【朝日新聞】 「話を聞くと似たような眩暈(めまい)を感じてしまう。安倍政権が準備する特定秘密保護法案である」

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1有明省吾 ◆BAKA3V.XYI @有明省吾ρφ ★
★天声人語

「クレタ人は皆うそつきだ」と、クレタ人Aが言った。Aの言葉が正しいとすると、Aもうそつきということになり、クレタ人が皆うそつきかどうかは真偽不明となる。
よく知られたパラドックスである
▼これとは次元が違うが、話を聞くと似たような眩暈(めまい)を感じてしまう。安倍政権が準備する特定秘密保護法案である。
「重要な秘密は漏らしてはならない。ただし、どれが重要で、どれが重要でないかは重要な秘密である」と言われているようだ
▼法案の概要を読むと、防衛、外交、スパイ、テロの4分野で、それぞれ「特定秘密」にできる項目を並べている。
漏洩(ろうえい)は厳罰に処せられるのだが、書きぶりが抽象的かつ網羅的なので、なんでもかんでも秘密にされかねない怖さがある
▼米国との間で軍事情報などを共有する必要性が高まり、「保秘」の仕組みも万全にする必要があるということらしい。
安全保障上、表に出せない情報はあるだろう。ただそれは、国民の知る権利、ひいては国民主権の原理とぶつかる関係にあることを忘れるわけにはいかない
▼なにが特定秘密かを決めるのは「行政機関の長」だ。その判断が適切かどうかを見張る仕組みが法案にはない。
首相以下が恣意(しい)的に決めたり、乱用したりしたらどうなるか。国会や裁判所は歯止めをかけられないのか。危惧すべき問題点が多すぎる
▼民主主義を支えるのは情報公開である。それを蔑(ないがし)ろにして法成立に走るなら、「よらしむべし、知らしむべからず」ではないか。

asahi.com 2013年 9月 18 日(水)付
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