06日 00時10分 毎日新聞
http://mainichi.jp/opinion/news/20140206k0000m070124000c.html