★牧太郎の大きな声では言えないが…:「快い国家主義」のワナ
「全体主義国家がオリンピックを開催すると10年前後で崩壊する」という物騒な話を聞いたことがある。
1936年にベルリン・オリンピックを開催したナチス・ドイツは45年に第二次世界大戦の敗北で消滅した。
80年にモスクワ・オリンピックを開催したソ連は91年に崩壊した。
それなら、2008年に北京オリンピックを開催した中国の運命は?
政治的ジョークの類いと思うが、オリンピックを開催できるほど「豊か」になると、かの国の人々は“国家統制”に嫌気がさし「自由」を求める。
「国家の目標=国民の目標」という国家主義の根幹が危うくなる。
そう言えば、昨今、中国で「自由」を求める反政府活動が日常茶飯事である。
それとは逆に、個人主義を謳歌(おうか)する国々では、オリンピックは「快い国家主義」のステージになる。
9月8日朝、2020年夏のオリンピック開催が決まった瞬間、日本人は「快い国家主義」に酔いしれた。決選投票に勝った! 万歳! 万歳!
オリンピックは「国家の目標=国民の目標」になり、日本はとりあえず“勝利”した。
ちょっと前まで、勝利至上主義を否定して、お家芸の柔道の暴力的な指導を毛嫌いしていたメディアが、そんなことは、お構いなく「金メダルの数」を話題にする。
やれ、経済効果は3兆円! やれ、リニア中央新幹線の前倒し着工! 東京丸の内の地下に新東京駅ができ、東京?成田が36分!
快いニュースばかりだ。(
>>2-3へ続く)
毎日新聞 2013年09月17日 東京夕刊
http://mainichi.jp/opinion/news/20130917dde012070013000c.html