★天声人語
ある鳥は、1本の木で5匹の虫が捕れたら次の木に移るという作戦に従った。
これだと虫が1匹もいない木に入ってしまった場合、永久に出られないことになる
▼別の鳥は、1本の木につき虫を5分間探したら次に行くことにした。これだと虫がたくさんいる木に入っても、途中で諦めなければならない。
しかも、次の木には1匹も虫がいないかもしれない
▼また別の鳥は、一定の時間当たりに捕れる虫が○○匹以下になったら次の木へという戦略にした。これが一番賢いやり方だったので、他の鳥に広まった。
例え話ではあるが、生物はこうして与えられた環境に適応した行動を取るようになる(長谷川寿一(としかず)ら『進化と人間行動』)
▼参院選で与党の圧勝を許した野党勢力の動きを見ていて、この話を思い出した。環境に適応できない生物は生き残りが難しい。勢いに乗る安倍政権。
1人区の勝敗が全体の結果に大きく影響する選挙制度。こんな条件のもと、野党がばらばらのままで臨めば敗北は避けられない
▼いまの選挙の仕組みは、度合いに違いはあれ衆参両院とも、大きな政党を二つ生み出す力が働くようにできている。
現にいったんはそうなったが、民主党の失敗を機に流れは再び振り出しに戻った
▼希望は失うまい。自然淘汰(とうた)は何かの目的に向かって進むのではなく、生物の進化は偶然に左右される。だが、人間は目標を持てる。
環境の方を変えることすらできる。鳥よりは早く、より賢いやり方にたどり着けるはずだろう。
asahi.com 2013年 7月 23 日(火)付
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