銀座や新橋の街角ではほろ酔いのサラリーマンたちが賃金アップの話題に花を咲かせていた。
だが、円安や株高の恩恵を受けられるのは、都会の大企業で働く正社員のみ。
地方雇用のサラリーマン、非正規労働者は差が広まるばかりだ。
群馬県大泉町の私鉄の駅から歩くこと約15分。水を抜いた田んぼが広がる先に、
農薬混入で逮捕されたアクリフーズ契約社員の阿部利樹容疑者(49)の自宅がある。
阿部は、この築20年ほどの家で妻と20代半ばの息子と3人暮らしをしていた。
息子が小学生の頃、思い切って約2000万円のローンを組んで購入した一軒家だ。
「待遇や賃金に不満があった」動機については、阿部はこうほのめかしている。不満だったという月給は14万円ほど。
年収は、ボーナスを含めても200万円を少し超える程度だったという。
一方、東京のサラリーマンは、平均年収635万円(従業員30人以上の企業)。都会の人の感覚では、地方の低賃金は想像しにくい。
「でも、こっちでは皆、そんなもんですよ」
地元のタクシー運転手が苦笑いして言う。ハローワークで大泉町の求人票を見ると、「運送業A社」(トラック運転手=基本月給は12万5000円〜)、
「製造業B社」(一般事務=基本月給14万4000円〜)などが並ぶ。群馬県の最低賃金707円に限りなく近い金額だが、これでも正社員の求人だ。
だが、こんな低賃金でも生活ができているから不思議だ。阿部も、趣味のバイクに改造費込みで100万円ほどかけていた。
物価や住居費は都市に比べて確かに安いだろうが、相当に切り詰めての生活に違いない。
「こっちでは、家族全員が働いていますから」
駅前のモスバーガーで、居合わせた客がタネ明かしをしてくれた。東京都や大阪府の共働き率は半分を切るが、地方の共働きは7割に近い。
厚労省「国民生活基礎調査」(10年)で全国の1世帯当たりの平均所得金額は年約549万円。
1人当たりの平均所得金額は約207万円で、やはり阿部の年収に近い。
しかし、阿部家では妻と息子も働いていたため、世帯所得は600万円を超えていたと推測できる。東京のサラリーマンとほぼ一緒だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140205-00000015-nkgendai-life