豊臣秀吉の正室・高台院(ねね)の遺愛品として足守藩主木下家に伝わった
漆工芸品「桐(きり)鳳凰(ほうおう)蒔絵(まきえ)硯(すずり)箱」の修復が
完了し、岡山市北区駅元町、岡山シティミュージアムで初めて一般公開されている。
くすんだ漆が磨き上げられ、格調高い本来の輝きが歴史ファンらを魅了している。
木下家初代藩主・家定は、ねねの実兄で、硯箱(縦26センチ、横24・2センチ、
高さ5・6センチ)は2007年、同家伝来品を収めた同市北区足守の蔵で発見された。
外箱に「太閤秀吉公御所持 従高台院殿譲」と記されている。
硯箱は蓋(ふた)の表裏に、肉厚の金蒔絵で眼光鋭い鳳凰が表現され、
内面や側面には桐の文様が描かれる。方形に切りそろえた金銀の截金(きりかね)、
青貝を用いた螺鈿(らでん)など精巧な装飾も随所にちりばめられた優品。
ただ、発見時は、年月を経てつやを失っていた上、何者かに破壊された痕跡もあり、
痛々しい状態だった。
修復は、同家家老の子孫・杉原康子さん=同所=が文化財の維持、修復に
助成している住友財団(東京都)に申請し実現。11年から埼玉県の修復士の元で、
汚れが慎重に落とされ、漆のはく落箇所は補強されるなど、つややかな漆本来の美しさを取り戻した。
一方、「徳川家に遠慮し、壊して伝えたのでは」といった破壊の謎をめぐる議論もあり、
割れた跡は来歴情報としてあえて残した。杉原さんは「破損が激しく、夢に鳳凰が
出てくるほど『何とかしないと』と思っていた。これで後世に伝えられる」と安堵(あんど)している。
展示は12月23日まで(同日を除く月曜休館)。
山陽新聞 2013/11/19 依頼スレです
http://www.sanyo.oni.co.jp/news_s/news/d/2013111923125863/