鳥取県智頭町八河谷で、約60年ぶりに大麻栽培が復活した。
栽培に乗り出したのは昨年3月に移住してきた上野俊彦さん(33)。
先月末に鳥取県から大麻栽培者免許証の交付を受けた。
繊維や種を使って神事道具や麻みそを作る考えで「いろんな活用方法があり、大きな産業になりうる可能性があると思う。
徐々に大きくしていきたい」と意気込んでいる。
大麻は一般的に“麻薬”と解釈されることが多いが、第2次世界大戦前の日本では主要農作物として全国で栽培され、
草履や衣類、燃料、紙など生活に欠かせない物を作るために幅広く利用されていた。
戦後、大麻取締法が制定され、石油化学繊維の台頭によって栽培者は激減。
1950年に全国に約2万5千人余りいた栽培者は、2011年には50人にまで減ったという。
上野さんは東日本大震災をきっかけに家族と八河谷集落に移り住んだ。
移住前に働いていた群馬県の農場で大麻を栽培した経験があり、「いつか大麻栽培をしたいと思っていた」。
そんな折、地区の高齢者から以前は八河谷でも大麻が栽培されていたことを聞いて一念発起。
町も賛同し、免許証取得を支援した。
中国・四国地方で免許所持者は上野さんだけという。
栽培種は、栃木県で栽培されている「トチギシロ」。
陶酔作用の原因となるTHC(テトラヒドロカンナビノール)成分が0・3%以下と少なく、薬物として利用されることはないという。
盗難対策として栽培農地は鉄柵で囲い、大麻取締法の適用対象外となる成熟した茎や種子、
それらの製品以外は焼却または埋設により処理する万全の備えで臨む。
大麻は100日で3〜4メートルにもなる一年草で、生命力が強いのが特徴。
上野さんは、もうじき苗を畑に植え替え、本格的な栽培を始める。
ことしは種取り用として2アールに約660株を植え、収穫した種を使って麻みそを作る。
来年以降は繊維用の栽培も行い、しめ縄など祭事用の神事道具を作って町内の神社に使ってもらおうと考えている。
上野さんは「大麻イコール麻薬という偏見はあると思うけど、戦前は当たり前に栽培されていた。
真剣に取り組むことで、少しずつ理解してもらえれば」と話している。
http://www.nnn.co.jp/news/130528/20130528006.html