★「クリスマスは恋人と」っていつ決まった!? 「恋人同士がフランス料理を食べてホテルに泊まる祭」の起源
瀬地山 角 :東京大学教授 2013年12月12日
アメリカではクリスマスは日本と違って、恋人と過ごす日ではありません。あくまで家族で過ごす日で、
日本のように恋人同士でディナーに行くのではなく、家族で過ごす時間です。恋人と過ごすのは、
12月31日の夜。カウントダウンや花火のイベントがあり、そちらは若者が中心です。正月とクリスマスの
優先順位がちょうど日本と逆なので、家族と過ごすか、恋人と過ごすかが逆転するわけです。
というわけで、日本にもアメリカにも、「クリスマスは恋人とディナー」なんて習慣なぞなかったのです。
そうした風景に変化が見られるのは、1980年代初頭です。みなさんご存じのユーミンの「恋人がサンタクロース」は、
1980年12月発売のアルバム「SURF & SNOW」に収録されています。
そして山下達郎の名曲「クリスマス・イブ」は1983年。さらにJR東海がこの歌をモチーフに「クリスマス・エクスプレス」の
CMを流したのは1988年から1992年です。
つまり、この頃になって初めて、「クリスマスは恋人と」という考えが広まるようになったわけです。「プレゼント何がいい?」
と聞かれても返事ができない「消費社会」が到来していたからこそ、「帰ってくるあなたが最高のプレゼント」(1988年、
上記JR東海のCM)というコピーは、ぐっと心に響くのです。
つまりちょうどこれらの歌が流れていた時期に、クリスマスは「子どもがプレゼントをもらう日」から「恋人同士が
フランス料理を食べて、ホテルに泊まる日」になっていったことがわかるのです。
みなさんが感じているような「クリスマスまでに恋人を見つけなきゃ感」みたいなものって、実は1980年代に顕在化し、
その後、さまざまな歌やCMを通じて増幅された、ごくごく最近の感覚なのです。
ですから「予定のない」あなたは、愚かな「リア充」どもが、そうやって作られたクリスマスのイメージに踊らされ、
中身は同じなのに普段より高いおカネを払い、分不相応な飲み食いをして、ホテルに泊まっているのを、
静かにあざ笑っていれば……なんて、できないですよね。(抜粋)
http://toyokeizai.net/articles/-/25946