3月に深浦町の海岸に座礁した貨物船の処理を巡り、県や町が対応に苦慮している。
再三の撤去要請にもかかわらず、船主側が応じないため、撤去のメドが立たないからだ。
このままでは「億単位」とみられる撤去費用を公費で工面せざるを得なくなるだけに、県や町は「いい迷惑だ」と憤っている。
座礁したのは、カンボジア船籍の「AN(アン) FENG(ファン)8」(1996トン)。
3月1日夜、秋田県から北海道に向かう途中に、深浦町岩崎地区の浜辺に乗り上げ、ベトナム人と中国人の乗組員12人が救助された。
県河川砂防課によると、船は事故に備えた保険に加入しており、支払い能力の有無が撤去に向けた障害になっているわけではない。
仲介する保険会社側は県に対し、「撤去について船主の承諾が取れない」と説明しているという。
船の所有者は中国人3人。
船体を解体して廃船にするのか、それとも修理に回すかで意見が割れているのが原因だ。
放置が続けば自治体の費用負担も増えかねない。
県は約1400万円を投じて船をワイヤで海岸に固定しているが、海が荒れる冬季に備えて再補強が必要になる恐れもある。
10月から船の監視体制も週2回に強化した。
船が流されれば漁網を切るなどの2次被害も想定されるため、見て見ぬ振りはできない。
県と町は所有者3人に対し計7回、国際郵便と電子メールで早期撤去を要請したが、
「打ち返しは全くない」(今孝治県河川砂防課長)と解決の糸口はつかめていない。
町の担当者は「救出した乗組員の寝床を提供し、着替えも食事も準備したのに、誠意のかけらも感じられない」と憤慨する。
青森海上保安部によると、船内の燃料は抜き取とられ、海洋汚染の心配もないことから、「強制的に撤去させる法的手段はない」(警備救難課)という。
船主らの「誠意」に頼るしかなく、堂々巡りが続けば県や町の公費で船を撤去するしかない。
県は9月20日、外務省など関係省庁に協力を要請した。
外務省は中国の日本大使館を通じ、中国政府に文書で協力を求めたが、今のところ進展はみられない。
今課長は「これで事態が動かなければ、厳しくなる」とため息を漏らす。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/aomori/news/20131008-OYT8T01431.htm